私は、あるミュージシャンや音楽のジャンルが実質的にどのように変遷して行ったかということより、「どう語られてきたか・捉えられてきたか」ということの方により興味があります。
つまり、どういう音楽(家)であったのかではなくどういう音楽(家)だと言われていたのか。

この辺、時代によって毀誉褒貶の差が激しいミュージシャンに注目すると面白いですよね。
私の好きなアーティストで言うとその代表格はBilly Cobham ビリー・コブハムだと思います。
彼の音楽や演奏を評する際に物凄くたくさん使われるのが「パワフル」とか「千手観音のような手数」などの語句。
そして、長い間そういう捉えられ方をして来たので、近年の比較的シンプルなビートの録音を「あのテクニカルなコブハムのドラミングを期待すると肩透かしを食うであろう」というような新しい言質につながるわけです。

さて、そこで、そのような言質につながる材料は一体何だったのかということに興味がわくわけです。
まずはあのムキムキの鍛え上げられた体幹の太そうな肉体。
次に、変拍子やプログレッシヴな諸要素をてんこ盛りにぶち込んだ濃密なサウンド。
そしてあの圧倒的なドラムの鳴り。
ところがドラムというものに対して知識が深まるとそうした言質がいかにヴィジュアライズされたものなのかということがよく判ってくるんです。

まず、コブハムのドラムの最高の特色は、ドラムセットの表面とスティックが触れ合っている時間が尋常でなく短い、ということなんです。
「パワフル」という言葉の中には力いっぱい叩いている=スティックを力で振り切るというイメージが物凄くこめられているように思えるのですが、彼の場合は完全に逆です。
むしろ力を可能な限りコントロールし、スティックがはね返ってきたヴァイブレイションを殺さないように指で繊細に支えていることにより生まれる圧倒的な鳴りと音の切れなんですね。
確かに彼の猛烈な腕の動きによるメロディックですらある多音フレイジングは凄いですし、実際に映像を見ると強烈な印象を残すのですが、それ以上にとてつもないのがその「指」の恐るべき技巧なのですね。
本当にピアノとかそういう「いかにも繊細」なイメージを持たれている楽器を演奏しているかのように指が緻密に動いてスティックをコントロールしているんです。
比較してどうこう言うのは好きではありませんがあえて。
あの天才トニー・ウィリアムズの方が、きっと音色や叩き方に関してはコブハムよりもよっぽど「パワフル」と言うにふさわしいものだったと思いますし、その言葉が内包している是非両方の意味が入った「荒々しさ」がありました。
本当は、コブハムのドラムは「パワフル」とはほど遠いものなんです。
そんな彼が残した名言に「一般的にドラマーはドラムのヘッドにスティックを長く押し付けすぎる。ドラムのサウンドとはスティックとヘッドの間に生まれるものだ」というものがあります。

あと、彼が実は60年代後半には「ジャズのセンスを持ったまま、シンプルなロックビートを叩き続けられるステディなドラマー」だとミュージシャン間で評価されていたということはご存知でしょうか?
それがゆえにあのマイルスの名作『ジャック・ジョンソン』への起用となったのです。
あそこで展開されているドラミングを「コブハムらしくない」と思ってしまうのはまあ無理もないのですが、そこで言われる「らしい」こそが彼の音楽そのもののことではなく「言質」なのです。
なのであのアルバムにおける彼のプレイはらしくないのではなく、実に当時の彼らしい演奏なのだと言えます。
そして、上で言った彼の「音の鳴りと切れ」を彼の最上の魅力と捉えるならば、変拍子であろうがなかろうが手数が多かろうがシンプルなフレイズだろうが実はどうでもいいわけで、「スパン!」と他の誰が叩くよりもドラム本来の鳴りを響き渡らせてくれる彼のプレイは何よりも「彼らしく」聴こえるはずです。

そして、彼に対する言質史から離れて聴き直してみれば、音楽性の好みはさておき、彼の近年のドラミングに対する「あのパワフルな超絶技巧が聴けず残念」というのはある意味ないものねだりであって、当時のサウンドを構築するために必要なフレイジングを彼がそこに当てはめていたということに過ぎないという「聞こえ方」がしてくるような気がするのですが、いかがでしょう。
要するに、ただひたすら彼の生み出す超絶の美音に酔っておればいいのです。
そんな彼の残した名言に「音楽の三大要素はメロディ・ハーモニー・リズムと言われているよね。でも僕はあの3つにもう一つ付け足すべきだと思っている。ダイナミクスだ」というものがあります。
でも、私はそんな彼の演奏を聴いて「いえいえコブハム先生。さらにもう一つ付け足すべきです。音色です」と強く思ったのでした。
みなさん、これも名言認定して下さいませんか(笑)?

そして最後に、実は彼は「ドラマー」なのではなくそれ以上に「作曲家」なんですよね。
故マイケル・ブレッカーも生前Jazz Life誌のインタヴューでそういうことを言ってました。
この辺、先に挙げたトニーも実情とは違う「言質」が積み重ねられているのですが、あの『スペクトラム』が衝撃を与えたのが、当時どこにもなかった近未来的なニュアンスを感じさせるあのサウンドだったはずが、あまりにドラミングが凄かったためになぜか注目ポイントがそっちに行っちゃったという。
もちろん、そちらに「誤導」してしまったことも含めてアーティストが負うべきものであるとするならばそれまでなんでしょうが、やはりあのアルバムおよびその後続けて出された何作かの肝はドラムではなくてコンポーズとアレンジでしょう。
各曲のオープニングにドラムソロがつくのも、後にアコースティッククィンテットでトニーがしつこいくらいにやっていたように「ドラムがイントロを演奏することでより曲への集中力が増す」ということの早すぎる挑戦だったとも言えますし、ピアノなどと同じような位置づけをドラムに与えようとしていたとも言えます。
さらに思うのは、彼が70年代当時やっていた音楽は本当に「ドラムがリードする」ものだったのかということ。
これも「言質」なのですが、当時「アンサンブル」として妥当だと思われていた音楽像よりも彼のドラム演奏が隔絶してハイテクニックであったために「バランスを崩した、ドラムが独りよがりに叩きまくっている音楽」として捉えられた節があります。
今聴くと、色んな意味であの音楽にとってなくてはならないパーツとしてのプレイをしているようにしか感じないのです。
バンドメンバー全員が過剰に演奏し反応し、全員が一丸となって疾走するあのサウンドにふさわしいドラミングで、むしろ「バランス感覚抜群」なくらいです。
ただ、他のパートは大丈夫だったのにドラムのレヴェルの高さに聴衆の耳がついていけなかったためにそれが「ドラムが目立った音楽」に言質が確定してしまうわけです。
なので、彼はある意味不幸なことに素晴らしいサウンドクリエイターにとどまらず不世出の天才鬼才ドラマーでもあってしまったために音楽そのものとは違った言質が形成されてしまうんですね。

この辺のことを頭の片隅に置いてから彼の演奏や音楽を聴くと、色々聞こえ方が変わって来ます。
結局、彼は終始一貫して至極シンプルでかつ高い理想を追い求めているだけなのだと判ります。
「その音楽にふさわしい、美しい音を!」ってことなのだと私は理解しています。
70年代の彼の音楽に対する「言質」があったから、近年は「お仕事ドラムを叩いている」というような低評価への流れになるわけですよね。
言質は次の言質への流れも作り出します。
そして、それは音楽そのものの変化の流れとはまた違うところにあります。
もちろん、ここで私が書いていることもまた一つの「言質」に過ぎません。
これまではその内の一つがたまたま力を持ってしまって引用され続けて結果そのアーティストやジャンルのイメージが決定「されたかのように」なった状況というのが多かったと思っています。
そのこと自体は誤解であるのかどうかということとはまた別口の面白さがありますし、色んな社会的な要因も絡んでいると思っているので、否定する気はありません。
と言うか、むしろ面白いです。
でもそれは「言質史」という社会学寄りの楽しみ方のような気がします。
これから音楽をもっと面白く楽しむためには、もう単一言質の時代でもないだろうとは強く思っています。
色んな言質を同時に重ねて、その音楽から多彩な光を焙り出す。
もちろん例えばポーランドのクシシュトフ・コメダのように、「知られざる存在」でいたからこそ、比較的「音楽に対する多彩な価値観」が成熟されつつある近年に真っ当に「発見」されるということもあります。
そういう「時代的なボタンの掛け違え」が生む言質の流れもありますしね。
「音楽そのもの」と「言質」、その両者は分けて考えるより、もっと抱き合わせで関係性が生む緊張なども込みで同時に楽しむ方が絶対に面白いのにな~。
なんて最近よく考えていることを、敬愛するアーティスト、ビリー・コブハムを軸に書いてみました。

終わり
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先日PAUL MOTIAN ポール・モチアン(モウシャン)が80歳で亡くなりました。

それに関連してツイッター上で呟いたのが、天才ドラマーにして名曲製造機だったTONY WILLIAMS トニー・ウィリアムズが亡くなった時、彼の名曲をメインストリームジャズのフォーマットでしっかりと採り上げた真っ当なトリビュートアルバムが出なかったことが残念だし、コンポウザーとして評価されたがっていたトニーは天国で悲しんでいたんではないかと思う、ということでした。

彼に限らず、私はドラマーには名作曲家が多いと思っているのですが、いかがですか?

で、そんなドラマー作曲の名旋律は、一体どういうフォーマットでカヴァーされるのが一番良いのか考えた時に即座に浮かんだのが弦楽四重奏団が演奏するのが一番その魅力を発揮する方法だ、ということなのです。

旋律を奏でられる打楽器として、プラスアルファでヴァイブラフォンやマリンバを入れたチェンバークィンテットでもいいかも知れません。

古くはTURTLE ISLAND STRING QUARTET タートル・アイランド・ストリング・クァルテット、今なら断然ポーランドの天才若手グループATOM STRING QUARTET アトム・ストリング・クァルテットにやってもらうのがいいな。

いつか私がポーランドジャズのプロデュースなどにも顔を出せるようになったら、一度持ちかけてみよう(笑)。

まあASQにはそれよりポーランドの名曲集をやって欲しいですけれどね♪

弦楽四重奏団にやってもらったらさぞ美しいだろうなあと思うもので、今パッと考えつくのは下記の曲たち。

みなさんなら、どんなドラマー名曲やって欲しいですか?

あるいはどんなフォーマットならドラマーの曲は映えると思いますか?


TONY WILLIAMS作

PEE WEE

LOVE SONG

MUTANTS ON THE BEACH

LIFE OF THE PARTY

SISTER CHERYL

THERE COMES A TIME(+VIBRAPHONE)


BILLY COBHAM ビリー・コブハム作

PANAMA

ALFA WAVES

HEATHER

ARROYO

LE LIS

TOTAL ECLIPSE


ALDO ROMANO アルド・ロマーノ作

CHRISTMAS DREAM


LEON CHANCLER レオン・チャンスラー作

DANCE SISTER DANCE


AIRTO アイルト作

XIBABA

TOMBO


などなど

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California Concert: The Hollywood Palladium/Various Artists

ビリー・コブハム BILLY COBHAM大先生が数々の時代を先走ったブチキレリーダー作でドラムシーンをブイブイ言わす前、トップセッションドラマーだった頃の超名演を収録した『CALIFORNIA CONCERT』。
印象的なジャケットも素晴らしいのですが、何と言ってもこの後段々と時代を経る毎に大人の演奏に、と言うか大人しくなって行ってしまう名手たちが揃い踏みした通称「CTIオールスターズ」と呼ばれるメンバーの豪華さとその若さ溢れる熱演が魅力の激熱ライヴ。
アナログや紙ジャケ2枚組国内盤CDの時は全5曲だったのですが、未収録テイクだった他5曲が加えられて計10曲に!実はこれらの演奏はメンバーのスタンリー・タレンタイン STANLEY TURRENTINEやハンク・クロウフォード HANK CRAWFORDらのCOLUMBIA盤にバラでボーナストラックとして収録されていたものなのです。
以前このアルバムのレヴューを書いた時、それらのテイクを集めてコンプリート版作らんかい!と不満を述べていたのですが、本当に作ってくれました。
やっぱり業界の方も考えることは同じなんですね♪
早速予約注文しました。
届くのが楽しみです。
みなさんもぜひどうぞ!
熱いあっついセッションが楽しめますよ~。

以前書いたレヴューは↓こちら!

http://ameblo.jp/joszynoriszyrao/entry-10049507176.html

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ドラム関連で最近発売(or発売予定)のもので、私的に狂喜乱舞の復刻が2つありますのでご紹介。

エルヴィン・ジョーンズ・ライヴ・アット・ザ・ライトハウス/エルヴィン・ジョーンズ(ds)

LIVE AT THE LIGHTHOUSE/ELVIN JONES

これはもう説明の必要がない超絶の名盤ですが、90年代の新生ブルーノート期に2枚に分かれて未発表音源も含めて出されていたものが、紙ジャケ仕様の1セットになって甦ったのです。

未発表音源に関しては上記2枚ヴァージョンをそれぞれ探すか、あるいはモザイク・レコーズ MOSAIC RECORDSから出ているエルヴィンのブルーノート音源コンプリート8枚組ボックス(これはこれでものすごーく気になるセットなんですが、レアな上高い!)を購入するしか聴く手立てがなかったので大変に嬉しい、痒いところに手が届いた完全無欠のヴァージョンというわけです。

以前このアルバムが同じように紙ジャケで出てたのはファンの方々には記憶に新しいでしょうが、せっかくの復刻なのに今回収録された未発表音源がまるっきり無視されていたというイテテぶりも記憶に新しいでしょう(笑)。

さあ今度こそ、この鬼のような激演ライブアルバムを、隅々までしゃぶり尽くしましょう!

He’s Coming/Roy Ayers

来ました~、ビリー・コブハム BILLY COBHAMやソニー・フォーチュン SONNY FORTUNEらが参加したブレイクビーツ/サンプリングネタの神盤。

ずいぶん長い間アナログ復刻のみという状態が続いていましたが、とうとうCD化!

しかも1曲ボートラ入り。

ドカバキドラミングじゃない、人力クラブサウンドのようなかっちょええコブハムのニヒルでシャープなプレイにしびれて下さい。

もちろん主人公のエアーズのサウンドヴィジョンも腰が自然に揺れちゃうオトナのブラックジャズでもう気分はとろっとろ。

いつか記事をアップしてCD化を叫ぼうと思っていたのですが、今回は現実の方が先を越す珍しいパターンになりました。

もちろんその方がいいんですけれどね!

私にとっての音楽の神様の一人ビリー・コブハム BILLY COBHAM。

一頃は大いにシーンを賑わせたアーティストの一人でしたが、最近の彼の活動に注目している人は少なくなってきているのではないでしょうか。

テクニックは相変わらず素晴らしいものの、そのドラムスタイルが最前線のジャズに対応出来るか、という意味からするとちょっと古びてきてしまっていることと、作り出す音楽そのものもそんなに新しくはなくなっているということが原因なのでしょう。

かなり彼に対しては思い入れが強い私ですら、最近のリーダー作や参加作における演奏や作曲に煮え切らないものを感じるのですから、特にファンでない人には魅力が伝わらないのも当然ですよね。

とは言うものの、超絶テクニカルフュージョンにしてフロアユーズ&サンプリングネタの宝庫、という個性的でヤバヤバで派手派手な音楽をやっていた頃と同じようなものを彼のような常に変化して行くプログレッシヴなミュージシャンに求めることの方が土台ないものねだりなのであって、最近の活動はその方向性が多くのファンが求めているものとは違っているだけで、彼自身のクリエイティヴィティは別に減っているわけではないのかも知れません。

昔の彼が好きなら昔の作品だけを聴けばいいだけの話ですしね。

そんな彼のリヴィングレジェンドぶりを証明するようなビッグトピックをまずは一つ。

フィンランドの映画監督ミカ・カウリスマキ MIKA KAURISMAKIが『SONIC MIRROR』という、キューバやラテン音楽に急接近した最近のコブハムの活動ぶりをテーマにしたドキュメンタリー映画を作っているんです!

ミカのような世界的に著名な映画監督が現役のジャズドラマーをドキュメントしたフィルムなんて、ちょっと思いつきません。

コブハムの偉大さがよく判ります。

このフィルムはフランスではすでにDVDとして商品化されており、近い内にH○VやAM○ZONなどでも取り扱い開始するかも知れませんね。

さて、キューバやラテン音楽に急接近していると書きましたが、コブハムは元々パナマ出身。

彼としては原点回帰、ということになるのでしょうか?

その成果を収めたアルバムが↓こちら。

De Cuba Y De Panama/Billy Cobham

さらについこの間最新作を発表したコブハム。

今度のアルバムはキューバ/ラテンだけではなく、これまでの音楽活動の総決算、そしてそれに加え現在の彼なりのヴァージョンアップを図った作品だそうです。

コブハム史(?)に残る名曲「クロスウィンズ CROSSWINDS」「スペクトラム SPECTRUM」、さらには彼のファンには暗黒時代と言われたGRP RECORDS時代の作品「ザンジバル・ブリーズ ZANZIBAR BREEZE」をもあえて採り上げた意欲作↓です。


フルーツ・フローム・ザ・ルーム FRUITS FROM THE LOOM/ビリー・コブハム

サイドミュージシャンとしては凄いのが今度出ますね。
故ハイラム・ブロック HIRUM BULLOCKがジミヘン JIMI HENDRIXをカヴァーしたライヴアルバム。
しかもコブハムと彼のバンドの凄腕ベーシスト、シュテファン・ラデマッハー STEFAN RADEMACHERとのトリオに加え、なぜか私をピンポイントで狙って(笑)ヴィブラフォン奏者が加わり、さらにWDR BIG BAND KOLNが豪快に盛り上げるという美味し過ぎのアルバム。
ハイラムのプレイ自体はそんなに好きではないのですが、これは編成とコンセプトがそそられます。

プレイズ・ジミ・ヘンドリックス PLAYS THE MUSIC OF JIMI HENDRIX/ハイラム・ブロック

他にも彼とブレッカー・ブラザーズ BRECKER BROTHERSらが参加したジャズロックバンド、ドリームズ DREAMSの貴重な2作やCBSレーベル時代の作品が再発されたり、なかなか彼を取りまく環境は今も活発と言えるんじゃないでしょうか。

最新作は4部作の最初の一枚ということだそうで、これからのアルバム制作にも期待が高まります。

願わくばまだまだ埋もれている参加作の隠れ名盤を発掘/復刻して欲しいのと、アコースティックな方面での演奏の更なる進化ですね。


08/11/08追記

ブログお友達のnaryさんに他の注目参加作を教えていただきました。

何と火の玉テナー、ジョニー・グリフィン JOHNNY GRIFFINのライヴ盤にしてラスト作です。

ロイ・ハーグローヴ ROY HARGROVEの参加も気になるところ。

純粋なクィンテット編成、完全アコースティックなフォーマットでのコブハムのプレイはいかに。

期待大です。

Live at Ronnie Scott’s/Johnny Griffin

08/11/09追記

そうそう、忘れちゃいけません、明後日11日からはコブハム先生のバンドが来日公演するのでした!

メンバーはヴィクター・ベイリー VICTOE BAILEY、トム・コスター TOM COSTER、ディーン・ブラウン DEAN BROWNと腕利き揃いで、コンセプトはバンド名にもあるようにファーストにしてジャズロック&ネタの金字塔『スペクトラム』の再演。

仙台ennを皮切りに名古屋、大阪、東京と15日まで連日の公演です。

さらに彼は16日に、同時期に来日しているテリー・ボジオ TERRY BOZZIOとドラムデュオコンサートをやるようです!

この2人によるデュオは世界初なんだそうで、凄いことになりそうですね。

ちなみにボジオの方のバンドメンバーも凄まじく、パット・マステロット PAT MASTELOTTOとのツインドラム&トニー・レヴィン TONY LEVIN、さらに公演日によっては現人神アラン・ホールズワース ALLAN HOLDSWORTHが御降臨!

コブハムとボジオのツアーについての詳細は↓で♪

www.andforest.com

Nordic Off Colour/Billy Cobham (EAGLE RECORDS EAGCD069/GAS 0000069 EAG)

私は自他共に認めるドラム好きです。

ベーシストなのに、音楽を聴いているとドラムをまず聴いていることが多いです。

私をこんなにドラム好きにしてしまったのは、ビリー・コブハムさんです。

彼の音楽を聴かなければ、ドラマーという存在が私の中でそれほどクローズアップされることもなかったでしょうし、音楽全体に関する理解も、もう少し平板なものになっていたような気がします。

そもそも彼に注目するきっかけになったのは、予備校生のときに見たライヴ・アンダー・ザ・スカイ LIVE UNDER THE SKY'92のラリー・コリエル・ライヴ・フロム・バイーア LARRY CORYELL LIVE FROM BAHIAでの演奏(特にコリエルのソロフレイズに合わせて、アドリブでユニゾンっぽいアプローチで叩き込むところ)と、大学の初めの頃に買ったドラムマガジンのドラマー100人へのアンケート企画(確か影響を受けたアルバム10とかそんなんだったと思います)で我らが手数王菅沼孝三が10枚全部コブハムのアルバムを挙げていたこと(笑)。

そんなこんなでどっぷりはまり込み、気が付けばブートも含めてかなりのコレクターになってました。

社会人になってからの最初の職場であるディスク○ニオン○宿ジャズ館でも、私がコブハムものに強いのは一応売りにしてましたから(店がってことではもちろんなく私個人が、ということですけれど)彼関係の買取価格査定なんか頼まれることもありましたし、お客さんで「ここにコブハムについて詳しい人がいるって聞いたんですが」という方が質問に来られたり、なんてこともありました。

まあ一度気になると飽きるまでのめり込まないと気が済まないマニア体質であるということも当然あるのでしょうが、何と言っても彼の音楽性、そしてドラミングの素晴らしさがあったればこそここまではまったのです。

やがて私の興味はヨーロッパジャズやブラジル音楽、デイヴィッド・グリスマン DAVID GRISMANのドーグ DAWGなんかに移って行きまして、ちょうどその頃彼の過去の作品群がどかどかとCDで再発され始めたのに伴い、「いつでも聴けそうだから」ということで私のコレクションは換金されてしまいました。

そんなコブハムコレクターだった頃にどうしても手に入らなかったのがこの作品です。

巷でも(どこの巷や)「あれ、どこで手に入るんでしょうねえ」と隠れた話題だったんですよ。

トーレ・ブルンボリやブッゲ・ヴェッセルトフトといったノルウェイの若手の精鋭と突然発表した『ノルディック NORDIC』はいかにも北欧っぽい澄み切ったメロディが魅力の楽曲群とコブハム以下各人のテクニカルで輪郭のはっきりした演奏が素晴らしい欧州ジャズの名盤でしたが、それの裏ヴァージョンとも言える作品です。

メンバーは全く同じ。

ポップなナンバーが多かった表盤とは違い、この裏盤はやや実験的な作風(と言ってもアヴァンギャルドということではありません)の曲想が多くを占め、表の素晴らしい成果とバンドの一体感ゆえ、もう少し踏み込んでやりたいことを出し切ってしまおう、ということになったのではないかと推測します。

オリジナル収録が身上のこのバンド、今回は御大が3曲、他メンバー3人がそれぞれ2曲ずつという理想的なプログラム。

オープニングのブッゲ作「ロート LAT」から延々と続く16系ロックビートとピアノ&ウッドベースのユニゾンで実験精神旺盛ですが、浮遊するサックス、突如キメキメに移る構成など、単純なように聞こえてかなり凝った曲。

またこういう曲でコブハムの美しいスネアと独特の飛沫がはねるようなシンバルレガートが活きるんだ。

そう、このアルバムは一見シンプルに聞こえて実はこだわりの趣向をほどこしてある、というパターンの曲が多いんですね。

メロディの強度とカッコいいキメは表盤で、じわじわと効いて来る玄人好みのアンサンブルは裏盤で、ということなのでしょうか。

本作の一番のクライマックスは2曲目のコブハム曲「ヘシーフェ RECIFE」でしょうか。

2つのメロディが絡み合いながらむせび泣く快感マイナーラテンジャズナンバーで、これは問答無用にカッコいいです。

同じくコブハムのやはり泣き泣きラテン「アンダルシア ANDALUCIA」もなかなか。

そして、ラテンナンバーでのコブハムは本当天才です。

いわゆる4ウェイインディペンデンス系のリニアなドラミングとは全然違う形での、高密度なラテンドラミング。

技術の問題とかではなくて、たぶん他の人にはこういう風に叩けないんじゃないでしょうかね。

メンバーではブッゲのピアノの凄さが際立っています。

今でこそフューチュアジャズの立役者の一人としてエレクトロビンビン君なわけですが、このピアノの切れは凄い。

あまり語られることのないブッゲのアコースティック演奏の名手ぶりをフィーチュアしたコブハムの目の付け所の良さにも改めて驚かされます。

そしてこのアルバム、しっかり聴き返してみると表盤に濃厚だったヨーロッパ色があんまりなくて、それでいてアメリカとかラテンっぽさが勝っているかと言うとそうでもない、実に不思議なテイストを持った作品でもあるんですね。

インパクトは最初若干弱いかも知れませんが、出来るだけ大音量で何回も聴くとはまること請け合いです。

個人的にも、一度マニア状態から離れてやや突き放した目線から初めて聴くことが出来たのが良かったように思います。


Perssonel:TORE BRUNBORG(TS,SS),BUGGE WESSELTOFT(Pf),TERJE GEWELT(WB),BILLY COBHAM(DS)

スウィッシュ/ハリス・サイモン・グループ
(EAST WIND/INTERCON MUSIC CORP. EWCD 710)

2曲だけ参加ながら、故マイケル・ブレッカーの極楽プレイが聴けると評判の高い1枚。

もちろんマイケルの参加は嬉しいですが、私としてはやっぱりビリー・コブハムの参加が萌えポイント!

それに1曲ヴァイオリンでポーランドのミハウ・ウルバニャクもやってますし。

ポーランドと言うと、このアルバムのリーダー、ピアニスト兼ハーモニカ奏者のハリス・サイモン、意外なつながりがあるんです。

本作が発表された次の年、1981年に録音された『KALISZ - X LECIE MIEDZYNARODOWYCH FESTIWALI PIANISTOW JAZZOWYCH』というライヴセッションアルバムがあるのですが、そこでピアノを弾く(!)ズビグニェフ・ナミスウォフスキ ZBIGNIEW NAMYSLOWSKIやヴォイチェフ・カロラク WOJCIECH KAROLAKらと共に演奏しているんです。

他にももう一枚、私の記憶ではポーランドの有名ジャズクラブのアクファリウム AKWARIUMで収録された一連のジャムセッションものの内1枚にも参加してたはず。

まあだから何やって話ですけれど(笑)。

さてさて、いかにも軽いフュージョンをやってそうなジャケだけで引く方も多いでしょう。

しかしさにあらず。

これが非常にレヴェルの高いブラジリアンアコースティックジャズの快演を連発する隠れた名盤なんですよ。

曲もウルグアイの天才ウーゴ・ファットルーソ HUGO FATTORUSOやブラジルの名コンポウザー、セーザル・カマルゴ・マリアーノ CESAR CAMARGO MARIANO、さらにはAORの英雄ジノ・ヴァネリ GINO VANELLIのカヴァーなど、一ひねりした選曲。

まあとにかくハリスのエレピに導かれて始まる1曲目のウーゴ作「ウィンド・チャント WIND CHANT」でイッちゃいましょう。

コブハムのシャキシャキラテンリズムとクイーカの極上リズムの上をゴージャスなストリングズシンセと混声コーラスが彩り、マイケルの泣き泣きテナーがテーマを奏でます。

何とまあ快楽パーツ満載の演奏でしょうか。

ハリスのエレピソロも快調そのもの、決めの後に続くマイケルはいつもの調子で最高です。

久しぶりのマイケルとコブハムの共演もファンには嬉しいところです。

ストリングズの甘い調べに騙されてはいけない、非常に美しい、宝石のような愛すべき美メロワルツの2曲目「白昼夢 MIDDAY DREAMS」もクォリティが高いです。

本当にこの曲、このアルバムだけに収録なの?って感じの名曲オーラプンプンのナンバーですよ。

ウルバニャクのプレイはちょっと微妙なんですけど(笑)、エレガントにまとめています。

続くハリスのオリジナルのタイトル曲は超高速サンバ⇔4ビートの気持ち良過ぎテューン!

これもマイケル&コブハム組参加でぶっ飛ばしています。

マイケル&クラウヂオ・ホヂチの2ホーン、ハリス+マイク・リッチモンド(多分)+コブハム、そしてギタリストというスーパー混合メンバーによるセクステットで、たまりませんな。

高速メロディでユニゾンするギターとマイケルがかっこいいっす!

ウッドベースとドラムの掛け合いも興奮ものです。

極楽演奏はまだまだ続く、4曲目はカマルゴ・マリアーノの「ファクトリー FACTORY」。

時々7拍子や6拍子が混じるアッパーなブラジリアンフュージョンで、この手の変拍子ものはもちろんコブハム!

あの超絶に切れの良い音色はそのままに、いつもの変態フレイズを巧い具合に抑えて、自分のスーパーラテンプレイヤーとしての天才を最大限に発揮しています。

イカレ切った時のコブハムも凄いんですけれど、こういう影で美味しい演奏をする時の彼も素晴らしいんですよね。

ヴァネリナンバーのスピリチュアル&ソウルフルなカヴァー「フィール・ライク・フライング FEEL LIKE FLYING」もアクセントとして効いています。

適度に巧い女性ヴォーカリスト(ナクソス・ジャズ NAXOS JAZZからリーダー作も出しているようです)も、デイヴ・ヴァレンティンの爽やかなフルートソロもいい感じです。

ハリスがハーモニカを披露する自作の「ストリート・ソング STREET SONG」を経てラストはイージーリスニング/クラシックの方では結構著名らしい作曲家エットーレ・ストラッタ ETTORE STRATTAによる「シティ・ライト CITY LIGHT」の落ち着いたムードのアーバンアコースティックフュージョンで締め。

このアルバムのいいところは、非常に凝った編曲と、その良さを損なわないアコースティックに徹した演奏にあると思います。

メロディもシンプルで気持ちの良い曲を厳選している感じですし、40分程度の長さもあって心地良くリピートしちゃうスルメアルバムではないでしょうか。

いや、捨て曲なしのかなりクォリティが高い一枚と持ち上げても損はないです。

ただ困りものなのが曲ごとのクレディットがないことなんですね。

とりあえず「ウィンド・チャント」「スウィッシュ」「ファクトリー」と美味しい曲にはコブハムが参加して箔をつけていることはコブハムフリークとして断言します。

ドラマーにはグラディ・テイトやポルチーニョら名手も参加していますが、私が聴いた限りでは多分テイトは「白昼夢」、ポルチーニョは「シティ・ライト」ではないかと思います。

ジョン・ライリーもかなり色んなアルバムに参加している定評のあるプレイヤーですし、ベーシストはリッチモンド、ルーファス・リード、さらにはケニー・ワーナー KENNY WERNERのトリオでの演奏などが評価の高いラッツォ・ハリスと、リズムセクション名手ばっかじゃないですか。

こんなレヴェルの高い1枚が出来ても不思議ではないですね。


Personnel:HARRIS SIMON(Pf,E-Pf,KBD,HCA),MICHAEL BRECKER(TS),DAVE VALENTIN(FL),MICHAL URBANIAK(VLN),BILL WASHER(EG),SCOTT HARDY(EG),MIKE RICHMOND(WB),RUFUS REID(WB),RATZO HARRIS(EB),BILLY COBHAM(DS),BRIAN BLAKE(DS),JOHN RILEY(DS),GRADY TATE(DS),PORTINHO(DS),CLAUDIO RODITI(TP,FLH),RUBENS BASSINI(PERC),GUILHERME FRANCO(PERC),TODD ANDERSON(PERC),GAIL WYNTERS(VO),YARON GERSHOUSKY(SYNTH PROG),ANN LANG(CHO),JANICE PENDARVIS VOCAL JAZZ INCORPORATED(CHO)

Tony Williams
Foreign Intrigue (BLUE NOTE CDP 7 46289 2)

新生ブルーノートの立ち上げと、ドラムメソッドの改革者トニー・ウィリアムズのアコースティック路線でのリーダー活動の開始は80年代半ばのジャズシーンにおいて大きな事件だったと思ってます。

そして、この2つは分けては語れないものですよね。

この作品はそんなトニーの新生ブルーノートへの初録音作(86年)で、名曲揃いの名盤なんですが一方でドラムセットの中にシモンズパッド(要するにエレドラ)を導入したということで一部のファンから激しく批判されている曰くつきの作品でもあります。

個人的には、確かにシモンズのサウンドは必要なようには思えないんですが、音楽全体を壊すようなことにはなっていないし、全体的にはしっかりとアコースティックな響きを保っているので全く気になりません。

むしろ、あのC-C-Bも使っていたような機材を導入してもなおお軽くならず、あのリズムのヘヴィネス、鉈のようなドスの効き方(何じゃそりゃ)を保っていることの方が驚きです。

超ド級名曲「ラヴ・ソング LOVE SONG」収録の『スプリング SPRING』以来のアコースティックリーダー作ですから、溢れる創作意欲を煮えたぎらせ、多彩なサウンドを模索していたのでしょう。

10代の頃から「ドラムの天才」「革命児」との賞賛を浴び続けて来た彼が本当に得たかった称号、それは「作曲家」でした。

本人も何度もインタヴューなどでそう言ってますし、実際彼は天才的な作曲家だと思います。

ですからシモンズの導入は、ドラマーとしてやってみたかったというより作曲家としての彼のヴィジョンがさせたものなのでしょう。

完全に成功しているとは言い難いのですが(笑)。

それはさておき、このアルバムに端を発する一連の新生ブルーノート作品で彼の作曲能力はまさに爆発するわけで、本作でもラテンリズムの名曲「ライフ・オブ・ザ・パーティ LIFE OF THE PARTY」や「シスター・シェリル SISTER CHERYL」を生んでいます。

スピーディな4ビートの「クリアウェイズ CLEARWAYS」もいいですね。

まさにトニーにしか書けない陰影を含んだメロディ、ハービー・ハンコックも絶賛している絶妙のハーモニーセンス、果たして彼は「ドラムの天才」だけの人でしょうか?

また彼は、ある曲がメロディだけの時とハーモニーをつけた時、そしてリズムをつけた時、それぞれが全く違う風に響くということをよく理解していた作曲家だとも考えています。

彼のあの革命的な、「刻み続けないこと」「(あたかも対位法のように)全く違うリズムの波をぶつけること」で高いテンションとより一層のグルーヴを生むドラミングは、まさに作曲家としての発想ですよね。

きっと彼の中では自分は作曲家で、その音楽性の一手段としてドラムを叩いているという思いを常に持ち続けていたはずで、それだけにこの作品(と以後の活動)にかける意気込みは凄いものがあったと思います。

そんな彼のヴィジョンを実現するために集められたメンバーは古くからの仲間のボビー・ハッチャーソンとロン・カーター、そしてバリバリの若手のウォレス・ルーニー、ドナルド・ハリソン、マルグリュー・ミラー。

この内マルグリューだけが残ってトニーのレギュラークィンテットを支えて行くことになります。

というわけで、実は新生ブルーノート作品としてはこのメンバーは特殊なのですが、非常に引き締まった演奏で、トニーの「暗くも明るくもないのだが淡いダーク」という実にナイーヴなサウンドカラーをよく形にしていると思います。

レギュラーに選ばれるだけあって特にマルグリューが出色ですね。

案外ロンのあの感じがこのアルバムの曲には良かったり。

トニーもいい演奏を受けてご機嫌なのか、あの独特の尺を伸び縮みさせるアプローチを叩き込みまくってアルバムの完成度に自ら拍車をかけています。

ちなみにラストの「ARBORETUM」はロンのアルバム『エテューズ ETUDES』のラストナンバー「ドクターズ・ロウ DOCTOR'S ROW」のリネイムヴァージョンなんですが、このアルバムには違うトニーの曲で「ARBORETUM」というのがあるんですよね。

曲名を勘違いしたままメンバーに譜面を渡し、勘違いが判った後も面倒くさいのでそのまま名前変えたというところですかね(笑)。

前にリーダーとして一緒に録音したロンは何してたんだ。

曲自体はスパニッシュ風のメロディがバロック的な輪唱形式で絡み合う、彼の曲の中でも大好きなものの一つです。

最近はヘルゲ・リエン HERGE LIENやロラン・フィッケルソン LAURENT FICKELSSONの「LOVE SONG」のカヴァーが話題になってトニーの卓越したソングライティング能力がようやく認められ始めたような感じですが、これからもっともっとカヴァーが増えて、早く彼が「ドラムの天才」から「ドラムの革命者にして天才作曲家」という風にリカテゴライズされるようになれば良いなと思っています。

どっちにしろ、新生ブルーノートのトニー作品の不当な入手しにくさをまずどうにかして欲しいです。

トニーファンとしてはレア度が判ってから飛びつくようになった方々にも良い感情は持てないですね。


Personnel:TONY WILLIAMS(DS,E-DS),DONALD HARRISON(AS),WALLACE RONEY(TP),MULGREW MILLER(Pf),BOBBY HUTCHERSON(VIB),RON CARTER(WB)

CTIオールスターズ
カリフォルニア・コンサート (KICJ9025/6)

我が青春のアルバム。

ヒューバート・ロウズ、フレディ・ハバード、ジョージ・ベンソン、スタンリー・タレンタイン、ロン・カーター、ビリー・コブハム、アイルトらによって結成されたCTIレーベルのオールスター顔見世興行バンドのハリウッド・パラディアムでのライヴアルバム。

71年、ジャズが熱々の時代真っ只中。

私はこれ、もちろんコブハム参加なので買ったのです。

確か大学に入ってからでしたかねえ。

いやあとにかくその熱い暑い厚い演奏にはぶったまげました。

コブハムは相変わらずのバシバシ切れの良いスネアとドゴドゴのタム回し、ぴしゃーんと高速で縁までヴァイブレイトさせるシンバルワークで叩きまくってくれているわけですが、ロウズとタレンタイン、フレディ、そしてジョジベンのキレまくり具合も本当に素晴らしいのです。

観客の、まるでロックコンサートのような乗りっぷりも凄い。

アイルトのアフリカンムードなパーカッションをバックに、ファルセットヴォイスとブレスを効かせたフルートで交互に音を出す特殊奏法でさらっと超絶技巧を用いながら、曲へのイマジネイションを高めるというイントロとしての絶妙の効果をムーディにこなすロウズに圧倒されるジェイムズ・テイラー JAMES TAYLOR作曲の「ファイア・アンド・レイン FIRE AND RAIN」。

フリーテンポパートでの吹きっぷりも彼の代表的な演奏と呼べるぐらい素晴らしいのですが、リズムがインテンポになると7/4拍子のジャズロックビートで出色のテクニックを総動員して歌いまくるソロをガンガン吹き倒すロウズにはやられます。

コブハムのゴーストノート&ストローク入れまくりのドラミングも効いてるう!

続くフレディの名曲「レッド・クレイ RED CLAY」はこのライヴ盤の白眉とも言える大熱演。

ド頭から熱くかましまくりのイントロ、そしてインテンポに移る時の鬼のようにかっこええコブハムのドラム!

オリジナルヴァージョンのレニー・ホワイト LENNY WHITEの演奏が蚊の鳴くようなものに感じられてしまいます。

誰が何と言おうとこの曲の決定版はこれ!!

作曲者のフレディ、タレンタイン、ジョジベンも根性が入ったロングソロをキメ、予知能力的即時反応プレイで「スタンバっている状態」の若きコブハムも怒涛の押しまくり。

特にジョジベンは、ブラコン系AORジャズの旗手みたいに思われてますが実は超凄腕のオーソドックスギタリストなのだということをこの曲のイキまくっているソロで証明しています。

彼は非常に優れたリズム感を持ったサイドギターも抜群に巧いのをこの曲に限らず随所で披露しています。

いやあほんま、この演奏最初に聴いた時は興奮しまくりましたわ。

アーシーなタレンタインのブルーズ「シュガー SUGAR」は、観客の乗りっぷりが一番ダイレクトに伝わる演奏。

このちょっと余裕を持たせた、でも灼熱の乗り、まさに「あの時代」のイケイケドンドンムードが実感を伴って体の中に沁み渡って来ます。

「ブルーズ・ウェスト BLUES WEST」「リーヴィング・ウェスト LEAVING WEST」はロング・セッションのカラーが強いですが、脂が乗りまくった人たちが本気でやっているもんだから全然飽きませんだれません。

前者はカラッと晴れた空を思わせるメロディの、ブラジルの作曲家エウミール・デオダート EUMIR DEODATOの作品、後者はいかにもロンが好きそうなトリッキーなシンコペがある、タレンタインとロンの共作。

特に後者での人間業ではないコブハムとアイルトの壮絶なロングバトルは血が沸騰しそう。

私が最初にこの作品を購入したのはこの曲をカットして1枚に編集した輸入盤だったので、レコード屋で大音量でかかっているのを初めて聴いた時は痺れて立ち尽くしましたね。

さて、このアルバムには問題が2つあります。

一つ目は、随所に現れるカントリーミュージックみたいなロンのソロの脱力ぶりと、相変わらずの音程の甘さ。

グルーヴはいい感じなんですが。

はまる時はむちゃくちゃはまって、コブハムとも凄く相性いい(例:マッコイ・タイナー McCOY TYNERの『フライ・ウィズ・ザ・ウィンド FLY WITH THE WIND』やコブハムの『スペクトラム SPECTRUM』など)んですけれどね。

二つ目は、活躍しているメンバーが偏っていること。

アルトで参加のハンク・クロフォードなんて影も形も感じられないですし、エレピ&オルガンのジョニー・ハモンドも影薄すぎ。

両者とも最後にちょこっとソロあるくらいで、しかもあまり盛り上がってない。

これはちょっと惜しいところです。

個人的には、ロンは替わりになる人が見当たらないのでしょうがないとしても(笑)、クロフォードはもっとフィーチュアするか抜ける、ハモンドにはオルガン専念してもらって、エレピはチックかハービー、あるいは反則でCTI作品によく参加していたマレット奏者のデイヴィッド・フリードマン DAVID FRIEDMAN(絶対あり得ない。妄想しすぎですな笑)などを充てて欲しかった。

あと、この顔見世興行オールスターズの他の曲のライヴ録音、様々なアルバムに散らばっていたり全く出ていなかったりするのですが、全部まとめて一つのアルバムとして再発して欲しいですね。

アナログの2枚組は結構安くで出回りまくってますが、私が最初に手に入れた1枚編集版CD、日本盤で紙ジャケで出た24ビット2枚組(上掲画像)、共に激廃盤です。

コンプリートヴァージョンの商品化を、切に、切に希望します。

まあしかし何はともあれ、このアルバムの熱気と勢い、理屈不要の盛り上がりは素晴らしいです。

時代が残した文化遺産というべきでしょうね。

とにかくジャズが問答無用にカッコいいものだった、そしてその価値観を大勢の人で共有出来ていた時代だったのですね。


Personnel:GEORGE BENSON(EG),FREDDIE HUBBARD(TP),HUBERT LAWS(FL,PICCOLO),STANLEY TURRENTINE(TS),HANK CRAWFORD(AS),JOHNNY HAMMOND(EPf,ORG),RON CARTER(WB),BILLY COBHAM(DS),AIRTO(PERC)

Paul Winter Consort
Icarus (LIVING MUSIC RECORDS LD0004)

この作品はビリー・コブハム参加ってことでだいぶ前に購入したんですけれど、ニューエイジミュージックの夜明け、そしてユニジャンル音楽集団オレゴン OREGONの母体となったという意味で非常に大きな評価を与えられている名盤のようです。

そういう歴史的価値をとっぱらって見ても、グレン・ムーア GLENN MOOREを除いたオレゴンのオリジナルメンバー3人、そして後にECMから素晴らしいアルバムを発表し続けるチェリストのデイヴィッド・ダーリングが参加しているのですから、質の高いものをいやでも期待してしまいますよね。

曲はほとんどラルフ・タウナーが作っていて、ピアノのハーモニーが美しい名曲「ザ・サイレンス・オブ・ア・キャンドル THE SILENCE OF A CANDLE」も収録されています。

マッキャンドレスが後にソロアルバムのタイトルにも使う「オール・ザ・モーニング・ブリング ALL THE MORNING BRING」もやっています。

実際このアルバムは名盤と呼ばれるのにふさわしい名旋律がいっぱいで、アレンジも室内楽的なものからジャズロックなサウンド、エスニックなど多彩です。

ニューエイジの萌芽を感じさせると書きましたが、その言葉からイメージされるような毒にも薬にもならないようなものではなく、各楽器とも暴れまくり、美音を響かせまくりの、本来のこのジャンルとはこういうものだったのだということに気付かせてくれます。

また、いい意味で自然愛のようなものが感じられるのも良いですね。

楽器のナチュラルな響き、雄大で美しいメロディから大自然の懐の深さが見えて来ます。

当初私がお目当てにしていたコブハムの演奏はさすがとは言えるものの、絶対に彼でなくてはと言うほどのものではない気がします。

参加2曲だけですしね。

とは言えダーリングのチェロが暴れ倒す「WHOLE EARTH CHANT」のジャズロックパートでのシャキシャキしたドラミングは絶妙です。

ポール・ウィンターと言うとブラジルのカルロス・リラ CARLOS LYRAとの共作や、この作品以降の本当にBGMになってしまった音楽のイメージが強いでしょうけれど、このアルバムは美しくアグレッシヴ。

トップクラスのスポーツ選手の如しです。

彼の幅広い音楽性と才能あるメンバーたちによる強靭な演奏に酔って下さい。


Personnel:PAUL WINTER(SS,VO),DAVID DARLING(CEL,VO),PAUL McCANDLESS(OBOE,EHN,CBS,VO),RALPH TOWNER(AG,Pf,ORG,VO),HERB BUSHLER(EB),COLLIN WALCOTT(DS,PERC),ANDREW TRACEY(AG),BILLY COBHAM(DS),MILT HOLLAND(PERC),LARRY ATAMANUIK(DS),BARRY ALTSCHUL(PERC)