『2011年、メディア再編 地デジでテレビはどう変わるのか』アスキー新書 | サンロフトの本とテレビの部屋

『2011年、メディア再編 地デジでテレビはどう変わるのか』アスキー新書

『2011年、メディア再編 地デジでテレビはどう変わるのか』西正/アスキー新書/780円


これまで論議されてきた地上波デジタル放送の問題が、この1冊でまるごと解る。無類のテレビ好きの私からの、とびきりのオススメである。

しかし、決して面白い本ではない。コピーワンスからケーブルテレビでの地デジ、地デジIP再送信まで、放送業界のかたくななまでの抵抗の理由が書かれている。著者は、ワンセグ等に新たなビジネスチャンスがあると説くが、絵空事に近い。放送と通信の融合と言いつつ、放送業界が新しい試みを次々に潰していくさまは、まさに自滅の道を邁進しているとしか思えないのだ。
読み進めるうちに、怒り、虚しくなり、読み終えるころには諦めの境地に至る。まあ、私ほどテレビに熱中している人は少ないだろうが、画質だの、録画保存だの、アナログ録画PCではあたりまえ操作性はもはや過去の夢と割り切るのが賢明だろう。


以下私見。
放送と通信の融合について、放送業界では「テレビはネットに飲み込まれる?」という危機感があるという。しかし、もっと怖いのは、「テレビはネットから見捨てられる」という可能性である。
強力なプロテクトによって、YouTubeの違法動画は自然消滅していくだろう。大手掲示板でも近頃は画像のアップが減り(アナログからデジタルの移行に連動して)、テレビ番組についての話題も、引きずられるように減ってきている。

数字が無いのであくまで個人的な感覚だが、長時間の番組や、そのスレの女子アナ、タレントの出番の少ない番組のキャプや感想等は、ほとんど見かけなくなった。2時間特番とか、27時間テレビ、24時間テレビとか特に。
高価なキャプチャ環境を整え、手間と技術を惜しまず、自分ひとりでがんばったって、問題は解決しない。情報が減れば、見逃す番組も増え、それが繰り返されればテレビへの関心も薄れるからだ。


YouTubeが上り坂なので放送業界は懸念しているようだが、テレビ放送をキャプチャしてアップロードできる環境自体が減り始めているので、今後どうなるかは自明だろう。
コピーワンス、コピーナインへ文句をつけるマニア層は、確かにごく一部だろう。しかし、それらに無関心な一般視聴者こそ、シビアであることを忘れてはならない。私のようなテレビ好きは、多少つまらない番組でも観るし、最悪、チャンネルを変えて他の番組を観る。が、普通の人は、つまらなければスイッチを切るのである。
テレビが滅びのスパイラルに落ち込んでしまった今、我々視聴者(ユーザー)に出来ることは何もない。あるとすれば、テレビ以外の娯楽を探しておくことだけだ。