昨日の続きから。
リアーナ取材翌日のオフ日。
セントラルパーク、夏恒例のフリーコンサート、Summer Stageへ。
緑に囲まれ、地べたに座ってダラリンとライヴを観る幸せ。大好きなシチュエーション。
90年。僕はそれまでやってた情報誌の編集の仕事をやめて、フリーのライターになった。
ライター仕事を始める前に、自分なりの人生の節目みたいな意味で、3週間ちょっとNYに行った。
毎晩、あちこちのクラブやライヴハウスに行き、日本じゃまず観れないような、いろんなアーティストの実演を観た。そして週末は必ずセントラルパークでフリーコンサートを観ていた。
ソニック・ユースと今は亡きサン・ラの共演という強烈なライヴが、多分そこで観た最初だった気がする。
それ以降、いろんなアーティストをあそこで観たが、解散する(確か)前の年のベン・フォールズ・ファイヴなどは、ホーン隊とストリングス隊も加わっての、それはそれは素晴らしいものだった(その数ヵ月後に行われた彼らの国際フォーラム公演は、その縮小ヴァージョンといった趣でえらくこじんまりしていてガッカリしたものだ)。
ってな思い出話はさておき。この日はゴスペル・デイ。
15時スタートだけど、プラプラと公園散歩しつつ行けばいいか……と思い13時頃に部屋を出て歩きだしたんだが。暑い。溶けそうなほどに暑い。なので、とりあえずホイットニー美術館に入って涼を取る。
困った時の美術館頼み。何回か観てるけど、やはりまたエドワード・ホッパーの絵の前で足が止まる。
時間が止まったような感覚。ホッパーが描く静かな夏が好きだ。
さて、Summer Stage。出演はヴァイオリン演奏にラップをのせるという珍しいスタイルのNuttin’but Stringz、ARCゴスペル・クワイア、そしてコンテンポラリー・ゴスペルの女王、ヨランダ・アダムスの3組。
僕の目当てはARCゴスペル・クワイアだ。
ARCはAddicts Rehabilitation Center(薬物中毒更生施設)の略。
ハーレムにあるその施設でドラッグ中毒を克服した人や、現在もリハビリ中の人たちで構成されたゴスペル隊である。
昨年、僕はハーレムのその施設に行き、メンバーの何人かを取材した。
16歳で家出して、ドラッグ売買やりながら子供を育て、泥棒に入られ、レイプもされたエリザベス・ロビンソンさん(51歳。この人の歌唱力は随一)の話に胸がつまった。
15歳からドラッグに手を染めたウォーレン・フリーマンさん(同じく51歳)は、将来の夢を訊くと、「天国に行けるといいな」と、優しい笑顔でつぶやいた。僕はその言葉を原稿に起こしながら、少し泣いた(原稿を書きながら泣いたのはこの時が初めてだった)。そのウォーレンさんが、今回のステージではかなり多くソロをとっていた。
昨年、彼らのCD(ドキュメンタリーDVD付き)『サンキュー・ロード』がワーナーから日本発売され、12月には六本木ヒルズの特設ステージでコンサートも行われた。それも素晴らしかったが、その時には聴けなかった曲が、セントラルパークではたくさん歌われていた。
実は彼ら、カニエ・ウエストの1作目にもコーラスで参加している。その「ジーザス・ウォーク」が、この日のライヴの最後に歌われた。
ARCのあと、ヨランダ・アダムスの登場で観客(黒人9割)はさらに湧く。が、歌はいいのだが、説教の部分があまりに長く、僕はついていけなくなって途中退場。
炎天下で汗ダラダラ流しながらのライヴ観賞だったので、さすがにちょっと疲れちゃって。
めんちゃんこ亭でラーメン食べてビール飲んで、ホテルに帰りましたとさ。
しかし、世界中、どこも暑い。東京も暑いが、NYもトロントもロンドンもアムステルダムも暑かった。
昔はこんなじゃなかったのにね。
帰国した翌々日、BENNIE Kに取材。
新曲「Sky」もまた、実に構成が練られている。
前の「Dreamland」もそうだったが、最初に過去の自分(たち)を書き、途中から時間軸を現在に移し、観客とのやりとりが目に浮かぶラップでアゲつつ、そのあとにメッセージも入れ込むという作り。
この構成の巧みさは、もっと評価されるべき。単にポップで明快……ってだけではないのだ。
因みに、彼女たちは常にサビから作り、そこから膨らませてAメロ、Bメロ、ラップとつけていく作り方だそうな。抜きん出たポップ性の構造の秘密がちょっとわかった気がした。