みなさん、ポーランド映画祭2013、行ってますか~?
チェックはして気になってるけど、行ってないって方、絶対的に素晴らしい作品ばかりなので行った方がいいですよ♪
http://www.polandfilmfes.com/

さて、今回のプログラムではアンジェイ・ワイダ(ヴァイダ)の主要作を中心にしていることも話題の一つとなっています。
その中でも目玉は『大理石の男』『鉄の男』という「男2部作」でしょう。
ポーランドという国が政治的に非常な緊張に包まれていた時期にワイダが命を(監督生命を、ではなく文字通り人間としての命を)賭けて制作された両作のパワーは見る者を圧倒します。
ポーランド現代史を勉強してから観ると、さぞやひしひしと押し迫るものがあり、よりこの映画を楽しめるのでしょう。

しかしここではもう一つ違う視点からこの2つの作品を見てみる、というのを提案したいです。
たぶん、おおかたの「女性」は、私がここで提案せずとも自然とそういう角度から観ていると思います。

その切り口とは、ポーランドの名女優クルィスティナ・ヤンダ演じるヒロイン、アグニェシュカの女性としての変貌です。
アグニェシュカたん、『大理石の男』ではガンガン煙草を吸い、男を蹴飛ばす、偉い監督の車にエラソーな格好で足をかけメンチを切る、老撮影技師をこき使うなどなどパワフルな行動でやりたい放題です。
いわゆる「女性らしい女性」とは全くかけ離れています、じゃじゃ馬です。
近くにこんな女子がいたら怖いな~、振り回されそうだなあ。
でも、その彼女のエネルギッシュな行動がこの映画に絶妙のスピード感をもたらしています。
野心でギラギラする若い女性の真っ直ぐなパワーに爽快感を抱く人はきっと男女ともたくさんいることでしょう。
また、アンジェイ・コジンスキによるカッコいいジャズロックな映画音楽も、そんな彼女の「やったるで!」パワーをストレートに表現しているようで、特に冒頭のトラックはこの魅力的なヒロインの「困難が何ぼのもんじゃい!」みたいな負けん気が乗り移ったような気持ちいい高揚感があると思います。
(*ちなみに女声コーラス担当はポーランドの人気コーラスグループAlibabki アリバプキ)
過去と現在の映像が入れ子構造になり、何が本当なのか微妙にあいまいに描かれる構成は、作品作りを急ぐアグニェシュカの焦燥感を観客にも感じさせますが、全体として骨太な印象があるのは、やはりヒロインのどこまでも突き進むキャラクターゆえでしょう。
「鉄の女」と称しても良さそうなガンガンの押しっぷりです。

しかし、続く『鉄の男』では前作『大理石の男』の息子ビルクートと結ばれ子も産んだアグニェシュカがあっと驚くキャラとなって、物語の終盤に再登場します。
彼女はすっかり大人の落ち着いた女性へと変貌し、本作の裏・主人公とも言える旧知のアル中記者にその熱愛ぶりを語り、「彼に会った瞬間、この人の子を産みたいと思った」とまで言います。
いわゆる「女らしい女」への、あまりにも鮮やかな変貌。
そして、もともと重苦しいノリであった本作が、彼女のその変貌を観客に知らしめるあたりから途端に失速するように思えるのです。
人当たりもかなりやわらかくなり、シンプルなスカート姿で、まあいわゆる「女性としての魅力」というのは増したのかも知れませんが、『大理石』でのあの圧倒的なキャラ立ちを知っていると「え~、これってないよ!普通の女になっちゃったじゃん!」と感じちゃいます。
と言うか、誰もが(特に男性が)作り上げている「女性像」というのが一つの物語の中でこれほどつまらなく見える例もなかなかありません。
その「落差」はきっとこの2部作を続けて観ることでより鮮明に感じられると思うので、ぜひぜひ腰をすえて観て下さい。
アグニェシュカの変貌ぶりが、ワイダの意図せぬところで現代の日本社会に生きる私たちに物凄く深く考えさせるという効果を生んでいますし、また、いわゆる一般像としての魅力的なかわいい女性ではなくて本当の意味で規格外な女性キャラというのが物語においていかに大事なのか、ということもよくわかると思います。

上映の機会は12/9の朝11時からと、12/12の15時からの2回あります!
ぜひぜひ!
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