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(LUNA MUSIC / CD337)

近年、ジャズとヒップホップやドラムンベースとの接近が様々なところでトピックとなっていますが、それはそれらの音楽の本場アメリカだけでなく、ヨーロッパも例外ではありません。
そんな中でもポーランドは、それらの融合が最もはかられてきた国でないかと思います。
今回はそうしたムーヴメントの中から一枚をご紹介。
比較的中堅?のサックス奏者スワヴェク・ドゥダルのセカンドアルバム『INSIDE CITY インサイド・シティ』です。

オープニングのタイトル曲からドラムンベースやメタリックでミニマルなロックのグルーヴを大胆に導入した曲調で「今の音楽」感が充満しています。
ゲスト参加のアルトゥル・レシツキ ARTUR LESICKIのギンギンギターも効いていますね。
リーダーのドゥダルのサックスは往年のフュージョンの大物プレイヤーを思わせる、きらびやかな張りを持った音色なので、曲によってはメロウでアーバンなサウンドに「あの時代の懐かしさ」のようなものを感じてしまう人もいるかも知れません。

最初に、ヒップホップやドラムンとの融合が近年盛んであると書きましたが、それだけではなく、その中にそれぞれの国の「民俗性」のようなものをさらに盛り込んでいるものが最先端になっているような気もします。
ロバート・グラスパー ROBERT GLASPERしかり、ティグラン TIGRANしかり。
そういう意味では、ポーランドの場合はピンク・フロイト PINK FREUDなんかがそうした「理想形」に最も近いでしょうか。

その意味で行くと、このアルバムはタイトル通り都会的な音楽で、一聴しても「ポーランドらしさ」を感じないという人も多いかも。
ですが、そこは随所にメランコリックな叙情を振りまくロベルト・ヤルムジェク ROBERT JARMUZEKのピアノに注目。
彼の繰り出すハーモニーには、古くからのポーランドジャズ特有の響きが隠し味としてひそんでいます。

ドゥダル自身の音楽は、さらっとしたタッチのサウンドと大掛かりではないものの気配りの行き届いたアレンジングが魅力だと思うのですが、それともう一つ、ピアニストの使い方がうまい。
アコースティックな方向性だったファースト『BRAND NEW WORLD ブランド・ニュー・ワールド』(LUNA MUSIC / LUNCD195)でも、グジェゴシュ・ウルバン GRZEGORZ URBANが演奏にアレンジにと大活躍でした。
特に、ウルバン編曲による「ラウンド・ミッドナイト」は従来の同曲のアレンジの路線を覆す「夜明けへの序章」のようなイメージを押し出したもので、出色でした。

本作に話を戻しますと、とにかく定評のあるポーランドプレイヤーらしいバリバリと切れまくるトーンで細かいフレイジングをものともせず吹き倒すドゥダル自身の演奏と、ビシビシ繰り出される鋭くとんがったリズムフィギュア、そして圧倒的に「現代」を感じさせる空気感とがタイトに絡まりあい、これもまた従来の暗く重いポーランドのイメージを覆すであろう洗練されたカッコイイサウンドになっています。
ポーランドがどうとかより、現代ジャズの佳作として、オススメです。
「今のジャズ」はなんかリズムの立ち方が違うんですよね。
本作を聴いても、一昔前の「リズムが立ってるジャズ」とグルーヴの触感、肌触りが全然違うのを感じることと思います。
ちなみに、ラストナンバー「EST」は現代ジャズを切り拓いたイコン的アーティストの一つ、エスビョルン・スヴェンソン・トリオ ESBJORN SVENSSON TRIOに捧げられています。
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