RENT/レント

テーマ:
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
レント デラックス・コレクターズ・エディション

映画で音楽に魅せられ、なぜ和製RENT(つまり劇団四季とかがやらないのかということ)がないのだろうと考えたのですが、あまりに陳腐になりすぎるからだろうと思い直しました。ならば、ブロードウェイ版を観るしかありません。NYに行くのは大変だし、と思っていたらすぐに来日公演が決まり、チケットをとったわけです。考えてみれば、日本でダンス以外の来日公演を観たのは初めて。やっぱり妙に字幕が気になってしまいました。

『RENT』 (来日公演) 於:東京厚生年金会館

ストーリーは至ってシンプルです。映画版よりさらにシンプルに感じました。

簡単に言えば、地方からNYにやってきて、家賃も払えず、自分の生き方を模索する若者たちの話です。 日本のフリーターと違うのは、そこにエイズやゲイ、麻薬中毒というテーマが絡まり、さらに心の根っこで宗教と密接だということです。それでも田舎の母親が心配して頻繁に電話をしてくるのは、万国共通です。


日本人にはやや理解しがたい背景があるにもかかわらず、多くの人を魅了するのは、家族と生まれ故郷から離れ、都会で生きていくことへの苦悩や迷いは、同じ経験をした都市生活者なら身につまされるからではないでしょうか。家賃が払えないなら働けばいいじゃないかと思う人がいるとすれば、それはこのストーリーのテーマとは離れてしまいます。タイトルにもなっているRENTは、家賃であると同時に人生の中の借り物すべてに通じる抵抗であり、妥協であり、許容であると思います。そして地方出身者にとっての都会、ここではNYの街そのものが「RENT」なのでしょう。


まあ、そんなことはさておいても、本当に音楽が素晴らしい。映画では冒頭だった「Seasons of love 」。ステージでは休憩後の冒頭でした。この曲がこのミュージカルのすべてではなく、他の曲もいいですが、ソウルフルな力はやっぱりダントツです。わけもなく涙が出そうになります。


ただ、ライブは音楽を楽しむには最高ですが、ストーリーはややわかりにくい。映画を観てから行って良かったと思います。それと頻繁に拍手を入れる観客のスタイルも私はあまり好きになれません。中島みゆきの夜会だったか、ちょっと記憶が定かではありませんが、拍手のタイミングが最小限で、落ち着いて観ることができました。ああいうマナーが他のミュージカルでも、浸透すれば良いのにと思います。それと東京厚生年金会館。やたら広く、客席そのものは狭い。肩が凝りました。今度こそ、NYで観たいです。多少英語に難があっても、もうストーリーは覚えたので。

AD

遥かなる約束

テーマ:

Yahoo!ニュースで見つけたのですが、この記事にある「遥かなる約束」(阿部寛・黒木瞳主演 フジテレビ11月25日21:00~)の原作は、以前私が観た芝居の原作「クラウディア最後の手紙」(演劇のタイトルは「クラウディアの手紙」)ではないでしょうか?


*Yahoo!ニュース

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061103-00000078-sph-ent


詳しくは、芝居のレビュー(こちら )に書いていますが、すばらしい話でしかも実話なので胸に迫ります。しかし前回の舞台もそうでしたが、今回も少々ミスキャストでは?と心配です。特に映像だけにどんな仕上がりになるのか、楽しみでもあり、不安。(ちなみに舞台は、演技は2人とも悪くなかったのですが、何しろ演じる年代が長すぎる…森光子さんほどではないですが)


でも内容はいいはずなので、観てみようと思います。しかしロシア人女性役は誰がやるのでしょう?まさか黒木瞳?それだけは勘弁してほしいです。それでは『のだめカンタービレ』 の竹中直人になってしまいます。


とりあえず自分が忘れないようにアップしてみました。ちなみにモデルになった方は今もおそらくご存命です。少なくとも私が舞台を見たときにはお元気でした。まったく異なる原作や事実をもとにしているなら、大誤報ですが、同じような話がたくさんあるのだとしたら、それはそれで壮絶な話です。


蜂谷 弥三郎
クラウディア 最後の手紙
AD

24-TWENTY FOUR- seasonⅡ

テーマ:

ちまたでは11月3日から、シーズンⅤのvol.10~12のレンタルスタートです。

たまたま今日TSUTAYAに行ったら、すごい数量が並んでいるにもかかわらず、すべて出払っていました。そしてアメリカでは年明け早々シーズンⅥがスタートするということで、プロモーション映像がインターネットで観られます。それを観ると、仮に英語がわからなくても、誰が健在に生き残っているか、誰が死んじゃったかもしれない…か、少なくとも前者はわかります。

ちなみに私は今頃シーズンⅡのレビューを書こうとしていますが、シーズンⅤのvol.9までは観終わっています。だから、正直どの話がどのシーズンだったか、既にごっちゃになっています。


しかし楽しんで24を観ていられる平和な国「日本」ですが、北朝鮮でつくられた核兵器が外貨稼ぎのために第3国のテロリストに売られるかもしれないなんて、話が実しやかに語られると、24の世界が必ずしも絵空事じゃないような気がして恐ろしくなります。

20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
24 -TWENTY FOUR- トリロジーBOX (初回限定生産)
シーズンⅡはまさに核爆弾テロの話です。
シーズンⅠで妻を失い、傷心のジャック・バウアー(キーファー・サザーランド)のもとに、シーズンⅠで助けたパーマー大統領からSOSの連絡が入るところから、物語が始まります。ロサンゼルス(なぜかいつも狙われるのは、ワシントンでもNYでもなく、LA)のどこかが核の標的になっているというのです。最初は協力を渋り、シーズンⅠで生き残った娘のキムと一緒にロスを離れようとしますが、結局CTUに復帰することに。

まあ、毎度のコトながらストーリーを全部書くのは、バカみたいなので割愛しますが(見たい方はオフィシャルサイトのエピソードガイド を)、私はこのシーズンがいちばん好きですね。キムのストーリーがアナザーストーリー的に構成されていて、家族的なあたたかさを感じられる部分もありましたし…。24はとにかく人がどんどん死んでいき、よほどの中心人物でない限り、あまり共感したり悲しんだりできないのですが、今回の支部長であるジョージ・メイソン(ザンダー・バークレー)の死は衝撃的でした。おそらく24全シーズン観た中で、私が唯一涙したシーンです。


キム(ジャックの娘)のアナザーストーリーは、最初は邪魔だな~と思っていたのですが、殺伐とした話のある意味良い清涼剤になったような気がします。ただ、清涼剤というには、かなりハードな味ですが…。それにしても、キムのまだ10代の女の子と思えない度胸抜群の立ち回りは一体何なのでしょう。荒唐無稽ではありますが、なかなかかっこよくて私は好きですけど。

AD

ペテン師と詐欺師

テーマ:

peten


いきなりおかしなタイトルですが、ミュージカルの話です。

なんといっても主演の2人が楽しみで観にいきましたが、鹿賀丈史がいまいち滑舌が悪く聞こえたのが残念。もしかして席が悪すぎたのかもしれないけど、全体にちょっと台詞が聞こえにくかった。そのなかでもやはり市村さんは安定感が違います。コミカルでちょっと情けない男の役ははまり役だと思います。

『ペテン師と詐欺師』  宮田慶子演出/鹿賀丈史 市村正親主演 於:天王洲銀河劇場

この物語は南仏の高級リゾート地を舞台に、秘書までついている優雅なイギリス人詐欺師ローレンス(鹿賀丈史)と、たまたま出会ったアメリカ人ペテン師フレディ(市村正親)のお話。ローレンスが華麗に女性をだますところをみて憧れたフレディが弟子入りをするあたりから物語は始まる。最初は追い出したくて仕方がないローレンスだが、フレディの才能と特異なキャラに関心を持った彼は、フレディを受け入れカモを探す。

新たなカモとして目をつけた純情可憐な旅行者クリスティーン(奥菜恵)をネタに、縄張り争いをかけて一世一代の大勝負に出る二人。負けたほうが街を出て行かなければなければならない。ところがあまりに優しいクリスティーンに二人して惚れてしまうから訳がわからなくなる。でも結局本当の詐欺師は…というお話。

内容は単純なのだけど、ウイットに富んでいてコメディとしては秀逸。ゲラゲラ笑う感じではない、上品でオシャレなブロードウェイミュージカルです。奥菜恵の甲高すぎる声が役作りなのかも知れないが、ちょっと癇に障ったけれど、全体に完全な商業演劇にしては芸達者ぞろい。愛華みれ が舞台映えするのは当然としても、鶴見辰吾が意外とうまく、舞台でも堂々としていたのが新鮮な感じでした。実際には結構舞台に出ているみたいですね。私は初めて見ましたけど。最初鶴見辰吾とは気づかず、舞台俳優だと思っていました。ストーリーもありがちではあるのだけど、最後までオチがわかるようでわからない、微妙な線で引っ張っていたのは、きっと構成力と人物描写のうまさだと思います。

2008年に再演決定だそう。決定が早すぎるのは、まあご愛嬌ということで。

senchi


24―TWENTY FOUR― の人気に便乗したのでしょうが、映画のプライドみたいなものはなかったのでしょうか?もちろん時間的なものも含め、制約もあるでしょうが、映画の特性を生かした迫力や深みを出すことは可能だったと思うのですが、あのプロットではテレビでもOK。むしろ日本的にいうと、2時間ドラマの世界観でした。


『ザ・センチネル/陰謀の星条旗』  クラーク・ジョンソン監督 マイケル・ダグラス/キーファー・サザーランド主演


マイケル・ダグラス演じるギャリソンは、ベテランのシークレットサービスの護衛官。レーガン大統領を暗殺者から救った実績がある。そこに再び現在の大統領とその家族に対する暗殺計画が持ち上がる。その際、ギャリソンが犯人たちの罠にはまり、ギャリソン自身が内通者として疑われることになる。ギャリソンを追い詰めていくのが、トップ調査員・ブレキンリッジ役のキーファー・サザーランド。腕利きぶりは、「24」のジャック・バウアーに近いものがあるが、こっちの方がスマートな感じだ。ペアを組む調査員もセクシーな女性、エヴァ・ロンゴリア演じるジル・マリンだ。アメリカのTVドラマファンの私は、エヴァ・ロンゴリアを見て「あっ、ガブリエルがこんなところに出ている!」と思ってしまった。ガブリエルとは、彼女の「デスパレートな妻たち」 の役名だ。


ギャリソンは逮捕直前に逃亡し、本当の犯人探しに奔走するわけだが、このあたりも「24」の一部分とよく似たストーリー展開だ。ただ、その後の犯人の追い詰め方も単純で軽くて、そもそも真犯人(内通者)もあまり事前に描かれていないものだから、真実が明らかになっても、観ている者には誰それ?という感じ。犯人の大統領暗殺の意図や大義もはっきりしない。犯人像も描ききれていないからだ。内通者が首謀者に家族を殺すと脅されるのも、「24」での定番。


でもそんなことよりつまらないのは、ギャリソンが罠にはまったきっかけ。護衛官がファーストレディと不倫なんて非現実的すぎるし、同情の余地もない。だからいくらギャリソンが追い詰められても、「24」でジャックが追い詰められている時ほど、気持ちが入っていかない。逮捕されてもしょうがないでしょ、という感じになる。実際にラストで退職して見送られている様子もかっこよくないし、マイケル・ダグラスも仕事を選んだ方が良いような…。この映画でも、キーファー・サザーランドの方が良い役だったと思う。


キーファー・サザーランドファンなら、緊迫感はまったくないけど、安心して観られる映画だ。ジャックが映画で少しお休みして、気楽な任務についている感じ。ハリウッド映画のプロデューサーにお願いしたい。2時間で「24」並みの緊張感と深みのある作品を使ってほしい。「24」は長すぎて、寝不足になるから。

14才の母

テーマ:

14sai


日本テレビで10月11日(水)22:00からスタートした、志田未来主演の「14才の母」 を観ました。


今クールに目立つ社会派ドラマの雄は、これでしょう。「女王の教室」 のある種の成功がもとになっているのでしょう。同じ子役を主演に、今度は14才で子どもを産むというテーマへの挑戦です。臭いものに蓋をするように耳障りのよいテーマのドラマが多い中、この勇気と挑戦は歓迎です。どのように描かれるのかは今後ですが、第1回目はごく普通の14才の中学生・未希(志田未来)が1才年上の智志(三浦春馬)との関係を持ち、妊娠の兆候があらわれるまでが描かれています。ここまでで判断すると、いまひとつ引かれるものはありません。未希と智志が不良に絡まれるのが二人の関係のきっかけというのも陳腐だし、そもそも関係を持った場所、あそこはどこ?という唐突感。未希の性格も、「女王の教室」の神田さんそのままで、あまり成長していません。子役の演技の幅に配慮したのでしょうが、そう考えると、杉田かおる (←古い)は天才だったのだな…と思います。


それはそうと志田未来は、同世代の演技派といわれる子のなかでは、非常に正統派イメージの子役だと思うのですが、逆にその子どもっぽさが特異で目立つということに驚きます。彼女の無邪気で、罪のなさそうな感じが、おそらく今後の展開の中で生きてくるのだと思います。


以下は直接ドラマとは関係ありませんが…。

それにしても「母になるということ」「母性」がこれほど大きなテーマになる現代社会を、歴史の中で予想したでしょうか。本来、子どもを産むという根源的なことに、これほど社会が悩み、また女性を悩ませる社会は、必ずしも健全とは言えません。もちろん例えば江戸時代、女が子どもを産まない、産めないということは、その女性個人にとっては今では想像もつかない苦悩だったでしょう。そういう意味では自由になった社会で、本当はもっと自由に母性を考えればよいのに、古い規範や女としての本能や社会の目に女たちは縛られているのです。


14才で子どもをつくらないに越したことはない。その共通認識には賛成です。でもできてしまった以上、安全に産み、そして母親の家族を含めて力を合わせて育てられるのであれば、何も中絶する必要はないと思います。学校には戻ればいいし、経済的に許すなら高校にも大学にも通えば良いのです。子どもを育てながら働く母親は多いのですから、まだ若い自分の両親の支援があれば子育ての傍ら学業を続けることはできるはずです。いずれ自分の両親が年老いた時、義務教育も終えていない自分では改めて働こうとしても社会はなかなか受け入れてくれません。


しかしそれには14才の母のその両親が精神的に成長した生活力、人間力のある大人でなければなりません。このドラマもそういった点も重要なテーマになっているような気がします。第1回で描かれていた両親(生瀬勝久・田中美佐子)は、必ずしも大人とはいえません。今の両親ってこんな感じだろうな、と思える両親です。子どもをあまり叱らない、自分自身にもまだまだ生臭さや自信のなさがある、普通の両親像です。ここにはとてもリアリティがありました。

僕の歩く道

テーマ:

bokuno


フジテレビで10月10日(火)22:00からスタートした、草彅剛主演のドラマ「僕の歩く道」 を観ました。


今クールは社会派ドラマ目白押しです。軽薄な連ドラへの視聴者のマンネリ感がようやく製作者やテレビ局に伝わったのでしょうか。このドラマもある種これまでタレントが主演するようなテレビドラマではタブーだったテーマに果敢に取り組んでいます。私はそれだけでも十分に評価されることのように思います。


人はさまざまな事情や病気を抱えて生きているのに、語ることや表に出すことが悪いことのように目くじらを立てる、事なかれ主義のテレビ界、それが象徴する日本の社会のそうした側面は好きではありませんでした。でも最近ではようやく心の病や今回の自閉症のような誤解を招きやすいテーマにも取り組むようになりました。私は身内がそうした悩みを持っているので、こういうことに敏感ですが、まったく悪いこととは思いません。


このドラマも、まだ初回だけなので内容の評価はできませんが、語り口は悪くない。そして草彅さんの演技もなかなか良いと感じました。人気タレントがやると美しくまとまりすぎて現実感がないのですが、彼の場合、どうもそうならないのは役者としては良いことでしょう。ドラマでは草彅さん演じる自閉症の31歳の青年・大竹輝明が幼なじみの獣医の女性・都古(香里奈)の紹介で動物園に就職します。そこで起こるさまざまな出来事が核となり、今後周辺のドラマも描かれるということでしょう。今のところ、特別意地悪な人も、特別善人も出てこない。そういう意味ではリアリティもあるように思います。あえて言えば、都古の存在がドラマ的ファンタジーのように思います。この人の役なくしては物語は成立しないのですが、ちょっと演技が下手すぎると思うのは私だけでしょうか?


全体としては丁寧に作られていると思います。落ち着いて観られるドラマです。来週以降が楽しみです。

かもめ食堂

テーマ:
バップ
かもめ食堂

DVDをリリースしていたので、さっそく借りてみました。


『かもめ食堂』  荻上直子監督・脚本 小林聡美/片桐はいり/もたいまさこ主演


最近地味だけど、しみじみとした良い作品をつくる若い女性監督が増えたような気がします。でも私は個人的にはここまでしみじみしていると、ちょっぴり退屈してしまいましたが…。私は「ゆれる」 の西川美和さんがいちばん好きです。


それはそうとして、この作品。それなりに楽しめました。何も特別な事件は起こらないけど、なんとなく目を離せない。何だか余韻ばかりが残って、結局何だったのだろうというのはあるけれど、ある程度歳を重ねた女性なら共感できるかもしれません。


主人公サチエ(小林聡美)は、フィンランドのヘルシンキで「かもめ食堂」という名の食堂をやっています。経緯は不明です。はじめたばかりなのか、なかなかお客さんが来ません。そんなある日、ひょんなことから出会った日本人旅行者ミドリ(片桐はいり)を家に宿泊させます。ミドリはツアー客とかそういうのではなく、世界地図を広げて指をさしたところがフィンランドだったので、来てしまったらしいです。私もやってみたいな…と本気で思いました。海の上とか、山の頂上を指しそうですけど。もう一人のマサコ(もたいまさこ)は、随分遅れてひょっこりやってきます。彼女は世話をしていた親を亡くしたばかりのようで、いちばん理由がはっきりしています。でも不思議ちゃんには違いない。そんな不思議ちゃん3人が切り盛りする「かもめ食堂」は、徐々にお客さんが入り始めて、最終的には結構繁盛します。だいたいそんな話で、明確な結論のようなものはなくて終わります。誰も日本に帰りません。


もちろん途中でお客さんや、前のオーナーとのかかわりやちょっとした事件は起こります。すぐに解決する、日常のなかのちょっとした事件です。フィンランドの人も日本人のように悩んでいるんだねと当たり前のことをミドリが言うシーンがありますが、本当に当たり前だけどちょっとしみじみしました。


とにかくサチエのキャラクターが素敵です。凛として美しく、あたたかく、そして自立している。その佇まいとヘルシンキの街並みがマッチしていて、そこがこの映画の醍醐味だと思います。ある意味、うらやましい人生のような気もします。もちろん彼女のような強さがなければ成り立たない人生だと思いますが…。


ストーリーを追うのではなく、たまに観てみたい。途中からでも途中で終わっても、あの雰囲気を観たい、そんな作品でした。

moshimo


絶対観た方が良いとか、観て本当に良かったな…と思うには、やや小品なのと、テーマが平凡なのが残念。あと、ラストのオチも正直いただけない感じ。全体としてはおもしろかったのだけど。


『もしも昨日が選べたら』  フランク・コラチ監督 アダム・サンドラー主演


ストーリーは、仕事優先の2児の父マイケル(アダム・サンドラー)がある日深夜のホームセンターで、怪しげな万能リモコンを手に入れる。そのリモコンは、電化製品だけでなく、他人や動物、自分の人生も操作できる。人生は出世し、金とある程度の自由を手にすることが幸せへの近道であり、家族も幸せにできると思い、生き急いでいる。だからそのリモコンを手に入れたマイケルは、深い考えなしにわずらわしい日常の細々としたことを早送りしてしまう。風邪をひいた時や、親族での食事会など、最初は短い時間のことだったが、徐々に仕事の成功や出世までの時間を早送りする。ところがこのリモコンは、巻き戻しはできないうえ、学習能力に優れていて、同じシチュエーションになると自動的に早送りしてしまう。例えばさらに風邪をひくと、また時間が飛んでしまう。だから時間が猛スピードで進んでいく。


ただ、それはあくまでマイケルだけに起こっていることで、他の人は普通の人生のスピードを送っている。だからマイケルの知らないことが勝手に起こっている。早送り中はマイケル自身も自動操縦で動いている。


結局は人生をおろそかに、人間関係は希薄に冷たくなり、自制心はなくなり、やがて家庭は壊れ、健康を害する。父親を冷たく突き放したまま、喪ってしまう。


テーマは明確だ。家族との時間、ふれあい、慈しみの大切さ。ムダな時間、わずらわしいことも含めて人生には濃密さが必要だということ。そして健康であることの価値、健康を守ることの責任。それは本当にストレートに伝わってくる。ただ、ちょっと主人公のキャラクター設定が子どもっぽすぎて、気持ちが入り込めない。後はラストのオチで気がそがれる。それでも概ね気軽にみられていい作品だと思うが、DVDで観ても良かったかなと思う。

名もなき毒

テーマ:
宮部 みゆき
名もなき毒

宮部みゆきさん久々の現代ミステリーの刊行でよく売れているよう。


さすがの筆力と安定感は、いまの日本のミステリー作家のトップクラスには違いない。ちょっとどこかで読んだような印象があったのは、おそらく狂言回しとなる主人公(財閥のお嬢様をもらったけれど、なぜか役職にすらついていない社内報編集者)が何度か出ているからだと思う。


今回の作品は、無差別毒殺事件に端を発し、日常生活に転がっている社会の毒をテーマにストーリー展開したものだ。その毒の多くは、人間の心の中にある毒だが、土壌汚染の話もエッセンスとして交えられている。単なる謎解きではなく、人間の深層心理に迫った社会派ミステリーになっている。


おもしろくて一気に最後まで読んだので、基本的には批判する気持ちはないのだけど、人間描写に関してはもう少し優しさや救いがあっても良いのではないかと思う。特にトラブルを起こす女性アシスタントの描き方、犯人の描き方は、ちょっと気持ち悪くなってくる。確かに不幸だから、理由があるから、こういうことをするようになったという背景を描いていて、そういう意味では救いがないというのはちょっと違うと思うが、何だか同情ができない。つまり人間が弱すぎる。その弱い人間が反動で凶行に転じるというのが私の気持ちの中でうまくつながらない。それは自分に強さが残っているからかもしれないけれど…。


犯人と被害者の間に本当の人間関係や憎しみの伴わない犯罪は怖い。その怖さを感じたければ、この作品は秀逸だと思う。ただ、エンターテインメントとしては暗さ、後味の悪さも少し残ってしまう。これはもはや好き嫌いの範疇かもしれないが、私はもう少し作品に温かみがほしい気がする。もしかしたらそう感じる根っこは、この変な境遇の主人公にあるのかもしれない。私は彼に人間味を感じない。そもそも事件にかかわる必然性が希薄すぎる。この人を素人探偵として、シリーズ化しないほうが良いと思う。