(POLONIA RECORDS CD 174~176)

このアルバムを聴かなければ、私はひょっとしたらこれほどポーランドジャズにはまっていなかったかも知れません。
まさに文字通り私の人生を変えたアルバムがこれです。
ポーランドが生んだ天才ジャズミュージシャン、ズビグニェフ・ナミスウォフスキのそれまでの活動を総決算したような内容の98年、「ヴァルシャヴァのヴィレッジ・ヴァンガード」とも言うべきジャズクラブ、アクファリウムにおけるライヴ3枚組CDです。
メンバーは驚異の名盤『ダンスィズ』と同じクシシュトフ・ヘルヂン、オロ・ヴァリツキ、グジェゴシュ・グジプという若手の精鋭たちと、あとゲストにポーランドのウィントン・マルサリスの異名をとる(うそ。私が勝手に言ってるだけです)ピョトル・ヴォイタシク、トロンボーンのグジェゴシュ・ナグルスキ、アコーディオンのチェザルィ・パチョレク、キューバからの移民パーカッショニストのホセ・トーレスが参加しています。
総決算と先ほど書いたのは誇張ではなく、このアルバムではイギリスのデッカから発表した初リーダー作『ローラ』から事実上の前作『ダンスィズ』まで、約30年以上に渡るキャリアの中から彼のオリジナルを厳選してニューアレンジを施しリフレッシュさせて聴かせてくれるのです。
単にライヴアルバムが好きで、しかも嬉しい3枚組、さらには何だか知らない言語で書いてある、というそれだけの理由で購入した本アルバム、運のいいことに彼の一番美味しいとこどりした作品だったのです。
しかもバンドは若手ながら筋金入りの名手揃いですし、演奏も最高!というわけです。
はまるのも無理はありません。
ナミさんの音楽は、共演者泣かせとすら言われる非常に難しいリズムや変則拍子、複雑な曲構成と、キッチュでポップな独特の聴後感を持つ、スタイリッシュとすら言える奇跡のバランスを保ったまさに天才にしか作れない非常に面白いジャズです。
メンバー紹介のMCの後、おもむろに始められるピアノによるイントロから、もうあなたはナミスウォフスキのマジカルワールドに彷徨いこんでいるのです。
このオープニングナンバー「DNO(ドゥ・ナット・オープン)」がまた、ポップで素晴らしい名曲。
おぼえやすいながらも巧みにリズムの再分割を取り入れたメロディ、複雑に組み合わさったアンサンブル、取りづらいタイミングで入ってくるドラム、短いながらもハイテンションに、でもクールに燃え上がる各人のアドリブ・・・・・・。
この独特の食感は他にはないものです。
ナミさん風キメキメラテンジャズ「シャンバ・パナ・シャンベラナ」、彼の往年の名曲で、ポーランドの変態スキャットウーマン、ウルシュラ・ドゥヂアクの『フューチュア・トーク』はじめ、彼の参加した様々なアルバムで採り上げられた「クワイアット・アフタヌーン」、激レア盤の『プラカ・ナイツ』でしか聴けない、まことに貴重なネジクレポップジャズチューン「クリマティザトル(エアコン)」、手拍子つき9拍子民俗系フュージョン「1,2,3,4」などなど、独自の音楽ヴィジョンに彩られた素晴らしい名曲の数々が、完璧に統率されたハイテクバンドにより熱気を込めて演奏されては、観客も黙っていることは出来ないでしょう。
いたるところで「ヒュー!」といった嬉しい悲鳴を上げています。
彼は言ってみればブラジルのエルメートなどのような、ポーランドジャズシーンにおいて誰もが避けて通ることの出来ない天才で、そんな彼のライヴ演奏がこのハイテンションとクオリティを保ってこんなヴォリュームで残されたことに感謝しなければいけません。
本当に、本作に出会えて私は良かった。
真にクリエイティヴな音楽を聴きたい人にとって、このライヴアルバムは永遠の宝となるでしょう。
世界遺産級の傑作と断言します。

 

Personnel:ZBIGNIEW NAMYSLOWSKI(AS,SS),KRZYSZTOF HERDZIN(Pf),OLO WALICKI(WB),GRZEGORZ GRZYB(DS),PIOTR WOJTASIK(TP),GRZEGORZ NAGORSKI(TBN),JOSE TORRES(PERC),CEZARY PACIOREK(ACCORDION)

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