wagahai

昼の連ドラを多分初めて観た。

真珠夫人牡丹と薔薇 ですら、観たのは特別編のみ(真珠夫人は観ていない)。

といっても、さすがに毎日観ているわけではない。

でも時々観ても十分楽しめる。

宮藤官九郎は天才だと、このドラマを観て初めて思った。


『吾輩は主婦である』  TBS 月曜~金曜 13時00分~


普通の専業主婦(←実は全然普通じゃないが)みどり(斉藤由貴)は、学生時代から付き合っていた、矢名たかし(及川光博)と結婚し、息子と娘をもうけている。もともと二人は大学でミュージカル研究会に所属していたという設定。だからドラマでも時々踊って歌い出すが、一応の整合性がとれている。つまりミュージカルドラマ特有の唐突感がない…いや、やっぱりある。


家族はたかしが勤めていたレコード会社を辞めたことで、生活が一変。たかしの実家がある下町の古本屋に身を寄せることになる。実家には父は既になく、母親が1人で暮らす。この母親がまたユニークで、クドカンワールドな人物設定。しかも竹下景子が演じている。


なぜかたかしは郵便局員になり、その初任給があまりに安いことにショックを受けたみどりに千円札の夏目漱石が乗り移るという、くだらないっちゃぁ、くだらない設定だが、何ともテンポのいいホームドラマで楽しい。昼ドラ=ドロドロのイメージ(←私だけの勝手なイメージか?)はなく、登場人物は今のところみんなクセは強いが良い人ばかり。


クドカンワールドといっても、ちゃんと昼の帯ドラマであることを意識して、主婦向けにつくっているので、他の作品とまったく同じようなものを求めて観るとがっかりするかも。でも逆にその辺が彼は天才だと思う。誰が観ているかをちゃんと意識して、それでも自分の世界観を出しているところがすごい。役者の人たちも生き生きしている。もしかしたらヒットはしないかもしれないけれど、よくできたドラマだと私は思う。


ちなみに空気感は「マンハッタンラブストーリー」 に似ていなくもないが、内容はこっちの方がいい。マンハッタンラブストーリーは私はあまり好きではなかったので。

宮藤 官九郎
マンハッタンラブストーリー
宮藤 官九郎
ピンポン・シナリオブック
別冊宝島1006号「宮藤官九郎 全仕事」
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humanity

いい歳をした大人たちが舞台の上で遊んでいるなぁ…と

思えた瞬間に、この芝居を観に来て良かったと思った。

そして自分自身もこの人たちの年齢に

近づいてきていることに思いを巡らせ、少し切なくなった。

他の舞台を観ても、絶対に持ち得ない感触を持った。


『HUMANITY~モモタロウと愉快な仲間たち』 (地球ゴージャス・プロデュース)  岸谷五朗作・演出/唐沢寿明 寺脇康文 岸谷五朗主演 於:新宿コマ劇場


良くも悪くも私は大抵板の上での芝居を本業にしている人のステージを観ることが多い。加藤健一事務所しかり、劇団四季しかり、テレビ俳優も出てくるが、東宝ミュージカルだってある種そうだろう。それらの芝居はなるべく観客を現実世界に引き戻さないようにと演出するから、アンコールで何人もの役者がペラペラ台詞以外のことを喋ったりしない。でも今日の芝居は違った。アンコールで、唐沢、寺脇、岸谷、高橋由美子、戸田恵子が代わる代わるマイクを持った。テレビや映画でも大活躍の俳優陣のトークが聞けるのだから、ある意味ファンへの大サービス。


肝心の内容にもこういう緩い感じがつきまとう。正直第一幕は観ていられなかった。間延びにして退屈で、オシャレでギャグが上品な吉本新喜劇と言えば、ちょっと吉本に失礼かもしれない。ネタともオチともつかぬ、笑いどころ(でも大爆笑にはならない)が散りばめられているが、メリハリに欠ける。舞台装置は立派だが、現実世界(会社内)の描写も、第二の世界(鬼退治)の描写も、何だか安っぽい。役者たちも最後のトークで言っていたが、岸谷五朗が登場するまでがやたら長く、冗長な感じがした。


ところが第二幕はなかなか良かった。本格的に鬼退治に向かうシチュエーションだ。この物語が何を言わんとしているのかも明確に出てくる。


そしてこのあたりから、冒頭に書いたように40歳を超えた男たち(主演3人)が生き生きとしてくる。芝居をしているというより、大きな舞台の上で遊んでいるようにも見える。何とも羨ましくて、生身の彼らが素敵に思えて、ようやくいたずらに派手派手しいこのステージに引き込まれた感じがした。


それと脇で支える戸田恵子さんは、やっぱり魅力的。彼女は映画やテレビだけでなく、舞台に出演しているのも何度か観ているが、特別オーラがあるわけでもないのに、独特の雰囲気を持つ不思議な存在。


そういうわけで、総合的にはまあ損はしなかったという感じだけど、物語の内容のわりにあきらかに約2時間半(幕間除く)は長すぎる。最近舞台でも幕間なしの2時間という映画並みのものも増えたけれど、今回の作品ならそれで十分。それくらいに縮めた方が凝縮した内容が楽しめたと思う。

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matuko

不幸って何?

女の子なら誰だって、お姫様みたいな人生に憧れる。

でも現実にはソープ嬢からヒモを殺して刑務所に…。

挙句には荒川河川敷に無残な姿で発見される。


人間の価値って、人に何をしてもらったかってことではなくて

人に何をしてあげたかってことだよね?


『嫌われ松子の一生』  中島哲也監督 中谷美紀/瑛太主演


「下妻物語」を観ていないので、この作品が中島哲也監督作品を観た最初。この人の創る映像世界の独特さは、さすがに引き込まれるものがあったし、音楽の使い方もうまいと思う。よくぞ、ここまでというキャスティングもすごい。特に作家志望の八女川のクドカンに驚き。でも松子の甥役瑛太の彼女役柴咲コウはいらないのでは?中谷美紀と似ているので、ちょっと混乱…。


まあ、それはともかく、でも、それだけで映画って成立するのだろうか?


単なる私見だけど、私は映画にある物語性や、主人公、登場人物の人間的魅力、共感性を重視する。つまり極論すれば、主人公は誰がやっても、ある程度その人間性に納得できなければならないと思う。もちろんミスキャストじゃ、しょうがないのだけど。


でも今回、中谷美紀以外の誰かがやっても、この主人公に納得できただろうか。松子の人生を理解し、魅力的に思えただろうか?別に私が優等生で、ヒモを殺して刑務所に行くことや、同棲を何度も繰り返すことに眉をひそめているわけではない。1人より2人がいいっていう心情もわかる。でも松子が人に何かをしてあげたとはまったく思えないし、松子の弟(香川照之)が言うように、家族の心を傷つけただけという気もしないではない。松子の故郷への思いや、既に家族を失ってから家族を思うという重みもわかるので、そこは唯一の救いだけれど…。あと松子の死に方もどうにかならないのだろうか?アレじゃ、それこそ救いがない。


最初に結末があって、あとはテンポをつけて松子の一生を最初からたどっていく感じ(現在描写も折々に出てくるが)なので、同時性のなかでの共感もできない。回想は所詮終わったこと。個々の節目の描写も弱い。映画というより、よくできたプロモーションビデオという印象だった。


ちなみに笑いのツボは、私的には結構好き。爆笑はできないけれど、シニカルな笑いがセンシティブ。つまり一言で括れば、全体イメージはいいけど、物語と人物描写がいまいちで残念だった。

山田 宗樹
嫌われ松子の一生 (上)
山田 宗樹
嫌われ松子の一生 (下)
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nairobi

私がこの映画を観て感じたのは、

どこの国に生まれても、いつの時代に生を享けても、

人は無力だということです。

もし私の命の値段が

アフリカの貧しい子どもたちの命より高いとしたら

それはただ、この国が戦争をしていない時代に、

たまたま偶然生を享けた、その運の良さだけです。

それでも豊かな国に生まれた人が、真に豊かに生きるためには、

強く優しい意志力と、人を愛する力が必要だと思います。


『ナイロビの蜂』  フェルナンド・メイレレス監督 レイフ・ファインズ/レイチェル・ワイズ主演


世の中、ダ・ヴィンチ・コード で沸いている今日、周回遅れで「ナイロビの蜂」を観に行った。でも良かった。ゆったりとした映画館で、こんなに良い映画に出会えて…。


何よりもロケで映像を切り取ったアフリカの光景が圧巻。圧倒的に美しいのだが、軽々しく美しいとは言えない、厳しく哀しい現実がただ雄大なだけの景色からも伝わってきて、本当に感動した。


英国人外交官と人道的活動家の愛は、確かに切実で哀しいのだが、涙を流すまでは私は到達しなかった。出会いから結ばれるまでが唐突過ぎる気がして、最初はもしかしたらちょっとエキセントリックな活動家のテッサがアフリカに行くために、人がよく気が弱い外交官のジャスティンを誘惑したように見えなくもないのだ。テッサのジャスティンへの愛や、テッサの背景が描ききれていなかったのが本当に残念。あと、テッサの設定が若すぎて(亡くなった時点で24歳)、彼女自身の人生に深みを感じない(感じるエピソードもないし)、イノセントさだけが見えて、逆にジャスティンに同情してしまう。


そうしたことを超えて、ある部分フィクションでありながら、事実、現実に基づいた強烈なメッセージを含んでいて、また、それを裏打ちするアフリカのロケーションが素晴らしい。


実は私の友人がこの映画で描かれていた、ある国に仕事で行っていたのだが、ほんの数ヶ月で疲れきって帰ってきた。数ヶ月ですべてを悟ったようなことを言う彼女を正直ちょっぴりあきれて見ていた部分もある。他にも人道的支援でアフリカに根付き、結婚し、子どもまでもうけている日本人女性を知っているだけに、その気持ちが強かったのだが、日本にいながらそんなことを思うこと自体が不遜だな…と、ちょっと反省。


私たちが住んでいる国は、安全だけれど、決して美しくはない。


この映画、テーマの重さのわりに、ストーリーは非常にわかりやすい。原作の力も大きい。

ジョン ル・カレ, John Le Carr´e, 加賀山 卓朗
ナイロビの蜂〈上〉
ジョン ル・カレ, John Le Carr´e, 加賀山 卓朗
ナイロビの蜂〈下〉

ashita

確実なことは、人生には必ず終わりが来るということです。

人はいつか必ず老いていく。

人間は生まれてから十数年間を除いては、

今日から明日へと衰え続けていくものなのです。


『明日の記憶』  堤 幸彦監督 渡辺 謙/樋口可南子主演


ちょっと前は観たい映画があまりなかったのに、今は目白押し。

「ナイロビの蜂」「RENT」、そしてまもなく始まる「ダ・ヴィンチ・コード」。他にも小粒でも良い映画はたくさんありそう。


その中でも、この映画は特別の思い入れがあった。詳しくは書けないけれど、身近にちょっと近いことがあったので。それだけではなく、祖母もアルツハイマーだった。


でも事実を知っていると、フィクションの嘘っぽさが気になるもの。でもこの映画は素晴らしかった。


もちろんまったく嘘っぽさ、映画ならではのファンタジックな部分がなかったわけではない。いや、むしろそういう部分があったからこそ、ホッとできたのかもしれない。特にラストは良かった。本当は哀しいことなのに、未来への希望を感じた。また、背景も本当に美しかった。設定は奥多摩だが、撮影もそうなのだろうか。そうだとすれば、東京近郊にこんなに美しいところがあるのね…。


前評判や紹介されている通り、この映画の軸は夫婦愛だ。でも私にとってはそれと同じくらい、会社の中の描写が良かった。周りの人の冷たすぎず、温かすぎない、クールさが何ともリアリティがあって、同じ働く者として胸にずしりと来た。さりげないシーンだけど、局長が「娘がいて良かったな」という台詞、退職の日に一緒に仕事をしてきた人が送りに来るのだが、そのなかでわりと世代が近いクリエイティブディレクターとだけ肩を抱き合うシーンが、人と人との微妙な距離感が細やかに描かれていて、演出とシナリオの上手さが際立っていた。クライアントの課長(香川照之)の最後の電話もうんと優しかったり、佐伯(渡辺謙)を徹底的に慮ったりしているわけではないのだが、その加減が味があってイイ。


でもここまできめ細かい描写をしているのに、極端に娘夫婦の描写がおざなりなのが不思議な感じだった。婿はともかく、娘の父親の病気に対するリアクションがまるでない。確かに人物描写の対象を増やしすぎると、2時間の中で視点が分散してしまい良くないが、病気に関連するたったの一つの台詞もないというのは不自然ではないかと思った。妻の友人役の渡辺えり子や陶芸教室の先生(木梨憲武)までしっかり描かれていたのに…。若い2人は演技レベルが違いすぎて描けなかったのか?


まあ、そんな細かいことはともかく、重いテーマを重くなりすぎず、かといってキレイごとだけで終わらせずに2時間で描き切った堤監督はすごい。「ケイゾク」「トリック」とか好きだったけど、この映画の監督をすると聞いて「えっ!」と思ったのだけど、いい意味で裏切ってくれた。かといって、持ち味がまったく出せていないわけではなく、やっぱり堤監督という描写や演出もところどころに見られる。


そして何よりも渡辺謙の演技が素晴らしい。やはり大病を経験した人の強さだろうか…

荻原 浩
明日の記憶

aria

その聖なる日、銃声が止んだ

第一次大戦下、雪のクリスマス・イブ。
フランス北部の前線各地で起こった出来事。
それは、フランス軍、スコットランド軍、ドイツ軍の兵士による
「クリスマス休戦」という一夜限りの友好行為だった。


『戦場のアリア』  クリスチャン・カリオン監督 ダイアン・クルーガー/ギヨーム・カネ主演


第一次大戦下に起こった実話をもとにした作品。

これが実話でなければ、面白味のないファンタジーになってしまっていたかもしれない。でも事実であるがゆえに、その重みが染み入るような作品になっていた。

正直前半は退屈だった。前半だけでなく、全編を通して、劇的にドラマティックな展開はない。

主役のソプラノ歌手アナ・ソレンセンが戦場に行ったのも、兵士たちを癒すためや何か高邁な目的があったわけではなく、テノール歌手である夫と会うため。そうしたことも含めて、登場人物すべてがある意味普通の人たちだ。故郷に家族がいて、愛情が深くて、本当は戦争などしたくないのではないかと思わせるような感じで…。だからこそ、起こり得た出来事だったのだろうと思う。

胸が震えるような感動や、涙を流すことを求めて、観に行くとちょっと拍子抜けするかもしれない。

舞台が戦時中であり、戦争のシーンも出てくるが、全体としては落ち着いた美しい映画だ。強烈な悪人も、聖人君子のような善人も出てこない。これが真実の持つ重みだと思う。

もう一つ、興味深かったのは、これが距離的には近いが、言語がそれぞれ違う国同士の話であること。それぞれ話す言葉が違うのに、心理的距離感がそれほど大きくない、敵同士の言葉のやりとりがおもしろい。日本が振り返り描く日本の戦争とは明らかに違う世界観がある。

GWの映画はいまいちだな~と思っていたが、これはおススメ。でも上映している映画館が少ないのが残念。恵比寿ガーデンシネマに1時間前に行って、やっと整理番号100番くらいだった。休み中に行く場合は、お早めに。