記憶と共に…さようなら

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また長期にわたり愚図ってました。

桜の花も散り、明後日からはGW・・・

ありえないくらいのスピードで5月を迎えようとしてるのに

なにも出来ていない自分が情けない。

 

 

 

 

 

 

先日(ちょうど桜の見頃も今日明日…って頃)

幼い頃、小・中学と住んでいた所へ行きました。

ほんと唯の思い付きで。。。

と、言いたいところですが

実は最近漠然と(終焉)という言葉が頭を過る事が多くなって

一つでも(したかったこと)をしておこうと足を運びました。

 

 

僕が最後にそこに立ってからもう30年の月日が流れました。

でもそこはあまり変わっていなくて…逆に(タイムスリップ)でも

したかのような錯覚を覚えるようで…

 

だけど30年という時間は確実に流れていて

当時の記憶を頼りに自宅のあった近辺の同級生らの

家々を見に行くも半数以上見つけられなかった。

ずっと仲が良かったコの家は建て変わっていたが表札は変わりなく…

思わず涙が出ました。

ちょうど小雨が降っていたから

誰にも泣いていることはわからないのをいいことに

涙は拭きませんでした。

 

よくデッサンや漫画を描いていた公園も遊具は変わって

当時は植えたてで小さかった木々も大木になり、

小雨なら凌げるくらいに成長していて…

やっぱりそれだけの月日が流れたんだと思い知らされました。

 

 

その住宅地で唯一のショッピングモールの中にあった

母が営んでいた靴屋。

他店と違い 見栄っ張りのw父親が

レンガ造りに中央にショーウィンドウまで造らせた店の面影は

側面に5cm程を残すのみで

後は見る影もなく唯のシャッターが下りた事務所のようになっています。

でもそのレンガのおかげwで店の場所を発見できたんですから

なんとも変な感じ。

そこは小さなたばこ屋兼案内所になっていて

僕はそこで親父が吸っていた(ショートホープ)を一箱買い

出口辺りに昔と変わらずあった園芸・花屋で400円程の

バケツに刺さった花束を買ってレジへ行くと

店主が不思議そうに僕を見る。

花束は一つ。

包むのにも時間はかからない。

でも店主は明らかに時間をかけています。僕は堪りかねて

「ここも随分と変わりましたね。」と声にした途端

「○○さん!…じゃない?靴屋さんしてて…俺、大学生で祭の時

子供会の手伝いで 綿菓子屋やることになって君ン家の庭で

機材洗わせてもらったことがあって…

その時「お湯の方が落ちやすいでしょ?」ってバケツ一杯の重い湯

運んでくれたの…」

 

―――覚えてる。それは僕だ。

 

「……はい。それ、自分です。」

違うとは言えないくらい…何故か彼は鮮明に覚えていた。

 

「何年振りかな、懐かしいな。

君も変わったけど面影残ってて…いや、雰囲気かな、仕草とか

当時から大人びてたんだんだな、きっと」

僕は終始言葉に詰まった。

「ご家族は?みんな元気かな?」

 

そう。

この問いを恐れていたからだ。

 

「…家族は  もう…いません。」

 

そう言った口元は引きつっていたと思う。

彼はバツが悪そうに言葉を探していたから

「もう昔ですから」と笑いながら付け足した。

 

「そうか。でも君は元気そうだ。

またおいでよ。飲みながらでも話そう!」

「はい。また…」

 

【また】がないことは恐らくお互いが感じている…そんな空気だった。

僕は恐らく二度とあそこへ赴くことはない。

 

あの小学校脇の桜並木の緑道も…

校舎が増設された中学校も…

この唯一か所のショッピングモールも…

目の前の男性に会うことも…二度とない。

 

僕がそこへ行ったのも、

元店後たばこ屋でショートホープを買ったのも、

何気なく花束を買ったのも全て(気まぐれ)だったから。

 

 

その住宅街の近くにウチの墓がある。

 

「花…買ったんだ…。お墓参り…するの?」

車の後部座席に無造作に放り込んだ花束を見て

Pがそう言った。

 

「アイツ(親父)がいるのかだけ、近くだし見とこうかと思って。」

「じゃあナビお願いね。」

それだけ言って車を発車させた。

 

墓は僕の記憶通りそこにあった。

昔より小さく見えるソレは誰の訪れも感じさせない佇まいを見せている。

 

墓参りする気できた訳でもなかったが生涯最後に

いつの間にか死んだ親父の名がそこに刻まれているのかという

好奇心じみたものが心の隅にあったのかもしれない。

墓参り用の花束(しかも一束)でもなければ

線香も掃除用の物も一切ない。

 

墓石には触れず、花束を小さな棚に置き

しゃがんで横にある法名碑に目をやった。

 

【平成二十年一月七日 行年六十六才】

 

僕は(フッ)と笑ってしまった。

同じ年の九月に母も逝ったからだ。

十六年連れ添った二人は、互いに違う相手を持ちながら

別れてもなお、最後の最後までいがみ合い罵り合い

違う場所で違う人生を歩みながらも何の因果か

同じ年にこの世を後にした。

 

僕は立ち上がり、ポケットから煙草を取り出し火をつけた。

 

そういえば小4の頃に初めて吸ったのもアイツ(親父)が

置き忘れて行ったショートホープだった。

あの時は盛大に咽たっけ。

吸ったといってもふかしただけだったろう。

僕は火のついた煙草の煙を深く肺まで吸い込み味わった。

そして煙を吐く。

(…旨いな。)

もう一服して 線香を立てる所のカスを取り、

そこに吸いかけのショートホープを置いた。

残りの煙草は花束と同じ所に置く。

 

手は合わせなかった。

唯、声に出して伝えた。

 

「ろくでもねぇ家族だったな。

名前も忘れてたらしいから興味もねぇだろうけど

オレ、男だったよ。だからアンタがつけた名前も捨てた。

もう思い出さなくてよくなったろ?

アンタとの最後の言葉、電話越しだったよな、今でも覚えてるよ。

『二度と掛けてくるな!』だ。

安心しろよ。二度と…もう二度とここには来ねぇから。」

それだけ言い、目の前の煙草を一口拝借して

Pが待つ車へと戻った。

振り返ることはなかった。

 

「待たせた。」

そう言うと「…そう。」とだけ返ってきた。

 

 

 

若い頃、わからなかった事が大人になってわかってくる。

その時深く考えなかった物事の真意に気付く。

そういう時、僕には嫌な事だらけだったのだと思い知らされる。

 

大人になるということは

発せられた言葉の真意すら疑いを持たせてしまうのか…

 

もう一度この人生をやり直せと言われれば

今のこの想いだけは記憶させておいて欲しい。

 

 

でなければ、ごめんだ。

 

 

 

 

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