映画「60歳のラブレター」 平成21年5月16日公開予定 ★★★★★
原作本 「60歳のラブレター」NHK出版 ★★☆☆☆ → 60歳のラブレター①

読んで♪観て♪

定年退職を目前に控え、第二の人生をスタートしようとした矢先、
孝平(中村雅俊)と専業主婦として家族に尽くしてきたちひろ(原田美枝子)は離婚を決意。
互いが別々の道を歩み始めたとき、新婚当初ちひろが30年後の孝平に宛てた手紙が届く…。
5年前に愛妻に先立たれ娘と暮らす医師・静夫(井上順)は、麗子(戸田恵子)と出会う。
新しい恋に臆病だった2人の元へ思いがけない人から英文のラブレターが届く…。
青春時代にビートルズに熱中し、現在は魚屋を営む正彦(イッセー尾形)と光江(綾戸智恵)。
ある日、光江に癌が発覚。
手術に臨んだ光江が眠る病室で正彦はギターを片手に2人の思い出の曲を弾き語る…。
長年連れ添った夫婦が、感謝の言葉をハガキに綴る応募企画「60歳のラブレター」を基に、
迷いや焦り、喜びや幸せ、
そしてかけがえのない大切な人との絆を描いた感動作。  (シネマカフェ)

最初から最後まで、天才脚本家古沢良太に
「やられた!」と思ってばかりの134分でした。

原作といわれる一般応募のラブレターは、
思わず泣きそうになるものもありましたが、
ストーリーとしてはありきたりで、正直あまり期待していなかったのですが、
そこは古沢マジック。しっかり楽しませてもらいました。

「たたきあげの野心家と上司の娘」
「不器用な医者と売れっ子翻訳家」
「歌手になりたかった魚屋とその追っかけの中で一番可愛かった娘」

さすがに60歳の群像劇は、年齢を重ねた分「履歴」が重く、
まだそれぞれの生きてきた人生の対比がおもしろく、
なんで今までこういう映画がなかったのかな、とさえ思いました。

それぞれの心情を掘り下げる、というよりは、
タイプの違う人間が交錯したときの
「化学変化を楽しむ」
作品といえるでしょう。

ともかく、ストーリーの流れから当然予想してしまうセリフを
次のセリフがあっさりうらぎる・・・
「えっ!そうきたか!」という感じです。

ストーリーはネタバレになるので、控えますが、
キャスティングもGOODでした。
中村雅俊と原田三枝子は今までのイメージとは
全く違う役で、見事に(いい意味で)裏切られました。
私生活の不幸なゴシップも、
むしろこの映画には追い風になるような気がします。
イッセー尾形と綾戸智恵の夫婦。演技力の差は大きいはずなのに
心をゆさぶられる「いい話」でした。
さすがに何回も泣いちゃいました汗
この夫婦の断片的なエピソードは
本の応募作品のなかにあったような気もします。
古沢脚本にしては、ひねりのない部分でしたが、
リアルな「アラ還」夫婦が、一番自分たちを重ね合わせられる夫婦で
それゆえに感動も大きいと思います。

井上順と戸田恵子は、雰囲気が日本人離れしていて、
海外のラブコメを見ているみたい。
この二人でちがう作品も見てみたいです。

「団塊の世代」のリアルな時代背景が
まんべんなくちりばめられていて、
私が覚えているだけでも・・・

●東京オリンピックの頃に中学を卒業し、
 集団就職列車で東京にやってきた「金の卵」といわれた世代
●高校生の時にビートルズ来日。
 一番欲しいもの・・・「ギター」だった世代
●海外ドラマがテレビでみられるようになり、
 ベン・ケーシーにあこがれて医者をめざした世代
●深夜ラジオ全盛で、DJの流暢な英語にあこがれ、
 「海外留学」する少年少女が登場した世代。
●昭和50年ころのラベンダーブーム。
 (幸福駅、なんてのもありました)
 北海道、なかでも富良野にあこがれた世代。

若い世代の人たちはスルーしてしまう、
ビートルズやベン・ケーシーに
きっと同年代の人は過剰に反応すること必至です。

いまどき牛乳瓶の底みたいなメガネはないだろう、とか
夜の病院でギターはないだろう、とか
ちょっとやり過ぎ感もありますが、
共感できる方が多かったので、よしとしましょう。

ところで、チラシに使われている幸せそうな写真(↑)を見たら、
なんだか昔の金妻(金スマ、ではありません!)を思い出しました。
「近所に住む仲良しの三組の夫婦」とミスリードさせられて
この段階でもう「騙されてる」感があります。
少なくとも本篇の時間軸の中では、この映像はありえませんからね。

ところで、エンディング曲を歌っていたのは「元金妻メンバー」の森山良子。
彼らもみんな60代。
家庭がありながら不倫していた30代の彼らが、どんな枯れた(?)
60代になったのか、続編がみてみたくなりました。