ニューヨークに恋をしたのは、今から約19年前。
ロサンゼルスの高校に通っていた当時16歳の私は、
easter breakを利用してニューヨークに住む家族の友人を訪ねていた。

初めてマンハッタンに降り立った時の感覚は今でも忘れない。

チャンス、成功、富。。。

若干16歳だったにも関わらず、その瞬間私は
「この街にいつか絶対に住む事になる」と強く感じた。

その時の感覚を忘れないよう、それから毎年ニューヨークに通い詰めた。

そして、2011年9月。当時テレビ局に勤めていた私は、同時多発テロの取材でニューヨークに飛んだ。事件発生後1週間あまり。飛行機の窓から見たかみたマンハッタンは煙りが立ちこめ、グランドゼロはゴムや死体の燃える臭いが充満し、すすだらけのWall Streetは、午前中にも関わらずゴーストタウンのように暗かった。

その後も毎年のようにグラウンドゼロを訪れたが、私の中でのニューヨークは少し変わった。憧れの街から怖い街になった。少し大人になった私には、ニューヨークで成功するのためには、とてつもない努力と実力、そして運が必要だという「現実」が見えてきたからだ。

2008年にフルブライト奨学金を頂きUC Berkeleyの大学院に留学したが、思ったほど私の足はニューヨークに向かわなかった。先の見えない自分というちっぽけな存在がニューヨークに行ってはならないような感覚に襲われた。それはまた、自分が自分に負けた瞬間でもある。

Berkeleyを卒業して4年、私は、その「恐ろしい街」の住人となった。Wall Street Journal AsiaのフェローとしてNew York Universityの大学院に進学するためだ。これまでロサンゼルス、DC、バークレーに移り住んだ時には全く迷う事はなかった私だが、世界で最も住みたい街だったはずののニューヨークへの引っ越しは正直、かなり躊躇した。生まれて初めて、東京での生活がとても楽で心地いいと感じていたし、生まれて初めて、今ある安定を投げ出したくないという恐怖心が働いたせいもある。

それでも私は、今、ニューヨーカーとしてここににいる。No risk, no return. リスクをとらなければ進歩はない。そしてニューヨークは私のチャレンジに最もふさわしい。

ビッグアップルに食われるのか、それともこちらが美味しくいただくのか。16ヶ月間の真剣勝負が始まる。