先日のポーランドジャズCDコンサート@吉祥寺MEGの前日に、間もなく閉店する阿佐ヶ谷のMPB-Storeに行って、私にとって憧れのブラジル音楽紹介の神様、ケペル木村さんにお会いして来ました。

途中でお客様として来られたアシェー AXEというジャンルにおける、ただ一人の日本のプロシンガーという斎藤美由紀さんもまじえ、夜中近くまでワインを飲みながらブラジル音楽や音楽全般、あるいはケペルさんの出て来るわ出て来るわの秘蔵エピソードを楽しませていただきました。


そのケペルさんとは、実は私もユーレイ会員として所属している津軽ボサ友の会経由でお知り合いになれたのです。

もちろん、一ブラジル音楽ファンとしては長い間憧れの方でしたが。

ケペルさんは八戸のフェスティヴァルなどもおやりになったり、青森とは結構深い縁をお持ちなのです。

そんな今年も、またワークショップをやりに弘前に来て下さいます。


以下、その詳細です。

弘前市や青森県にお住まいの方、あるいは当日ご旅行で弘前にお寄りの方はぜひぜひ!

ケペルさんの楽しいトークや誰をも魅了する温かいお人柄、そして素晴らしいブラジル音楽を聴きながら、楽器演奏も体験しちゃいましょうという贅沢なイヴェントですよ~。



オラシオ主催万国音楽博覧会

BOSSAMIGO 2011 WORKSHOP in HIROSAKI
「ケペル木村といっしょに愉しむサンバ・ボサノヴァワークショップ」

9月5日(月)
Cafe TubeLane
19:00 START 18:30 OPEN

charge 1,500 yen
全席自由(1Drink付),ブラジル料理(ムケッカ)500yen


飲食・交通についてのお問合せ
カフェ チューブレーン
青森県弘前市土手町1072F
TEL: 0172-35-9515
http://ameblo.jp/tubelane/

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ごくごく内輪の、試験的なイヴェントだったのですが、先日12月22日に青森県弘前市のカフェTube Laneさんで「世界のブラジル音楽」っていうCDコンサートをやって来ました。

内輪というのは、「津軽ボサ友の会」っていう、私が最近参加することになった同好会で、先日Movable Typeブログ大賞グランプリを見事獲得されたnarajinさんもメンバーなのです。


↓Tube Laneさんに関してはこちら

http://ameblo.jp/tubelane/


↓narajinさんのブログ

http://narajin.net/



で、せっかくですから当日のプログラムをご紹介します。

「世界のブラジル音楽」というテーマは、ブラジル音楽の面白さ・素晴らしさを知るにはもちろん本場のミュージシャンによる演奏を聴くのが最高だろうけど、この国の音楽がどれだけ世界中に愛されているか、ブラジリアンナンバーの他国でのカヴァーヴァージョンを聴けばよく解るんじゃないか、という狙いがあって定めたものです。

とは言え、かな~り難しかったですが(笑)。



第1部:Antonio Carlos Jobim Songbook「何だかんだ言ってもまずはジョビンでしょ」

いきなりよく知らない曲をかけるのも引きが悪いので、やっぱり有名なジョビンさんの残した宝石たちにご登場いただくことにしました


1.Agua de Beber/Ben Sher and Tudo Bem from Album"Please Take Me to Brazil"

  アメリカのギタリストの快作より。Luciana SouzaのVoが効いてます


2.Samba do Aviao/Raphael Rabello with Paco de Lucia from Album"Todos os Tons"

  ギターの天才の一騎打ち!アレンジはPacoなので熱血フラメンコになっちゃってます


3.Oczy Masz Niebieszko-Zielone/Wanda Warska from Album10CD-Box"Piosenki z

                                            Piwnicy"CD1"Pani Roza"

  ギャグのつもりはなかったんですが、これはかなり受けましたね。おそらく世界で最もカヴァーされているだろ

  うジョビン曲「イパネマの娘」のポーランド版です。ムード歌謡っぽい演奏が笑いを誘っていました。私としては  

  ポラ語の美しい響きがいいかなーと思ってこれ選んだんですけれど


4.Quiet Night Quiet Stars/The Oscar Peterson Trio from Album"We Get Requests"

  カナダの天才ピアニスト、ピーターソンのこの名盤もジョビン曲から始まるのです


5.Samba de Uma Nota So/Zeuritia from Album"Zeuritia"

  チェコの新鋭シンガーのかわいらしいカヴァー

  ↓

  詳細はAnimal MusicのHPへ!

  http://www.animalmusic.cz/en/


6.Insensatez/George Garzone from Album"Alone"

  あのマイケル・ブレッカー Michael Breckerも尊敬し倒していたイタリア系アメリカンのテナーマスターによるカ

  ヴァー。抑制の効いた大好きな演奏。夜の都会の雰囲気


7.How Insensitive/Janusz Muniak from Album"One and Four"

  これも変にゆったりしたリズムの演奏。ポーランド人はどんだけひねくれもんなんだ?若き日(まだ若いけど) 

  のレシェク・モジュジェル Leszek Mozdzerの恐るべきピアノソロが聴きもの



第2部:Brazilian Genius Songbook「どれだけいるの?ブラジルは名作曲家の宝庫!」

ジョビン曲で軽く耳をほぐした後はいよいよちょっとマニアックな名曲編へ


1.Lolo(by Egberto Gismonti)/Gil Goldstein from Album"City of Dreams"

  鬼才エギベルト・ジスモンチのわくわくするような名曲を、名アレンジャー、ギルのカヴァーで。私はこの曲を

  聴くとつい口笛でメロディをなぞってしまうんですが、プロで本当にそれをやっている人がいます

  ↓

  くちぶえヴァージョンよん♪

くちぶえ天国/分山貴美子

2.Tristeza(by Haroldo Lobo)/Samba Trio from Album"Tristeza"

  クラブシーンでもよく知られた、スペイン系オランダ人?による謎のバンドのアッパーなヴァージョン


3.Kathy(by Moacir Santos)/Horace Silver from Album"In Pursuit of The 27th Man"

  私的には一押しだったのですが、反応薄かったかな?最新号のジャズ批評届いたので読んでたら、音楽プ

  ロデューサーの島田奈央子さんのインタヴューが掲載されていて、彼女が最近作ったコンピにこの曲入って 

  たんで嬉しくなりました

  ↓

  島田さんのコンピ

Something Jazzy~毎日、女子ジャズ。/オムニバス

4.The Face I Love(by Marcos Valle)/Karen Edwards & Jarek Smietana from

                                             Album"Everything Ice"

  激レア盤をむりやりかけて、自分のコンサートの希少価値を高めようというこのさもしい魂胆(笑)


5.Samambaia(by Cesar Camargo Mariano)/Duo from Album"Duo"

  昔から大好きなアルバムより、昔から大好きな曲を。私はショーロ・クラブをEPOのアルバムで知ったという変

  り種です


6.Flor de Lis(by Djavan)/Gretchen Parlato from Album"Gretchen Parlato"

  ファッションセンターしまむらのエピソードは受けました。でもこの演奏は本当に素晴らしい

  ↓

  しまむらについては私のレヴューをどうぞ!

  http://ameblo.jp/joszynoriszyrao/entry-10636866504.html


7.Tombo in 7/4(by Airto Moreira)/Michel Camilo Trio from Album"Suntan"

  Bellini"Samba de Janeiro"のメインメロディとしてサッカー番組なんかでかかりまくってました。ので、絶対に

  食いつきがいいと思ってトリに持って来たんですが、知っている方がほとんどいなかった・・・・

  ↓

  Bellini版のヴィデオクリップ。これぞブラジリダーヂ!

  http://www.youtube.com/watch?v=Bx1iclqbNyM

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(VELAS PRODUCOES 11-V240)


MPB界きっての不世出の天才ソングライター、イヴァン・リンス IVAN LINSは、自身の八面六臂の活躍は言うまでもないのですが、何よりも感謝したいのが自前のレーベル、ヴェラス VELASを立ち上げてくれたこと。

素晴らしい功績ですよ、これは。

特に私にとっては、不協和ボッサの錬金術師エドゥアルド・グヂン EDUARDO GUDINと美声シンガー、ヴァニア・バストス VANIA BASTOSの黄金コンビがこのレーベルからたくさんの傑作を出してくれたから、と声を大にして言いたいのです。

この作品もVELASからの発表で、BASTOSとGUDINの2人が選び出した天才的アレンジャーにそれぞれ1曲ずつ(GUDINのみ2曲)アレンジを担当させた16曲が並ぶ、という何とも贅沢なアルバムなのです。

アルバムのコンセプションとプロデュースはGUDIN。

マリオ・マンガ MARIO MANGAやアヒーゴ・バルナベー ARRIGO BARNABEといった彼ら寄りの変態系アーティストもいれば、テオ・ヂ・バーホス THEO DE BARROSやジャキス・モレレンバウン JACQUES MORELEMBAUMにアミゥソン・ゴドイ AMILSON GODOYら正統派の超実力者もいて、そのアレンジャー陣の名前だけ眺めていても充分お釣りが来てしまうような気分にさせてくれます。

編成はピアノトリオ、弦楽四重奏団、フルートにクラリネット兼サックス、パーカッション、曲によりヴィオラォンやハープが加わる、という完全アコースティックで、それもまたこのアルバムのゴージャスなところなのです。

しかも収録曲もいいんですよ!

私の一押しは何と言ってもエドゥ・ロボ EDU LOBOのドラマティックな「アヴェ・ハラ AVE RARA」ですね。

シンフォニックなネゥソン・アイレス NELSON AYRESのアレンジも最高!

クロージングなんかフルートの哀愁が効いてほとんど『ルパンIII世カリオストロの城』の世界。

BASTOSとパーカスだけのパートを途中に設けるなど、ダイナミズムも計算され尽くしています。

都会的でジャズィなアダルトボッサ「リンダ・ヂ・ルーア LINDA DE LUA」もカッコいい!

BASTOSの歌唱も、クールな中にほのかなエロティシズムを漂わせ、この曲の世界を良く表現しています。

気をつけていないと旋律が音の引力をしゅるしゅると離れて行ってしまうような独特の危うい美の世界で人気の高いギンガ GUINGAの「ショーロ・プロ・ゼー CHORO PRO ZE」の収録も嬉しいですね。

この曲も相変わらず常人では考えつかないようなメロディ展開と、その歪みゆえのきれいごとではないリアリティ溢れる美しさが炸裂。

「ミゥ・ヴェゼス MIL VEZES」はGUDINが作編曲両方担当しています。

彼らしい、不思議なコード進行にこの上もなく愛しいメロディが乗っかる、地面から少しだけ浮いた辺りを歩行するような感じのするボッサで、あったかい気分になりますよ。

それにしてもトリをブラジルを代表する変態君BARNABEの暗黒スキャットインストにするなんて(笑)。

まあ一瞬で終わるナンバーなのですが、人を不安に陥れるこのラスト、ある意味何よりも雄弁ですなあ。

このアルバムの良いところは私の好みで挙げたそれらのナンバーだけでなく、ピシンギーニャ PIXNGUINHAとか古い時代のアーティストの曲も採り上げていることですね。

これ見よがしの選曲でも編曲でもなくどっしりと地に足が着いたサウンドですし、それでなければ却ってこういう趣向のアルバムは成り立たないでしょう。

細かいところを聴き始めたらやめられないほど発見がありますけれどね。

豊かな豊かなサウンドが広がっている作品です。

私はこのアルバムの「AVE RARA」を聴くとなぜかアフリカの広大な大地を思い浮かべてしまいます。


Personnel:VANIA BASTOS(VO),EDUARDO GUDIN(ARR,VIOLAO),FABIO TORRES(Pf),LITO ROBLEDO(WB),TONINHO PINHEIRO(DS),TONINHO ROBLEDO(FL),NAILOR AZEVEDO(CL,SAX),JORGINHO CEBION(PERC),SWAMI Jr.(VIOLAO),MARIA TEREZA BRIAMONTE(HARP),AMILSON GODOY(ARR),LUIS CARLOS DE PAULA(PERC)

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(LABEL UNKNOWN/NO No.)


ブラジルが世界に誇るマエストロ2人による連名デュオ作品。

トニーニョ・オルタ TONINHO HORTAはその知名度・高評価のわりにアルバムが手に入りにくいのが理解出来ませんし(リーダーアルバムが結構再発されましたが、彼の参加作でまだまだ入手困難なものが多過ぎるのです)、一方のアリズマール・ド・エスピリト・サント ARISMAR DO ESPIRITO SANTOにいたってはその天才がなぜにこうも世界的に知名度が低いままなのか、というまあ言ってみれば知る人ぞ知る的なコンビなのかも知れません。

しかし、彼らのプレイを一度でも聴いたことがある人なら、飛びつかずにはいられないアルバムですよね。

本作はTONINHOのヴォーカル&アコギ&エレギ、ARISMARのギターに始まるマルチプレイに加え、「ブラジルの天才両JOAO」の一人、ジョアォン・ドナート JOAO DONATOのピアノとドラムのホベルチーニョ・シゥヴァ ROBERTINHO SILVAというこれまたマエストロ、さらにはフルートでヒカルド・ポンテス RICARDO PONTESやTONINHOの妹のレナ・オルタ LENA HORTAが曲によりゲスト参加して、ただでさえクォリティが高いに決まっているこのデュオのサウンドにより華を添えているのです。

どうですどうです、気になって来たでしょう?

音楽的にはゆったり目のテンポのアコースティックブラジリアンサウンドが多くを占め、「癒される」と仰る方も少なくないでしょうが、演奏のレヴェルの高さ、深みという意味でも言うことなしの素晴らしさ。

ROBERTINHOの雨季のスコールのようなパーカッションワークと、瑞々しいTONINHOとARISMARのアコギデュオ、そしてTONINHOのなごむヘタウマスキャットがこれ以上ないくらい素晴らしいチームワークで映像的なサウンドを作り上げるオープニングのタイトル曲から最高。

ARISMARはかなりベース的にアコギを弾いてます。

その彼がスキャットでユニゾンしつついきなり盛り上げにかかる後半のパートも移り変わりの激しい大自然を描いているようでいいですねえ。

このたった4分30秒の間に器楽奏者が度肝を抜かれ感激させられ見習うべき点がてんこ盛りになっています。

だからって決して押し付けがましい暑苦しい音楽になっていない、これぞマエストロ。

TONINHOの大傑作ソロライヴ『SOLO AO VIVO』でやられた変拍子満載のポップな変態ナンバー「レンブランド・エルメート LEMBRANDO HERMETO」も収録。

ここではLENAのフルートとROBERTINHOのパーカスに2人のツインアコギのクァルテットで演奏されています。

TONINHOが尊敬するヘンリー・マンシーニ HENRY MANCINIの「ドリームズヴィル DREAMSVILLE」はオーソドックスなギタートリオ編成+オーヴァーダブのギターで、メロウなムードの中にも彼ららしい緊張感のある絡み合いが楽しめます。

ARISMAR作「ヴェスチード・ロンゴ VESTIDO LONGO」は作曲者自身によるピアノのコンピングとギターカッティングが極楽気分のかっちょええグルーヴィなサンバジャズ。

RICARDOのフルートソロもブンブク言ってるROBERTINHOのパーカスもコイサー!

ブラジリアンファンにとって見逃せないのはTONINHOの名曲「ベイジョ・パルチード BEIJO PARTIDO」とDONATOのブラジル音楽史に残る傑作「アマゾナス AMAZONAS」でしょう。

前者は完全アコギデュオのみによる滋味溢れる演奏。

たった12本の弦が織り成すこの複雑で馥郁たるハーモニー、そして美しいメロディ・・・・たまりません。

根っからギタリストのTONINHOと、ベーシストとしての感性を中心にマルチプレイをするARISIMARとのセンスの違いが如実に現れていて、それもまた深い味わいにつながっています。

「AMAZONAS」は作曲者自身のピアノとRICARDOのフルート、そしてTONINHOのギター&スキャット、ARISMARのエレベ、ROBERTINHOによるクィンテットで、あの名盤『ナラと素晴らしき仲間たち OS MEUS AMIGOS SAO UM BARATO/ナラ・レアォン NARA LEAO』の最強アレンジを踏襲した演奏になっています。

幾つになってもグルーヴの塊のようなDONATOのピアノも相変わらず最高ですし、うねりまくるエレベ、浮遊するギターワーク、そしてすすり泣くフルート、大地そのもののようなどっしりしたビートのドラム、この面子が同時に演奏すること自体が奇跡としか思えない名曲の名演です。

完全ギタートリオ(アコギ、エレベ、ドラム)のみの「ウン・ソニャドール UM SONHADOR」も、シンプルなようでいて深い、そして聞こえて来る以上に複雑なものが絡み合っているようなテイクです。

このゆったりしたムードの中に、テクニックだけでは決して届かない天才達の境地が達成されているように思います。

一転して「ソニャンド・アコルダード SONHANDO ACORDADO」では2人のスキャットと絡み合うアコギ、そして八面六臂の大活躍的パーカッションのトリオによる軽快なスキャットサンバ。

これがまたすぐ終わるんですけれどこれはこれで凄い世界だなあ。

どちらの曲も、大変残念ながら、私がどんなに努力してもこんな演奏は出来ない、というような素晴らし過ぎる世界のように感じます。

だからこそ感動もひとしおなんですけれど。

ところでこのアルバムには3曲ジャズスタンダードも収められていて、それぞれ「酒とバラの日々 THE DAYS OF WINE AND ROSES」「インヴィテイション INVITATION」「ウォッチ・ワット・ハプンズ WATCH WHAT HAPPENS」なのですが、中でもオススメはDONATO、ROBERTINHOとのクァルテットによる「INVITATION」。

これもまたこのメンバーならでは、という個性的なムードの演奏になってまして、もちろんジャズ的に見ても超一流のレヴェルです。

彼らの用いる音のマジカルさって本当に素晴らしい。

自分の拙い言葉が、それを表現するのに到底届かないのがもどかしくて仕方がありません。

というわけで逃げの一手として↓に視聴出来るウェブページへのリンクを張ってみました(笑)。

ブラジル音楽があらゆる人に開かれた素晴らしい世界であることをしっかりと感じさせてくれる名盤です。

入手が大変に難しい作品ですので、街やネット上で見かけられた時は絶対に逃さないで下さいね!


http://www.arismardoespiritosanto.com.br/cd_capehorn+.html


Personnel:TONINHO HORTA(EG,AG,VO),ARISMAR DO ESPIRITO SANTO(EB,EG,AG,Pf,VO),ROBERTINHO SILVA(DS,PERC),JOAO DONATO(Pf),RICARDO PONTES(FL),LENA HORTA(FL)

北欧はデンマークのジャズレーベル、スタント・レコーズから、ブラジリアンスタイルの要注目作が出ましたのでその情報をお知らせします。


AFTER THE CARNAVAL/TRIO(STUCD 09042)

デンマークが世界に誇るピアニスト、トマス・クラウセン THOMAS CLAUSENとヴォーカル&ギターの女性セリア・マリェイロス、そしてブラジルの天才エルメート・パスコアゥ HERMETO PASCOALとの活動などで知られるハイパーサックス奏者、カルロス・マゥタ CARLOS MALTAのトリオ!1曲を除き収録曲は全て3人のオリジナルの持ち寄り。


DADAIO/DIEGO FIGUEIREDO

ギタリストのヂエゴ・フィゲイレードが、ジョイス JOYCEのバンドでおなじみのベーシスト、ホドゥフォ・ストロエテル RODOLFO STOROETER、ミゥトン・ナシメント MILTON NASCIMENTOやエギベルト・ジスモンチ EGBERTO GISMONTIら天才ミュージシャンの屋台骨だった「生ける伝説」的ドラマー、ホベルチーニョ・シゥヴァ ROBERTINHO SILVAと組んだスーパートリオ!収録曲はほとんどがブラジルスタンダードですが、中にはジャズの「オール・ザ・シングズ・ユー・アー ALL THE THINGS YOU ARE」も。バーデン・パウェル BADEN POWELLの「ビリンバウ BERIMBAU」やってます。



詳しくは↓のページでどうぞ

[ S U N D A N C E ]

(MINAS RECORDS)


普段からネット上で懇意にしていただいているlysis さんから依頼をいただき、先日ポーランドジャズのコンピレイションを作って差し上げたのですが、その時にlysisさんも音源を交換したり人に聴いてもらうのが好きと仰って焼いて下さった(他にもいくつもいただきましたが)のがこのトニーニョ・オルタ TONINHO HORTAの2枚組ライヴ。

数曲を除きTONINHOが完全ソロで弾き語り、全て彼による作曲でデビュー作からの名曲もどっさりと含め収録数計40曲、彼のファンにはたまらない趣向の作品となっています。

録音したのも、04年9月の23、24の両日、ブラジルはミナス・ジェライス MINAS GERAIS州ベロ・オリゾンチ BELO HORIZONTE市で行われたコンサートにおいてで、時間も場所もばらばらなライヴ音源を寄せ集めたようなものではなく、ほぼ一夜のライヴを丸ごと収めたようなフィーリングが味わえます。

そんなわけで美味しいこと尽くめのこのアルバム、ず~っと聴きたかったのですが、いかんせん高価な上結構入手が難しいんですね。

まあ安く購入出来るタイミングが合えばその時に・・・・と考えていたらlysisさんが「これを聴いてもらいたいのですが持ってますか?」とお申し出下さったんですね。

そんなわけでこの偉大なライヴアルバムにとうとう耳を通すことに相成ったわけですが、もう正直打ちのめされました、あまりの素晴らしさに。

しばらくは携帯に取り込んで出勤や帰宅途中、あるいは休憩時間中などに何度も聴き倒し、偉大なクリエイター&プレイヤーによる作品群の美しさ、輝きに包まれて時には涙ぐみそうになったりしました。

私はあまり弾き語り作品は聴かない方ですし、ブラジルのヴォーカル&ギターのソロライヴはあのジョアォン・ボスコ JOAO BOSCOのもの (CLICK ME♪)にとどめを差すんじゃないかなと考えていましたが、その座は今のところ、このTONINHO盤の方に取って代わられつつあります。

まあ順序をつけちゃうのも何か無粋なので、並び立っている、ということにしましょうか。

BOSCOの演奏は、歌の巧さ60%、ギターの巧さ40%という感じですが、TONINHOはギター70%、歌30%って割合がぴったり来る感じ。

かと言って歌が下手ってわけではありません。

それに関しては後述します。

何はともあれこのライヴの一番の目玉は、ブラジルシーンでもジャズシーンでも多大な尊敬を集める彼の超絶のギターテクニックでしょう。

日本のギター製作者福岡良兼さんの手になるクラシックギターを縦横無尽に弾いていますが、彼のプレイスタイルは単音系の高速ソロをバンバン弾く、というものではなく、ほとんどリズム&コードワークによるものです。

まず驚くのはまるでベースのスラッピングみたいに力強くパーカッシヴに響く低音部。

そしてその上に、ドラムの譜割りに音符が乗っかったような見事にリズミカルなアルペジオやコードカッティングが加えられ、あの唯一無二のTONINHOワールドが出来上がって行きます。

私はTONINHOのことを「音の引力を操るマジカルギタリスト」と呼んでいますが、その特色はこのソロライヴにおいて究極にまで高められています。

本当に、音数の多い圧倒的なリズムと複雑なコードワークにも関わらず、「ハーモニーの落ち着き先=音の引力」にとらわれずどこにでも連れて行ってくれる、と感じさせてくれるのです。

自由自在に動くベースラインも、その圧倒的なスピード感と浮遊感を際立たせるのに一役買っています。

ここ近年、アコースティックの超絶技巧プレイヤーは花盛りと言えますが、多くは特殊奏法を多彩に駆使したプレイヤーで、彼のように言わばオーソドックスな奏法だけでその天才を認められている例はかえって珍しいのではないでしょうか?

また、ここでは数曲エレキギターも弾いています。

ディスク2の最初の4曲ですね。

私的にはセカンドアルバム (CLICK ME♪)の壮大なインストサンバワルツ「ヴォー・ドス・ウルブス VOO DOS URUBUS」の演奏が嬉しかったのですが、特に素晴らしいのは「ヴェント VENTO」での身を揉まれるような泣きのグリッサンド。

寂寥感を帯びた、まさに「ヴェント(風)」のような感覚で身に染み渡って来ます。

そして、この上に更に、ある意味でTONINHOの最も個性的であるとも言えるスキャットや歌が乗っかって来るわけです。

彼のヴォイスはブラジル人ミュージシャンに多い典型的ヘタウマタイプのへなへなしたものです。

音程も時々怪しい。

しかし、そういうテクニカルなことだけでは説明出来ないほどの魅力があって、何か聴き手を凄く大きなもので柔らかく包み込んでくれるような声なんですよねー。

こういうことが出来る人を、果たしてヘタと呼んでもいいのでしょうかね。

それに、彼のファンには言わずもがなの名曲「アキ、オー AQUI, O !」では後半ギターワークとスキャット、ヴォイスパーカッションの一人掛け合いみたいなのをやるのですが、そこではずいぶんと太い男らしい声でスキャットを飛ばしています。

何だ、いつものヘタウマトーンの歌は選んでやっていたのね。

つまり、彼は自分の音楽に必要なヴォイスをコントロールして歌っているということで、本物の下手(笑?)ではないのかも知れませんね。

実際これだけの超人的ギターワークをやりながら、クロマティックな隙間を縫って行くような複雑なメロディを歌うわけですから、ただ下手なわけがない。

まあ何にせよとにかく圧倒される約150分であることは間違いありません。

「アキ、オー!」「ヂアーナ DIANA」「ベイジョ・パルチード BEIJO PARTIDO」「勇者マヌエル MANOEL, O AUDAZ」「ドナ・オリンピア DONA OLIMPIA」などなど彼の代表曲が目白押しなのですが、それ以外のナンバー、例えば可憐なワルツ「クァドロス・モデルノス QUADROS MODERNOS」のシンプルな叙情、あの天才エルメート・パスコアゥ HERMETO PASCOALに捧げられた「レンブランド・エルメート LEMBRANDO HERMETO」の変拍子ビシバシの楽しさなどなど、新たな発見も尽きません。

それまでのアルバムではそんなに気にも留めていなかったナンバーも、美しい演奏によって全く違う魅力を伴って甦っています。

極端に言えば、私はこのアルバムに収められた演奏を全て愛しています(笑)。

2、3曲スタジオ録音のものがあるのですが、それはそれで研ぎ澄まされたような演奏になっており、それもまた良し。

人間世界遺産級の大傑作と断言します。

ただし、一つだけ瑕があるんですなー。

それは私が大好きなナンバーで、TONINHOファンにとっても馴染み深いグルーヴチューン「アケラス・コイザス・トーダス AQUELAS COISAS TODAS」をやっていないこと!


lysisさん、聴かせていただいて本当にありがとうございました。

私は基本、音だけ聴ければCD-Rとかでも構わない、という考え方なのですが、これは「持ってなきゃいけない」作品のような気がしました。

いずれ購入することにします。

音から受ける感動があまりに大きいため、言葉に変換するのが困難で記事をアップするのに時間かかってしまいましたことをお詫び申し上げます。

こうして上げた今も、うまく変換出来た自信はありませんけれど。

素晴らしいものって、みんなそうですよね!

Catope/Yuri Popoff
(LEBLON RECORDS LB.009)


ブラジルにもフランスのラベル・ブル LABEL BLEUやアウル OWLのようにこのレーベルなら要チェック!というレーベルがいくつかありまして、このレブロン・レコーズ LEBLON RECORDSもその一つ。

ネットで検索してもほとんど引っかかってきませんが、パーカッショニストのマルコス・スザーノ MARCOS SUZANOが主力選手らしく、彼は本作を含めいくつもの作品に参加しています。

と言っても私が聴いたLEBLONのアルバムは3、4枚しかないんですが(笑)。

そんな中でも一番のお気に入りで、昨年度のヘヴィローテイションTOP5に入るほどよく聴いた、マイ・コレクション的にもフェイヴァリットの一つが、このユリ・ポポフ YURI POPOFFの92年作『カトペー』です。

YURIはウクライナ系のブラジル人で、ギタージニアスのトニーニョ・オルタ TONINHO HORTAの妹、フルーティストのレナ LENAのパートナー。

いわゆるミナス MINAS一派の一員です。

YURIの5弦フレットレスから繰り出されるサウンドは典型的なジャコ JACO PASTORIUSフォロワーのそれですが、しかしそれだけではなくグルーヴやハーモニー、さらにはコンポジションからアレンジングに至るまで彼独自のヴィジョンが明確に表に出たミュージシャンと言えます。

彼が参加した他の作品群ではそこのところがいまいちピンと来なかったのですが、このアルバムは素晴らしい。

温かくファンタスティックな音楽性が100%発揮された、ベーシストのリーダー作の中でも屈指の出来の作品です。

TONINHO&LENAやアンドレ・ドゥキチ ANDRE D'QUECH、ネゥソン・ファリアス NELSON FARIASなどTONINHOのオルケストゥラ・ファンタズマ ORQUESTRA FANTASMAのお馴染みの面々や、ミナス系のシンガー、フラヴィオ・ヴェントゥリーニ FLAVIO VENTURINIやクララ・サンドローニ CLARA SANDRONIのゲスト参加により繰り広げられる、じんわりと暖かいブラジルの空気と広大な空間を感じさせるシンフォニックでジャジーなブラジリアンミュージック。

ちなみに、TONINHOは数曲に参加でプレイ的にはそんなに目立っていませんが、彼は目立つ状態を楽しむべき演奏家じゃないですよね。

そう、あのコードワークだけで存分に「ああ、TONINHO!」って味わうことが出来るはず。

オープニングの、ほとんどフルート2本によるリフとSUZANOのパーカス、そしてのっけから歌いまくり暴れまくり自己主張しまくりのベースだけで成り立っているような構造の「ブルーズ・バイアーノ BLUES BAIANO」前半におけるリズムの雄弁さ、そしてじわじわとD'QUECHがコンピングを繰り出しシンフォニックなジャズロックの後半へと変貌して行くプロセスは大興奮もの。

割合的にはほとんどベースのアドリブで終わっているはずの曲が、こんなにもスリリングでプログレッシヴなんて。

こののどごしが良過ぎの複雑さがブラジル音楽の魅力の一つ。

そう、ここで展開されているのも大いなるムジカ・ブラジレイロの典型なんですね。

どの曲もポップでプログレッシヴで歌に溢れてて最高なんですが、アルバム中盤から後半への流れはたまりません。

SUZANOとYURIのデュオによるヒップなグルーヴテューンのタイトル曲、YURI自身が弾くヴィオラォンをバックにしてCLARA SANDRONIが切々と歌い上げるこれもデュオの「バトン・パッサード BATOM PASSADO」での、完全に役割が逆転した「ヴィオラォン=従/オーヴァーダブしたエレベによるメロディ=主」のサウンドの美しさ。

後者の幕開けに弾かれるクロマティックな泣きのイントロメロディはまさにブラジル人にしか書けないもの。

そしてここでの完全にメロディ楽器として用いられるベースサウンドの美しさには、心をわしづかみにされるでしょう。

また、JACOの異才が爆発したあの大傑作ナンバー「オコンコレ・イ・トロンパ OKONKOLE Y TROMPA」の手法を効果的に使った、ブラジルの音楽神エイトール=ヴィラ・ロボス HEITOR VILLA LOBOS「トレンジーニョ・カイピーラ TRENZINHO CAIPIRA」の、シンプルでピュアながらもとんがったヴィジョンに支えられた演奏。

何たってベースは全編ほとんどピコピコいうミニマルなハーモニクスで押し切っていますからね。

あとはSUZANOと、LENAのフルート、グータ・メネゼス GUTA MENEZESのハーモニカだけという誰も思いつかない編成でのカヴァーです。

そしてその彼のアイドル、JACOに捧げられた「バイアォン・ヂ・ドイス BAIAO DE DOIS」はエレピ、トロンボーンがソロで唸りをあげるサンバテイストのジャズロック。

各パートが伸びやかに歌っているようでいてピシピシッと決まっている精緻に組み込まれたアレンジも見事。

ちなみに全曲アレンジはYURIが手がけています。

やはり「音楽家」はこうでなくては。

それにしても泣けるのはラストの「サンバ・ド・ヒオ SAMBA DO RIO」。

ベタな8ビートの位置に入るスネア、そして一昔前の、『キャプテン翼』のような爽快青春スポーツアニメの主題歌みたいなメロディなのに、ムチャクチャ心躍ってしまうんです。

16ビートのフレイズを叩き込みだんだん羽目を外して来るネネン NENEMのドラムのホップするカッコ良さ、そしてドラマティックに盛り上げるメロディ後半の構成と、嫌でもアドリブがキマってしまうコード進行の心地良さ。

ああそうさ、笑いたきゃ笑え、私はこんな曲でもドキドキしちゃうんだ、と半ばやけになりながらついつい口ずさんだり仕事の最中に頭の中で奏でたりリピートボタン押したり。

こんなメロディを臆面もなく書いてしまうところがまた素朴でピュアでシャイなミナス人ならではと言いますか、とにかく体の中を爽やかな一陣の風が吹き抜けて行くようなそんな気分にさせてくれる大団円です。

ベーシストが聴く上でもものすごーく勉強になる一枚なんですが、それ以上にヴァラエティ豊かで飽きさせない作編曲と全編に横溢する歌心についついのめり込んでしまうという、本当に中身の濃い素晴らしい一枚で、あらゆる音楽ファンにオススメしたいですね。


Personnel:YURI POPOFF(EB,AG),LENA HORTA(FL),ANDREA ERNEST DIAS(FL),ANDRE D'QUECH(KBD),ESDRA "NENEM" FERREIRA(DS),MARCOS SUZANO(PERC),LAUDIR DE OLIVEIRA(PERC),TONINHO HORTA(EG,AG),MAURO SENISE(SS),ZE NOGUEIRA(SS),NELSON FARIAS(AC,EG),VICTOR SANTOS(TBN),GUTA MENEZES(HCA),FLAVIO VENTURINI(VO,KBD),CLAUDIO NUCCI(VO),CLARA SANDRONI(VO),AMAURY MACHADO(CHO)

(ESTUDIO ELDORADO ELD-06-2052)


一般の皆さんは一体ブラジル音楽にどんなイメージを持っていらっしゃるんでしょうね。

この間ある必要から職場の同僚の方の娘さんにブラジルの音楽やジャズなど私のお気に入り演奏を詰め込んだCD-Rを差し上げたのですが、その同僚さん曰く「ブラジルの音楽って想像もつかなくて面白く聴けました」ということでした。

これはひょっとしたらひょっとすると、私たち音楽ジャンキーが考えているほどには、「ブラジルってボサノヴァでしょ」ということすら認識されていない、ブラジルの音楽と聞いても全くイメージがわかない、それが現状なのかも知れないとその言葉を聴いて感じたわけなのです。

私個人の立場としては、「ブラジル音楽っていいでしょ?」って言ってボッサ・ノーヴァばかり入った音源を貸すのは反則だし欺瞞だと思っています。

またまた知ったかや天邪鬼しちゃって・・・・・・とお思いかも知れませんが、しかしボッサだけがブラジル音楽ではないですからねえ。

どうせなら色々幕の内状態にして幅広い趣味の良さを見せつけたいじゃないですか(笑)。

そんな「幕の内作り」が一枚にして済んでしまうという便利なアルバムがこちら。

伝説のインストグループ、クァルテート・ノーヴォ QUARTETO NOVOの元メンバー、テオ・ヂ・バホースの80年作で、良質レーベルのエストゥヂオ・エゥドラード ESTUDIO ELDORADOより。

原盤アナログは2枚組で、65分くらいのヴォリュームです。

エルメート・パスコアゥ(パスコアル) HERMETO PASCOAL、エラゥド・ド・モンチ HERALDO DO MONTE、アイルト・モレイラ AIRTO MOREIRAという物凄い曲者揃いのクァルテート・ノーヴォ中にあって、バカテク度は他の3人と変わらずともカッチリとしたソリッドな演奏でバンドの縁の下の力持ちになっていた感のあるテオ。

言ってみればザ・ビートルズ THE BEATLESにおけるジョージ・ハリソン GEORGE HARRISONのような存在?

そんな彼は数々のヒット曲、名曲を生み出す名作曲家だったのです。

本作は、ちょっとしたTHEO'Sグレイテスト・ヒッツ。

インスト、歌もの取り混ぜて、様々なスタイル/ムードのオリジナルナンバーをたっぷり20曲収録しています。

ブラジル=ポルトガル語のライナーを適当に読んだ限りではどうも彼のデビュー15周年を記念したアルバムのようで、THEO自身とクリチェウ・ロマニョーリ CLICEU ROMAGNOLLIというイタリア系の人?と共同で行ったアレンジもオケが付いたり弾き語りだったりバンド編成だったり様々で超豪華。

素晴らしいメロディを持った数々のナンバーが立て続けに演奏されて行くさまはまるで「THEO DE BARROS15周年記念歌謡リサイタル」といった感じ。

しかし何と言ってもスケールの大きなイントロ「シェーガ CHEGA」からメドレーでつながる、QUARTETO NOVOでもやっていたかっけえインストナンバー「ヴィン・ヂ・サンターナ VIM DE SANTANA」のオープニングにはやられますね。

そっか、これはTHEOの曲だったんだ。

本人と思しきシャープなアコースティックギターも切れまくり。

スピーディにドライヴするソロは一切の無駄なくコーナリングする性能の良いスポーツカーの如きファッショナブルな快感に溢れています。

原ヴァージョンにはなかったシンフォニックなアレンジもかっこよすぎ!

インストでは他に、壮大な映画の始まりのようなオケのイントロから一転、ストイックなエレギカッティング&エレピコンピングをバックにアコギがうなりをあげて疾走する16分ジャズロックへと突入する「フェスタ・ヂ・トウロス FESTA DE TOUROS」、スパニッシュ風のギターアルペジオをバックにオーボエが物悲しい旋律をすすり泣かせる「テーマ・ヂ・ボリヴァル TEMA DE BOLIVAR」なども素晴らしいトラック。

歌ものではQUARTETO NOVOの前によくつるんでいた伝説のシンガー、ジェラゥド・ヴァンドレ GERALDO VANDREとの共作によるほっこりした感触の名曲「ヂスパラーダ DISPARADA」やあのエリス・ヘジーナ ELIS REGINAに提供して大ヒットしたアコースティックロックなリフがカッコいい「メニーノ・ダス・ラランジャス MENINO DAS LARANJAS」が最高。

後者はジョイス JOYCEもカヴァーしていましたねえ。

大好きな曲です。

シンフォプログレアルバムのオープニングのようなオケの小品「パルチーダ PARTIDA」でクロージングというのもにくい。

私は昔アナログの方を持っていたんですが手放してしまいました。

しかし、妙に忘れられないところがあるアルバムで。

各曲とも結構地味なんですけれどね。

ところが数年前にCDになっていたようで、購入しといたのです。

それからまた廃盤の憂き目にあったようですが(泣)。

ボッサやMPBにとどまらず、オケだけの曲やフォルクローレ隊導入ナンバーもあったり、さながら南米ポピュラー歌謡のショウケイスといった感じの良質な作品集。

アレンジも隅々まで行き渡っていて、ただのヒット寄せ集めアルバムではありません。

全てニューアレンジ&新録音で臨んだ、THEOの音楽家人生が凝縮された宝箱なのです。


2010/01/01追記

ただし、何度も聴き返してみたらこのCDはどうやら盤起こしのような気がしてきました。

ほんの時々雑音が入ります。

それかマスターの損傷なのかも知れませんね。

どちらにしろ、そんなことではこの美しい音楽の価値は失われませんけれども。

TUDO DE BOM

テーマ:
Tudo de Bom/Mark Weinstein
(STRING JAZZ RECORDS SRJCD1079)

ひっそりと発売され、知られることなくひっそりと入手困難になって行く埋もれた宝石のような作品は世の中に数多いですが、これもそんなものの一つ。

この「トゥド・ヂ・ボン」は、アメリカのブラジル音楽専門ギタリスト、リチャード・ボウカスがフルーティストのマーク・ウェインステイン(最初ドイツ人だと思っていたので、ずっと「マルク・ヴァインシュタイン」と読んでいました)と組んだ、ブラジルの現人神エルメート・パスコアゥ(パスコアル) HERMETO PASCOALのカヴァープロジェクト。

エルメートのカヴァーと言ってもただのカヴァー集ではなく、彼が1年の366日毎日「1日1曲」のコンセプトで作曲して書き溜めた驚異のスコア『カレンダーリオ・ド・ソン CALENDARIO DO SOM』の中から厳選したカヴァー集なのです。

『カレンダーリオ~』は発表当初かなり話題になったので、本人による演奏が出て来るのか?とか誰かやる人いないのだろうか?とかなりその後の動向は気になっていたのです。

そんなところに出て来たのがこの作品だったわけです。

さてさてどんな演奏、そしてこの曲集のナンバーはどんな曲なのでしょうか。

オープニングナンバーの「#81、ボッサ・ノーヴァ BOSSA NOVA」のメロディが滑り込んで来た途端、あなたはこのアルバムが紛れもない傑作であることを確信するでしょう。

エルメートの音楽の持つ稚気とロマンティシズム、そしていともナチュラルに織り込まれた複雑怪奇なコードプログレッションが、ボウカスのクリアな響きのギターとスキャット、ウェインステインの適度にブレスが盛り込まれたフルートによって見事に再現されています。

リズムセクションもニゥソン・マッタとパウロ・ブラーガのブラジルファーストコール鉄壁コンビにヴァンデルレイ・ペレイラのパーカスと最強のサポート。

どこを切ってもエルメート印の金太郎飴状態ながらエグくなく、むしろ胸を締め付けられるようなノスタルジィと爽やかな寂寥感(矛盾した表現だと思いますが私にはそのようにしか書けません)が体中を吹き抜けて行く快感はちょっと例えようがありません。

どの曲もマンネリと言えばそうかも知れませんが、まるで大木に大地の水分が行き渡っているがごとく、エルメートのエキスがメロディの一音一音に漲っています。

こんなメロディがいったい他の誰に書けると言うんでしょう。

実は最近のエルメートの活動には食傷気味だったのですが、彼を尊敬するミュージシャンたちによってその作品に新たな生命を吹き込まれてみるとやはり彼は天才以外の何者でもないことを再確認しました。

もちろん彼という巨星が存在しなければ(そして1年間毎日曲を書くという仰天企画を思いつかなければ)この作品はなかったのですが、それにしてもボウカスのアレンジメントの素晴らしさには最敬礼をもって迎えるしかないでしょう。

また彼はプレイ面でも素晴らしく伸びのある美しいスキャット&多重録音によるコーラス、マウストランペットに加えギターを初めとした様々な撥弦楽器を駆使して大活躍。

なぜか世間一般ではウェインステインのリーダー作として認識されているようですが、実際は双頭プロジェクトで、実質的なリーダーは完全にボウカスです。

エルメートの今までの音楽を知っている方は、あの独特の感じに惹かれもし、かつ「くどくていつもは聴いてられないなあ」という感じもお持ちになっていることでしょうが、この作品は本当に素晴らしいです。

感情を揺さぶられるメロディの宝庫としてのブラジル音楽と捉えても、新世紀のフレッシュなセンスに溢れた大変にレヴェルの高いアコースティックミュージックとして捉えても超一級のアルバムだと思います。

エルメートの音楽が持つ「美」「情」の部分をスタイリッシュかつクールに磨き抽出した逸品です。

どうせならこのグループに『カレダーリオ~』の366曲全曲録音して欲しかったのですが、レコーディングに先立ってボウカスとウェインステインで何度もライヴを行って厳選を重ねた結果だそうですのでないものねだり過ぎですね(笑)。

また、このクォリティはそれゆえに保たれているのでしょうし。

蛇足なようですが、それだけの名演なんです。


Personnel:RICHARD BOUKAS(VO,AG,PERC,etc),MARK WEINSTEIN(FL),NILSON MATTA(WB),PAULO BRAGA(DS),VANDERLEI PEREIRA(PERC)

(JAZZMANIA RECORDS JAZZ0001)


ちょいと気晴らしの旅に出ておりましたので、更新出来ずに申し訳ありません。

旅の間に10万アクセスを超えていました。

ありがたいことです。

これからも頑張ります。

ってことで、旅の途中の釣果をご披露します。

ブラジルのミナス派のピアニスト/コンポウザー、ヴァギネル・チゾが8人のチェリストからなるリオ・チェロ・アンサンブルと共演したライヴアルバムです。

ヴァギネルの音楽は好きと言えば好きなんですが、このアルバム結構な廃盤らしくてお値段もそれなりにしました。

それでもえいやっと購入したのは超絶天才ベーシスト、ニコ・アスンサォンが参加しているからです。

また、ニコとよくつるんでるトランペッターのマルシオ・モンタホーヨスも参加しているので期待は倍加ですね。

実はこのRCEとチゾによるライヴのテイクは1曲だけ『ムジカ・ノーヴァ MUSICA NOVA』というライヴオムニバスに入っていたので聴いたことがあるのですが、そこでの演奏はあまり印象に残っていなかったのです。

何か中途半端なクラシックもどきインスト、という感じで。

本作も最初の3曲はチゾ&RCEのみによる演奏なんですが、これが昔聴いたのとは全然違って、非常に荘厳で幹の太い美しさに貫かれた響きで、かなりやられました。

ブラジル音楽ってMPB系のヤバいアレンジ満載の歌ものとか完全にイッちゃってるインスト系とか、あるいはコードの洗練度が素晴らしいボッサ・ノーヴァとかそういうイメージで捉えられていることがほとんどでしょうけれど、このクラシカルなサウンド、豊かで緑や自然を感じる響きもまたこの国の音楽の素晴らしさの一つなんですよね。

そして、チェロ8本と言うとブラジルが生んだ大作曲家エイトール・ヴィラ=ロボス HEITOR VILLA-LOBOSの傑作「ブラジル風バッハ第5番」。

この奇特な編成にも、ちゃんとした歴史があるのです。

オープニングナンバーはそのヴィラ=ロボスの曲を組み込んだ、ヴァゥヂール・アセヴェード WALDIR AZEVEDOの「ブラジレイリーニョ BRASILEIRINHO」。

豊かな音楽の歴史に敬意を払いつつ新しいサウンドを創造しようとするチゾの意気や良しです。

ニコの参加は4曲目から。

彼とチゾ、マルシオの3人だけで7拍子で突っ走る「セチ・テンポス SETE TEMPOS」のカッコ良さ!

やはりニコのソロはメロディアスで凄いですね。

そしてそれ以上にバッキング時のグルーヴ。

大海のようにうねるチェロのアンサンブルをバックにギターのような高音でメロディをすすり泣かせたり、高速のスラッピングでこの編成に欠けている打楽器のパートとハーモニーを同時に担当したり、怒涛のハイテクニックによるコードワークで豊かなサウンドを生み出したり。

エレクトリックベースが優れた伴奏楽器であるとともに、何でも出来るピアノに勝るとも劣らないオールラウンドな楽器であることを見せつけてくれます。

特にチゾの盟友ミゥトン・ナシメント MILTON NASCIMENTOのアッパーな名曲「クラーヴォ・イ・カネーラ CRAVO E CANELA」での暴れっぷりは凄いとしか言いようがありません。

しかし真の主役はやはりこんなに難しい編成で美しく豊かな音世界を紡ぎ出したチゾでしょう。

彼の端整な響きのピアノも胸をかきむしられるようにノスタルジックで涙がこぼれちゃいそう。

ブラジルならではのサウダーヂに満ちた旋律が、またその美音によく合っているんですよね。

ブラジルという豊潤でカラフルな音楽史を持つ国のトップクラスの作編曲家だからこそ可能な、あらゆる方向においても違和感のないサウンドがここにあります。

この音を何と表現すれば良いのか?

答えはただ一つ、これもブラジル音楽なのです。

買って良かった。

大傑作。


Personnel:WAGNER TISO(Pf),MARCIO MONTARROYOS(TP),NICO ASSUMPCAO(EB),RIO CELLO ENSEMBLE