春の季語になっている桜餅は日本人であれば一度は口にしたことがあるお餅であろう。

淡い桃色といい桜の葉からほのかな香りがする(クマリンという成分)

そして塩漬けした桜の葉の優雅な配色はいかにも繊細な日本人の味覚を満足させる。

江戸っ子が好んだ桜餅は、江戸向島の長命寺から始まったという。

とにかく春の五感をすべて網羅したその日本人の美意識は外国人には驚きと称賛が入り混じって

日本の味覚文化の奥ゆかしさを思い知らされる。

戦後の日本は西欧文化かぶれし、日本の伝統を軽視している傾向にあるが、

足元にこそ素晴らしい伝統文化があることをこの際、自任したい。

今の高齢者は戦前のひもじい思いを戦争前後に味わっている。

とくに育ち盛りの幼少時に食い物の恨みをいつまでに脳裏に焼き付いている。

桜餅には当時になかなか口にできなかった庶民の夢があり、なつかしい記憶が眠っていて

まさに味覚視覚嗅覚触覚など五感を満足させることによって認知症予防にもなる可能性が考えられる。

散った桜を惜しみつつ、舌と目と鼻で桜を二度満足させる桜餅は日本人にとって郷愁の春の一品であろう。

そんな桜餅をお年寄りと午後の団欒に蘊蓄を傾けながら口にするのはどうであろう。