先日、10月18日の「統計の日」に因んだ展示イベントでもらったデータの話 をしたですが、
そうした統計データから導かれるのは当然に「ランキング」ということになりましょうか。


毎年秋になると(以前にも触れたことのある)地域ブランド調査の結果が発表されまして、
都道府県別の魅力度ランキングといった形で示されることになりますね。


例年、関東近県は順位が極めて低く、2015年度調査の結果を見ても
茨城県の47位(要するに最下位で2年連続)を筆頭?に、群馬県45位(前年46位)、
埼玉県44位(前年42位)、栃木県が何故か急浮上して35位(前年41位)という具合。
(神奈川県は横浜や湘南のイメージでもっているのか5位ですが)


おそらくは東京を中心とした大首都圏に飲み込まれて
個性を出せず仕舞いになっているのではないかと想像するところですけれど、
こうしたランキングにはついつい目を向けてしまう。
簡単に言うと「ランキング好き」といった要素が日本人にあるのかもです。


ランキングが示されるのは世界中であるわけながら、ここで「日本人」と言いましたのは
「どうやらランキング好きは今に始まった話ではない」からなのでありまして。
新宿歴史博物館で開催中の「お江戸のなんでもランキング 番付の楽しさ」という
所蔵資料展を見るにつけ、そんなふうにも思うのでありますよ。


「お江戸のなんでもランキング 番付の楽しさ」展@新宿歴史博物館


これまでにもあちこちの歴史系博物館では江戸期の、
いわゆる「見立番付」というものを目にすることがありましたですが、
何かの事物を相撲の番付に擬えて、大関、関脇、小結、前頭と位置づけていくもの。
要するにランキングなわけですね。


とは知りつつも、改めての見立てる事物の多様さに驚くばかり。
観光名所を番付に仕立てるなんつうのは序の口ですが、
これも仕立てによってずいぶん変わるところが面白いですね。


「大日本名山高山見立相撲」では東大関が鳥海山、西大関が阿蘇嶽とあり、
富士山はいったいいずこに?と見れば、番付の真ん中に勧進元、
つまりこの見立相撲のプロモーターとしてランキングの埒外(別格)として
位置づけてられていたりするわけです。


これが所変わればなのでしょう、
名所を並べた見立番付の勧進元を近江八景が務めているケースでは、
富士山は東の大関に座っている(西大関は琵琶の海だそうで)。
おそらくは関西に近い版元で出されたものかとの推測も働きますね。


この東西の分け方は地理的なところを反映しているようでいて、
純粋に東が先で次に西、即ち最上位が東の大関、次いで西の大関、
さらに東の関脇、西の関脇、東の小結…という順位を表しているものもあるようで。


「大日本神社仏閣御領」には東方の大関が春日社、関脇が岩清水とあり、
西方の大関に興福寺、関脇に東叡山と出てきて、お江戸上野の寛永寺が西方にありますし。


ですが、こんなふうに神社仏閣をランキングにしてどこからも文句は出ないのか…と
思ったりするわけですが、そこはよくしたもので行司に伊勢神宮を置いて、
文句は言わせない状況を作り出しているようにも思えますが、
ともかく「こんなことに目くじら立ててもしょうがねえ」と笑って受け流すのが
江戸っ子の気風だったのかもしれませんですね。


で、先にいろんな事物の見立てがあることに触れましたですが、
例えば「女行状鑑」では良い女房、悪い女房それぞれの行いが羅列されていたり、
(この辺り、思い切り男目線ですけれど、江戸期のようすが想像できるというか)
江戸前の蒲焼屋を並べてみたり、はたまた「世の中に有てもなくてもよい物くらべ」なんつう
ランキングまで作ってしまうわけで、要はどれだけ機知が窺えるかを皆楽しみにしたのでしょう。


展示開設の中にはさる書物からの引用としてランキング好きな国民性の分析が示されて
「うわさ好き」とか「物事の白黒をつけたがる」といったことが挙がる一方、
「島国ゆえの独特の集団意識をもち、隣人や自身の立ち位置が気になる」との記載も。


確かに日本は島国ですから、一般論として当てはまるのやもしれませんですが、
島国と聞いて遥か西の方にある島国(日本から見てですが)英国を思い浮かべたのですね。
何せ「ギネス・ブック」という膨大な記録リストを作ってしまっているわけでから。


ここで「ギネス」だけに発祥はアイルランドかと思い直したわけですが、
たとえアイルランドにしてもやっぱり島国かあと。
こんなあたりにも島国気質は現われるのでありましょうかねえ。


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