上祐史浩

オフィシャルブログ ―― 21世紀の思想の創造


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 今日、沖縄から東京に戻った。心に言葉にし難い、何かしらのインパクト受けた。

 戻る前に、那覇市に残る首里城などを訪問。首里城は沖縄が日本に併合される前の琉球王国の王が住んだ城だ。今見れるのは、戦後再建されたもので、日米戦争で徹底的に破壊された。

 昨日は、普天間基地と、その反対運動を見た。基地の出口で、車で出入りする米軍関係者に対して「ここから出て行け」という訴え。最近問題視されているオスブレーや、以前から言われている米軍関係者による犯罪の糾弾するプラカード。

 反対運動をしている人によると、昔と違って、今の沖縄は、保守も革新も米軍基地反対。オール沖縄だそうだ。米軍基地による経済的な利益より、それを民生利用した方が良いことに、保守派も気づいたという。ごく一部、辺野古の関係者の一部が、基地を受容しているらしい(市長は基地反対派が当選)。

 しかし、米軍基地だけの問題ではない。一昨日は、日米戦争での沖縄戦の悲惨な歴史を残す喜屋武岬を見た。米軍に敗退する中で、日本軍に、「生きて恥をさらすな」と言われて、多くの沖縄の人々が自決した場所だ。慰霊碑が立っていた。

 案内してくれた現地の人によると、戦時中は、日本兵もストレスがたまり、日本語とは全く違う琉球語を話す沖縄人に、米軍と繋がっているのではと疑心暗鬼になり発砲したり、日本兵による沖縄人女性の強姦もあったという。

 さらに、日米戦争だけではない。そもそもは、この地は、薩摩や明治政府が武力で征服する前は、琉球王国という独立国家だったのだ。琉球王国が滅びたのは明治維新直後。沖縄としての歴史はたった百数十年だ。

 沖縄の人は、沖縄外の日本を「内地」、「やまと」と言う。、首里城を案内した沖縄の女性ガイドは、薩摩藩による琉球王国の武力侵略は、「事件」とぼかして、その歴史を表現し、明治政府による武力統合には、全く言及しなかった。内地の私達を案内しているのだから当然だろうか。

 女神を信じ、大した武器もない平和な島が、日米のために、戦争と基地の島になったの歴史の真実だ。案内の彼が言うには、「日本人の床の間には刀があるでしょう。沖縄の床の間には楽器がある。」 どうやら、戦闘性・攻撃性の弱い人々だったようだ。

 内地にいては実感できない日本の暗部を見た感じだった。

 その連想で、ふと別の不安がよぎった。今、竹島・尖閣諸島・従軍慰安婦・歴史認識などの問題で、中国や韓国との関係がぎすぎすしている。日本人として、日本の立場は良く聞いているし、中国や朝鮮の反日教育は、どうにかならないかとは思う。

 しかし、日本の中にいては知ったり、実感できない日本の暗部があるのだろうか。沖縄・琉球の歴史を見ると不安を感じる。日本だろうと、欧米だろうと、植民地侵略と戦争が横行していた70年はど前までは、今とは全く違った倫理感で動いていた。日本人だけが聖人君子だったと考えるのは非合理的だ。今から見れば、弁明できない行為があっても不思議ではない。

 案内の彼は、勝ち気な性格もあって、少し残念そうに言う。「今は、「日本でいいじゃん、米軍基地あってもいいじゃん」という沖縄人が多い」 そういえば、トークショーを主催してくれた気の優しそうな現地の人も言っていた。「米軍基地の反対運動の中心が、実は内地の人になっているんです。沖縄の人間も頑張らなければならないと思んですけど」

 20世紀、沖縄は、広島・長崎と共に、日米戦争の悲惨な歴史の象徴だった。

 そして、21世紀の今も、何の因縁か、沖縄は、日本の外交・領土問題の象徴である。日米同盟に基づく米軍基地の問題と、中国との尖閣諸島の領土問題。尖閣諸島は沖縄県だ。中国の一部には、沖縄奪取の野心もあるという。
 
 米中二大超大国にはさまれる日本の未来は、日米関係と日中関係にかかっていると言って過言ではない。その中で、その最前線が正に沖縄なのだ。

 こうして、沖縄の平和は日本の平和、日本の平和は沖縄の平和だろう。沖縄は、内地からは最も遠い地域だが、日本の未来に最も重要な地の一つだ。沖縄を大切にしないことは、日本を大切にしないことだ。


 ただし、もう一つ注意すべきことがあると思う。それは、軍事力が乏しいからと言って、沖縄が「弱い」と言うわけではないことだ。なぜならば、沖縄には生命力という最高の力がある。それは、21世紀の日本を救う力かも知れないのだ。

 長寿の日本の中でも、良く知られているのが沖縄の長寿である。さらに、酷い少子化で悩む内地に対して、沖縄には少子化の問題はない。沖縄の出生率は全国平均よりも0.5人も高い。

 現地の人によると、内地の少子化の一因である晩婚も少ないそうだ。更には、高齢者、特に女性が明るく元気に働いているのをよく目にした。ユタ(巫女の役割をする女性)の引退は70歳だという。高齢者雇用が当たり前か。

 少子高齢化は、21世紀の日本社会が抱える最大の問題の一つだ。それを解決するヒントを沖縄は持っているのではないか。少子高齢化は、需要の停滞からデフレ経済を招き、社会福祉予算の負担から財政赤字を招いている。正に日本の内政上の最大の問題である。

 では、この沖縄の生命力の源・秘密は何か。わずか三日の滞在で、科学的な分析もなく、それをを知るのは難しい。しかし、体験的、直感的に感じたことがいくつかある。

 まず、栄養のバランスのとれた食事。しかも消化が良さそうなのがポイントではないか。さらに、美しい海や、霊気の強い伝統の自然信仰の聖地を含めた、素晴らしい自然の中での生活。そして、最後に、先ほどの沖縄の歴史にも関係するが、その穏やかな性格か。

 人類の歴史の叡智によれば、近代の歴史で、米国や、大和の日本が誇ってきた、軍事力・攻撃力といった力は、本当の力ではない。米国は建国してまだ250年弱。近代日本は維新から150年弱。今後どうなるか分からない。

 500年、1000年単位の長い人間の歴史から見ると、そういった力は、むしろ短期間の力であって、少し前には、今は劣勢のアラブ・イスラム社会が、欧米を上回る世界の中心だった時代も世界史にはある。力で制するものは力で滅びる。

 その中で、生命力は、高い精神・徳性とも関係した、人間の真の力の一部であるように思う。瞬間的な攻撃力・軍事力よりも、長寿に基づく忍耐や継続的な努力が最後には上回るのではないか。そういえば、内地の戦国時代の覇者も、天才だが過激・短気で短命に終わった信長ではなく、忍耐力と長寿に恵まれた家康だった。

 沖縄は、これまでの歴史のように、内地・やまとの人間が、見下したり、切り捨てたりすべき存在ではない。学ぶべき所の多い、尊重すべき存在ではないか。

 そのように見ることができてこそ、安全保障上の緊張と将来の不安を克服し、沖縄と日本、そして東アジアと世界に、新しい時代が始まるように思う。

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