1.分類
原発性骨腫瘍 primary bone tumor
続発性骨腫瘍 secondary bone tumor
腫瘍類似疾患
2.頻度
全骨腫瘍の中では転移性骨腫瘍が最も多い。
原発性骨腫瘍のなかでは骨軟骨腫が最も多く、次に軟骨腫が多い。
原発性悪性骨腫瘍の頻度は骨肉腫、軟骨肉腫、骨髄腫、Ewing肉腫、
悪性線維性組織球腫の順に多い。
3.単純X線写真での注意点
a:炎症、骨系統疾患との鑑別。
b:良性、悪性との鑑別。
c:実際の診断名 を記載する。
この際、
①好発年齢
②発生部位(好発する骨の種類、長管骨における好発部位)
③腫瘍の拡がりと境界部における反応性骨形成の有無とタイプ
④外骨膜反応の有無とタイプ
⑤腫瘍陰影の濃度(腫瘍による骨産生、軟骨産生の有無)
⑥単発、多発の別
⑦肺転移の有無 を参考にする。
①好発年齢
原発性骨腫瘍は10~20歳代に好発。骨肉腫やEwing肉腫もこの年代に多い。
骨巨細胞腫は骨成長終了後の20~30歳代にかけて好発。
1~2歳以下に発生する骨腫瘍は神経芽細胞腫の転移が最も疑われる。
5歳前後の場合には好酸球性肉芽腫が最も疑われる。
40歳以上の場合は癌の骨転移あるいは骨髄腫の可能性が高い。
②発生部位(好発する骨の種類、長管骨における好発部位)
原発性骨腫瘍は膝関節周囲(大腿骨遠位部及び脛骨近位)に発生することが多い。
骨肉腫やEwing肉腫などの悪性腫瘍、骨軟骨腫・骨巨細胞腫などの良性腫瘍がその代表。
内軟骨腫は手の指節骨、良性骨芽細胞腫は脊椎、脊索腫は仙椎、骨アダマンチノーマは脛骨、
軟骨肉腫は骨盤や大腿骨とその近位に好発する
癌の骨転移は四肢長管骨の他にも脊椎、骨盤に好発する。
長管骨における発生部位は骨肉腫に代表されるように骨幹端に多い。
骨巨細胞腫や良性軟骨芽肉芽腫は骨端に多い。
Ewing肉腫、悪性リンパ腫は骨幹に発生することが多い。
③腫瘍の拡がりと境界部における反応性骨形成の有無とタイプ
単純X線像で腫瘍の境界が明瞭かつ腫瘍周囲の反応性骨硬化が強い場合、
地図状の浸潤影を示す場合は一般に良性か低悪性度の腫瘍である。
浸潤性で境界不鮮明な陰影(浸潤像、虫食い像)を示すのは悪性が多い。
④外骨膜反応の有無とタイプ
骨内に発生した骨腫瘍が骨皮質を破壊し、骨膜を刺激することによって外骨膜反応が生じる。
腫瘍の悪性度の違いによって出現する骨膜反応のタイプが異なり、大きく4つのタイプに分けられる。
Ⅰ:一層の厚い骨膜反応
腫瘍の浸潤力が弱い場合の骨膜反応。
腫瘍細胞が骨膜を刺激することによって形成された反応骨により腫瘍が押し込められた状態。
骨膜の肥厚像あるいは二重骨皮質とよばれ、良性腫瘍や骨髄炎で認められる。悪性腫瘍で
出現するのは稀。
Ⅱ:Codman三角
腫瘍が骨膜を持ち上げて増大し、その中央部で骨膜を破ることにより腫瘍の両端部の
骨膜下には反応骨が形成される。
Codman三角自体は反応骨であり、腫瘍細胞は含まれていない。
Ⅲ:スピクラ
腫瘍が骨膜を破って増殖した場合、腫瘍組織の中に埋没した骨膜が腫瘍の増大方向に
対して平行に(sunray pattern)、放射状に(sunburst pattern)反応骨を形成する。
これをスピクラ(spicula 針状陰影)と呼び、悪性腫瘍(特に骨肉腫)やEwing肉腫に特徴的である。
Ⅳ:玉ねぎの皮様骨膜反応
腫瘍の浸潤により骨膜が段階的に押し上げられたときに出現する。数層の層状構造
をもった骨膜性骨形成像を示す。
Ewing肉腫、悪性リンパ腫などの小円形細胞肉腫の範疇に入る腫瘍に特徴的。
ときに骨髄炎でも認められる。
⑤腫瘍陰影の濃度(腫瘍による骨産生、軟骨産生の有無)
腫瘤陰影の濃度は(1)溶骨型、(2)造骨型、(3)混合型に分類される。
溶骨型は悪性骨腫瘍に多く、線維肉腫・悪性線維性組織球症・骨髄腫・骨転移などに多い。
骨肉腫は溶骨型・造骨型・混合型のいずれの型も認められる。
骨腫瘍を組織学的に大別した場合、(1)腫瘍骨産生型、(2)腫瘍軟骨産生型、(3)基質無産生型
に分類できる。
(1)腫瘍骨産生型
(2)腫瘍軟骨産生型
(3)その他
⑥単発、多発の別
多くの骨腫瘍は単発である。多発性骨腫瘍としては骨軟骨腫、内軟骨腫、
線維性骨異形成、好酸性肉芽腫、骨髄腫等がある。
⑦肺転移の有無
悪性骨腫瘍は原発巣が発見された時点ですでに肺転移を生じていることが少なくない。
骨腫瘍は臨床所見と単純X線像により約80%は良悪性の鑑別が可能である。60%の症例
では診断名まで付けることが可能。