「ハワード・ザ・ダック」DVDレビュー2●「ハワード・ザ・ダック」に何が起こったか!?
テーマ:映画&ソフト・レビュー
ジョージ・ルーカス製作総指揮のSFアドベンチャー大作として公開された
「ハワード・ザ・ダック/暗黒魔王の陰謀」。
だが、公開後は酷評の嵐に遭い、
その年のラジー賞を総ナメにしてしまった。
“迷作”扱いされた作品に何があったのか。
監督のウィラード・ハイク、プロデューサーのグロリア・カッツ、
そして主演のリー・トンプソンらがその重たい口をついに開いた!
※DVD特典「ハワード・ザ・ダックを振り返って」
「リリーシング・ザ・ダック」を基に構成しています
ドナルドのためにハワードには“パンツ”を履かせた
ハワードの誕生は1973年9月に遡る。
マーベル・コミックにスティーブ・ガーバーによる1本の作品が掲載された。
一度きりの掲載だったそのコミックは人気を得て、その後、75年に独立デビューを果たし、華麗に復活する。
タイトルは「ハワード・ザ・ダック」。
ウォルト・ディズニー・プロから「ドナルドダックのパクリじゃないか!」と
著作権侵害で訴えられたこともあったが、勝訴している。
ドナルドと差別化を図るため、サラリーマンの格好をさせ葉巻をくわえさせた。
下半身丸出しのドナルドに対し、ハワードはパンツを履くこととなる。
(↓ 映画版でもしっかりとパンツを履いている)
コミックを気に入っていたルーカスが、
75年に親友のウィラードとグロリアに
初版本を見せたことから映画化の構想が始まる。
ウィラード・ハイク、そして妻のグロリア・カッツは
ジョージ・ルーカスとは映画学校時代からの仲間。
夫妻は、ルーカス作品「アメリカン・グラフィティ」や
「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」、
「笑撃生放送!ラジオ殺人事件」(未)の脚本を
二人三脚で手掛けている。
「ハワード~」の映画化権はすでに他の者に渡っていたため
一度は断念したものの、結局映画化されることはなく、
権利はルーカスらのもとに回ってくる。
グロリアは「バカバカしいアイデアだったけどユニークな映画が
作れると思った」と期待に胸を膨らませ、ウィラードは
「この作品は私たちにとって新たな挑戦だった」と意気込んだ。
早速、夫妻は脚本を書き始めた。
最初は、ハワードはハワイに現われるという話で、
彼が地球にやって来るまでの過程は描かれていなかった。
だがユニバーサル映画の幹部が
「アヒルの世界を描かないでどうする!」と注文をつける。
スタジオの要望を渋々受け入れた夫妻は、脚本をリライトすることとなった。
リー・トンプソンの
運命を決定づけた
ハワードとの“共演”
ウィラードは、ヒロインのビバリー役のオーディションで
女優だけでなくダンサーや歌手など多くの女性と会った。
「オーディションの衣装はシンディ・ローパーとマドンナの中間をイメージしたの。変な宝石をつけてね(笑)」とリー・トンプソン。
「出演が決まってからコミックを読んだわ。注目の映画だったからたくさんの女の子が出たがってたの」
だが、この映画の出演によって、自身のキャリアを危うくしてしまうことになろうとは、このときは彼女自身も想像もしていなかったに違いない。
ビバリーはロックシンガーという設定だったため、歌唱力が求められた。
歌が苦手だったリーは毎週末にレッスンを受け、撮影のない日はギターの練習に明け暮れた。
「“ヘタな歌じゃ使わない”って脅されたのよ!」と苦笑する。
また彼女は80年代のパンクヘアを余儀なくされた。
「髪はカツラにしてほしかった。セットだけで2時間もかかるし、毎日熱いコテで縮れ毛にされたのよ。今ハゲてないのが奇跡だわ」
暗黒魔王に体を乗っ取られるジェニング博士を演じたのは、当時「アマデウス」で注目されていたジェフリー・ジョーンズ。
「ひとり2役のキャラクターだったので演じてて楽しかったよ。僕はこのキャラを気に入ってたけど監督は“宇宙最大の汚点”なんだってさ(笑)」
バカバカしいキャラと揶揄されながらも、徐々に暗黒魔王に変貌を遂げていくジェフリーの“怪演”ぶりは、本編を見ての通りだ。
グロリアは「スタジオに遊びに来てた娘が特殊メイク姿のジェフリーを見て泣き叫んでたわ」と振り返る。
ハワードと漫才コンビのような珍妙な掛け合いを見せるフィルを演じたのは、まだ新人だったティム・ロビンス。
演技経験が浅かったティムはいつも不安を感じ、とにかくがむしゃらに演技に没頭した。
ハワードを
“パペット”で撮るか
“着ぐるみ”で撮るか
夫妻がルーカスと何度も論議になったのは、
ハワードをアニメでやるか実写でやるかだった。
監督とグロリアは当初はアニメで映像化したいと考えていたのだ。
だが、公開までの製作日数が足りず、アニメ化は断念した。
次にハワードをパペットでやるか着ぐるみでやるか。
さまざまなハワードがテスト制作され、パペットを採用する。
だが、いざ撮影に入ると、
羽が抜け落ちたり、首が破けてしまうなどのトラブルに何度も見舞われ、スタッフは呆然となってしまった。
ウィラードは「思った以上にパペットの技術が進歩してなかった」と痛感し、
グロリアは「これじゃ一生かかっても撮り終わらない」と嘆いた。
ルーカスの提案で、パペットはヤメにして着ぐるみを使うことになり、
結局、パペットで撮影したシーンは、すべて着ぐるみで撮り直すはめに。
この頃から、スタッフの間で作品の成功への自信が揺らぎ始める。
次にハワード役の俳優探しが始まった。
当初は、12歳の子供に演じさせようとしていたが、
長時間、着ぐるみに入って演技をすることは子供には過酷だった。
結局、俳優のエド・ゲイルが代役で演じることになった。
「オーディションを受けたけど背が高いと言われた。ハワードの理想の身長は97㎝未満で僕は102cmだった」とエド。
昼では12歳の子供が、夜の撮影はエドがハワードに“入って”演じていたが、
子供っぽい仕草と、エドの大人な動きが全く噛み合っておらず、
編集の段階で映像が合わないことが発覚した。
ハワードのまばたきや口など細かな表情はスタッフがリモコンで遠隔操作。
だが、飛行機からの妨害電波の影響でハワードの顔がたまに“暴走”することもあった。
ビバリーがハワードを誘うベッドシーンで、興奮したハワードが頭の羽を立たせるシーン。その羽を立たせる仕掛けの製作だけで数カ月もかかる。
あのベッドシーンについてリーは
「不快に思った人が多く、“子供向けの映画じゃなかったの!?”と聞かれた。でもアヒルとのラブシーンは楽しかったわ(笑)」
稚拙なストップモーション・
アニメの出来にガク然
ハイライトシーンはハワードとフィルが乗るグライダーの飛行シーンだ。
それだけに大掛かりな撮影も苦労の連続だった。
このシーンを監修したのはジョー・ジョンストン監督。
のちの監督作「ロケッティア」など、飛行シーンの演出には定評がある。
クライマックスの天文研究所はサンフランシスコの海軍基地で撮られた。
寒い時期での撮影だったので、ウィラードは「まるで冷蔵庫の中で撮っていた」と口にする。
にも関わらず、リーは肌を露出させて冷たいテーブルの上に縛られていた。
「風邪を引いてたから最悪だったわ! 咳が止まらなかった」
暗黒魔王の正体である醜いモンスターの造形を手掛けたのはフィル・ティペット。レイ・ハリーハウゼンと同じように、昔ながらのストップモーション・アニメで作られた。
だが、ILMの視覚効果のクオリティは決して褒められるものではなく、
その年のラジー賞視覚効果賞に輝いてしまった。
グロリアも視覚効果技術の未熟さを認めている。
幾多のトラブルを乗り越え、撮影が終了。
次は、ハワードの声の録音作業。何百人もの俳優をオーディションし、ハワードの“声”を探した。
ジョン・キューザックも候補に挙がったが、ドラマやブロードウェイなどで活躍していたチップ・ジーンが抜擢される。彼のしゃがれた声はハワードにピッタリだった。
チップと監督、そして音響監督の巨匠、ベン・バートは録音室で連日の作業に追われた。
暗黒魔王の声はジェフリーの声をベンがデジタルで加工し、おぞましい怪物の声を生みだしていった。
社内試写の無言の反応に
“嫌な予感がする”
公開が近づくにつれ、不安になっていたのは監督だった。
「着ぐるみのアヒルが世間に受け入れられるだろうか」
リーも「苦労して作った映画だけど、奇抜な作品だからヒットするか分からなかったしプレッシャーだった」と感じていた。
だが、プロデューサーたちの不安が的中したのは社内試写での反応だった。
スタジオの重役たちが無言のまま試写室から出て行ったのだ。
グロリアはルーカスにこう伝えた。「嫌な予感がする」と。
一般での試写会では、気軽に楽しむ人と、頭から完全否定する人とで観客の反応は二分した。
グロリアは反論する。
「前衛的な作品だけどこれはただのコメディよ。マジになって批判されても困るわ」
やまない悪評にスタッフも
出演者もショック
だが、映画評論家の悪評はすさまじかった。
「ジョージが製作総指揮を手掛けた作品だから、評論家はこき下ろそうとするんだ」とウィラード。
「“殻を破れないダック”とタイトルまでバカにされた。みんな頑張って作った映画だけに落ち込んでいたよ」
ハワードを演じたエド・ゲイルは、友人たちと一緒にTVの前で映画の評論番組を観ていた。
その番組で“くだない映画”とこき下ろされ、彼は「顔から火が出そうになった」という。
「あるコメディドラマで『パーティーは“ハワード・ザ・ダック”以下だ』というセリフがあったんだ。あれには傷ついたね」
だが、本作を“認めた”映画監督がいた。
コメディ映画の帝王、メル・ブルックス。
彼の新作のオーディションで、出演作を聞かれたエドは「ハワードを演じた」と答えた。するとブルックスは「あの映画の出演者なら大歓迎さ」。
こうして「スペースボール」への出演が決まった。
さらにエドは「最近のファンレターの話題はたいていチャッキーかハワードなんだ。どの役よりもハワードがいいと言われるんだよ」と嬉しそうに話す。
評論などを読まなかったジェフリーは、大体のことは予測していた。
「おそらく“ハリウッドの恥”とか書かれてるんだろう。でも気にしてたら前には進めない。僕の演技は満足だった」と一蹴した。
自信喪失になってしまった
リー・トンプソン
だが、一番のダメージを受けたのは、やはりリー・トンプソンだった。
「ショックな体験だったわ」
「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で成功を収めたばかりの彼女は
世間の酷評にと精神的に打ちのめされてしまう。
この失敗で彼女は自信を失い、次回作の撮影初日に
「どう演技したらいいか分からない」と泣いてしまったという。
しかし「若いころに成功と挫折を経験したおかげで視野が広がったわ」と
考えを切り替えたリー。「この映画の好きな人ってルールにとらわれず
人の意見に左右されない人だと思う」と、今となっては“思い出のひとつ”
として笑いながら話す。
一方、ウィラードとグロリア夫妻は、公開後、失敗のショックからかしばらくハワイに“雲隠れ”した。ルーカスが「スター・ウォーズ」のヒットに自信がなく、ハワイに逃げたように・・・・。
そんな夫妻の気持ちを知ってか知らずか、ルーカスは
「まあ待て。この映画は25年後に再評価される。時代がこの映画に追いつくだろう」と勇気づけた(?)という。
酷評の嵐にあった本作だったが、ファンも少なくなった。
「今になって『実はあの映画のファンなんです』とやっと白状する人も出てきた(笑)。DVD化を求めたファンサイトまでできたんだ」とウィラード。
「隠れていたファンが堂々と認められるようになったんだ」と、嬉しそうに語る監督だったが、完成後に本作を観たのは後にも先にも1回だけだった。
最後にウィラード監督はこう締めくくる。
「ハワードとビバリーの恋は続く・・・というように続編を匂わせた終わり方にしたが、実現はしなかった。でも2人の幸せを願ってるよ」と。
↓ よろしければポチッとひとつよろしくお願いします。
にほんブログ村
にほんブログ村
- ハワード・ザ・ダック 暗黒魔王の陰謀 コレクターズ・エディション (初回限定生産) [DVD]
- ¥4,429
- Amazon.co.jp
- ハワード・ザ・ダック 暗黒魔王の陰謀 [DVD]
- ¥2,953
- Amazon.co.jp






























1 ■びっくり
このめがねの男性、ティム・ロビンスだったとは。
リートンプソンはかわいかったですよね~。
当時そこまで冴えない作品だったとは知らなかったです。
私はこの暗黒の大王の最終態、好きですけど。