uragiri
ずっと更新していなかったのは、忙しくてずっと劇場に行っていなかったからです。観たい映画は数あれど、DVDになるのを待とうといくつか出かけることを諦めた作品もありますが、この映画『あるいは裏切りという名の犬』だけは観たい!と大晦日の午前中の上映に出かけました。それでも満席。私は少しだけ早く出かけたので、どうにか整理券をGETしました。なぜこんな良い映画が単館なのでしょう。東京で唯一というだけでなく、日本中で銀座テアトルシネマだけみたいです(後日他の地域でも上映予定あり)。でも何とか観られ、今年のシネマライフを締めくくるには大満足な作品に出会えました。珍しく邦題まで洒落ています。


『あるいは裏切りという名の犬』  オリヴィエ・マルシャル監督 ダニエル・オートゥイユ/ジェラール・ドパルデュー主演


実話をもとにしているらしいのです。多少脚色しているにしても、こんな実話があるなんてすごい。そしてフランスの警察ってこんなにカッコよくて無茶苦茶なのでしょうか?ラスト近くにはドレスアップしてパーティを催すシーンまであります。冒頭ではエディという刑事の送別会で、プレゼントに警視庁のプレートを強奪したり、店をぐちゃぐちゃにするシーンも出てきます。あり得ません。


まあ、それはともかくストーリーと人物描写は秀逸です。何よりも中年男たちがカッコイイ。やっぱり映画は登場人物がカッコよくなくてはダメですね。


パリの警視庁のレオ(ダニエル・オートゥイユ)は、現場主義のベテラン警視。そんな彼も彼を目にかける長官の出世により、次期長官が目前に迫る。けれどもあまり管理職には関心がない。一方、長年のレオのライバル・クラン(ジェラール・ドパルデュー)は、出世欲が旺盛で何とか認められようと模索する。そんな折、パリの警視庁の最大の課題は、連続現金輸送車強奪犯の検挙だ。この犯人を検挙すれば出世できるチャンスがあるが、この事件の指揮を長官は、レオに命じる。どうしても自らの手で検挙したいクランは、ゴリ押しでねじ込んでレオたちとともに現場に向かう。そこでクランはレオの指揮に逆らい、勇み足をしたことで、レオの親友であるエディが犯人に撃たれ死んでしまう。この件をきっかけに二人の争いは激化…。最初は追い詰められていたクランだが、最終的にはレオの決定的な弱みをつかみ、立場は完全に逆転する。


レオが主演、クランが悪役的な位置づけだけれども、必ずしもそんな浅はかな話ではありません。クランがレオに決定的なダメージを与えた密告は事実であり、道義的に責められるものではないはず。けれども同僚たちに絶大な人望があるレオとは対照的に、まったく人望がないクランは、結果的に精神的に追い詰められ、権力を振りかざすことでしか満たされない。そしてラストでは…。クランが必ずしも悪役というわけではないところがこの作品の肝だと思います。


でもこの作品が完璧かというと、そうでもない部分もあります。2時間弱に凝縮されすぎて、人間関係の隅々がわかりづらい。特に冒頭は内容を頭で整理するまで時間がかかりました。ラストもやや説明不足で納得しにくい。そもそもレオを尾行していて、逆につかまり、トランクに載せられた2人の刑事はどうなったのでしょうか?なぜ真っ先に疑われるはずのレオは無罪放免なのでしょう?


でもまあ、全体としてはシブくて深い大人の映画。ハリウッドでもリメイクされるそう。ハリウッドは自力で作品を創りだせなくなったのでしょうか?この映画の深みはフランス映画でこそ、成立するような気がしてならないのですが…。

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