『世界を不幸にするアメリカの戦争経済 イラク戦費3兆ドルの衝撃』は、
2001年ノーベル経済学賞受賞者である教授が、イラク戦争の(真の)戦費と、
それがアメリカ経済および世界経済に与える影響を分析した、
イラク戦争の真実を伝える本である。


以前、橋本府知事に泣かされた高校生について、
「高校生の方が正しい」と書いたが、
その裏付けとなるデータをこの本は提供してくれている。


単に経済学として戦費を見積もったデータが書かれているだけでなく、
イラクおよびイラクに派遣されたアメリカ兵士の被害についても
スティグリッツ教授は述べている。

そして、スティグリッツ教授が最も言いたいことは、次のことだ。
2兆ドルや3兆ドルで国が破産することはないのだ。
それより重要な問いは別にある。
その2兆ドルか3兆ドルがあれば何ができただろうか?、ということだ。
わたしたちは何を犠牲にしてきたのか?

もしイラク戦争の軍事費にではなく、アメリカ国民のために税金が使われていたら、
何人のアメリカ人が救われていただろう。
そして、イラクの人達も被害を受けることはなかったのではないか?

スティグリッツ教授の考えを発展させれば、次のことが言えるだろう。
  「税金を正しく使うようにすれば、自国だけでなく世界中の多くの人が救え、
  環境問題や紛争など多くの問題を解決することができる!」
と。


これは、アメリカに限ったことではない!
「訳者あとがき」から引用する。
イラク戦争に関して、当初から有志連合の一角を担ってきた日本も、
当然ながらコストを背負わされている。
本書の試算によると、日本経済にのしかかる負担は3070億ドル
最近の円高水準で換算しても、30兆円を軽く超える。
筆者たちにならって、「この30兆円があったら、何ができるだろう?」と考えるところから、
長引くイラク戦争のとりあえずの"決算"が始まるのではないだろうか。

本ブログではこれまで「税金の無駄遣い」を非難してきたが、
イラクにかけた税金こそ、最大の「無駄遣い」と言えないだろうか。

派遣された自衛隊の隊員の方たちの命を危険にさらし、
イラクの治安はアメリカ軍の駐留により一層悪化した。
なんのためのイラク派遣や海上給油活動だったのか。


左派が「国旗掲揚、君が代斉唱」に反対したり、
戦争の悲惨さからヒューマニズムで反戦を唱えるのでは、
平和な社会を築くことは難しいと思う。

しかし、スティグリッツ教授の言うように、
自国の税金が正しく使われるようにすれば、
自国だけでなく世界中の多くの人を救い、
「生きやすい」社会が実現できるだけでなく、
平和な世界を築くことができるはず。


本書に書かれ、取り上げたい内容は山ほどあるが、
長文になるため、ここでは取り上げない。
経済学に分類されるとはいえ、経済学の知識なしに
比較的短時間で、しかも興味を持って最後まで読むことができる。

なにより、普通の経済学と違って、”心”がある。


この本の内容はアメリカおよび日本のマスコミが取り上げることはないだろう。
しかし、アメリカおよび日本の国民が絶対に読むべき必読書だと思う。
それほどの重要性をこの本は持っている。

世界を不幸にするアメリカの戦争経済 イラク戦費3兆ドルの衝撃/ジョセフ・E・スティグリッツ
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