監督:蜷川幸雄
キャスト:唐沢寿明/小雪/香川照之
配給:東宝
公開:2004年2月
時間:128分
日本の夏の風物詩“怪談”の代表作と言えば,元禄時代に起きた事件がモチーフとされる『四谷怪談』。江戸の雑司ヶ谷四谷町を舞台に,貞女である岩が,夫の伊右衛門に惨殺され,幽霊となって復讐を果たすという話で,歌舞伎,落語をはじめ様々にアレンジされ,舞台化・映画化もされている。
その『四谷怪談』に新たな解釈を加え,人気ミステリー作家・京極夏彦が哀しく美しいラブ・ストーリーへと昇華させた時代小説が今夜の作品の原作。脚本・監督は5月に他界した演出家・蜷川幸雄。
切腹を命じられた父親の介錯をした後,浪人へ身を落とした伊右衛門(唐沢寿明)。だが,物静かで家事を好む彼は,その身分に甘んじることを苦とせず,真面目な暮らしを続けていた。一方,凛とした佇まいから美しいと評判の民谷岩(小雪)。ある時,彼女は疱瘡を患い,顔の右側が崩れてしまう。しかし,周囲の人々の冷たい反応をよそに,岩は自分を失わず生きていた。そんなある日,伊右衛門は御行乞食の又市(香川照之)から民谷家への婿入り話を勧められる。そうして夫婦となった伊右衛門と岩は,次第に互いを理解し,やがて深く愛し合っていくのだったが…。
互いに強く愛しながらも引き裂かれてしまう伊右衛門と岩の悲恋。蜷川幸雄の描く妥協を許さない狂気とエロスの彩りに,圧倒されっぱなしの2時間。
ずっと嗤わない伊右衛門の可笑しさと,最後の最後に嗤う伊右衛門の哀しさは,怪談よりも生々しい想いを映す。相反するモノに宿る真実は,常に人の心や,現代社会の中枢にひっそりと,しかし確かに在ると,蜷川監督のメッセージが広がる。
共演は他に,椎名桔平,池内博之, 六平直政など。終盤にグロテスクなシーンもあるので,心臓弱めな人は覚悟して見て。
クタ評:★★★★☆
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