2010年05月30日

孤高のメス

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ずいぶん前に買ったのだが、すっかり忘れて本棚の奥の方でひっそりしていたこの本。
最近映画が公開されたことで思い出して、やっと読み始めることができた。

率直に面白かった。
きっと私に読まれる運命だったのだろう。

私にとって理想の医師がいるとすれば、この本の主人公である当麻鉄彦。

彼のような医者であれば、結果の如何を問わず、ほとんどの患者が治療方針、治療内容に満足することが出来る。

逆に言うと、この小説は現代医療の理想と現実のギャップの大きさに気づかせてくれる。
この文庫6冊に及ぶ長編小説のストーリーの幹は、外科医当麻鉄彦の医療と患者に対する真摯な執念だ。

その幹の枝葉として、脳死肝移植、大学病院による傘下病院への影響力の行使が実に効果的に描かれている。


10年以上前のことだが、私の娘がお世話になっていた某大学病院の主治医が、所属する診療科の部長とともに他の病院に移ることになった。
医師にも異動があるという事実を知らなかった私は、率直に主治医に尋ねてみた。

「先生だけ残っていただくことは出来ないのですか」

その優しい主治医はこう回答したことを覚えている。

「サラリーマンの異動の辞令と同じなんですよ。お父さんもサラリーマンだからわかりますよね。」

医者も「上」の顔色を見ながら仕事をしなければならないのだと、この時初めて知った。


この物語では、大学病院による「医師派遣機能」について、非常によく理解できるように書かれている。
研修制度が改悪された昨今では多少事情は異なるのだろうが、大学による病院への影響力の行使についてはこの本が書かれた当時とそれほど違いはないだろう。

技術力、人間性ではなく、派遣元の大学、年次によって左右される肩書き。
病院によく行く機会がある方で、なんとなくしっくりこない病院内での医者同士の人間関係を経験したことがあれば、裏にはこんな事情があったのか、と納得できるはず。

日本には非常に優れた、国民全員加入の健康保険制度がある。
しかしながら、国民全員が同質の医療の恩恵を受けることが出来るわけではない。
残念ながら医師によって治療結果に優劣が出るのであれば、やはり優秀な医師に診てもらいたいと思うのが自然だろう。

いつの日か、当麻鉄彦のような医師ばかりの世の中になっていることを願う。





孤高のメス―外科医当麻鉄彦〈第1巻〉 (幻冬舎文庫)
大鐘 稔彦
幻冬舎
売り上げランキング: 3754
おすすめ度の平均: 4.0
4 自分が患者になった時役に立つ、術例解説
3 おもしろいが惜しい。
2 軽い
4 こんな先生がいれば・・・
4 ハードボイルドですな






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2010年05月14日

その科学が成功を決める / リチャード・ワイズマン

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非常に参考になる内容だった。

自己啓発系の本を多数読んできたが、自分では気づかないその弊害を指摘してくれる一冊。
自己啓発で主流方法「だけ」ではうまく行かないことが次々に明らかになっていく。

参考までに目次を一部見てみると、
・「自己啓発」はあなたを不幸にする
・イメージトレーニングは逆効果
・ストレス解消法のウソ
などなど

この本の良いところは、そのアラ探しをするだけではなく、新たな方法を提示してくれていること。

例えばプラス思考の罠。
敢えて頭の中からマイナスの事柄を取り払おうとすると、逆にそのマイナスの事柄に取り付かれることになる事実。
この場合の対処法は、「ある種」の文章を書き出してみるといい。
それは「感謝の気持ち」、「理想的な未来」を「愛を込めて」書き出すことだ。
他人に話すのではなく、紙に書き出すことで系統立った問題解決の糸口となる。

もう一つ。
ほめる教育の落とし穴。
自分は実際にほめる教育が良い、と信じていたし今でも家庭では続けている。
では何が良くないのか。
それはほめる際に、結果だけをほめることが間違い。
失敗を怖れてチャレンジしない子供になってしまうからだ。
例えばテストで良い点をとったとしても、点数をほめるのではなく努力の過程をほめるようにすれば良い。

こんな、すぐに使えるヒントがたっぷり詰まった一冊。
とても参考になるが、書名をもう少し変えていればベストセラーになる可能性もあったと思う。



その科学が成功を決める
リチャード・ワイズマン
文藝春秋
売り上げランキング: 1707
おすすめ度の平均: 4.5
5 間違いだらけの自己啓発
4 ポジティブシンキングは効き目がないのか(泣
4 自分のフィルタを見直すきっかけに
4 マユツバと 思うところも あるんだよ
5 邦題通りの内容を持つ良書






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2010年05月10日

やる気になったあなたが成功するために本当に必要なこと / 杉村晶孝

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「成功」という言葉自体あいまいな言葉だ。
客観的な成功と個人的な成功とは全く違う。
などと、理屈をならべてしまう私はこの本を読んで良かった。
なぜなら、そんな理屈をならべることによって、自己を正当化してしまっているから。

成功する、と決めたら成功するのだ。
そう決めたらやり抜かなければならない。

どんな険しい山があったとしても乗り越えなければならない。
その険しい山を乗り越えるためにはどうすれば良いか。



まず小さな一歩を踏み出すこと。
- そんなこと、この手の本を読んでいればわかっている。


人目なんか気にせず、やり抜くこと。
- それができないからみんな悩む。


そんな特別なことが書かれているわけではないのに、読んでいるとやれそうな「気」がしてくるのが、この本のすごいところ。

関西弁で畳み掛けるように、何度も何度も刷り込まれると、
「そんなものかもしれない」
と思い始める自分がいる。


他人からどう見られるか、それが問題になって前進出来ない人。
失敗が怖くて二の足を踏んでいいる人。
そんな人は一度読んでみて欲しい。

ダメモト、ダメモト。
失敗したっていいじゃん。
まずは一歩を踏み出そう。

そんな気持ちになれるだけでも、大きな人生の一歩を踏み出せる。



他人からどう見られるか。
他人からどう思われるか。
そんなことはどうでもええがな 
なんでもええがな・・・・





やる気になったあなたが成功するために本当に必要なこと (アスカビジネス)
杉村 晶孝
明日香出版社
売り上げランキング: 109927
おすすめ度の平均: 5.0
4 アホになれば
5 アホに徹したらなんでもできるがな
5 今までの自己啓発本とは一味違う本
4 ひとりで生きぬく勇気をくれた本
5 号泣しました







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2010年05月06日

殺戮にいたる病 / 我孫子武丸

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非常に良く出来ている。
わかっていても気持ちよくだまされた。
気持ちよく落とされた。
最後の最後まで引き付けられて、いきなり落とされる快感。

ストーリーに強引さはなく、読者は思わぬところで「ストン」と落とし穴に落とされるように引っかかる。
文章も巧みで、抑制が効いているために余計にスリルが増す。


非の打ち所がないほどうまいミステリーなのだが、これは読み手を選ぶ。
なぜなら、猟奇的な殺人事件が連続して起きるのだが、その描写の凄まじいこと。

その「おぞましさ」と冷たい筆運びがこのミステリーの「上手さ」のひとつには違いないのだが、子どもには間違っても読ませられない。
そこまで詳細に変質者を、その行動を描写しなくても・・・


その男は始めての殺人を犯したことにより、その快感に溺れるようになり同じような殺人を繰り返す。

一方、ある家庭の主婦は自分の息子の行動に違和感を持ち始め、息子が殺人を犯し始めたと疑いを抱く。


感情に任せて殺人を繰り返す男と、息子が殺人を犯したことを確信し始める母親。

そこに絡む被害者の妹と元警官。

それぞれの行動が少しずつある一点に向かって収束し始める。

そこで読者が目にするのは驚くべき真実だった。


これは間違いなく叙述トリックの傑作だ。
ただ、かなり気持ち悪いけど。




殺戮にいたる病 (講談社文庫)
我孫子 武丸
講談社
売り上げランキング: 5842
おすすめ度の平均: 4.0
3 驚きの結末ではあるが
2 不自然かな
3 正直過ぎると言うか、フェア過ぎると言うか・・・。
4 あまり人には薦められませんが・・・
1 10代向け?






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