この映画はほとんど日本のメディアはとり上げなかった。特にテレビは…。早い話、スポンサー配慮ということらしいが、それってある意味この映画を肯定していないか?世に溢れるジャンクフードのなかで、巨大企業マクドナルドは、重点的に攻撃対象になっている。コーヒーが熱いと提訴され、今度は肥満の原因と提訴された。当然、肥満提訴は棄却され、今後はこういうことで訴訟を起こすなという立法がなされたそうで、ある意味米国の司法は正常だったことを証明した。でもこの映画はどちらかといえば提訴した側の立場にたったドキュメンタリー作品である。

『スーパーサイズ・ミー』 モーガン・スパーロック監督・主演

主人公(被験者)であり、この映画の監督でもあるモーガン・スパーロックは、1ヶ月朝昼晩の3食マクドナルドのメニューのみを食べ、勧められたら「スーパーサイズ」を選ぶというルールを課した。つまり自分の体を張って、その結果起こり得るだろう肥満や成人病などの発症を証明する…ことがメインテーマ。米国人の肥満度や食生活、食や体育に関する教育の実態などを示したデータや映像での紹介が随所に散りばめられている。本筋(つまりマック通いと健康診断の繰り返し)はバカバカしく、どうってこともなかったが、周辺で紹介されるこれらのデータや実態映像は興味深かった。特に米国の学校給食のいい加減さと、悪しき商業主義に支配されている様子は、驚きと憂いすら感じる。アメリカ全体が何だかつまらない、病んだ国に見えてしまうことは、製作者にとって意図したことだかどうだか…。
毎日ハンバーガーを食べ続ける被験者は、当然体を害していくわけだが、正直それに対してはそれがどうしたって感じ。同時に中毒症状も出てくるらしく、これはちょっとした驚きではあるのだが、毎日同じ店の同じようなものを食べるということにより証明する結果が何か意味を持つのだろうか。確かにオーガニック野菜を毎日食べ続けても、同じ結果は出ないことは明白。だからといって、マックは悪いというロジックが成り立つとは思えない。要は個人の生きるセンスの問題か、あるいはファストフードが安いから食べ続けるという経済的要因で食べざるを得ない人がアメリカに多いのであれば、それは経済の問題。ファストフードを売る企業が悪いわけではない。社会にはタバコを売る会社もあれば、酒を売る会社もある。ファストフードを売る会社も、菓子を売る会社も当然ある。そのうちの1社を攻撃するドキュメンタリー映画、おバカなB級ドキュメンタリー映画と笑って観る分には楽しい。深刻に受け止めるとしたら、それはマクドナルドの功罪についてではなく、現代人の食生活についてであって、個々の食の選択や教育のありようを見直すことにあると思う。
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365日眠らない男の話…というこの映画のエッセンスのみを予備知識として出かけた。単館上映、2日目ということもあり、映画館は込み合っていたが、多くの人は同じポイントを聞きかじってやってきたのだと思う。主演のクリスチャン・ベイルがこのために激痩せして挑んでいるということも有名。本当に怖いくらい激やせ。役者って大変だ。私にはできない…というより可能なら痩せてみたい。あ、この映画はダイエットモノではない。正真正銘のサイコ・サスペンス?

『マシニスト』 ブラッド・アンダーソン監督 クリスチャン・ベイル主演

主人公のマシニスト(機械工の意味)トレバーは、既に1年眠っていない。朦朧とはしているが、眠れないらしい。そのなかで、昼間(交代制かもしれないが)は工場で働き、夜は娼婦を買ったり、空港のカフェでウェートレスと仲良くなったりしている。車も運転している。一応は人並みに普通に暮らしている。ところが1年を超えたときから、少しずつ歯車が狂ってくる。自分を陥れる亡霊(男)を見るようになり、実際にその男のために仲間の機械工が腕をなくす事故を起こし、結果として工場で冷たい視線を浴びせられるようになる。それ以外にも多くの不運や不思議なことが身にふりかかる。トレバーは男の正体を暴こうとするが…。
序盤は何だか設定も暗く、話の内容も暗く、骨と皮のようになっていくトレバーの鬼気迫る様子が恐ろしく、ちょっとつらくなってきた。途中から何となくそのつらさが普通に受け入れられるようになり、画面に見入るようになる。特に亡霊の男が出てきたあたりからは、ストーリーにも興味が湧き出すのだが、やがて全容が想像でき、先が見えてくる。早い話、ストーリーはあまりおもしろくない。結末(謎解き?と言っていいのか)も大した驚きはない。ありふれているというのは言い過ぎかもしれないが、どこかで聞いたような話。とにかくこれはストーリーを追うのではなく、主人公の心と体の動きを観るのが肝だろう。365日眠っていないという企画の着目点と、それを表現しようとする主人公とスタッフの演技と設定の工夫の壮絶さをどこまでリアリティをもって観られるかが、この映画の評価のしどころ。つまり面白いか面白くないかの分かれ目になる。映像風景は美しかった。スペインをロサンゼルスに見立てているらしいが、一見どこだか判別がつかない感じが幻想的で良かった。ロサンゼルスには見えなかったけど。
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