叙人詩をあなたに

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あなたに会いたくて この道を来ました


あなたの消息を 風に問いました
あなたが何処で 何を生きてきたのか
あなたと共に 歩いてきたのではないけれど
今ひとときを あなたと過ごしながら
あなたのオデッセイ あなたの軌跡を
ただあなたに寄り添い 歌うように綴ってみたいのです


私はあなたに 呼吸をあわせて
時の彼方に置き去りにしてきた 記憶の断片を紡ぎだす...
すると そのすべてが あなたの時代の空気を孕み
目に見えない 密かな振動が 言霊となって
体験したことのない 懐かしさに 私は出会います
懐かしさは 時空を超え 世代をまたいで
誰の心の奥底にも ひっそりと棲んでいるものだから


街角の喧噪 野山の匂い 夕焼けの寂しさ 人々の肌触り
知るよしもない戦火 歴史を運ぶ川... 希望の あるいは絶望の海
黙々と仕事する背中 遠く見守る眼差し
憧れや喜び 不安や孤独
茫漠たる悲しみも 誇らしさや屈辱も......
心が出会い 心に潜んで いつかは無くなってしまう風景も
そんなすべてが あなたの言葉で濾過されて
共通普遍の 気持ちに沁みわたる


幾多の出会い そして別れも織り込み
私は叙人詩という名の タペストリーを仕上げましょう
あなたの軌跡は ただそこに在るだけで
あなたの匂いを あなたのぬくもりを後世に繋ぎます
あなたと共に 歩いては行けないけれど
私は 光のグラデーションに綴られた織物を
かけがえのない 贈り物にして 未来に届けます


だからあなたを見つけるたびに 私はあなたを待って佇むのです 


                   

                        織理 摂





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