Winds of the Rhodopes/Elka Atanasova
(ERDENKLANG MUSIKVERLAG 91350)

弱冠19歳のブルガリア人女性ヴァイオリニストによるバルカン風味たっぷりのジャズロック作。

91年発表。

取り巻きの楽器編成もエレクトリック・タンブーラ(中近東系の弦楽器)を弾き倒す人やらデジタル・キーボードでベースからパーカスからアコーディオンから鳴らしちゃう人やら、ウードやサズ、各種民俗系パーカス、民俗系フルートに加えリュートやサックスも出来ちゃうスーパーマルチプレイヤーやら、曲者揃い。

一番普通の人はドラマーですかね。

アルバム前半は「ザ・ウェディング THE WEDDING」と題されブルガリアの結婚式音楽に則ったような変拍子と高速ビートを基調にした躍動的なジャズロック曲が続きます。

リーダーのエルカ他、バンドメンバーの皆さんエフェクトをギンギンに効かせまくってソロに超絶ユニゾンにとスポーティに駆け巡ってくれます。

エルカちゃんは美少女のくせに普通に(?)超絶技巧で、世界は広いなあと改めて実感させてくれます。

それよりも凄いのがウルトラスピードで駆け抜けるトルコ系ブルガリア人アテクハン・テオフィコフ・ウセイノフのエレクトリック・タンブーラ。

私がこのアルバムを買ったウェブショップでは内容を「イヴォ・パパソフ IVO PAPASOVがヴァイオリンを弾いているような・・・」という風に紹介していましたが、ウセイノフの大活躍ぶりで私にはジョン・マクラフリン JOHN McLAUGHLINのマハヴィシュヌ・オーケストラ MAHAVISHNU ORCHESTRAのバルカン版という風に感じられました。

もっとも、ドラムはビリー・コブハム BILLY COBHAM先生みたいに凄くありませんが。

どちらにしても、結構テンション高いサウンドしています。

「熊ん蜂の飛行」を模した「ハンブル・ビーズ・アンド・スコーピオンズ HUMBLE BEES AND SCORPIONS」やニコロ・パガニーニのテイストとブルガリアお得意の高速変拍子ダンス民俗音楽の要素をミックス、さらにギャンギャンのエフェクトも導入した「パガニンスキ・オーヴァードライヴ・ホロ PAGANINSKI OVERDRIVE HORO」がカッコ良くてオススメ。

アルバム後半は「トランスフォーメイション TRANSFORMATION」と題され、一転してアコースティックなド民俗タッチのセッションが展開されます。

これがまた高水準な演奏で、エルカが辺境風味バリバリのヴォイスを聴かせたりマルチプレイヤー、ファビオ・アックルソの民俗フルートやサックス、リュートなどがフィーチュアされたりと盛りだくさんな内容。

人によったらこちらの方に興奮を覚えるかも。

特に高速ナンバーの「レイディオ・プロヴディフ・トランジット RADIO PROVDIV TRANSIT」は最高です。

タイトルだけでもしびれちゃう方、いらっしゃるでしょう?

ラストの12分強に及ぶタイトル曲は、徐々にシンフォニックに盛り上がって行く、バルカン&宗教色の強い荘厳なナンバー。

シンプルなメロディがひたすら繰り返されるだけの曲ではありますが、不思議と惹きつけられいつまでも聴いていたいような気にさせられるのです。

19歳の人間が作れる音ではありません(笑)。

ほんっとに偶然に見つけて購入することになったのですが、これは当たりでありました。


Personnel:ELKA ATANASOVA(VLN,VO),ATECHHAN TEOFIKOV USSEINOV(TANBURA,E-TANBURA),FABIO ACCURSO(UD,SAZ,LUTE,PERC,SAX,WOOD-FL),ACHIM GIESELER(KBD),WERNER SCHMIDT(DS)

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(POLYDOR 527 207-2)


地球音楽史に燦然と輝くオランダのフラレックの『アライヴ』は、超絶技巧のオンパレードでかつアコースティックミュージックの極北と言ってもいい素晴らしいライヴアルバムの傑作です。

あちらはアクロバティックでユーモアに溢れたサービス満点のアレンジとマルチプレイが非常に楽しい内容となっているのですが、こちら『ライヴ・イン・アムステルダム』はフルート、ヴァイオリン、アコギ、アコベの各楽器奏者がより専門奏者としてのよりをかけ、アドリブのスペースも大きくとった「ジャズ+ブルーグラス+トラッド÷3」的な感じになっており、ストレートなバンドとしての凄みが、それはそれで伝わって来ます。

まだサードアルバムで、頂点『アライヴ』に至るまでに様々な試行錯誤を経たのだということが理解出来るのも面白いですよ。

「OOST-WEST EXPRESS」「ALOIFE」「VOORSPIEL IN SOFIA」「VARIATIES OP EEN DAME」などファースト&セカンド収録曲は今でも彼らの代表曲で、その音楽的キャラクターがデビュー当時からいかに強固なものだったのかがよく解ります。

新曲の「DE EERSTE DAG NA JE VETREK」は『アライヴ』でWEEKERSのバンスリ(インドの竹製フルート)ソロの超名演を生み出すことになるインプロヴィゼイション用のナンバー。

ピアソラ楽団における「AA印の悲しみ」みたいなものだと思えば良いような気がします。

こちらのテイクではソロも、終わり間際にタンゴになるのも、ちょっとテンションが低い感じ。

でも、はっきり言って演奏自体のレヴェルは超絶なのです。

いかに『アライヴ』が物凄いかということを痛感させられます。

逆に、かえってテンションが高まっているのが「VARIATIEAS OP EEN DAME」。

オープニングのHOUTZAGERのスーパーヴァイオリンソロ、CDが飛んでいるのかと勘違いさせる高速トリル&循環呼吸アプローチで迫るWEEKERSのフルートソロ、共に超一級のジャズミュージシャンとも肩を並べる素晴らしいレヴェルのアドリブで、本当に圧倒させられます。

特に後者の男女の会話を吹きながら再現する超絶おちゃらけパフォーマンスは笑えるぐらい凄まじいですよ。

『アライヴ』ヴァージョンの2倍近くの長さ、約20分に渡る大熱演。

「VOORSPIEL IN SOFIA」の中間部、小鳥や虫の鳴き声を全員で楽器で真似る、新手のアヴァンギャルド環境ミュージックみたいなパートも、観客は笑っていますが度肝を抜かれます。

しかしこのアルバムの一番のお薦めはセカンド収録曲の「DE VLINDER(蝶)」ですね。

哀愁のコード進行やメロディ、アドリブも含めて息もつかせぬスピード感とテンションのあるアレンジ、非常にバランスが取れた素晴らしいナンバーです。

このアルバムは、『アライヴ』の完成され尽くした音楽と比べると粗さやミスも目立つ演奏かも知れませんが、その分一人一人のそれぞれの楽器奏者としての実力とバンド黎明期のストレートな熱気をダイレクトに味わえる素晴らしい作品だと思います。

最近このフラレック、一度脱退したままになっていたキーマンのWEEKERSや初期メンバーのHANSを含めたリユニオン編成によるコンサートを行っているみたいですよ。

WEEKERS & ERIK VISSERコンビ時代のフラレックが最高!と思っておられる方は多いと思うので嬉しいニュースですね。

アルバムも出してくれないかな。


Personnel:PETER WEEKERS(FL,PICCOLO,AFL,BAUSURI,PANFLUTE,ETC),SILVIA HOUTZAGER(VLN,HARP,PANFLUTE),ERIK VISSER(AG,PANFLUTE),HANS VISSER(ABG,AG,PANFLUTE)

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Frank Zappa
You Can't Do That On Stage Anymore - Vol. 3

ザッパのライヴ録音アーカイヴズの中から最良の部分だけを集めたこの通称「ユー・キャント」シリーズの中で私が一番大好きなのがこのVol.3。

レイ・ホワイト、アイク・ウィリスという黒人ヴォーカリスト2枚看板、歌いまくりのベースラインが素晴らしいスコット・テュネスと超絶テクニシャンのチャド・ワッカーマンによるスーパーリズムセクションによるファンキーでサイバーなサウンド、分厚いコーラスが素晴らしい84年ツアー時の音源がほとんどを占めています。

ポップでハイセンス、それでいて演奏するのがとてつもなく難しいハイパーなザッパナンバーがたっぷり。

このツアーのバンドの演奏やプログラムはバンドの一体感が一番で、凄くコンパクトにザッパの複雑な音楽性が楽しめるんです。

息子ドゥウィーズィルとのステージ上での初のギターバトルを収録した、天にも昇るような感動的な南部風ナンバー「シャーリーナ」がオープニングで気分は嫌でも盛り上がります。

しかしそれにしても黒人2人のヴォーカルは凄まじく巧い、旨い。

レイが張りのあるゴスペル風、アイクがハスキーなブルーズタイプという対照的なのがまた良いのです。
声域も凄まじく広いですしね。

ポップミュージック史上最強のツインヴォーカルと断言してもいいです。

今また久しぶりに聴き返していますけれど、本当に名曲揃いだなあ・・・。

とにかくカッコいいザッパ流ブルーズロック「バンブーズルド・バイ・ラヴ」「アドヴァンス・ロマンス」、アレンジを変えてオーソドックスな意味でロック界を代表する感動の名曲に仕上がった「ルシール・ハズ・メスト・マイ・マインダップ」、変拍子キメ&ユニゾンが興奮を呼ぶ16ビートサイバーファンク「キープ・イット・グリーズィ」などなど、シャープなアンサンブルも冴えまくった快演てんこ盛り!

この84年音源のクォリティの高さもさることながら、あの『ロキシー』メンバーによる猥雑シャッフルブルーズロック「ディッキーズ・サッチ・アン・アスホール」ではマーフィ・ブロックがコクのあるのどで唸りジョージ・デュークがファルセットとメロウなエレピでむせび泣き、ツインドラムが炸裂、さらには伝説の大阪公演のこれまた伝説となったテリー・ボジオによるドラムソロの名演、スティーヴ・ヴァイ在籍時81年ハロウィンでのバカテク変態曲4曲メドレーなどなど素晴らしい演奏がオプションでどさどさ聴けます。

さらにさらに、ザッパナンバーの中で最も難しい曲と言われた「溺れる魔女」の81年と84年の最良ステージのつなぎ合わせヴァージョン、ジャズロックの名曲「キング・コング」の20数分に及ぶ82年と71年のミックステイクが超目玉!

歌ものとして素晴らしい84年ツアー曲がたっぷり聴けるというのに、他の曲も負けず劣らず凄いんですから。

彼がいかに幅広い音楽センスを持っていたかの何よりの証左ですね。

そして、こんな素晴らしい曲のセレクティングをしてくれたザッパに感謝です。

本当に大好きな大好きな「編集」もの、未発表録音の発表かくあるべしの見本のようなアルバムです。

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相互リンクさせていただいているブログ様、Progressive Cafe様 が開店2周年を迎えられました。
それで、記念企画としてオーナーでいらっしゃるfrancofrehley様が「プログレ・バトン」を発案されました。
というわけで早速やってみま~す!



Q1)プログレとの出会い

父に初めて買ってもらったレコードがジェネシスの『インヴィジブル・タッチ』でした。どうも彼らが「プログレ」というジャンルに属するバンドであるらしいことから興味を持ったのです。CMで流れてヒットしていたタイトル曲なんかも好きでよくリピートしていましたが、それよりもはまったのがラスト曲の「ザ・ブラジリアン」。どうも最初からおかしかったみたいで(笑)。さらに難波の某レコードショップに行くと置いてあるんだ、『マーキー』誌や『ユーロ・ロック集成』が。それからはどっぷり、ですね。


Q2)思い入れの深いバンドorアーティスト

ジェントル・ジャイアント!美しく複雑なコーラス、マルチプレイ、ポップなメロディと私が求めているもの全てを満たしてくれた驚異的なバンドです。奇跡!


Q3)思い入れの深い作品or曲

マグマ『ライヴ』、ジェントル・ジャイアント『プレイング・ザ・フール』、フラレック『アライヴ』などなど・・・・。絞り切れませ~ん!曲としてはイエスの「シベリアン・カートゥルー」なんかが素晴らしい完成度だと思っています。


Q4)Progressive Cafe(またはプログレ系のブログ)がきっかけで知り、気に入ったバンドor作品

エストニアのRUJA。ただのブルースロックのものもありますが、シンフォニックに盛り上がる面白い曲が結構あります。有名なジャズピアニスト(レイン・ラナップ)がメンバーだったので驚きました。


Q5)最近よく聴くバンドor作品

上記RUJAの5枚組ボックス、ポーランドのニェメン、ブラジルのエルメート・パスコアゥ、イタリアのゴブリンのサントラものなどです。

Q6)最近行ったプログレ系コンサート

コンサートにはもう何年も行けてません!地理的経済的理由により・・・・(泣)。


Q7)最初聴いた時は駄目だったが、改めて聴いたら良かったバンドor作品
うーむ・・・・・。ちょっと思いつかないですねえ。ごめんなさい。


Q8)プログレと言ったらどこの国?

好きなバンドが多いというわけではないのですが、これはもうイタリア!普通のロックまでプログレしている稀有な国だと思います。蛇足ですがジャズロックというとフランスです。


Q9)プログレ初心者にまず聴かせたい作品

ブラッフォード『ワン・オブ・ア・カインド』、イエス『イエス・ソングス』、ゴブリン『プロフォンド・ロッソ(サスペリア2)』


Q10)あなたにとってのプログレ

ジャズと並んで最初にはまった音楽。作曲も時々しますが、自分の中にプログレのルーツが色濃く根付いているのを感じます。




結構私にしてはありきたりかな?
ところで、バトンを勝手にこちらの指定で渡させていただきたいと思います!

ナゴヤハロー様!

プログレ方面に深い造詣と情熱をお持ちのあなた様にぜひこのバトンを受け取っていただきたいと思っております。

詳しいルールに関してはProgressive Cafe様のこちらの記事 をご覧下さい。

よろしくお願い申し上げます。

Frank Zappa
Joe's Garage: Acts I, II & III

ザッパの長~い黄金期の中でも一際輝く傑作が、この『ジョーズ・ガレイジ』でしょう。

宗教上の問題でザッパと揉めて脱退してしまった敬虔なカソリックのレイ・ホワイトに続き、その後大活躍したエイドリアン・ブリューがこれまたキング・クリムゾンへの加入のため脱退、ヴォーカリスト不在の苦しい時期をツイン・ベース編成などで乗り切った直後の録音です。

ブルーズィでファンキーな声と、ホワイトに負けない抜群の声域と歌唱力が魅力の新ヴォーカリスト、アイク・ウィリスと、後のデュラン・デュランに参加するギタリストでまだ無名、本作以前のザッパレパートリーを全て暗譜し弾けたというウォーレン・ククルーロ、さらには当時売り出し中で、複雑なルーディメントを大量投下、難解なスコアも読めおまけに超絶のポリリズムをロックのスピリットで叩き倒すことが出来るというスーパードラマー、ヴィニー・カリウータという3種の神器をまとめて手に入れ、3ヴォーカル4ギター2キーボードという素晴らしく分厚いアンサンブルが可能になったザッパバンドの本気モードが2枚組にたっぷり2時間近く収録されています。

「びしょ濡れTシャツナイト」「ルシール・ハズ・メスト・マイ・マインド・アップ」「キープ・イット・グリーズィ」「アウトサイド・ナウ」などのザッパソングの代表曲が多数収録されていることに加え、何と言っても注目はギターインストの歴史に残る名曲と思しい「ウォーターメロン・イン・イースター・ヘイ」が収録されていることです。

曲間をザッパのエフェクトをかけた朗読でつなぎ、さらには歌パートの後に壮絶なギターインプロヴィゼイションを展開させるという全編通したコンセプトアルバムとなっており、彼独特の猥雑でかつ近未来的な世界観を垣間見ることが出来ます。

それにしても、ギターソロパートの鬼のような変拍子は明らかにバルカンの民俗音楽からインスパイアされたもので、それを民俗楽器奏者ではなくどんなジャンルも対応出来る天才的なテクニシャンを集めて「ロック」として演奏していることのカッコ良さ、先見性には痺れるしかありません。

カリウータがあまりに複雑なポリリズムインプロヴィゼイションを叩き込むので、あの難曲「溺れる魔女」をただ一人ステージでミスなく完演したというバカテクベーシストのアーサー・バロウもさすがにルートを弾いて拍子を数えるだけに追い込まれたという壮絶なリズムセクションに、ミニマルにリフを弾き続けるククルーロやデニー・ウォリィの正確さが生む恍惚、そしてその上を傍若無人に太く伸びるトーンでかっ飛んで行くザッパ!

これは古今東西を見渡してもどこにもない音世界ですし、個人的にはマイルスのエレクトリックバンドなんかよりよっぽど凄いと思っています。

そして参加した天才どもも一度は必ず音を上げるというウルトラ複雑怪奇なアンサンブルも、このアルバムからまた新しい形を完成させており、ポップなメロディで誰でも歌えるのにもかかわらず譜面上では難解な奇数連譜や変拍子が炸裂しているという作曲の天才もある種の頂点を極めています。

それにしてもバロウとカリウータはロック界最強のリズムセクションの一つと言ってもいいのではないでしょうか。

地味ながら恐るべきテクニシャンで、えげつないケロケロ音のスラップもファンキーなバロウとあのザッパも手放しでほめたカリウータ。

シャープでテクニカルで、それでいてたまらなく「ロック」で、もう最高です。

しかし「アウトサイド・ナウ」「ウォーターメロン~」のミニマルな変拍子ギターリフの天に昇るような美しさは、ザッパがただ複雑で攻撃的なサウンドクリエイターというだけでなく、独自の美の世界を持っていたという何よりの証拠です。

この「美しいアルペジオ+ミステリアスなメロディ+変拍子」というスタイルは、私の初オリジナルの礎となりました。

それだけでなく、後者なんかいまだにフルート、ヴィブラフォン(かピアノ)、ベース、ドラムみたいな編成でカヴァーしたいぐらいです。

メロディもリズムもギターソロも、端から端までザッパだけにしか出せないサウンドがぎっしり詰まった大傑作。

人類の遺産と呼ぶべき作品ですので、皆さんぜひ聴きましょう!


Personnel:FRANK ZAPPA(G,VO),IKE WILLIS(VO,EG),WARREN CUCURULLO(EG,AG,E-SITAR),DENNY WALLEY(VO.EG,SLIDE-G),TOMMY MARS(KBD),PETER WOLF(KBD),ED MANN(VIB,MARIMBA,PERC),ARTHUR BARROW(EB),VINNIE COLAIUTA(DS),DALE BOZZIO(VO)

Flairck
Alive

誰が何と言おうと、人類の宝となるべき傑作と断言します!

私がこの超絶ライヴアルバムに出会ったのは高校生の時でした。

某Mという、今は見る影もなく変貌してしまったプログレ雑誌があるのですが、それに載っていて興味を持ったのが、このバンドの『ジ・イミグラント』というアルバムでした。

それを聴いてみると非常にポップな、それでいて私のツボであるトラッドタッチのメロディの佳曲が多く収録された名盤でした。

ただ、そのあまりにこなれた超絶技巧が逆にその凄さを解りにくくしているというきらいがあり、楽器技術も未熟だった私には絶賛されている彼らのバカテクぶりがよく解りませんでした。

そんな時、どこで出会ったかもう忘れましたが、このアルバムを中古で買ったんですよ。

その頃の私は長い曲が好きだったのでつい2枚目のトップナンバー、26分弱に渡る「DE EERSTE DAG NA JE VERTREK(あなたが去る日)」から聴いてしまったんです。

いや~、これは良い選択でした。

もうぶっ飛びましたね。

ゆったりとしたベースとアコギの美しいイントロからヴァイオリンのアドリブが始まり徐々にスピードアップ、いったん爆裂するところまでが導入部(笑)で、それまででももう全然物凄いのですが、そこからの展開はもう音楽史に残ると言ってもいいです。

まずはPETER WEEKERSの吹くバンスリ(インドの竹製フルート)によるシンプルなメロディ提示が行われ、再びチーターダッシュ!

ここから始まるバンスリソロに勝るフルート系のアドリブを私はまだ聴いたことがありません。

音使い自体はシンプルで非常にメロディアスなのですが、途中からおもむろにローランド・カーク張りのブレスを使い出しテンションを徐々にアップして行きます。

このソロ、私はそらで歌えますよ。

それぐらいに衝撃的でしたし大好きなんです。

しか~し、このソロの素晴らしいのはそれだけではないのです!

ERIK VISSERによるアコギバッキングが輪をかけて凄まじいのです。

いやもう、手首どうなってんの?ってぐらいに物凄いスピードでカッティングしています!

こんなスピードのアコギカッティング聴いたことないです~。

もうジューダス・プリーストのツインギターやスラッシュバンドも目が点のスピード。

弦が切れないのが不思議なぐらいの超熱演なのです。

これも衝撃でした。

さすが自ら「アコースティックヘヴィメタルロックバンド」を名乗るだけあります。

この曲、さらにブレスパーカッション奏法を高速で駆使したセカンドバンスリソロもあるし、バカウマのウッドベースソロもあり、とどめのギターカッティングソロもあり・・・・・もう堪忍して!

とまあ、これだけでいきなりノックアウトされちゃったんですが、このアルバム、前述『ジ・イミグラント』からの代表曲他、彼らのベストテイクと言ってもいい名曲ばっかりなんですよ。

本当にどれもがメロディが自然に体に沁み込んでしまうような名曲ばかりで、高校の時よくピアニカやリコーダーでコピーしました。

吹いているだけで気持ちのいい、そんな旋律ばかりなのです。

しかもお得意のトリッキーなアレンジや、スタジオ版にはなかった白熱するアドリブなんかがてんこ盛りになっていて、本当にアコースティックミュージックの頂点、極北と言うべき物凄い演奏となっています。

全員が木の靴を履いてステージを踏み鳴らしリズムを作ったり、アンクルンというフィリピンの打楽器を順番に振ってメロディを奏でたり。

ビンに水を入れて音階を作り、それを高速で吹く、というエルメート もやっているテクもあります。

以前見たチリでのライヴ映像では、女声ヴォーカリストが踏むタップを後からエレベがスラップで再現するという超絶パートや、アコーディオンを机に置いてタイプライターを打つように弾いたり、さらには有名な女性をフルートに見立ててPETERがマウス・トゥ・マウスで吹く、というのもやっていました。

そしてこのバンドのもう一つ凄い点は全員のマルチプレイ!

ジェントル・ジャイアントよろしく、様々な楽器を持ち替えるのです。

まさに音のサーカスと言うべきですね。

ことアコースティックに限って言うなら、超絶の技巧に裏打ちされたユーモア、そして密度の濃いアレンジ、アドリブの素晴らしさという点で、アメリカのデイヴィッド・グリスマンの音楽と双璧をなすのではないかと思います。

多分どこの国の人が聴いても、老若男女たくさんの人が分け隔てなくその凄さと楽しさが解ると思いますし、楽器をやる人間なら何度聴いても打ちのめされるのではないでしょうか。

また、ヨーロピアントラッドの伝統を感じさせる独特のメロディとムードがまた素晴らしいんですよね。

トラッドナンバーのカヴァーも、最高なんです(「ブラックスミス」を聴いて下さい!)。

このフラレックもWEEKERSが脱退してしまい、まあ相変わらず凄いは凄いのですが一時期の勢いみたいなものがなくなったような気もします。

ザバダックから上野洋子が抜けたようなものでしょうか。

WEEKERSとERIK VISSERのコラボレイションが一番充実していたこの頃のライヴが2枚組130分近いヴォリュームで残されたことに、感謝するしかありません。


Personnel:ERIK VISSER(AG,BANJO,SITAR,TIMPANI,PERC),STAN STOLK(WB,A-B,PERC),PETER WEEKERS(FL,PICCOLO,ACCORDION,MARIMBA,PERC,ETC),SYLVIA HOUTZEGER(VLN,ACCORDION,LYRA,HARP,PERC)

(ZONE RECORDS 099/3)


マケドニアのプログレッシヴジャズロックの雄、レブ・イ・ソルのリーダーで超絶ギタリスト、ヴラトゥコ・ステファノフスキのギタートリオバルカンハードジャズロック(笑)アルバムです。

このヴラトゥコ、本国ではVIP待遇だそうで、さすがヨーロッパ(こうカテゴライズすると怒られるんでしょうか、今は)、ミュージシャンへの評価がどこぞのアジアの島国とは全く違いますね。

しかしこの人、とにかく巧い。

オープニングナンバーが出来損ないのハードグランジみたいな感じで、ヴラトゥコ自身によるダルなヴォーカルが飛び出してくるので、何だこんなアルバムなのか?とガッカリしたところでいきなり飛び出してくるギンギンのノイジーな超絶ソロ。

落差が凄いだけにむちゃくちゃカッコいいのです。

さり気に変拍子だしなあ。

このアルバム、バルカンのミュージシャンらしくとにかく奇数拍子や複合拍子三昧。

ヴラトゥコはそれら圧倒的な高速音数過多グネグネカクカクリズムに乗って、様々な音色と演奏法を駆使し、とても一人のギタリストが弾いているとは思えないほどの多彩さで弾きまくります。

さらに、エレギやアコギ、ミディギターや民俗弦楽器を一緒くたに重ねたりして他のどこにもない、普通のギタリストが多重録音したものとは全く違う音世界を作り出してもいます。

個人的には、ミディギターに民俗楽器の笛の音色を出力させて本物そっくりに弾く部分に痺れました。

そのチョーキング、アーミング、トリリングの超人的な細かさには気が遠くなりそうです。

また、バルカンならではのオロ(ホロ)系の高速トラッドダンスチューンのハードジャズロックヴァージョンでは腰が砕けるほど踊り狂い、首の筋を違えるほどヘッドバンキングしたくなること請け合い!

傑作、というのとはまた違うかもしれませんが、一度聴いてしまうとまた絶対に聴きたくなる類のスルメアルバムです。


Personnel:VLATKO STEFANOVSKI(EG,AG,MIDI-G,VO,DOBRO),MIHAIL PARUSHEV(DS,PERC),ALEKSANDAR POP-HRISTOV(EB),ANA,KATE,SANDRA,GORDANA STEFANOVSKA(VO)

(POLYDOR 2925 135)


皆さんはこのオランダのアコースティックプログレッシヴロック集団、フラルックをご存知でしょうか?

VISSER3兄弟を中心としたバカテクグループで、アクロバティックなアンサンブルに各種トラッドやジャズ、クラシックの要素を巧みに盛り込んだ愛らしいメロディ、そしてサーカスばりに楽しい反則的パフォーマンス(女性をフルートに見立てて口づけして吹く、アコーディオンをテーブルに置いて、タイプライターを打つようにして弾く)などなど魅せどころ満載の驚異のバンドです。

日本に紹介され始めた頃は、ちゃんとオランダ語発音に近い「フラレック」となっていたのに、いつの間にか勝手に英語読みの「フレアーク」が流通してしまっているのは悲しい限りですが・・・・・。

私が初めてこのバンドを知ったのは、彼らの10作目で、もともとは『10』という題名だった『ジ・イミグラント』というアルバムでした。

本当にこのアルバムは名作で、彼らの代表曲がぎっしり入った素晴らしい作品でして、ブラジルのエルメート・パスコアゥなんかも得意とする、ビンに水を入れてパンフルートのように吹いたりする技などを駆使して、キャッチーで子どもから老人まで楽しめる、でも誰にも真似の出来ない超絶アンサンブルを聴かせています。

瞬く間に魅せられた高校生の私は、以後彼らのアルバムを見つけては即購入、という誠にオタクな青春を歩むわけです(笑)。

そんなフラルックファンの私にとって難関だったのがこのオーケストラとの共演ライヴアルバムでした。

フラルックも時々メンバーを替えるので、このアルバムでは女性ヴォーカリストNELLEKE BURGとパーカッショニストのTED de JONGを加え、2枚組ライヴの『アライヴ!』の「ヴァリエイション・オン・ザ・レイディ」における超ロングバンスリソロで私をノックアウトしたフルートのPETER WEEKERSが抜けたセクステット編成です。

レコードの方はポリドールなので、なぜか私の目には触れなかっただけで(笑)それなりに出回っているようですが、CDはファンクラブ限定販売で相当レアなようです。

ちなみに私が持っているのはレコードの方です。

ジャケのオーケストラと、その前に持ち替えで各メンバーが演奏する数々のアコースティック楽器や民族楽器(シタールやタブラまで!)がずら~りと並べられた写真は圧巻。

どんな凄い音が飛び出してくるんだろう?と嫌が上でも興味をそそられます。

収録曲はたった2曲。

両方とも26分強の大曲です。

これだけでもうプログレファンはうぐぐ、ですよね。

1曲目「ANDERS dan ANDERSEN」は書下ろしの幻想的な歌もの組曲です。

NELLEKEのキュートで澄んだ歌声とオーケストラにより倍化された怒涛の迫力のカミソリのようなアンサンブルが素晴らしい対比を見せ、琴線に触れるメロディが素晴らしいです。

2曲目の「GEVECHT MET de ENGEL」はセカンドアルバムの全収録曲を再構成し直した組曲で、こちらはインストのみ。

あのマグマ にも匹敵する超強力なバカテクゴリゴリパートが凄いスピード感を伴って飛び出してくる傑作。

ヴァイオリンを優雅に弾きたい、あるいはギターを軽やかに爪弾きたいといった少年少女に聴かせるのは止しましょう。

トラウマになります。

ラストの大盛り上がりもお得意のパターン。

当夜の観客の興奮が伝わってくるような熱演です。

プログレのオーケストラ共演ものも多数ありますが、私は比較的ジャズっぽいものが好きなので、そういう点から見ても、このアルバムと、スウェーデンのヤンヌ・シャフェールやビョルン・ジェイソン・リンドが組んだバンド、HORSELMATがオーケストラと共演したライヴ『GARLEBORGS SYMFONIORKESTER』とはオケものの双璧をなすと思っています。

もし見かけたら、絶対に購入をお薦めします!


↓これは文中でも触れた超絶ライヴ盤『アライヴ!』です。何と日本での録音もあります。


Flairck
Alive

Personnel:ANNET VISSER(FL,A-FL,PICCOLO,ACCORDION,etc),ERIK VISSER(12STRINGS-AG),HANS VISSER(AG,ABG),SYLVIA HOUTZGER(VLA,5STRINGS-VLA,HARP,etc),NELLEKE BURG(VO,TP),TED de JONG(TABLA,MARIMBA,VIB,PERC),and ORCHESTRA

Harmonium
Si on Avait Besoin D'Une Cinqu

聴き直したわけではないのではっきりおぼえていないのですが、このカナダのプログレッシヴフォークトラッドバンド、アルモニウムのこのセカンドアルバム、『レ・サンク・セゾン(5つの季節)』は大変に素晴らしいアルバムで、高校の時にこれまたウォークマンで繰り返し繰り返し聴いていた記憶があります。

カナダで、フランス語、と来ればまたこのバンドも例外なくケベック州のバンドなわけですが、だいぶ前にプログレた不良どもでご紹介したオパス・サンク もまたケベックのバンドで、大変に素晴らしいバンドでした。

エト・セトラなんかもいますし、カナダ仏語圏は名プログレッシヴバンドの宝庫ですね!

しかし英語圏にはこれまたラッシュ やサーガがいますし、カナダは素晴らしいプログレ大国だと言えるでしょうね。

このアルモニウムは、フォーク&トラッドの手法を非常に色濃く残した、と言うよりもほとんどトラッドバンドと呼んでもいいアコースティック指向のバンドで、メロディもそっち系の美しくたおやかなフィーリングのものです。

そこになぜか乗っかる幻想的なシンセ。

この、普通にスタイリッシュにならないところが、プログレ的発想なんですね。

曲も微妙に変拍子が使われていたり、名人芸とも言える美しいコーラスワークで魅せたり、プログレ好き者を刺戟する要素がたっぷり。

特に今でも歌えてしまうトップナンバーは屈指の名曲と言ってもいいでしょう。

と、いうことは・・・・・?

そう、1曲目が名曲のものに駄作なし!はここでも生きていました。

フランス語のせいかも知れないのですが、柔らかいイメージの男性メインヴォーカルも素晴らしい。

みんな生楽器でこれだけ聴かせるのですから、かなりのテクニシャン揃いとみていいでしょう。

デイヴィッド・グリスマンの音楽にも通じる複雑に絡まりあったアンサンブルもまた、このバンドの魅力です。

このプログレ史に残る美しい名盤を残したあと、さらに彼らはプログレた不良度を増し、サードでは2枚組の、果てしなく幻想の世界を飛翔するこれまた大傑作を残しています。

また聴きたくなりました。

いつまでも残る、それぐらいのジワジワインパクトがある、そんなアルバムなんです。


(SUPRAPHON 1115 4246 H)


ヨーロピアンの代表的ネタ系アルバムとして名高い、チェコのプログレッシヴフュージョンバンド、ジャズ・フラグメント・プラハのファーストをご紹介しましょう。

鍵盤担当のアレシ・ファイクスがリーダーで、70年代半ばに結成されて以来、チェコシーンではカリスマ的な人気を誇っていましたが、何と本ファーストのリリースは結成後10年経ってからでした。

数え切れないほどのステージを経て練りに練られたアンサンブルはまさに鉄壁で、あの東欧のヤバいリズムがビンビンと迫り倒してくる凄まじいアルバムになっています。

メンバーは鍵盤、フルート、ヴァイオリン、ベース、ドラムのクィンテット。

チェコ独特の畳み掛けてくる変拍子とスペイシーなサンバグルーヴパート、ガチャガチャした音数の多いリズムセクションと目まぐるしいリフ、とプログレた不良どもにはシンナーのように魅力的な要素がたっぷり詰まっています。

本作ではさらに2人の個性が違うフルーティストをゲストとして迎え、彩りを添えています。

さらにさらに!

このアルバムのもう一つの売りはポーランドのウルシュラ・ドゥヂァク 、ブルガリアのリモナ・フランシス らと並ぶ旧共産圏を代表する女性スキャッター、ヤナ・コウブコヴァーのゲスト参加でしょう。

その参加曲「ロマンス」では彼女の超絶スキャットに乗せられて、ベースのペトル・ドゥヴォジャークなんかもブイブイ唸りを上げて弾き倒しています。

イントロのファイクスのピアノも大変に美しい、スピーディサンバで宙を舞う東欧系を代表するネタものと言っていいのではないでしょうか。

しかし1曲目「アナコンダ」のオープニングフレーズ、ハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲みたい。

それにしても思うのは、こういう東欧のアルバムを聴くとこの辺の国の人たちにはクラシックがしっかり素養になっているんだな、ということです。

これは必ずしも影響から脱し切れていないとか、正式に教育を受けたということを意味するものではないのですが、私たち日本人とでは日常からクラシックを聴いている数が違う。

西洋的音楽体系の粋であるクラシック音楽を普通に聴いて育ってきている上、おまけに東欧は民族色豊か。

そのような色々なバックボーンがカオスとなって混ざり合っているからこの地域の音楽はこんなにも面白いのでしょう。

本作は、そんな摩訶不思議エリア東欧を代表する傑作の一つなのです。


Personnel:ALES FAIX(KBD,Pf),MILAN PEKNY(E-VLN),MARTIN BRUNNER(FL),PETR DVORAK(EB),PETR REITERMAN(DS,PERC),MUSA IMRAN ZANGI(PERC),JAROSLAV SOLC(FL),JIRI SILHAN(FL),JANA KOUBKOVA(VO)