2010年04月08日

さらば長き眠り / 原尞

テーマ:
初期沢崎シリーズの最終作。

原尞一番の長編にも関わらず、最後まで読者を引きつける面白さは増している。


沢崎が新宿に戻ってきたのは400日ぶり。


それなのに、その理由については明かされないまま物語は展開していく。

久しぶりに戻った探偵事務所の前には、浮浪者の男がたたずんでいた。

その男はただの浮浪者ではなく、依頼者からの伝言を預かっていた。

依頼者の男は、高校時代に甲子園の出場経験があった。

そして、八百長疑惑で世間の注目を集めた過去があった。

そんな男が沢崎に何の依頼か。

男は、八百長を苦に自殺したと思われる姉の自殺の真相調査の依頼をしようとしていた。


推理小説の真骨頂。
そしてハードボイルドの格好良さ十分。

長編だけに登場人物も多彩。

時間を置いて読むと登場人物が混乱すること間違いなし。

高校野球から、伝統芸能である「能」まで縦横無尽に話は展開する。

あの日、マンションから飛び降りた姉の死の理由は。

物語はあらぬ方向へ回りだす。


そして、この物語で初期沢崎シリーズは終焉。
最後にその理由が明かされる。

なるほど。
なるほど。

新沢崎シリーズとなっても、私はずっと原尞にずっとついていく。




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5 タイトルの意味がよく伝わった!
5 純正ハードボイルド
2 言ってみればオールキャストのスペシャルドラマ
5 研ぎ澄まされた文章
5 ふたたび「長き眠り」






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2010年04月05日

天使たちの探偵 / 原尞

テーマ:
沢崎シリーズでおなじみの原尞による、短編集。


短編集と言ってもそこは原尞。
物語の内容が薄くなっている訳ではない。

そうであれば、原尞初心者に最適か?
と聞かれれば、さにあらず。

なぜなら、「そして夜は甦る」、「私が殺した少女」を読んでいれば2倍とは言わず、1.5倍は楽しめるからだ。
もちろん、初めて読んでも十分楽しめるが、前作を読んでいると重複する登場人物がいるために、ニヤリとしながら読み進めることができる。

おそらく一連の素晴らしい短編は、少し内容を膨らませればすべて長編として発表出来る作品だ。
そんな物語を濃縮して楽しむことができるのだから、原尞ファンにはたまらない。

この人は本当にストーリーが上手い。
それもただの小説ではなく、ハードボイルド・ミステリーにおいて。

堪らなく大好きだ。

沢崎。




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5 銘酒を酌むような味わいの連作短篇集
4 沢崎シリーズを知らなくてもおもしろい
4 天使たちに振り回された日






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2010年04月02日

私が殺した少女 / 原尞

テーマ:
原尞2作目にして、1989年の直木賞受賞作。

当時初めて読んだ時の衝撃を良く覚えている。
これはまぎれもない日本のチャンドラーだ。
そう思った。

そして今読み返してみても、その感想は変わらない。
といってもチャンドラー自体はもう20年以上も読んでいないのだが。




沢崎が依頼人の家を訪れると、どこか雰囲気が違った。

その家庭では、バイオリンの才能が豊かで、将来を期待されている少女が誘拐されていた。

そして、そこには誘拐犯を待つ警察がいた。
沢崎はその誘拐犯の一味と間違えられる。


訳もわからず事件に巻き込まれ、身代金の受け渡し役にされてしまう沢崎。
とあるファミレスの駐車場で殴られ、まんまと身代金を奪われてしまう。


それでも、着実に、淡々と事件の核心へ近づいていく沢崎。

犯人はこいつか、と思ったその矢先。



読者を待つ大どんでん返し。

といっても、騙された!というトリックではなく、とことんオーソドックスな展開。

そう、とことん「オーソドックス」。
だから読んでいて気持ちがいいし、落ち着ける。


ミステリーとはこれほど面白いものなのか。
いや、ハードボイルドだから面白いのか。

その両方だ。

文体がしっかりしていて、キャラクター構成が確実で、ストーリー展開が緻密で隙がなければこんなにすばらしいミステリーが出来上がるのだ。

ただ難点としては作者が寡作であること。

しかし、それなりの作品を多数生み出すよりも、原尞には傑作を生み出す寡作の作家のままででいていただきたい。
勝手な読者の意見です。




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5 すばらしい
3 巧みなストーリー展開
5 探偵も推理小説も因果なものだ!
4 マーロウにこの沢崎が追いついているとはとても思えない
5 ハードボイルドの雰囲気だけで無くミステリーとしても秀逸






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2010年03月31日

こうかいぼう@門前仲町

テーマ:グルメ?
たまには食べ物ネタでも。




かなり久しぶりのこうかいぼう。
用事がなければ、なかなか門仲までは足を伸ばせない。

午前中の用事を終えて、食事をどこで取ろうかといろいろ考える。

門仲で食べてみたい店は、ずいぶん前からたくさんピックアップだけはしてあるのだが、次にいつくるかわからないとなれば選択の余地はない。

こうかいぼうに決定。

11:40頃に到着
待ちは5人。

以前は卵ご飯がつく¥700の「らーめんセット」にしたのだが、今回は炭水化物ダブルではなく、素直に「らーめん大盛り」¥700にしてみる。

店内に漂う魚介系のだしの香り。
イタリアンが似合いそうな誠実そうなご夫婦が、2人で切り回しているとは思えない的確なオペレーションと、心のこもった対応。

ここの「らーめん」のおいしさの何割かは、このご夫婦の雰囲気から出来ている。

出てきたらーめんは、相変わらず美しい。


$[A] Across The Universe-koukaibou


久しぶりの魚介とんこつのスープは、「魚介系がやや強めでとてもやわらかい」という記憶があったのだが、それは記憶違いだったようだ。

魚介系がやや強めなのは記憶どおりだが、「やわらかい」のではなく「やさしい」のであった。

もう少しクリーミーだと思っていたが、さっぱりした後味がなんともヘルシーで、ここに来なかった1年以上の間にこってりしたラーメンを食べ過ぎて、味の記憶が変化してしまったらしい。

麺は中太のストレート。
あまり太めは好きではないのだが、ここの麺は別格。
太めでもまったく問題ない。
問題ないというか、このスープにはこの麺がベストマッチ。
この完璧に出来上がったスープに細麺では、きっと麺が負けてしまう。

大盛りにしたにもかかわらず、あっという間に食べ終え、名残惜しくスープをすする。

何年たっても、おいしくて、ずっとみんなに支持される店とはこういう店なのだろうな。

広く皆に望まれる。
「広皆望」 「こうかいぼう」


食べた後に思い返してみて応援したくなる店はあまりない。
でもここを訪れた人はきっとファンになってまた戻ってくる。

味+αがあるからこそ、の「こうかいぼう」だとつくづく思った。

また、いただきに参ります。



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2010年03月28日

そして夜は甦る / 原尞

テーマ:
寡作のミステリー作家、原尞のデビュー作。

あえて翻訳物のチャンドラーを読み漁った末に、あの雰囲気をそのまま「原尞」のミステリーとして落とし込むとどうなるか。

まさに骨太の「完璧な」ハードボイルド・ミステリーが出来上がる。


この小説は、直木賞を獲った「私が殺した少女」の後で読んだのだが、デビュー作とは思えない仕上がりになっている。

翻訳調で、冷たく乾いた感じに仕上がった文体。
幾重にも張り巡らされた緻密なプロット。
これでもか、と畳み掛けてくる息をつかせぬストーリー展開。

ははぁー、犯人はこいつか、と思って読み進めていくと裏切られる心地よさ。


都知事候補を襲撃した犯人は誰なのか。
犯人を追っていた佐伯はどこに消えたのか。
大物俳優を弟に持つ都知事を狙撃した理由は何なのか。
大手鉄道会社を経営する一家と都知事との関係は。

渡辺探偵事務所の「沢崎」が徹底的に追いつめる。


ひとつだけ難点があるとすれば、ストーリーが入り組みすぎていて、時間をかけて読んでいると頭の中で話がつながらなくなる可能性があること。

一気に読み上げれば良いのだが、読み進めるのがもったいないとまで感じてしまう。

軽めのミステリーでは体験出来ない濃厚な味を堪能したのであれば、原尞以外には考えられない。
そう、まさしく「堪能」という表現がぴったりだ。




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5 凝りすぎでこわい位
4 おら、ハードボイルドだど!
4 沢崎の下の名前はなんだろう…?
4 ハードボイルド
5 沢崎に惚れる。







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2010年03月24日

ポートレイト・イン・ジャズ / 村上春樹

テーマ:村上春樹
村上春樹ばかり集中的にレビューしてきたが、とりあえずこれで一旦終了。
やっぱり自分は村上春樹が大好きだと確認。

これからも何年かに一度、集中的に読み返したい。
本当に楽しかった。

私の本棚の中の、手持ちの村上春樹最後は、


「ポートレイト・イン・ジャズ」




非常にユニークな本。

JAZZを聞かない人が読んでもあまり面白さは伝わらないだろう。

そもそもは和田誠さんが、JAZZアーティストをテーマに個展開いたことがきっかけだったらしい。
その個展をJAZZ好きの村上春樹が訪れ、絵にエッセイをつけることになった。

これは音楽評論ではなく、純粋なエッセイ。
そして和田誠のジャズマンの絵。

とても不思議な空気が漂う内容だ。

JAZZ好きな二人が醸し出すコラボレーション。
和田さんの独特な暖かみのあるイラストに対して、柔らかい村上春樹のエッセイ。

これは本ではなく、基本的に画集だ。
JAZZをそこそこ知っている人なら、出てくる登場人物は大抵知っている。

そして、自分が好きなアルバムと村上春樹が選ぶ、そのアーティストにとってのベストが重なった時はこの上ない喜びとなる。

といっても、こちらは所詮未熟なリスナー。
村上春樹は生粋のJAZZマニア。

でも、この本は優しく書かれてるので安心して読める。
読者を考慮して手加減しているのだろうけど。






ポートレイト・イン・ジャズ (新潮文庫)
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5 一冊で二度美味しい
5 2枚ずつ揃えます。
5 忘れられない文章。
5 村上氏の文才
5 ジャズ入門






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2010年03月22日

意味がなければスイングはない / 村上春樹

テーマ:村上春樹
村上春樹がJAZZバーを経営していたことは周知の事実。

そしてJAZZ以外の音楽に対しても造詣が深いことも、ファンならみんな知っている。

しかし、これほどまでにマニアックに音楽に「入れこんで」いたとは知らなかった。

この本は「ステレオサウンド」に連載していた文章をまとめたものだが、音楽エッセイではない。
音楽評論である。

おまけに、JAZZにしてもクラシックにしても聞いたことさえないアーティストが取り上げられている。
一般的な村上春樹ファンはきっと知らないだろう。

しかし、知らなくても「あの」村上春樹の調子で語られたら小気味いいことこの上ない。

知らない人ばかりだったら読もうとも思わないのだが、それが商売上手な所で、上手い具合にメジャーなアーティストが登場する。

ブライアン・ウィルソン、スプリングスティーン、スガシカオ。

久しぶりにこの本を読んで、スプリングステティーンのライブアルバムを引っ張りだしてきて「Hungry Heart」を聞いてしまった。
ほんといい曲。

でもこの本は村上春樹ファンでも、音楽に興味がなければ読めない。
なぜなら「音楽評論」だから。

でも、この本を読んで私が「スガシカオ」を聞くようになってしまったことは内緒です。




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5 読まなければ、意味がない
4 回によって濃淡があるのは否めないですかね。
5 スガシカオファンです
5 村上春樹さんありがとう
4 音楽はその人の人生を知ることで深みを増していく






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2010年03月20日

うずまき猫のみつけかた / 村上春樹

テーマ:村上春樹
村上朝日堂の旅行記。

いや旅行記ではないな、海外滞在記。

村上春樹の奥様が撮った写真と安西水丸の独特なタッチの絵で出来上がった作品。

彼の旅行記が面白いのは有名だが、このアメリカ滞在記は本当に面白い。
作品として残しておくべき「笑える」エピソードが満載。

日記風だが、もちろん読まれることを前提にして書かれているので面白い。
そして読者を楽しませてあげようという村上春樹の思いやりを感じることができる内容。

奥さんが撮った写真には珍しく何枚も村上春樹が写っている。

あえて顔を出さないようにしているのは知られているが、この写真には気負いない彼の姿を認めることができる。

そしていろいろな猫と。

うずまき猫。
ねじまき鳥。

なんだか似てるけど、内容はまったく違う。

旅行記の一環として読むのが正しい読み方。





村上朝日堂ジャーナル うずまき猫のみつけかた (新潮文庫)
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5 いつもの村上ワールドです
4 「一に足腰、二に文体」ですか、なるほど
5 EAT, NAP, PLAY
5 手軽に、そして3つの楽しみ方
4 好きな本







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2010年03月17日

夜のくもざる / 村上春樹

テーマ:村上春樹
村上朝日堂の短編集。

安西水丸のカラーの挿絵がうれしい。

村上春樹の超短編に会わせたナンセンスな安西水丸の挿絵は、不思議な緊張感がある。

事情を知らずに読み始めたときに、既視感を感じた。
以前どこかでこんな感じの文章を読んだことがある。
そのモヤモヤは、「あとがき」を読んで氷解した。

この本の短編は広告に使われたもので、その依頼者はなんと糸井重里だったからだ。

そう、この文章の雰囲気は「夢で会いましょう」の雰囲気と非常に良く似ていたのだ。

彼の作品の「ファミリー・アフェア」という短編のなかで、主人公が妹に強烈に批判されるシーンが出てくる。
「つまらない冗談」。

その「つまらない冗談」が炸裂しているのがこの「夜のくもざる」。

これほど楽しい短編集がそこいらじゅうに溢れている訳はない。







夜のくもざる―村上朝日堂短篇小説 (新潮文庫)
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3 春樹の「軽み」が凝縮された作品集
5 冗談を語り、哲学を醸す。
4 切りつめられ練られた文章とおしゃれなイラスト・・・
5 とにかく可笑しい
4 がちゃがちゃマシーンのような作品集。






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2010年03月14日

村上朝日堂 はいほー! / 村上春樹

テーマ:村上春樹
村上朝日堂第二弾。
安西水丸とのコラボはまだまだ続く。

この本は「村上朝日堂」と違って「ハイファッション」という雑誌に掲載された文章。
軽さは変わらないが、意図的な軽さを押さえて、村上春樹らしいエッセイ集に仕上がっている。

改めて読み返すと、「そうなんだ、なるほどね」という事実をいろいろ知ることができて面白い。

村上春樹の夢について。
彼の当時の夢は「双子の姉妹と付き合うこと」。
なるほどね。
「1973年」では確かに双子が重要な役割を果たしていた。

そして彼は実際に「スペースシップ」と言う名の古いピンボールを所有していたことがある。
なるほどね。
これも「1973年」だ。

彼は自分の身を削りながら書くタイプの作家ではないが、やはりこうやって何らかの形で作品が彼の人生に関わってきていたことがよくわかる。

そんなこととは別に、現在議論になっている教育の問題について20年以上前から彼はこんなことを言っている。


普通の6歳の子供がどうしてバイリンガルにならなくちゃいけないのか僕には全然理解出来ない。
日本語もちゃんとできない子供が表層的にちょこっとバイリンガルができてそこにいったい何の意味があるのだろう?
何度も言うようだけれど、才能かあるいは必要があれば、子供英会話教室に通わなくたって英会話は人生のどこかの段階でちゃんとできるようになる。
大事なことはまず自分という人間がどういうものに興味があるのかを見定めることだろう。






村上朝日堂はいほー! (新潮文庫)
村上 春樹
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おすすめ度の平均: 4.0
5 日常生活は宇宙よりもひろい?
4 どうでもいい事柄、するどい洞察眼に
5 うさぎ亭のこと
3 作者の素顔が垣間見える
2 村上春樹の






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