Thinking every day, every night

夢想家"上智まさはる"が人生のさまざまについてうわごとのように語る


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日本将棋連盟会長で永世棋聖の米長邦雄さんと将棋コンピュータソフト「ボンクラーズ」の将棋対局が1/14に行われ、113手にて見事コンピュータが勝利しました。
この試合はプロ棋士対コンピュータ将棋ソフトの画期的な対戦試合「将棋電王戦」の第1回戦にあたります。
なお、2回戦は来年、5人のプロ棋士とコンピュータの同時一斉対局として行われることが決まっています。


■これまでのいきさつ

◆コンピュータ将棋の歩み
コンピュータ将棋の歩みは当初はそれほど速いものではなく、たしか、1990年代くらいでようやくアマ上級位から2段程度の実力だったかと思います。(町の道場で少し強いレベル)

とはいえそれ以降も着実に強くなり、2000年代半ばには、「激指」や「YSS」(商品版は「AI将棋」)、「GPS将棋」、「IS将棋」(商品版は「東大将棋」)などのソフトが互いに切磋琢磨して成長を遂げ、アマ4段クラス(全国大会の都道府県代表レベルの強さ)程度にまで棋力を高め、アマチュアがおいそれとは勝てない存在にまでなりました。

◆Bonanza登場
そしてその後、一大ブレイクを起こすのが、「Bonanza」です。
Bonanzaは、2005年当時、無名の化学研究者、保木邦仁さんがコンピュータチェスプログラムのアルゴリズムを応用して、研究の合間に独力で作り上げた将棋プログラムでしたが、登場した当初から、それまで多くの著名な将棋ソフトが長年にわたり鍛えあげてきてようやく辿りついた高みにまで達しており、さらにそれまでの将棋ソフトに不足しがちだった「人間らしい指し回し」まで身につけた画期的な将棋プログラムでした。

Bonanzaはソースコードをすべて公開したため、多くの将棋ソフトがその思考ルーチンを参考にしたり、一部分をそのまま用いたり、さらにはBonanzaそのものをベースに改良を加えた将棋ソフトまで登場し、将棋ソフト界全体の棋力アップに多大な貢献を果たしています。
今回のボンクラーズも、bonanzaをベースにコンピュータ並列処理技術の「クラスタ構成」を採用して構築されたソフトで、名前の由来になっています。

そしてプロ棋士対コンピュータ将棋のガチンコ勝負が現実味を帯びて語られるようになります。

◆渡辺竜王 vs Bonanza (2007/3/21)
そんな中、今でも記憶に新しいのが、2007年3月21日に行われた、当時プロ棋士の頂点に立つ渡辺竜王とBonanzaの平手による公開対局です。
この対局でBonanzaは終始試合を優勢に進め、あわやというところまで渡辺竜王を追い込みました。最後の最後での予想外の見落としにより、勝利はなりませんでしたが、仮に相手が渡辺竜王でなければ…とまで将棋関係者を唸らせました。
もちろん、土壇場ぎりぎりのところで踏みとどまるのが竜王の竜王たるところで、実力差は見た目よりもあるという穿った見方もできますが、一流のプロでもうっかりすると負かされるレベルにまで達したという見解が衆目の一致するところになったと思います。
このあたりについては、私の当時のブログ記事をご覧ください。
コンピュータ将棋の今(2007/5/11)

◆清水市代女流王位・王将 vs あから2010(2010/10/11)
そんなこんなである時期から日本将棋連盟はプロ棋士に対して、許可無くコンピュータ将棋と対戦することを禁止し現在に至っています。
しかしその後もコンピュータ将棋は着実に実力を向上させ、プロ棋士との公式マッチはないものの、トップアマとのエキシビションマッチが何度か行われ、コンピュータが勝ち越す結果となりました。

そして2010年、満を持して、情報処理学会が日本将棋連盟に挑戦状を叩きつけるという形で、清水市代女流王位・王将(当時)とコンピュータ将棋「あから2010」の公式対局が行われました。

この「あから2010」は、「激指」「GPS将棋」「Bonanza」「YSS」の4種類のソフトの多数決による合議制で指し手を決めるシステムです。
4つのソフトを組み合わせるからそれだけ強くなるとは限りませんが、うまく連携させることができれば相乗効果で格段に強くなる可能性を秘めたシステムでした。

対する清水市代女流王位・王将(当時)は長年、女流棋界のトップに君臨し、今現在でも女流トップのタイトルフォルダらに肩を並べる稀有な存在です。

試合は86手という短手数(通常のプロの手数は120手前後)で後手の「あから2010」の完勝に終わりました。

清水市代女流王位・王将(当時)がコンピュータとの対戦に慣れていなかったという点もあったかもしれません。(清水市代女流王位・王将(当時)が人間に対するのと全く同じようにコンピュータを扱ってくれたことに私は彼女の誠実さを感じずにはいられませんでした)

しかし、この結果は、「もはやコンピュータ将棋の実力がアマチュアの域をはるかに超え、プロ棋士の4段~5段あたりと五分五分か上回るのではないか」という「予想」を「確信」に変えるのに十分でした。
このあたりについては、私の当時のブログ記事をご覧ください。
人間vsコンピュータ将棋(2010/10/6)
清水女流王将vsあから2010(2007/10/11)
清水女流王将vsあから2010 (2)(2010/10/12)
清水女流王将vsあから2010 (3)(2010/10/13)

◆ponanzaがアマの最高レーティングを更新(2011/5月)
人間同士がネット対局するサイト「将棋倶楽部24」があるのですが、2011年5月、ここに将棋ソフト「ponanza」が参戦し全国のアマ強豪と集中的に対戦しました。
その結果、ponanzaはトータル100戦して92勝8敗という圧倒的な強さで、これまでの人間の最高レーティング3178点を上回る3211の新記録を達成しました。

このレーティングがいかに途轍もない記録かというと、あくまで私の独断ですが、レーティングが2300あれば県代表~全国大会クラス、2700あればアマ名人クラス(=プロ4,5段程度)、2900以上はごくひと握りのアマトップあるいはプロ棋士という感じといえば、その凄さが分かるでしょうか。
このあたりについては、私の当時のブログ記事をご覧ください。
将棋ソフトponanzaの躍進(2011/5/29)

このように、現在の将棋ソフトの実力は、アマトップクラスを凌駕しており、プロ中堅とも互角に戦えるところまで来ています。(「プロ中堅」という言葉がどのあたりを指すかによって違ってくるとは思いますが)

■今回の対局の意義

◆勝って当たり前だったコンピュータ
このような状況ですから、はっきり言って、いくらあの米長邦雄永世棋聖とはいえ引退して8年にもなる棋士を相手にボンクラーズが勝利するのは、大方のコンピュータ将棋関係者にとってみれば十分予想の範囲内、というか、勝って当たり前であり、驚きは全くなかったと思います。

実際、米長永世棋聖はこの対局の前に、ボンクラーズを自宅に導入し、150局以上もの練習試合を重ねたのですが、超早指しということもあってか、大きく負け越したようですし、昨年末に行われたプレマッチでも85手で完敗しています。

我々の関心は、もはや、現役プロ棋士、しかもタイトルホルダーや名人戦A級・B級クラスの棋士にどこまで通用するかという場面に移っています。

とはいえ、今回の対局が全く意味がなかったといえばそんなことはなく、実際にあの米長永世棋聖に勝利したという事実を得たことは大きいと思います。コンピュータ将棋関係者が抱いているコンピュータの現在の棋力のレベル感について確信を持つことができたのですから。

◆残念な手、6ニ玉
今回の対局で実に残念だったのが、米長永世棋聖の2手目、6ニ玉です。
この6ニ玉という手は通常はありえない定跡外れの手です。
米長永世棋聖はあえて力戦勝負に出ていった、いや出ていかざるを得なかったというのが正直なところでしょう。

この手に意義があるとしたら、それは米長永世棋聖にこうまでしなければボンクラーズに勝てないと思わせたこと、すなわちボンクラーズの力を率直に認めさせたということでしょうか。
もしコンピュータ将棋の力を侮っていたら、何も考えず、いつものプロ相手の対局のように、8四歩や3四歩などの定跡手を指していたに違いありません。

もうひとつ、この手を見て意外だったのは、元来コンピュータ将棋は定跡形よりも力戦模様の方が得意な傾向にあったのですが、米長永世棋聖は多くの練習対局の結果、コンピュータはむしろ定跡形に強いと判断したようだということです。
現在のコンピュータ将棋は、豊富な定跡データベースの効率的な活用と読みの深さとの相乗効果で、むしろ定跡に長けていると言っていいかもしれません。

それにしても6ニ玉は残念でした。

もしも米長永世棋聖が、コンピュータとの数多くの練習対局の結果、初手7六歩に対する最善手が6二歩であることが分かったというのであれば、この手は評価に値しますが、そうではないでしょう。
あくまでも勝つための手段としてコンピュータの弱点を突いてきただけでしょう。

そんなものは今後いくらでも補正して対処できます。
少なくとも私が人間vsコンピュータ将棋の対戦に望んでいるのは、単なる個々の勝ち負けではなく、コンピュータ将棋というものがどこまで人間に追いついてきたかをできるだけ客観的な観点で品定めすることです。
個別の粗を探してたまたま勝っても意味がありません。

遠い将来、もしも人間のプロ棋士とコンピュータ将棋が対等な「人格」として同じ棋戦に臨むことになった暁には、どうぞいくらでも個別の粗を探して必要なら奇策も弄してでも勝ちに行ってください。しかし今はその時ではないでしょう、というのが私の率直な感想です。
もっと大所高所からこの対局に対峙していただきたかった。
そういう意味で、4年前の清水市代女流王位・王将(当時)の、プロに対するのと全く変わらぬ対局姿勢には頭が下がります。

最後に、米長永世棋聖に辛い記事になってしまいましたが、米長永世棋聖がこの敗戦について、率直にコンピュータ将棋の強さを認め、積極的に戦後の感想を述べ、また敗戦を6ニ歩という奇策のせいにしなかった誠実な態度は賞賛に値することを言い添えておきます。

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