JOANNADUDA

モヒカン頭がトレードマークのポーランドの女性ピアニストJOANNA DUDA ヨアンナ・ドゥダの目下のところ唯一のリーダーアルバムをご紹介します。
今回本作を紹介するのには2つ理由があります。
まず、彼女は7月にポーランドのコンテンポラリーダンスユニットの音楽制作+ピアノ生演奏者として来日します(詳細下記)。
そしてもう一つの理由は、このアルバムの音楽が、今のポーランドのジャズ事情をとてもよく表しているように思えるからです。
とりあえず、初のリーダー作なのに「ザ・ベスト・オブ」というタイトルをつける不敵なんだかお茶目なんだかわからないセンスも、彼女の持ち味の一つなのだということは最初に書いておきましょう。

最近「今のポーランドのジャズって若い人に人気あるんですか? どんな感じの音楽なんですか?」と訊かれることが増えています。
メインストリームなジャズサウンドについては、若者へのアピール度はどの国も似たり寄ったりだと思いますが、近年のジャズは、アメリカだけでなくポーランドにおいても、ヒップホップやエレクトロニカ、ダブなどなど、若者にとって等身大の音楽に急接近しているのです。
こうした現状のバックグラウンドとして、ポーランドが90年代前半に社会主義から資本主義へと体制変換した時の、猛る若者たちのエネルギーの象徴のような存在だったYASS ヤス(ジャズやパンク、ロック、前衛音楽などがミックスされた現代ポーランド独自のジャズ)というのがあるのですが、それはまた別の話。
そのYASSの台頭で産声をあげたグループの中に、何度も来日し、ポーランドの若い世代にも絶大な支持を得ているPINK FREUD ピンク・フロイトがあり、ヨアンナはそのリーダーWOJTEK MAZOLEWSKI ヴォイテク・マゾレフスキの別名義のクィンテットのピアニストでもあるのです。
そのヴォイテクのクィンテットでは本格的で豪快なピアノ演奏でアンサンブルを盛り立てているのですが、今のポーランドシーンでは、そうした「フィジカルな実力」を見せる方向性はメインストリームと言うよりはすでに「多くの流れのうちの一つ」のような感じになってきています。
そこで、この『ザ・ベスト・オブ』が今のシーンを知るのに非常に有効になってくるのです。
タイトル通り、これまでのヨアンナが手がけてきた様々な音楽のショウケースなのですが、クラシックの正統な教育を受け、ピアニストとしてヴァーチュオーゾであるにもかかわらず、プレイヤーとしての自分の資質を半ば放棄したような、エレクトロニカっぽかったり、クリス・デイヴっぽいポリリズミックなドラミングとヘロヘロしたチープな打ち込みが拮抗するナンバーなどがずらりと並んでいます。
また、キッチュなレトロ感覚がたっぷりの音作りに、この国独特の感性も感じます。
もちろん、ピアニストとしてのヨアンナもここにはいるのですが、ヴォイテクのバンドの時とは大違いでシンプルでちょっとチープな感じの演奏をループさせてずらして重ねたり、モーリス・ラヴェルの作品をジャンクなフィーリングでもうひとりのピアニストとデュオったり。
ピンクのヴォイテクやTOMASZ DUDA トマシュ・ドゥダ、何度か来日もし、内橋和久も大絶賛する天才ドラマーJERZY ROGIEWICZ イェジ・ロギェヴィチも参加し、独特のユニジャンルな音楽の成立に力を貸しています。
そこには、クラシックやジャズマナーの中でどこまでいけるかという視点からかなり大きくアングルがずれた、斜に構えた視線と、その批判精神を今の時代のポップさにまとめあげるクレヴァーなセンスの両方がたっぷりと感じられます。
特に、ポーランドのクリス・デイヴ、JANEK MLYNARSKI ヤネク・ムウィナルスキとのデュオユニット「J=J」は飛び抜けてぶっ飛んでてカッコいいです。
(J=Jにはすでに『2013 EP』というミニアルバムがあります。ヤバイです)
自身を育んできたジャズやクラシックの音楽家という軸をあくまで持ちながら、見境がないとすら言いたくなるくらいの節操なさで様々なジャンルを横断し、しかも自分の軸がなければ絶対に成立しないポップな音楽を、彼女ら最先端のポーランドジャズミュージシャンが多数作っているというのが今のこの国のシーンの特色と言えます。
ピアニストしてのまともな演奏は一切入っていない本作にも、超一流の器楽奏者としての鋭い「音響」への感性がしっかりと反映されているのも重要なポイントです。
と言うわけで、このアルバム、彼女自身の現時点でのベストであると共に、ある意味ポーランド音楽の最先端シーンのベストとも言えそうな、独特かつ非常に幅広いサウンドが詰まっています。
おすすめです。

と、こんな才人ヨアンナの、さらに別の顔。シリアスなコンポーザーとしての側面は、来月の来日公演で直に体験することが出来ますよ!
詳しくは下のリンクで!
第11回 シアターX(カイ)国際舞台芸術際2014「AMAREYA THEATRE」公演について

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