2011-12-16

SIMULTANEOUS ABSTRACTIONS / NEW TRIO

テーマ:ポーランドジャズ JAZZ POLSKI

(TOKARNIA MUSIC PRODUCTIONS TMP 003)


現代ポーランドジャズシーンを引っ張っている風雲児の一人に、ヴァイオリニストのMATEUSZ SMOCZYNSKI マテウシュ・スモチンスキがいます。

自身のクィンテットに加え、今年になって正式にデビューしたジャズ弦楽四重奏団のATOM STRING QUARTET、さらには多数のアルバムへのゲスト参加などなど、その活躍は非常に多岐に渡っています。

そして、それを支える存在として兄のJAN SMOCZYNSKI ヤン・スモチンスキの存在を忘れてはいけません。

ピアノ/キーボード奏者としてトランペッターJERZY MALEK イェジィ・マウェクのグループに参加し、『GIFT』『BY FIVE』といった名盤を残していますが、近年のJANは録音エンジニアとして暴れまくっており、彼の手にかかった名盤が雨あられとリリースされています。

もう今のシーンを彼抜きで語るのは難しいくらいに、質量共に卓越した仕事ぶりなのです。

その彼の類稀なエンジニアワークを生む魔法の部屋が、自身で設立したSTUDIO TOKARNIAです。

弟のMATEUSZがバリバリの天才プレイヤー、兄のJANはプレイヤーとしては中堅どころでも天才録音エンジニア、という立ち位置で捉えられていたのがこの兄弟だと思うのですが、ここに紹介するNEW TRIOではJANはスタジオワークはもちろんのこと、驚異的なオルガン奏者として弟とがっぷり4つに組み合い、イマジネイション溢れるサウンドを構築しています。

そう、このトリオの編成は、ヴァイオリン、オルガン、ドラムなのです。

このフォーマットと言えば思い出されるのはフランスのジャズヴァイオリンの重鎮JEAN-LUC PONTY ジャン=リュック・ポンティとEDDY LOUISS エディ・ルイス、スイスのDANIEL HUMAIR ダニエル・ユメールの当時の西欧最強トリオによる2枚のアルバムですが、他にはそんなに録音されていないとても変則的な編成だと思います。

少なくとも私には、すぐ他の作品が思い出せないです。

ひょっとしたらそれ以外のものは知らない可能性が高いです。

そんな超マイナー編成にあえて挑戦した理由は、当然上述のPONTY-LOUISS-HUMAIR作品への敬意を表して、ということもあるかと思うのですが、何よりMATEUSZが兄のJANのオルガンの天才ぶりを世に見せつけたかったのではないか、と私は邪推しています。

それほどにこのアルバムのオルガンワークは素晴らしいのです。

高速でのた打ち回るベースライン、バヒュバヒュと切れ味の鋭いコードワーク、スペーシーなサウンドで多彩な宇宙を眼前に広げてくれる、この楽器の可能性を極限まで拡大した演奏となっています。

そしてその兄の快演を受けて時にはディストーションなどのエフェクトも交えキレ倒しているMATEUSZのヴァイオリンと、モスクワ出身のドラマーALEX ZINGERの突進力のあるドラム。

ZINGERは現在入手難のロシアのピアノトリオ作品EVGENY BORTES TRIO『UNCOMMUNICADO』でも叩いているようで、この作品のシャープなドラミングからそちらも非常に期待ますので、いつか聴いてみたいですね。

ほとんど全てがJANによる作曲であることも特筆すべき点の一つです。

13拍子と4拍子が交錯するムチャクチャにグルーヴィでカッコいいハイライト曲「REELS」、高速4ビートで疾走する「HEAVY BLOW」、この曲のカヴァー史上最高にスピリチュアルかつ神秘的であると思われるJOHN COLTRAIN ジョン・コルトレインの名曲「NAIMA ナイーマ」、17分強に渡ってプログレッシヴな熱演とディープな音響が炸裂する「THE OLD TUNE」などなど、たっぷりどっぷり78分収録。

また、たった3人という過疎編成であることからか、MATEUSZは積極的にバッキングアプローチも展開しており、そこもまたこのフォーマットの新たな可能性を開いたものであると言えそうです。

面白いのが「INDIA GROOVE」や「BARI GROOVE」といった似非エスニック風味のミニマルなインプロヴィゼイション。

素晴らしくフレッシュなサウンドでもありますし、また、アルバムの香辛料的存在として非常に効いています。

全体的にクラブ系リスナーやDJも楽しんで聴けそうなグルーヴエキスたっぷりのものと、スペーシーでスピリチュアルな曲想で占められており、いわゆるオールドファッションドな「ジャズマナー」や「スウィングフィール」に添った作品ではありません。

今の旬なフォーマットとしての復権を目指しているかのごとき「最先端の響き」に満ちています。

また、それと併せてこのアルバムの音楽が普遍的な構築性を帯びているとも思われ、流れるサウンドを聴いているとここには存在しない他の楽器、例えばギターやベース、管楽器などがこの音楽の中で自由にせめぎ合う様子が聴こえて来るのです。

新しくて突き刺さって来る音楽ではあっても、一発遊んでみるか的な特殊状況でしか響かない音楽ではなく、決して奇をてらったものでもないのです。

発表されたのはすでにはるか昨年のことで、聴くたびにこのアルバムはいずれ国内盤化されるべき傑作だとの思いが増して行きましたが、聴くとあまりにも興奮して書き連ねるべき言葉を見失ってしまうレヴュワー殺しな内容で、今ようやく書かせていただきました。

まあとりあえず、ポーランドジャズ最先端のコンピ作る時は「REELS」は入れます。

いくらでも言います、大傑作です。

どこか国内盤化して下さい。

秘密裡にも動きますけれど。

見事国内盤発売の際にはインテリアとしてもキマってるこのデジパック仕様はぜひともそのままでお願いしたいですね。


Personnel:MATEUSZ SMOCZYNSKI(VLN),JAN SMOCZYNSKI(ORG),ALEX ZINGER(DS)



↓ちゃんと入荷されるのかどうかは判りませんが、一応HMVさんの取扱リンク張っときます

http://www.hmv.co.jp/product/detail/3798779

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