これまでのあらすじ・希望していた小児科・精神科・皮膚科は
親に反対され…強引な親に妥協して眼科に入局した
私を待っていたのは…。



もうほんとに、自分の考えは甘かった。


私はヘタレなので、命が失われる科に行ったら、
自分の心がもたないと思った。

眼科ならば、命にかかわる疾患は少なく、

そういう疾患の患者さんがいらっしゃるにしても
それこそ内科や外科など他科との共同診療になるし、

体力・気力の弱い私でもやっていけるのでは、

言い方は悪いがラクなのでは…

という希望的観測で入ったのである。





入って早々に、自分が選択ミスをしたとわかった。

熱意がわかない。

言われたことはマジメにこなそうと努力はする。

だが、学問的興味があったでもなし、気持ちは毎日沈みゆくばかり。





自分の人生なのだから、親がなんと言おうと自分で
決めるべきだったのだ。



当時、研修医には身分的保証がほとんど無かった。

薄給で体力気力の限界に挑戦する、それはきつい日々だった。

学問的興味があれば、やりがいとなって乗り越えていけただろう。


眼科に決めたのは、


親の希望・手術が出来るところ



人命が滅多に失われない



勧誘がいちばん熱心だった



という恥ずかしいほど消極的な理由だった。
そんなやる気のない私の態度は、周りにも伝わっていたのでは
ないかと思う。

もともと来たいわけじゃなかったんだ…

というひくつになった気持ちが、出ていたかもしれない。



割り当てられた業務はがんばる。だがそれ以上のことは無い
私…。


ある時、カルテにはさまれていた患者さんからの手紙が
はらりと舞った。拾った私の目に飛び込んで来た文字は…


見えなくなったら、あんらくししてください


という文字であった。



あんらくし…安楽死?!



疾患として命に即かかわるわけではなくても、目というのは
感覚情報の多くをそれにたよる感覚器である。

だから、視力を失うこと=生きる希望の喪失
と思う人がいらしても、不思議ではないのだ。


医療たるもの、程度の差こそあれ、命にかかわらないわけがなかった
のだ。

20代の自分の、なんと考えの甘っちょろかったことだろうか。
私は衝撃を受けたのだった…。


(研修医生活をやめる言い訳編につづく)
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これまでのあらすじ:医学部卒後のこと…
親が私にどえらい医者になってほしいと言う。
しかし私は、自分の能力や興味を考えてそれはムリだと主張。



親とがっぷり話し合った時のこと。


「私は、自分が興味があってやりがいのあるところへ
進みたいんだけど。」



すると母親が

「Jちゃんは

崇高な使命を忘れたの?!」



と叫ぶ…。






ハァ?

崇高??

使命?


????





「崇高って…なに?どういうこと?」

と母に問うと…






「それは崇高すぎて

言葉にすると意味が変わるから、

言えないほど崇高なものよ!」





脱力~っ



するとなんですか?

その言葉に出来ないようななにかのために、
私は外科へ行けと言われているわけですか???


がっくり…。



とりあえず、

親の「手術出来る科!」という希望を聞き入れ、


人が滅多に亡くならない

女性入局者が多い


という自分の願望を併せて入局願書を書いた。


眼科

と…。

父親が眼科と書いた願書の保護者欄にサインし、はんこを押した。


これで私の研修医ライフが、
眼科でスタートすることになったのだった…。


女性が多い科であれば、女性だからという理由で差別やいじめを
受けることはないだろう。まあ、希望の科ではなかったけれど
がんばろう。

そう思っていたのだが、やはり消去法で科を決めてはいけなかったと
いうことを、やがて私は思い知ることになる。
(つづく)
前回までのあらすじ:卒後どの科に進むか親の反対にあい、
妥協でとにかく手術が出来る科を選ぶことに。



でも、親が薦める外科はNOだった。

自分に外科研修に耐える体力がないことはわかりきっていた。



他の医大であればもちろん違うだろうが…。



K大でも今は違うかもしれないが、数年前は外科といえば

「うちは設備(当直場所など)が男子中心だから、
女子が入ったらどこに寝せればいいのかな」

みたいなジョークが出るくらい、内部の女子が外科へ進むのは
メッタになかったのである…。




そのようなことを親に話し、

外科への興味も適性も無いし無理!

と訴えてみたところ、両親そろって


「知らないな~!!」


と叫ぶ。意味不明。

どうやら、親の脳内では


娘はバリバリに出来る子だから、
外科など楽勝だということを
本人が知らない=わかっていない、



ということになっているようだ。

あああ。


知らないのはあんたたちだよっ

と言いたくなるがこらえる…。





この両親、親戚にも

「娘はK大で成績が1番なのよ!」

とウソをつきまくっていた。



1位?!…んなわけない。恥ずかしい…。


あとで叔母にこっそり「うそだよ」と耳打ちしなければならなかった。

両親は、どうして明らかに事実ではないことを言いふらすのか…。





しかも自分でついたうそをいつの間にか真実と思いこんでいるらしく、
奨学金申請に行ったこともある。


K大は私大ゆえ、国公立よちも授業料が高額だ。

学年で上から10位以内であれば、返さなくてもよい奨学金が
もらえる制度があることを、親が調べたのだった。


10位以内なんて無理だと思うよ…


と説得したのだが、人の話を全く聞かないのがこの両親


親が言い出したらきかないので、私はただ恥辱を受けるためだけに
教務課へ行き、やはり順位が40何番だかで奨学金は無理
という、私には明白だった事実を確認して帰ってきた。



母親は涙ぐむし、父親は

「おまえがもっと勉強していれば良かったんだ!!」

と怒るし。



長期休暇のたびに車で迎えに来て地図に川と山しか無く、
町内に書店が一軒も無い、駅すらない実家に連れ帰っていたのは
誰よ?


都内に残って、図書館を利用出来ればもっと勉強が進むのにさ。



それにテスト前日も当日も電話をよこしまくったのは誰なんでしょうね?


自分に都合の悪いことは忘れてしまい、ひとのせいにするという
両親であった。


(つづく)

~~ぐちっぽくなってしまい、暗い内容が続いていますが…

進路決定→現在に至るまでを自分の中でもまとめたいと
思うのでしばらくこれで続けます。