11月23日の、ポーランド映画祭2012プレイヴェント「ポーランドのサントラとジャズの関係」、あまり当日まで時間がない中でネット上のみの告知でしたが、10人以上のお客様が来てくださり、予想以上の成功だったと思います。
また、みなさん本当にじっくり聴いて下さいました。
あまり音楽の紹介はしないでひたすら音をかけるとは言ったものの、やっぱり人脈など説明したくなるわけで、ただでさえややこしいポーランド人名を私の早口で話されると何だか判らなかったという方もいらっしゃるでしょう。
というわけで、当日かけた曲のセットリストなど簡単にコメントをつけて載せておきます。
当日のお客様も、いらっしゃらなかった方も、ご参考までに。


1.CRAZY GIRL / KRZYSZTOF KOMEDA クシシュトフ・コメダ
『KNIFE IN THE WATER(O.S.T.)』CHERRY RED RECORDS版
言わずと知れたロマン・ポランスキ監督の大傑作『水の中のナイフ』のサントラから。正しくはサントラ用に作った曲の、ジャズマナーに添った演奏による再録。サックスのBERNT ROSENGREN ベルント・ローゼングレンの渋いブロウが泣かせます。

2.『夜の終りに』のサントラ音源より / KRZYSZTOF KOMEDA
『KNIFE IN THE WATER(O.S.T.)』CHERRY RED RECORDS版
同じCDから。今までこのアンジェイ・ワイダ監督の青春映画のサントラ音源は未収録(正しくはポーランドで出た現在廃盤のワイダ・サントラ集に一度だけ収録)だったのですが、このCDで復活。しかも今年出たばかりで入手もしやすいのです。

3.KOLYSANKA / KRZYSZTOF KOMEDA
『JAZZ 57 II FESTIWAL MUZYKI JAZZOWEJ
詳しくはポーランド映画祭のプログラムに私が執筆した「ポーランド1956 映像と音像の関係」に書いてあるのですが、ソポト・ジャズ・フェスティヴァルというのはポーランドの現代文化史において非常に重要な役割を担ったのです。その2年目開催時の、コメダ・バンドの演奏を。この曲はポランスキの有名な短篇映画『タンスと二人の男』のメインテーマとして非常に有名です。

4.KOLYSANKA / ROBERT MAJEWSKI
『PLAYS KOMEDA』GOWI RECORDS
これはその「コウィサンカ(子守唄)」のカヴァーヴァージョン。全てのコメダカヴァーの中で一番好きな演奏。青森の秋や冬の風景によく合うといったお話をしました。

5.MOONRAY / WANDA WARSKA
『PIOSENKI Z PIWNICY』10CD版
昭和三人娘を合わせたよりも偉いと言われるポーランドの大歌手ヴァンダ・ヴァルスカの歌唱による、『夜行列車』(イェジー・カヴァレロヴィチ監督)の有名な挿入歌。曲自体はアーティ・ショウ作曲のスタンダードですが、音楽監督を務めたANDRZEJ TRZASKOWSKI アンジェイ・トゥシャスコフスキの現代音楽から影響を受けたサウンドセンスにより妖しげなアレンジを施されています。このヴァージョンは当10枚組にしか収録されていない激レアテイクです。

6.MOONRAY / WANDA WARSKA
『PIOSENKI Z PIWNICY』POLONIA RECORDS版
同じタイトルですが、こちらはポーランドジャズファンにはおなじみのポロニャから出た一枚もの。上のヴァージョンよりもスウィンギーな演奏となっております。

7.POLSKIE DROGI / ANDRZEJ KURYLEWICZ
WIELCY KOMPOZYTORZY FILMOWI VOL.11
上記2ヴァージョンの「ムーンレイ」でトランペットやピアノを弾いていたのがトロンボーン奏者でもあるアンジェイ・クルィレヴィチ。彼も後に映画音楽作曲家として大成しますが、そのクルィレヴィチの代表作と言われる76年のTV大河ドラマのメインテーマを。

8.JUZ JA Z TOBA NIE ZOSTANE / ANDRZEJ KURYLEWICZ
『10+8
ジャケの、ボントロケースをかたわらに立てたカッコいいクルィレヴィチの姿が印象的なポーランドジャズの傑作から人気の一曲。

9.VARIATION ON THE THEME"NEAR THE FOREST" / ANDRZEJ TRZASKOWSKI
SEANT』
これもコメダと同時代の、ポーランドジャズ屈指の名盤の一つ。『夜行列車』で演奏ではなく「音楽監督」として素晴らしい才能を見せたピアニスト兼作曲家アンジェイ・トゥシャスコフスキのアルバムです。彼の「映画音楽家」としての話は誰もが『夜行列車』しかしないのですが、実はェジー・スコリモフスキの『不戦勝』はじめ非常にたくさんの映画に音楽を作っているのです。ただ、残念ながら全然音盤化されていません。彼のサントラ音源については発掘したいと考えています

10.WITOKACY / WLODEK PAWLIK TRIO
『ANHELLI』
この辺で話を現代におけるサントラとジャズの関係にもって来ました。『木漏れ日の家で』やポーランドで映画賞を受賞した『裏面 REWERS』を初めとした現在の名品に音楽を提供している凄腕ピアニスト、ヴウォデク・パヴリクをまずご紹介。彼のジャズアーティストとしての真価を爆発させたピアノトリオの名盤より。

11.CROWS MAIN THEME / WLODEK PAWLIK
『CROWS(O.S.T.)
本当は『REWERS』をかけようと思っていたのですが、どうせならせっかくきていただいた皆様に珍しいものを、と思い激レアサントラのこれをかけました。パヴリクの優れた作曲能力がうかがえる素晴らしいメロディです。透明感と深みをたたえたソプラノサックスは80年代に現代音楽の世界で活躍し、後にジャズの世界に移って来た名手MICHAL KULENTY ミハウ・クレンティ。

12.THIS IS NEVERLAND / JAN A.P.KACZMAREK feat.LESZEK MOZDZER
A LOOK OF FREEDOM』
現代ポーランドの音楽シーンに欠くべかざる存在としてその天才ぶりを発揮するピアニスト、レシェク・モジュジェルには3つの顔があります。まず、素晴らしいジャズアーティストとしての一面。次に、映画音楽作曲家としての一面(今年公開された『失われた大地』など)、そして最後に、アカデミー賞も受賞した偉大な映画音楽家ヤン・カチュマレクやZBIGNIEW PREISNER ズビグニェフ・プレイスネルの録音に参加する一ピアニストとして。これはカチュマレクのライヴアルバムで、モジュジェルがゲスト参加したものです。たぶんまだ日本に住んでいる人で聴いたことあるひとほぼいなかったんじゃないでしょうか。ジョニー・デップ主演の『ネヴァーランド』のテーマ。

13.TELL ME ANYTHING ABOUT YOUR LIFE,MR.BUK ! / LESZEK MOZDZER & ADAM PIERONCZYK
『LIVE IN SOFIA』NOT TWO RECORDS
ポーランドジャズ史上最高の名盤の一つ。現在では共に自らがミュージカルディレクターを務めるジャズ・フェスティヴァルを持つほどの大物に育った2人の超絶ミュージシャンの若き日のデュオライヴ。

14.LOVE THEME / TOMASZ STANKO
『A FAREWELL TO MARIA / POZGNANIE Z MARIA』GOWI RECORDS

コメダのバンドにいたアーティストでサントラの世界に濃厚にかかわり始めた人、ということでトマシュ・スタンコの激レアサントラをご紹介。上記モジュジェルも参加しています。

15.SVANTETIC / TOMASZ STANKO
『LITANIA - MUSIC OF KRZYSZTOF KOMEDA』ECM
ポーランドの若い世代のミュージシャンもすべからくコメダの影響を受けているのですが、実は案外最初の「コメダ体験」は本人の演奏ではなかったりしるようなのです。彼の音楽の「伝承」を果たしたのはこのスタンコのコメダカヴァー集だという証言を多数得ております。また、この作品はポーランドの老舗ジャズ雑誌JAZZ FORUM上のアンケートで「ポーランドジャズオールタイムベスト」の2位に挙げられています。

16.DO WIDZENIA,DO JUTRA... / MARIUSZ FAZI MIELCZAREK
『DO WIDZENIA,DO JUTRA...』

先日ようやく音源が登場しましたが、このイヴェントの時点ではまだその情報が知られていなかった『さよなら、また明日』(ヤヌシュ・モルゲンシュテルン監督:7曲目のクルィレヴィチが音楽を担当したドラマの監督でもあります)のコメダによるサントラ。この映画はよほど愛されているらしく、こんな風に後年のミュージシャンによるアーティストではなく映画作品そのものへのトリビュートアルバムも出ています。ピアノに名手BOGDAN HOLOWNIA ボグダン・ホウォヴニャらを迎えた美しい演奏です。

16.BOSSA NOVA / ANDRZEJ KORZYNSKI
『MUSIC TO THE FILMS OF ANDRZEJ WAJDA』OLYMPIA
ジャズロックや電子音楽風のキテレツ音楽で異彩を放つ映画音楽家アンジェイ・コジンスキのキラートラック。イヴェント中では説明を忘れましたが、アンニュイに歌っているのはNOVI SINGERSのEWA BANAT エヴァ・バナト。アンジェイ・ワイダのレア映画『蝿取り紙』のメインソングです。この映画でしょぼくれたオッサンを演じているZYGMUNT MALANOWICZ ズィグムント・マラノヴィチが、数年前若者の象徴としてポランスキの『水の中のナイフ』に出演しているというこの事実。この曲は長年隠れファンを秘密裡に増加させて来ましたが、コジンスキのレアトラック集が先日出たことによりそのもやもやはスッキリ解消!
http://diskunion.net/portal/ct/detail/RY121009-AK-01

17.LITTLE GIANT(GIANT STEPS) / MICHAL WROBLEWSKI TRIO
『I REMEMBER』チェシチ!レコーズ
この辺で宣伝させていただきました。わたくしオラシオが監修を務める、ディスク・ユニオン発のポーランドジャズ専門レーベル「チェシチ!レコーズ」の第2弾リリースその1です。第2弾リリースはこの後も3枚、凄い作品が続きますよ!
http://diskunion.net/portal/ct/detail/JZ121113-05

18.ROSEMARY'S BABY / MIRA OPALINSKA & DOUGLAS WHATES
『LUMIERE』チェシチ!レコーズ
そしてこれは「映画音楽」をテーマにした、ピアノとベースのデュオによる美しい作品。わがチェシチ!レコーズの記念すべき第一弾リリースで、今回来て下さった方もセットの中でこれが一番良かったと言って下さる方も。レーベルのスタートがこの作品で本当に良かったと思います。ぜひこれからやって来る冬に聴いて下さい。

19.LE DEPART / KRZYSZTOF KOMEDA feat.CHRISTIANE LEGRAND
『LE DEPART』
イェジー・スコリモフスキのベルギー撮影作品『出発』のテーマ曲。歌っているのは昨年亡くなったクリスティアーヌ・ルグラン。あの高名な映画音楽作曲家ミシェル・ルグランのお姉さんです。映画やサントラファンにとにかく大人気のキラートラック。この録音にはDON CHERRY ドン・チェリーなんかも参加していて、彼が後にポーランドの音楽シーンに深く関わっていく話などもしました。

20.KOLYSANKA ROSEMARY(ROSEMARY'S BABY) / JULIA SAWICKA PROJECT
『BREATHING SPACE MORE...』
ひそかにチェシチ!での取り扱いを目論んでいる女性ヴォーカリストの作品から、絶品「ローズマリーの赤ちゃん」のカヴァーを。ギターはお隣チェコの天才DAVID DORUZKA ダヴィト・ドルーシュカ。もうすぐほぼ同じメンバーで録音したスティングカヴァー集が発売されます。


こんな感じでした~。
結構いつも同じ曲かけちゃっているなあという反省点が残る選曲でしたが、みなさん大変に楽しんで下さっていたようなので良かったです。
時間がもう少しあれば、休憩時間など設けて軽く雑談しつつ、もう少し現代のアーティストをかけても良かったかな。
例えば、映画祭の目玉上映となっていたミハウ&ユゼフのスコリモフスキ兄弟による『イクシアナ』の撮影監督を務めたアダム・シコラ ADAM SIKORAの監督作品『EWA』のサントラ(才能溢れるジャズベーシストOLO WALICKI オロ・ヴァリツキによるもの)とか、マルチン&バルトウォミェイ・ブラトのオレシ兄弟のサントラとか。
今度またポーランドのサントラ特集イヴェントやる時は、もっともっと60年代と現代をつなげた構成にしたいですね。
なにはともあれ、当日来て下さった皆様には本当に感謝致します。
本イヴェントでもかなりスペースを割いた天才クシシュトフ・コメダに関するリスニングイヴェント、決定しましたので、下のリンクでご覧下さいませ。
http://ameblo.jp/joszynoriszyrao/entry-11414928589.html
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