サァァ…サァァ


森の奥に風が吹く

一本の巨木から失われた者を悼む様に


大きな大きな柿の木はそれでも土地の力で常に秋を忘れない

日々、実を花を葉を茂らせ命豊かに生きる



其処にはもう精霊はいないけれど、春の風の気持ちを受け取ろうと枝を幹を目一杯張り出して




何時か精霊を見知っていた人が来るかもしれない

来ないかもしれない


エルフィネスの奥の奥

精霊の宿る木々の暮らす森の中、精霊のいなくなった柿の木は命失わずに生き続ける


それこそ、千年の時を



其処にとある樹医が訪れるのは今より数十年先の話


花に、草に、木々に、そして映写機に収められていた物語に導かれ、老年の樹医は一つの柿の木を見つける



彼は其処に長年連れ添った友を託すと、映写機を抱えた人物と共に人の世界へと戻る

再び、再び身体を得たら遊びにおいでと友達に言い残して




此れはまだ不確定の未来の話

誰も知らず、それゆえに起こり得るかどうかすら解らない未来の話


魂を待ち続けた樹と、ソレを届けた樹医と、彼らを収めた映写機の話

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