夢幻

小説置場


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◇ずっと隣に居て-レイン&麻白-

 

幼馴染とは、幼い頃に親しくしていた友達を言うらしい。 後述のような文化もあってか、現在では異性の(特に初恋の)相手を思い浮かべる人が多いようだが。
つまり、幼馴染というと、私にとってはレインが当たる訳で。

 

「…レインってさあ」
「…なに?」
「結局のところ、私の事どう思ってるの?」
「は?…なに、急に」
「何となく。だってレインって彼女とか作るでもなく私とずっと一緒に居るし、そういうのどうなのかなぁって」
「ふぅん?僕に彼女作って欲しいの?そしたら麻白と一緒に居られなくなるかもだけど」
「え、それはやだ!」
「でしょ」

 

レインはそう言って話は終わったとでも言いたげに、読みかけの本に視線を戻す。

 

「…じゃあ、これからもずっと傍に居てくれる?」
「麻白を嫌いにならない限りはね」

 

捻くれた彼なりの答えに、微笑んだ。

 


◇どうか、幸せでありますように-燈&焔-

 

最近、焔がよく笑ってくれるようになったと思う。
そう思った事を焔に伝えてみると、

 

「うーん、そうだね~。確かに笑う事は増えたかも~。燈のおかげだね」
「…俺の?」
「うん、そうだよ~。だって私、燈と出会ってなかったら多分今でも一人だったと思うし」

 

だから、燈に出会えた事に感謝してるんだ、と焔はまた笑って。

 

「ありがとう、燈」

 

どうか、彼女の未来に幸多からん事を、切に願う。

 


◇もっと頼りにして-燎&煌-

 

煌は、悩み事を一人で何でも抱え込んでしまう子だ。
無意識にあまり表情に出さないようにしているからか他人には気付かれにくい。
それでも僕には、無理をしていることなど、簡単に分かってしまう。
他人に頼るということをあまりしてこなかったせいか、どうも一人で抱え込んでしまう癖があるらしく。

 

「ねえ、煌。僕はそんなに頼りないかい?」
「え……?」
「煌が何か抱えているなら、僕も一緒に解決する手助けがしたいんだよ」
「………」

 

そう言えば、慣れていないのか戸惑った表情をする。

 

「…ご迷惑じゃありませんか?」
「どうしてそう思うんだい?寧ろ、頼ってもらえない方が僕としては悲しいかな」
「…そうですか」

 

ほんの少し、微笑みを浮かべた煌の頭を軽く撫でてやる。
撫でていた手に煌の手がそっと重ねられた。

 

「ありがとうございます、燎さん」
「どういたしまして」

 

うん。やっぱり君は難しい顔より微笑んでる顔が可愛いよ。

 


◇心を偽らないで-楓&煇-

 

煇は、簡単に言ってしまえば天邪鬼だ。
素直になれないのだと思う。他人の優しさに慣れていないというか、何というか。
とりあえず自分としてはもっと甘えて欲しい、頼って欲しいと思っているのだけれど。

 

「煇。何かして欲しい事はありませんか?」
「はあ?何よ急に」
「何でもいいですよ?頭を撫でて欲しいとか、甘えたいとか」
「特に無いわよ」

 

そう言って、ふん、とそっぽを向く煇に、苦笑を溢す。
ふにふにと頬をつついてみたが、振り払われた。どうやらご機嫌斜めのようだ。

 

「…煇。俺はただ、煇に甘えて欲しいだけなんですよ?」
「………知ってるわよ」

 

そう不機嫌も露わな声音で返す煇に、また苦笑を溢して。

 

「たまには、素直になってくれてもいいんですよ?」
「…じゃあ、手を握ってくれないかしら」
「はい」

 

たまに見せてくれる弱い煇も、自分にとっては好きな人であることに変わりは無いのだ。

 


◇そのままの貴方でいて-燦&橘-

 

「陽向さんに言われたのですけれど、私はもっと積極的になった方がよろしいのでしょうか…」
「………」
「…えーっと、燦さん?起きてらっしゃいます?」
「…ああ。…すまない、こういう時何と返したらいいのか…」
「いいえ、大丈夫ですよ。燦さんはお優しいですよね。こんなわたくしの独り言にすらちゃんとした言葉を掛けてくれようとするのですから」
「…そんなことはないが。………その、」
「はい」

 

次の言葉を待つ。
慎重に言葉を選ぶ燦さんは、本当に優しい人だ。

 

「………無理に桜ノ宮が変わろうとする必要は無い。…桜ノ宮は、そのままでいい」
「燦さん…。そうですわよね、ありがとうございます」

 

そう礼を述べて、微笑んだ。

 


◇笑顔を見せて-月斗&陽向-

 

「はあ~………」
「なに。何かあったわけ?さっきからずっと重々しい溜め息ばっか吐いてるけど」
「………はあ」
「他人の顔見て溜め息吐くの止めろ」
「いたっ」

 

ぺしんと陽向の頭を軽く叩くと、陽向から恨みがましい目で見られた。

 

「で?何があったのさ」
「…体重が……増えました…」
「は?」
「あああもう最悪~~!!甘い物食べたいのに~!麻白と今度ケーキの美味しいお店に行こうねって約束しちゃったよーーー!!!」
「なんだ、そんな事かよ」
「そんな事ってなに!!?乙女にとっては一大事でしょー!?」

 

キーッと威嚇する陽向に、はっと鼻で笑って返す。

 

「今更でしょ今更。どうせ誰が見たって分かんないって」
「月斗のデリカシーの無さに絶望したー!!もう知らない!」
「あーもう、うるっさいなぁ。食べたいなら食べればいいでしょ?無理してダイエットするのって逆に体に毒じゃん」
「はっ…!そうだよね、月斗たまにはいいこと言うー!という訳で麻白とケーキ食べに行ってくるー!!」
「はいはい行ってらっしゃい」

 

落ち込んでいたのも束の間。数秒後には笑顔に戻る陽向。
くるくると表情が変わる陽向を見ていると本当に飽きないなと月斗は思う。

 

「…まあ、笑ってる顔が一番好きだけどね」

 

こんな事、本人には絶対に言わないけれど。

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あなたと手を繋ごう。
迷わないように、はぐれないように。
―――…強く、なれるように。

 

硝子の時計

 

「あ、焔さん、燈さん、こっちこっちー!」

 

今日は久しぶりにレイン、麻白さん、焔、そして俺の4人パーティーを組んでの任務だった。
集合場所に着くと、麻白さんが手を振って迎えてくれた。

 

「こんにちは、2人とも!久しぶりに一緒の任務だねー!」
「だね~。東京探索だっけ?」
「うん、そうだよ」
「4人揃った事だし、早速行くか」

 

そうして、俺達4人はキャンプシップへと乗り込んだ。

 

* * *

 

降り立った東京エリアでは、暗雲が立ち込めていた。
もう少しで大雨が来そうだ。もしかしたら雷も鳴るかもしれない。

 

「うーん…何か天気悪いね…」
「だね。早めに済ませて帰ろう、雷も来そうだし」
「えええー!!?雷やだ!!私帰る!!!」
「…何言ってんの。任務はちゃんとやってよね」
「うわああああんレインの鬼ぃぃ!!!」

 

麻白さんがキャンプシップに戻ろうとして、レインに首根っこを掴まれて逃走失敗。
そんな相変わらずのやり取りに苦笑を浮かべつつ、焔の様子を何気なく窺った。
すると、少々焔の顔が青褪めているように見えるのは、俺の気のせいなのだろうか。

 

「焔?」
「…え?どうしたの、燈?」
「いや。具合でも悪いのか?顔色が…」
「ん~?そうかな?」
「いや、俺の気のせいならいい」

 

そしてここで会話を打ち切ってしまった事を、俺は後悔することになる。

 

* * *

 

最後の幻創種を倒し終わって、焔に声を掛けようとした瞬間だった。
走る閃光、続いて地響きにも似たような唸るような音。―――雷だ。
それに気付いた瞬間、雨も降り出す。
はっとして焔を見遣れば、自分の身をぎゅっと抱き締めてしゃがみ込む姿がそこに在った。

 

「焔!」
「…あか、り……」

 

震えた声に、今にも泣きそうな表情で。
この事態を防げなかった自分に、腹が立った。
異常事態を感じ取ったのか、レインと麻白さんも急いでこちらにやってくる。

 

「ほ、焔さん!?どうしたの、怪我したの!?」
「顔真っ青だよ、何があったの?」
「…雷」
「雷?…苦手なの?」
「…うん」

 

レインは俺の顔を見たので、頷く。

 

「とりあえず任務はもう済ませたし、急いで帰ろう。服も濡れてるし風邪引かないようにしないとね」

 

テレパイプを投げて、キャンプシップに戻る。
俺達が居なくなった後も、東京エリアではざあざあと雨の音と、そして雷の音が時折鳴り響いていた。

 

* * *

 

キャンプシップでの移動中も、焔は俺の腕にしがみついて離れなかった。
…レインと麻白さんからの視線が痛かった。特に、物言いたげなレインの視線が。
一度だけどうしたのかと尋ねられたが、「何でもない」と返せば、それ以上何か聞いてくることは無かった。
察しのいい彼の事だ、何かしら気付いてはいるのだろうが。

 

「それじゃー、お疲れ様ー!任務無事に終わらせられて良かったね!…ってことでぇ…」

 

麻白さんが焔の手を握って、にっこり笑う。

 

「焔さん、甘い物でも食べに行こう!」
「え?」
「ほら、早く早く!甘い物は待ってくれないんだよー!」
「わわっ、麻白ちゃん引っ張らないで~」

 

その状況を呆然と見つめていた俺だったが、はっとして静止の声を掛けようとして。

 

「焔さんの事は麻白に任せておけば多分大丈夫。それより燈、焔さんの事で聞きたい事があるんだけど」
「…やっぱり、レインは誤魔化せないな」
「…焔さん、雷が怖くて苦手って感じだけじゃないよね?」
「…ああ。俺から話せる事は少しだけだが―――…」

 

俺は、焔の事について当たり障りの無い程度に話した。
レインは終始無言で、けれどずっと難しい顔をしていた。

 

「…あとは、本人から聞いてくれ」
「分かった。…話してくれてありがと」
「礼には及ばない。こちらもいつも2人には助けてもらっているからな」
「そう。…それなら、よかった」
「それじゃあ、俺は部屋に戻るよ。またな」
「うん、また。お疲れ様」

 

* * *

 

部屋で焔の帰りを待っていると、「…ただいま」と控えめな声が聞こえた。

 

「おかえり。…甘い物は食べられたのか?」
「うん、少しだけ。食べ切れなかった分は麻白ちゃんが食べてくれた~」
「そうか。良かったな」

 

そう言って微笑むと、焔も少し微笑んでくれたので、一安心だった。

 

「…不思議だね」

 

焔がふと、呟く。

 

「ん?」
「燈や麻白ちゃん、レイン君と居ると、強くなれる気がするの。過去にあった出来事も、いつか忘れられるんじゃないかって」
「…俺は、いつでも焔の力になりたいと思っている」
「うん。知ってるよ。…いつも、いつだって助けてくれるって。………ありがとう」
「…ああ」

 

そう頷き、微笑む焔の手を取って、自分の手で包む。
―――…自分の存在が、少しでも彼女の支えになればいい。
過去の出来事は変えられないけれど、でも、未来を作っていく事は出来るのだから。

 

「ありがとう、燈。…大好き」

 

そう言って微笑む焔に、俺も笑顔を返した。

 

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―――…言葉で伝えきれないことがあるから、音楽が生まれたのかもしれない。

 

Stella

 

「………楓。貴方、学習する気ある?」

 

煇は大きな溜め息を吐いた。

というのも、原因はすぐ目の前の男性にある。

 

「おや、煇じゃないですか。すみません、うっかりしていました」

 

そうのほほんと柔らかな空気を身に纏いながら、のんびりとした口調でそう返した。

煇はそれを聞いて、また溜め息を一つ。

―――…天体観測をするなら毛布くらい持って行きなさいって何度も言っているのに、この男はまるで寒さなど気にならないようで、いつもこうして自分が毛布やら上着やらを甲斐甲斐しく届ける羽目に陥る。

わざとなんだかそれとも本当に忘れているだけなのか、それすらも怪しいところだ。

 

「溜め息を吐くと幸せが逃げますよ、煇」

「…貴方のせいでしょう」

「おや、それは痛い所を突かれてしまいました」

 

そう言ってにっこりと微笑みを浮かべる彼に、罪悪感というものはあるのだろうか。

ここまで来ると絶対わざとなのだろう、そう煇は決め込んで、楓の隣に座り込む。

そうすると、彼はわざわざ届けてやった毛布を自分の肩に掛けた。

 

「…私はいいわ。上着を羽織ってきたし大丈夫よ」

「いえいえ、そうは行きません。女性が体を冷やすものではないですからね」

 

こう言ったところは頑なに譲らない彼。

じろりと睨んでも、いつもの微笑みを浮かべつつさらりと躱されるだけだった。

諦めて言う事を聞く事にする。

 

「…で?今日の星見はどうなの?」

「悪くないですねぇ。………ああ、ほら。あそこを見て下さい」

 

そう言って彼の示す指先を見遣ると、一際強く輝く星が見える。

 

「あれが、ベガ、という星ですよ」

「へえ、あれが…。琴座の星よね?」

「ええ、そうです。煇は琴座の物語をご存知ですか?」

「物語?…知らないわ」

「そうですか。…では、少しお話しましょうか」

 

―――…

 

「悲しみ続けるくらいなら、この手で取り戻してやるまでだ」

 

最愛の妻を亡くした琴の名手、オルフェウスはその日、ひとつの大きな決断をした。

妻を生き返らせるために、死の国へ乗り込むことを。

しかし死の国との境にある川では、死んだ人以外は船に乗ることを許されていなかった。

そこでオルフェウスは琴を手にし、演奏を始めた。

すると、船の渡し守は初めて耳にするその旋律に心を奪われ、追い返す事を止め、船へと招き入れた。

川を渡った先に見えてきたのは、死の国の門。

そこを守る番犬も、ひとたびオルフェウスが琴を奏でると、次第に目を閉じ、静かに眠りについた。

 

「渡し守も番犬も、一体何をしていたのだ」

 

死の国の王ハデスは、死者ではないオルフェウスが自分の前までやってきたことに驚いた。

 

「妻を返して下さい」

 

小さく呟き、三たび琴を奏で始めたオルフェウス。

その美しく悲しげな音色を聴いたハデスは、すぐに理解した。

 

どれほど彼が妻を深く愛していたか。

どれほど彼がその死を悲しんでいたか。

 

体の奥底まで響き渡り、心を激しく揺さぶる琴の音。

涙ながらに演奏を終えたオルフェウスに、ハデスは語りかけた。

 

「このメロディを聞いて、妻を返さないことなど私には出来ない」

 

―――…

 

「…と、こんなお話があるんです」

「…ふぅん」

「おや、この物語はお気に召しませんでしたか?」

「そういう訳じゃないけれど…、貴方って本当に色々な事を知っているのね」

「天体に関してだけ、ですけどね」

「…オルフェウス、だったかしら。そこまで妻を愛せるのも凄いわね」

「そうですね。死の国にまで足を踏み入れてしまうんですから、正気の沙汰では無いですよねぇ。…ああ、でも」

「?」

「俺は煇だったらオルフェウスに負けないくらい愛せる自信、ありますよ?」

 

そう言ってにっこりと微笑む楓。思いがけぬ言葉に、頬を紅く染めた。

 

「ば、ばっかじゃないの!?」

「ええ、馬鹿で結構ですよ。ふふ」

「~~~っっ」

 

何を言っても軽くあしらわれるだけな気がして、言いかけた言葉を必死に飲み込む。

…何か彼を困惑させるような言葉は無いだろうか、と必死に考えて。

 

「……………もし私が死んで、死の国にまで貴方が迎えに来たら、絶対に私が追い返してやるんだから。そんな危険な行為、許す訳無いわ」

「………」

 

しまった。これでは彼の身を案じている風ではないか。

そうは思ったが、後の祭りだ。

珍しく、らしくもないことを言った自覚はある。楓もきょとん、と目を丸くしていた。

 

「…え、えっと今のは無かったことに」

「つまり、煇は俺に生きていて欲しい、と。そういう解釈でいいんです?」

「ち、ちち違うわ!あ、いや違わないけど…!!!」

「ふふ、そうですか。嬉しい事を言ってくれますね」

「…っ」

「でもね、煇。俺はうさぎさんなので。寂しいと死んでしまうんですよ」

「…後追いなんてやめてよね」

「ええ、もちろん。…なので、迎えに行くくらいは許して下さいね」

 

そう言って煇の頭を優しく撫でる。

まるで子供に言い聞かせるみたいだ、と煇は思う。

 

「………仕方ないわね」

 

そう言って、小さく溜め息を吐いた。

白い息は、空気中に霧散して、やがて消えた。

 

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恋愛感情とは、人間の持つ様々な感情の中でも特に厄介である。

Honey Trap

―――…ああ、面倒臭い、と思った。
その感情が芽生えた事に気付いて、第一に考えたのがそれだった。
それに名前を付けるならば、「恋愛感情」。
まさか、自分にそんな感情が芽生えるものだとは思わなかった。
自分は周りの人間に殆ど興味が無かった。冷めている、と言えばそうなのだろう。
…だから、この感情に気付いてしまった時も、面倒だとしか思わなかったのだ。

「あっレイン!こんなところに居たー!」

どうやら、その悩ましい元凶がやってきたようである。

「もう!何でこんなところに居るのー?探したんだよっ」
「…今日は図書委員の仕事があるから、教室で待っててって言ったはずなんだけど」
「あれ?そうだっけ?聞き逃してたかも」

てへへ、と罰が悪そうに笑う彼女の名は、麻白。僕の幼馴染だ。
親の都合で僕の隣に引っ越してきた彼女は、歳も近いせいかすぐに仲良くなった。
それからはほぼ毎日一緒の時間を過ごし、今に至る。

「っていうか、レインって図書委員なんだ?仕事量多くて面倒とか言いそうなのに」
「まあ、確かに仕事量は多いけどね。本好きだしいいかなって」
「ふうん。あ、そういえば燈さんが教室で食べる場所確保してくれてたよー」
「そう。戻ったらお礼言わないとね」

他愛ない話をしながら教室へ戻ると、燈がこちらに気付いて手を振った。

「図書委員の仕事お疲れ様、レイン」
「ありがと」
「燈さん食べるの待っててくれたの?先に食べてても良かったのに~」
「いや、さすがにそれは申し訳ないと思って。どうせならみんなで食べた方が美味しいだろう?」
「律儀だなぁ…」

感慨深げに麻白がそう言うと、燈は苦笑を浮かべた。

* * *

「あ、もうこんな時間!私自分の教室戻るねっ」
「ああ、またな」
「で、レイン。今日の帰りなんだけど、私ちょっと放課後に予定がですね…」
「…どうせ補習だろ」
「て、てへ」
「…はあ。…いいよ、待ってる」
「やったー!じゃあ、また後でねっ」

ばいばい!と手を振って、麻白は教室を出て行く。
燈はそれを見届けると、レインの方に向き直る。

「…で?」
「…なに」
「麻白さんと何かあったのか?最近まともに麻白さんの顔見て話してないだろう」
「………よく見てるね」
「まあな。…それで?」
「………恋愛感情って、面倒臭いなって思って」
「面倒臭い?」
「そう」

『恋愛感情』だなんて自分の口から発する事だけでも躊躇ってしまうのに。
そんな自分がたまらなく嫌になる。

「今までずっと一緒に居て、ずっとただの幼馴染でさ。…こんな事になるなんて思ってなかったんだよ」
「あー…それはあれか?『何でこんな相手を好きになったんだ』っていう…?」
「そうだね、…認めたくないのかも。何で麻白なんか好きになったんだろうって」

麻白は、ただの幼馴染。
ただずっと一緒に居ただけ。
―――…それなのに、どうしてこうも惹かれたのか。

「でも、そういう感情って自分でコントロール出来るものじゃないだろう?」
「………」

否定が出来ずに、レインは口を噤んだ。
確かにこの感情をコントロール出来ていたならば、今こんなに悩んだりしていないだろう。

「…それでも僕は、……麻白とは、幼馴染のままでいい」
「…レイン、」

燈が何か言いかけたが、昼の終わりを告げる鐘が無情にも鳴り響いた。
自分の席に戻って行くレインを見つめて、燈はぽつりと呟く。

「…幼馴染っていうのも、複雑なんだな」

傍から見ている側からすれば、お似合いの二人だと思うし何もそんなに悩むことはないとは思うのだが。
けれど、その感情を認めたくない何かがあるのだろう、彼には。
それが幼馴染だからなのか、相手が相手だからなのか、燈には知る由も無かった。

* * *

放課後、レインは約束通り麻白を待とうと、図書室で時間を潰すことにした。
予習をしてもいいし、課題を終わらせてもいいし…と思ったところで、参考書を教室に忘れた事に気付く。

(…仕方ない、取りに行こう)

そして教室に戻ると、一人の女子生徒が教室を掃除していた。
こちらに気付いた女子生徒は、顔を上げて笑った。

「あれ、レイン君だ。どうしたの?何か忘れ物?」
「うん、まあ。…そっちは日直の仕事?もう一人は?」
「さあ…。忘れられちゃったか、サボりじゃないかなぁ。酷いよねー」
「…手伝おうか?」
「え、いいよいいよ!あと黒板掃除したら終わりだし」
「黒板ね、分かった」
「って、レイン君!他人の話聞いてる!?」
「聞いてないし聞く気もない。他人の好意を無下にするのもどうかと思うけど?」
「………仰る通りで」

黒板消しを手に取って、チョークで書かれた白い文字を消していく。

「…レイン君が人気あるの、分かった気がする」
「…は?なにそれ」
「あれ?自分が女子に人気あるの、もしやお気付きでない…!?」
「別にそんなのあっても要らないし、興味も無いから。…はい、終わり」
「ありがとうレイン君!助かっちゃったー、お礼と言っては何だけど、飴あげるよ」

差し出された飴を受け取ると、彼女はにっこりと笑った。

「それじゃ、またね!」
「ん、日直お疲れ様」

ひらひらと手を振って教室を出て行く彼女に労いの言葉を掛けて、レインも自分の机から参考書を取り出し、図書室に戻った。

* * *

「ご、ごめんレイン…!遅くなっちゃった…!」

麻白がやっと来たのは、午後5時半。部活もとっくに終わっている時間だった。

「…お疲れ様。随分掛かったね」
「いやぁ、最後の問題がどうしても解けなくて…。先生が最後の問題くらい自力で解いて帰れって言われちゃってさー」
「…なるほどね」

えへへ、と笑う麻白。
―――…麻白がそうやっていつも通りに笑うので、しばらくは幼馴染のままで、このままでいい。
そう再認識して、レインもいつも通りに振舞うのだった。


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「今、戻った」

本日の任務を終え、部屋へ戻るとシン…と静寂が支配していた。
いつもなら「お帰りなさい」と焔が嬉しそうに出迎えてくれるのだが。
ぐるりと部屋の中を確認するも、焔の姿はなかった。
…まぁ、どこかに出かけているのかもしれないし戻るのを待つか。
とりあえず自分の部屋に入ろうとドアを開けた時だった。

「………」
「焔…?」

俺のベッドの上で丸まって眠る焔の姿があった。
起こさないよう、静かにベッドに腰掛け焔の寝顔を見つめる。
普段は気配に敏感な彼女だが、最近は俺が近付いても気付かないことが多い。

「眠るのは構わないが、せめて毛布を被ったらどうなんだ…」

そう呟くも焔は恐らく夢の中だ。
焔曰く、ここの部屋は日当たりがいいので昼寝には最適らしい。
寝転がっていたらいつの間にか眠っていたのだろう。
…こうして見るとまるで猫のようだな。

「ん……」

寝顔を見つめていると、焔が身動ぎした。
起こしてしまったかと一瞬焦るも、どうやら彼女はまだ夢の中らしい。
何となく焔の柔らかな頬を軽くつついてみれば、くすぐったそうに身を捩った。

「…無防備にも程があるぞ」

ため息を吐きつつ、焔の長い髪を撫でる。
ここまで触られても気付かないとは珍しいこともあるものだな…。
しばらく髪を撫でていると、今度はほんのり紅く色づいた唇に目が留まる。
じっと見つめていると、無意識のうちに彼女の唇を指でなぞっていた。

「…!俺は一体何を…」

慌てて指を離すも、触れたいという想いが消えるはずもなく、寧ろもっと触れたいとさえ思ってしまう。
…第一、眠っている相手にこのようなことをするのは失礼だろう。
頭ではそう分かっているのに、触れたいという想いを抑えることが出来なかった。
俺はそっと顔を近付け、焔の唇に己の唇を重ねた。

「………ん」

少しして唇を離すと、違和感を覚えたのか焔の瞼がゆっくりと開かれる。
ぼんやりと視線を彷徨わせた後、青い瞳が俺の姿を捉えた。

「あれ…燈…?もう帰ってきてたの…?」
「あ、ああ。さっき戻ってきたところだ」
「…そっかぁ。お帰りなさい~」

うーん、と伸びをして、上体を起こす。
焔はごしごしと目をこすると、俺の方へと向き直った。
…少し、むっとした表情なのは気のせいではないと思う。

「寝てる時じゃなくて、ちゃんと起きてる時にしてよ~」
「…!起きていたのか?」
「うん~…何となーくだけど」
「…そうだったのか」
「ふふ。寝てる時にしてくれるのも嬉しいけど起きてる時にしてほしいな~。ってことでもっかいね~」

そう言うと焔は俺の首に腕を回す。
にっこりと嬉しそうに微笑まれてしまっては、拒否することなど出来るはずもなく。
まぁ、拒否することなど最初から有り得ない話なのだが。
焔の頬に手を添え、軽く抱き寄せると再び唇を重ねた。

「…好きだ」

唇を離し、そう呟けば焔は本当に幸せそうに微笑んでくれた。

テーマ:
「煌!!」

名前を呼ばれ、急いで振り返れば敵の攻撃から私を庇う燎さんの背中。
目の前をゆっくりと真っ赤な鮮血が舞う。
その鮮血が己のものではなく、燎さんのものであると気付くのにさして時間はかからなかった。

「燎さんっ…!」
「はは…、最後の悪あがきだったみたいだね。煌、怪我はないかい?」

敵が消滅するのを確認した燎さんは、苦笑を零しながらこちらを振り返る。
先程、私を庇って攻撃を受けた左腕からは血が流れていた。

「私は大丈夫です。ですが、燎さんが…」
「これくらい平気だよ。さ、任務も済んだ事だし帰還しようか」

何事もなかったかのように穏やかな表情で話す彼をじっと見つめる。
あんなに流血しているのに平気なはずがないことなど一目瞭然だった。
きっと私に心配をかけまいと、平然を装っているに違いない。
…そもそも、私が油断しなければ燎さんが私を庇って怪我をすることなどなかった訳で。

「………ぃ」
「煌…?」
「本当に…ごめんなさい……っ…」

私のせいで大切な燎さんに怪我を負わせてしまった―――…
そう考えると、次々に涙が溢れ、頬を伝っていくのが分かった。
涙を流すことなんて滅多にしなかった私が、すぐに涙を止める術など知る由もなく。
今の情けない表情を見られたくなくて、俯いていると頬にそっと温かな燎さんの右手が添えられた。

「…僕の為に泣いてくれてありがとう」
「………っ」
「でも、僕は煌の泣いている顔より笑ってくれる顔の方が好きかな」

燎さんの細くて長い指先が溢れる涙を優しく拭ってくれる。
それから私の顎に手を添えると、くいっと軽く持ち上げ、親指でそっと唇をなぞる。
ぼやける視界で燎さんを見上げれば、少し困ったような表情で笑っていた。

「折角の可愛い顔が涙でびしょびしょだよ」
「…!」

そう言うと、私の目尻に軽く口づけた。
目尻から唇を離すと、次に髪をかきあげられ、耳にも軽く燎さんの唇が触れる。
突然のことに驚いてしまい、思わずびくりと身体が竦む。
ふ、と笑う気配がして今度は己の唇に燎さんの唇が優しく重ねられた。

「…っ」
「少しは落ち着いたかい?」
「………はい」
「名残惜しいけど、続きは部屋に戻ってからかな。止血しないといけないしね」

そっと離れると、私を安心させるように笑ってくれる。
燎さんの左腕を見れば、先程よりも服に血がじわりと滲んでいて。
思わず表情を歪めた私に、燎さんは苦笑を零し、ぽんっと軽く頭を撫でてくれた。

「そんな顔をしないで。僕だって簡単な治癒くらいは使えるんだから」
「それは…そうですが…」

確かに燎さんが簡単な治癒くらいなら使えるのは知っている。
それでも、大切な人が怪我をしているのだから心配なものは心配で…。
余程、表情に出ていたのか、再び燎さんから苦笑が零れた。

「心配をかけてごめんね。僕は本当に大丈夫だから」
「………はい」
「…そうだな。そんなに心配なら、手当するのを手伝ってくれるかい?」
「はい、勿論です」
「ふふ、ありがとう。煌」

私はこくりと頷くと、そのまま燎さんの元へ近付き。

「…護って下さってありがとうございました」

燎さんの唇に軽く触れるだけのキスをした。
一瞬、燎さんが微かに目を見開いた気もするが、すぐに穏やかな表情で微笑んでくれた。

「はは…これは参ったな」
「…燎さん?」
「ううん、何でもないよ。さ、帰ろうか」
「はい!」

温かな燎さんの手に引かれ、私たちはその場を後にした。

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「楓?この後だけれど……」

楓の部屋を訪ねると、部屋の主は不在だった。
…また、いつもの散歩かしら。
そう呆れつつも、煇は楓を探しに出掛ける事にした。

* * *

「………またこんなところで寝て」

楓を見つけたのは、楓のお気に入りのお昼寝スポットだった。
今の時期は、昼ならば暖かいのだが夕方頃になると吹く風は冷たく、酷く冷え込む。
風邪でも引かれたら堪らないので、煇は楓を起こそうと、肩を揺すった。

「楓、…楓。起きなさいよ、こんなところで寝てたら風邪を引くわよ」

反応は無い。
こんなに寝起きの悪い楓は初めて見る。疲れているのだろうか。
もう少し寝させてやりたいところだが、空を見ればもうすぐ日が落ち始めるところだった。

「…楓ってば」

起きる気配は微塵も無い。これはどうしたものかと、暫し迷った、が。

「………たまには悪戯したって罰は当たらないわよね?」

誰に確認するでもなく、煇は悪戯を仕掛けようと楓の頬に手を伸ばす。
むに、と頬をつまむ。

「ん…、」

さすがに起きたか、と手を離す。
が、しかし。

「楓?」
「………」

………どうやら、まだ眠っているらしい。
煇は、悪戯を続行することにする。
指で唇をそっとなぞる。

(…起きないなら………平気、よね)

そっと、唇にキスをした。
―――…次の瞬間。

ぐいっ

「…っ!?」

腕を引かれて、地面と空がひっくり返る。

「………随分と可愛らしい事をしてくれますね、煇?」

微笑みを浮かべる楓は、これ以上になく嬉しそうだった。

「あ、貴方起きてたの…!?」
「ええ、まあ」
「い、つから…」
「いつからでしたか…。ああ、『またこんなところで~』ってところからですかねぇ」
「つまりそれって最初からじゃない!!ほんっとうに貴方っていい性格して…っ!」

文句を言いかけたところで、「しーっ」と制するように楓の指が自分の唇に当てられた。

「…煇が思いの外可愛らしい悪戯をしてくれたので、嬉しかったですよ?」
「~~~っっ!!」

静かに告げられた楓の言葉に、顔が羞恥で紅く染まる。
それを満足そうに眺めると、楓は煇の唇にそっとキスを落とす。

「俺からのお返しです。…ああ、それと」

楓はさらに笑みを深め、

「…俺も、煇に悪戯しても、いいですよね?」

そう告げて、煇の頬をするりと撫で、首、鎖骨と這わせていく。
煇は憎まれ口を叩くのも忘れて、くすぐったさに身を捩る。

「………好きですよ、煇」

そう言って、再び唇にふわりとキスをした。
…じわりと心の中に溢れて行くその感情を、煇は認めたくなんてない。
―――…けれど。


…今だけ、ならば。

「………私、も」

素直にそう告げると、楓はにっこりと優しく微笑みを浮かべた。


テーマ:
「レインー?居る?…あ、」

ソファに横たわる姿を見て、麻白は思わず声を潜めた。
片手には恐らく先ほどまで読んでいたのだろう、本が握られていた。
麻白は起こさないようにレインに近付くと、そっとその場にしゃがみ込んで、じっくりと寝顔を観察してみる。

(レインの寝顔ってあんまり見た事無いんだよなぁ…わ、意外と睫毛長いんだ…)

そうしてふつふつと悪戯心が湧き上がる。
麻白は、指でふにふにと頬をつついた。

「レインー?こんなところで寝てると風邪引いちゃうよ」

起きる気配はまるでない。よほど疲れていたんだろうか。
もう少し寝かせてあげようと、その場を離れようとして、けれどもう一度振り返って。

(…起きないなら、大丈夫だよね?)

ひらひらとレインの顔の前で手を振るけれど、その瞳が開かれることはなく。
レインの唇に、キスを落とした。
―――…その瞬間。

「え、わ!?」

ぐいっと引き寄せられて、天井と床がひっくり返る。
バサリ、と本が落ちたのが音で分かった。
それは一瞬の出来事で、何が起こったのか理解出来ずに、ただ目の前にある蒼い双眸を見つめる事しか出来なくて。

「…何してんの?」

レインがまるで悪戯が成功した子供のように笑いながら、そう訊ねた。

「な、なにって…ていうかレインいつから起きて…」
「最初から。…麻白が随分可愛い事してるから起きるの勿体なくて」
「な、な…っ」

顔を真っ赤にして口を金魚のようにパクパクさせる麻白に、レインはさらに笑みを深めた。

「れ、レインのいじわる…っ」
「他人の寝込み襲う麻白に言われたくないね」
「お、おそ…っ!?」

ふ、と笑って麻白の瞼にキスを落とした。
びくりと体を竦ませる麻白の唇に、さらにキスを落とす。

「…っ」
「今日はこれくらいで勘弁してあげる」

そう言って離れて行ったレイン。
麻白は暫くその場から動けなくて。

「………いじわる…」

と、ぼそりと呟いた。


テーマ:
「雪美~、ちょっといいかなー」

任務をちょうど終えた頃、焔から通信が入った。
あまりのタイミングの良さに、何かあるのかと尋ねれば。

「今暇だよね?私の部屋に来てくれないかな~」
「構いませんが。報告を済ませたら向かいます」
「うん、待ってるね~」

プツッと音を立てて通信が切れると、雪美は報告を済ますべく、キャンプシップからロビーへと降り立った。

* * *

報告を済ませて、焔の部屋へと向かう。
ドアの前に着くと、ノックして中に居るであろう焔に声を掛ける。

「雪美です。入りますよ」

そう言って、ドアを開けると。

―――…パァン!!

銃声にも似たような乾いた音が聞こえた。
そして目の前には、火が灯ったロウソクが立てられている大きなホールケーキ。
思わず目を見開く。

「誕生日おめでとう、雪美~」
「焔…、誕生日…?………あ、」
「もー、自分の誕生日忘れてたの雪美さん?」
「麻白…それに、燈やレインまで」
「雪美さん、一人が好きそうだから騒がしいのどうかなとは思ったんだけどね。麻白がどうしてもみんなで祝いたいって言って…」
「たまには賑やかだっていいじゃん!」
「はは。…まあ、そう言う事だ」
「…そうですか」

ふ、と微笑む。全く、この人達は本当に…―――
一人で居る事を選んだ自分にとって、彼らはどうしようもなく眩しく映る。
許されるならば、その輪の中に入りたいとさえ思わせるほどに。

「…一人が好きであるというのは、否定はしませんが。…でも、こういうのもたまには悪くはないですね」
「ほんと?それならよかったぁ!」

えへへ、と微笑む麻白を見て、こちらも笑みを返す。

「ありがとう。…感謝します」

こんな賑やかな誕生日も、たまには悪くない。


テーマ:

■Happiness

「そういえば、焔の誕生日はいつなんだ?」

事の発端は燈のこの一言からである。
焔はきょとん、と首を傾げた後、少し間を置いてから、「知らない~」と答えた。

「…知らない?自分の誕生日をか?」
「うん、知らない。…あ、どうせなら燈が決めてもいいよ~」
「俺が決めてもいいものなのか…?」
「うん。燈がくれた誕生日なら大事にするよ~」

ふふ、と微笑む焔。

「とは言われてもな…。焔が誕生日にしたい日は無いのか?」
「うーん、特には無いかなぁ~。…あ、燈と出会った日がいいな~」
「俺と?…だが、正確な日付は分かりかねるな………」
「むぅ…。じゃあ、やっぱり燈が決めていいよ~」
「そうだな…、じゃあ、3月3日はどうだ?」
「んー?ひな祭りの日?」
「ああ。覚えやすいし、いいと思うんだが…」
「うん、じゃあそれで~。ありがとう、燈」
「礼には及ばない。でも、本当に俺が決めてよかったのか?」
「うん、嬉しいよ~。ふふ、燈に誕生日もらっちゃった」

そう言って焔が本当に幸せそうに微笑むので、燈もつられて笑顔を浮かべた。

 

 

■ガラスの花

「………少し、甘えていい?」

そう言えば楓は微かに目を見開く。
けれど、すぐにいつもの優しい笑みを浮かべて「どうぞ」と言ってくれた。
楓の横に座り、そっと肩に凭れ掛かる。

「煇、何か辛いことでもありましたか?」
「………」
「無理に話せとは言いませんが。もし俺で良ければ聞かせてください」

何も言わずに俯いていると、己の右手に楓の温かな左手が重ねられる。

「…貴方の手は温かいわね」
「そうですか?ふふ、そう言っていただけるのは嬉しいですねぇ」
「………楓」
「はい、何ですか?」
「…もう少しこのままでいさせて」
「ええ、勿論ですよ」
「………ありがと」

消え入りそうな声で御礼を言えば、楓は穏やかに微笑んでくれた。

 

 

■視線が合ったら?-レイン君と麻白ちゃんの場合-

レイン「…なに?」
麻白「へ、い、いや何も無いけど…」
レイン「そう。…で、何で顔隠すの?」
麻白「き、気にしないで!」
レイン「…麻白の事だから何かして欲しいのかと思った」
麻白「えっ」
レイン「違うの?」
麻白「ち、違うよっ、そんなんじゃ」
レイン「で、本当は?」
麻白「う~…お膝抱っこして、くれない…かなって……?」
レイン「………」
麻白「ごめんなさい何でもないです!!」
レイン「…別にいいけど」
麻白「えっ…、いいの?」
レイン「ん」
麻白「わーい、レインの膝の上って久しぶり~」
レイン「ああ…昔はよくしてあげてたっけ」
麻白「そうだよー、それでよく本読んでくれたよね!」
レイン「だね。…懐かしい」
麻白「ね!懐かしいよねー」

思い出話に花を咲かせる二人。


■視線が合ったら?-燈さんと焔さんの場合-

燈「………」
焔「んー?どうしたの?」
燈「え?いや、何でもない。気にしないでくれ」
焔「そう?あ、燈ここに座って~」
燈「…?」
焔「こうして…っと。えへへ、お膝抱っこ~」←燈の脚の間にすっぽり収まる
燈「これがしたかったのか?」
焔「うん。たまにはぎゅってしてくれたっていいじゃない~」
燈「たまには、というか毎日のようにくっつかれてる気がするんだが…」
焔「むぅ。別にいいでしょー」
燈「…それもそうだな」←焔の頭の上に軽く顎を乗せる
焔「ふふ。燈にくっつくと落ち着く~」
燈「そうか、それは良かった」
焔「もうちょっとこのままね~」
燈「ああ」

-おまけ-

燈「…焔、また少し痩せたんじゃないか」
焔「え~?そんなことないよ。燈の気のせいじゃない~?」
燈「いや、明らかに細くなっている。ちゃんと食べていなかったのか?」
焔「そんなことないもーん」
燈「本当か?お前は元々細いのに、更に細くなってどうする…」
焔「むぅ…よく分かんないけど、体重減ってたんだもん…」
燈「そうか…まぁ、以前の体重に戻れるよう少しずつ食べる量を増やそう」
焔「………」
燈「ん?どうした?」
焔「燈はぽっちゃりした子が好きなの?」
燈「ぽ、ぽっちゃり…?何故そんなことを聞く?」
焔「だって、いつももっと食べなさいって言うから…」
燈「…ぽっちゃりが好きという訳ではないんだが、ただ焔の身体が心配なだけだ」
焔「そっかぁ…」
燈「ああ。ちゃんと食べられたら存分に甘えていい」
焔「…!頑張るっ」
燈「その意気だ」←焔の頭をぽんぽんと撫でる

幸せオーラ全開の二人。


■視線が合ったら?-燎さんと煌さんの場合-

煌「………」
燎「煌?じっと見つめてどうしたんだい?」
煌「…!い、いえ…何でもありません」
燎「そうかい?それならいいけど」
煌「はい…」
燎「………」
煌「………」
燎「(本当に不器用なんだから…)煌、こっちにおいで」
煌「何でしょうか、燎さ…っ!?」←突然膝の上で横抱きにされる
燎「はは、驚いた顔してるね」
煌「それはそうです…!いきなり…っ」
燎「ごめんね。でも、本当は甘えたかったんじゃないのかい?」
煌「………」
燎「迷惑だとか思わないから、こういう時は素直に言って欲しいな」
煌「…何故、分かったんですか」
燎「うーん、ここ最近悩んでいる様子だったからね。このままだと煌は溜め込む一方だから甘えてもらおうと思って」
煌「………やはり隠し通すのは無理のようですね」
燎「当たり前だよ。そういうことだから今日は嫌でも甘えてもらうよ」
煌「くすっ。燎さん、本当にありがとうございます」
燎「うん。どういたしまして」

甘え下手な煌ちゃんには実力行使な燎さん。


■視線が合ったら?-楓さんと煇さんの場合-

煇「…何よ」
楓「煇、少々こちらに来てくれませんか?」
煇「…?」
楓「少々失礼しますね」←座ったまま煇の腕を引く
煇「え、きゃっ」←楓の方に倒れ込みそうになるのを受け止められる
楓「大丈夫ですか?」
煇「な、何するのよ!?危ないじゃないっ」
楓「いえ、どうしたら煇にもっと甘えて頂けるかなぁと思いまして。ちょっと強行手段に出てみました」
煇「で、何でこの体勢なのよ…?」←楓の膝の上で横抱きにされてる
楓「何となくですかねぇ。で、煇、他に言う事は?」
煇「え?言う事…、今すぐ降ろして」
楓「それは残念ながら聞けませんね。ハズレです」
煇「…じゃあ、………もう少しだけ」
楓「はい」

素直じゃない煇ちゃんの事をよく理解してる楓さん。

 

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