GIN@V6〜since20xx〜

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You've got the best choice!!

 

 

 
 
______ 《 掲 示 板 》 ______
 
お休みちう💤
 __________________ 

 

 
 〜 小説のご案内 〜
(タイトルをクリックすると1話目にジャンプします)
 
 

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 《  連載中のお話  》
 
 
 
 
 
《 長 編 》
 
カギのついてるものは、別館にて
アメンバーさん限定のパスワードが必要になります。
 

 

Delivery Serviceカギ

                   (全32話):(45・恋弾)

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 (番外編I、II、Ⅲ、Ⅳ含  全51話):(45・56)

 
グッデイ‼︎(全79話):(45)
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WALK(全81話):(45 feat.坂本)
 
 
神煽カギ(全21話):(456トライアングル)
 
PとMK(全131話):(45)
{9C9BD9CB-C11B-4727-B81F-D0DE13159376}
 
 

ノエルなふたり

         (現在81話・不定期更新中):(45)

 

《主なカテゴリ》

 

S.S.S.(全67話):(14・45)
{0188B388-4598-481F-99F0-B675B2B1698B}
 
(全85話・番外編25話):(恋弾・45)
 {2DB726D6-2AD4-4B75-A542-036F2022C32C}
 

 

 

PとMK番外編(ライバルは保育園児)

(全10話):(PとMK、KOZOUコラボ) 

 

ミルクキャラメル (全26話/オマケつき):(45)

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no title(全16話):(45)

 

 

s.s.s.番外編(全26話):(14・56)

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(全109話):(恋弾・14・45)

 

 

 
DIVE!(全36話):(1・3・4・5)

 

 

Precious Day!
(全16話):(14・35・2・6)
 
 
                                  :(恋弾・14・45・46)
 おまけのPortraitは
 
 
 MADE IN JAPAN  (全22話)   :(45)
 
  
わん・でぃっしゅ(全23話):(14)
 
 
 
(全126話):(45)
 
 
 
ヨシ先生と愛しのチビちゃんズ
〜KOZOUスピンオフ〜(現在9話、不定期更新中)
 
 
 
 
《 短 編 》
 
*45カギ
 
 
*456カギ
 
 
*恋弾
 
 

 

 

 

  

坂本サンと長野くんが話をしてる

 

 

現場検証だか実況見分?つってたかな

 

バインダー持って真面目な顔した坂本サンが、なんかメモし始めた

 

 

俺はちょっと離れて、なんとなくそれを見てた

 

 

 

「長野」って呼び捨てにしかけた坂本サンが、慌てて「先生」って付け足して照れたように笑ってる

 

 

ふーん

そんな顔もするんだ

 

 

てか、この2人知り合いかよ

フツーにタメ口だし

 

雰囲気っつーか空気感が、なんか…

仲、良さげ

 

 

 

 

 

 

ん?

 

なんだ?

 

なんか、肺の辺りがモヤモヤッつーか

ムカムカする

 

 

 

 

 

 

あ、そっか

 

さっき煙吸ったからな

うん。多分そのせいだ

 

 

 

回れ右して二人に背を向けた

 

グランドに向かって、ゆっくり息を吸って吐き出す

 

 

ふぅ…

 

ちょっと楽になったかも

 

 
 

 

グランドにはまだ避難訓練中のまんま、全校生徒がいた

 

みんな飽きてダレてて、端っこで鬼ごっこしてる奴までいる

 

 

カメラなんか構えて遊んでる奴も… って

あれ、健か

 

 

アイツ、まだ撮ってんの?

 

カメラこっち向いてんだけど

俺撮ってどうすんだよ

 

 

 

画面越しに俺と目が合ったんだろう

健がモニター見てた顔を上げた

 

 

ん?

アイツ、なんで眉間にシワ寄せてんの?

 

 

突然、健がカメラ構えたまま俺に向かって小走りして来た

 

 

えっ、ちょ、なに?

なんかあった?

 

 

俺の1メートル手前で立ち止まって、カメラから視線を離した健はまだ眉間にシワを寄せてる

 

 

「剛、どしたの?どっか具合悪い?」


「は?…いや?別に」

 

 

つか、カメラ止めろ

もういいだろ

 

 

「嘘つけ!コッチ向いた時、なんか様子変だったもん」

 

 

あー…フッ

お前、よく気付いたな

 

もしかして、ずっと見てたの?

ストーカーかよ

 

でもま

心配してくれたのは…サンキュー

 

 

「ん…なんかちょっと、この辺がムカムカってかモヤモヤ?してたけど、もう治った。だいじょぶ」

 

「え、モヤモヤ?この辺が?それでコッチ向いたら治ったの?」


 

まんま聞き返してきたから頷いただけなのに、何故か健の口元が緩んだ

 

 

「マジかぁ。モヤモヤして、で、治ったと。ハイハイ」

 

 

なにコイツ

同じ事何回も

 

つーか、お前、なんかニヤけてねぇ?

心配してくれてたんじゃねーのかよ

 

 

 

「ねーねーねー!長野くん!なぁがのくんてば!」

 

 

突然、健が長野くんに向かってダッシュした

 

 

「は?ちょ、待てっ」

 

「長野くん、大変、大変!」


 

俺の制止なんかガン無視で、健が長野くんの背中に飛びついた

 

 

ったく

アイツ、人の言う事聞きゃしねぇ

 

 

「んー?どした?」

 

 

長野くんは特に驚きもせず振り向いて

健はいつものごとく、顔がくっ付きそうなくらいの距離で喋り始める

 

 

「あのさ、剛がさ、大変なんだよ」

 

 

いいよ

もう治ったっつってんだろ

 

 

健に驚いてポカンとしてた坂本サンが、睨むように二人を見てる


 

そっか…

あんまりいい気はしねぇってか

「俺の長野に手ぇ出すな」って感じ?

 

 

あー、あのさ

コイツ、距離感おかしいの

 

いっつもこんななの

スルーしてやって

 

 

なんだか分かんないけど、溜息が出て下を向いた


 

 

「体調、悪いのか?」

 

 

へ?

 

 

顔を上げたら、いつの間にか目の前に坂本さんが立ってた

 

 

少し首を傾げて俺を見る顔は、さっき二人の事を見てたのと同じで、ちょっと怒ってるようにも見えたけど

 

多分、違う

 

 

心配…してくれてんの…かな

 

 

「あ…うん。もう治った」

 

「無理しないで、座ってるとか横になるとか…」

 

「大丈夫だって。全然、平気」

 

 

ちょっと笑ってみせたら、坂本サンがホッとしたような顔して笑った

 

 

「ホントか?ならいいけど」

 

「だぁいじょうぶ。アイツが大袈裟なんだよ」

 
 

 

まだ長野くんと喋ってる健を顎で指した

 

坂本サンも二人を振り返る

 

 

あ?

 

 

何故か二人がコッチを見てニヤニヤしてる

 

 

「ね?」「ふぅ~ん。なるほどね」

 

 

……

 

なにが?

 

なるほどって何だよ?

 

 

 

「ね、剛、保健室で休ませた方がよくない?」

 

健が長野くんに耳打ちした

 

 

「そうだねぇ」

 

長野くんが思案するふうに腕組みしながら近寄って来て、俺の肩を掴んだ

 

 

「顔色もちょっと悪いか。休んでた方がいいかも」

 

 

は?何言ってんの

 

「別に俺、大丈…ッ?!」

 

 

いきなり、足に電気みたいな痛みが走って

よろけた俺を坂本サンの腕が支えた

 

 

「おい、大丈夫か?」

 

 

大丈夫

足蹴られただけだから

 

 

怪我した方の足を狙って蹴ったのはこの男

 

テメ、長野っ!

すっ呆けた顔してるけど、小鼻膨らんでるからな

 

 

「ほらぁ、やっぱ大丈夫じゃないって。保健室行こ。保健室」
 

 

健め。お前、今の見てたろ

顔が笑ってんだよ

 

 

「そうだ。坂本くん、悪いけど剛の事お願いできるかな?ほら、剛に聞きたい事もあるんだろう?」

 

 

今度は坂本サンの肩を掴んで、長野くんがニッコリ笑った

 

 

「へ?いや、別に…ないけど?」

 

 

坂本サンが豆鉄砲くらった様な顔してる

 

 

「あるよね?」


 

あ、この顔

有無を言わせねぇ時のヤツだ

 

 

坂本サンも何かを察したのか、目を泳がせながら頷いた

 

 

「あぁ、うん。じゃあ…ちょっと、保健室で」

 


なにそれ

聞きたい事あるのか無ぇのか、どっちなんだよ

 

まぁ…別にどっちでもいいけど

 

 

 

またしても俺は、坂本サンにお姫様抱っこされる羽目になった


 

 

 

てか

 

あの二人、なに企んでんだ?


 


 

 

秋の田の 刈穂の稲のように

黄金に輝くリーダー坂本昌行を生で拝んでから

 

はや1年…か

 

 

 

なんて


黄色い棚卸伝票見ながら思ってたら、あっという間に月末になっとる笑い泣き

 

 

 

ども

ご無沙汰しておりますニコニコ

 

 

 

 

今朝のこちら地方

 

スッキリ晴れ渡り

久々に雲ひとつない青空

 

 

ドライブ中(通勤途中)

 

 

なんだか無性に

Come With Me  が聴きたくなり

 

カーステの曲をチェンジ

←トニセンが歌てたけど←すまん

 

 

 

 

好きなんだよなぁ

この曲のサビ


真っ青な空見ると聴きたくなる

 

 

『きっと連れてくから信じていて』

 

 

 


うん


信じてるよ

 

しいたけを信じてる男を信じて

ずーっと待ってる

 

 

 

 

 

あれから1年

 

 

 

トニセンは配信でのリリースがもう3曲目

←あのヅラはいかがかと思たけど



3人のTV番組もあったし

それぞれの舞台にドラマも

(坂本くんしっかり療養して早く良くなってね❤️

 

 

イノッチのシャイロック

面白いね


これ好き

 


部下の女の子を怒鳴りつけるイノッチに、うっかりマジ惚れしそうになりました←うっかりw

 

 


 

健ちゃんはミニアルバムにソロコン

バラエティーにドラマ

TwitterにインスタにYouTube

 

ホント頑張ってんね照れ相変わらず

 

ペンラがまた可愛いこと❤️グッズもおされ

 

 

 

 

岡田は、まあ言わずもがな

 

マックのCMいいね爆  笑

 

好きだわー

ああいう岡田の使い方←

 

大河も楽しみ!

 

 

 

 



 

えーと真顔

 

 


真顔

 

 

 

 


あれは素敵だった

不動産のCMっつーか、ショートムービー

 


それも今日までらしいけど真顔

行ってみたけど、既に見つけられなかった(泣)

 

 

Tシャツ、買ったよ!蜻蛉の


虫苦手だけど




真顔


 

 

 

あーあ


歳とると

思考がひがみっぽくなっていけねぇおいで

 

 

 

♪ 無いものをねだったって♪

♪尽きぬため息と過ぎる冷気 Oh Yeah ♪

 

 

 

 

寒さが身に沁みる今日この頃

 

 

 

 

さて、と


Come With Me でも聴いて寝るか

 

 

 

Come With Me

l Set You Free

両手に抱き締め

きっと連れてくから信じていて

 

 

 

 

 

連れてってくれる所が

連れてって欲しいトコとは限らんけど

 

 

信じてるよ

 

 

 

なので、どうか

コインランドリーじゃないとこでお願いしやす(小声)

 

 

 

 

 

 

えーとキョロキョロ

 

ネタバレは、あるような無いような…

 

 

無いなニヤニヤ無いんかい

 

 

 

 

いや、そんな事よりも


 

真面目なヘルドックスの感想をご希望の方は

どうかUターンをお願い致します真顔←オイ



 


 

 

 

 


 

 

 

観に行ってきた


 

『ヘルドックス』

 

 

バイオレンス系の映画はあんまり得意じゃないんだけど

 


とりあえず、太腿みたいな色気ダダ洩れの高級ハムを拝もうと行って参りましたお願い

 

 


うん


大丈夫


タンクトップ姿、サモハンじゃなかった


 

 

いやぁ

相変わらず眼光鋭いし

戦うとやたら強いし

アクションシーンは瞬き禁止だし


長めの髪とお髭で色気ダダ洩れの

ワイルドでセクシーなイケおじ

 

なのに


時々、ふとした瞬間に

甘えたな喋り方というか、声になるの


「うん」とかね


アレ反則〜!チュー


 


初っ端

怒涛の情報量について行けなくて、ちょっとフリーズしちゃったけど滝汗


早口やし、ダーっと喋るんだもん

改めて役者さんてスゲー



でもまあ

そこはスルーしても全然大丈夫やった

なんとなく理解できてた(多分ニヤニヤ




そんでもって

交番勤務時代の岡田くんがな〜


なぁんか可愛くてデレデレ



スーパーで、女子高生と向き合って

はにかんでる制服警官とか



あのイメージぴったりだわ

なんて思い出し萌えしておりました


Pシリーズの記念すべき第一話ニヤリ


GKに翻弄されるお巡りさんは、この人でした




そして、潜入捜査と言えば


そう

潜入捜査官・浅輪直樹』ですねウインク←は?



あ、でも

この岡田は普通に刑事さんか



潜入捜査官だったのはこっちだった

ユアソング・三宅組若頭の呟き






 


えー…




以上です m(_ _)m



 

 

 

体育祭はいよいよ明日

 

そのせいだろうか。学校全体が気忙しくも活気に満ちている

 

 

教育実習も大詰め

 

体育祭と最終日が重なっていて、俺自身バタバタしてて、ここんとこ校内で健ちゃんと出くわす頻度がグッと少なくなってる

 

たまに見かけても、ゆっくり話もできやしない

 

 

 

けど

 

なんだろな

 

 

へへ…

 

満たされてんだよなぁ

 

 

 

朝イチに顔合わせて、ほんのちょっとの時間だけどあの笑顔を独り占めするだけで

 

エネルギーが、こう…体の中に満ち満ちてくるっつーか、溢れてるっつーか、漲ってるっつーか

 

 

 

うん

 

コレがリア充

 

これぞリア充

 

ビバ、リア充

 

 

 

 

 

 

「井ノ原先生、今日、時間大丈夫?」

 

放課後の職員室

体育科の先生が俺の肩を叩いた

 

「あ、ハイ。大丈夫っす。これ終わったら行きます!」

 

 

体育祭の最後に、バレーの優勝チームと若手教職員チームが対決する、言わばエキシビジョンマッチみたいなもんがあるらしい

 

 

「無理しない・怪我しない」

 

これがチームのスローガンとは言え、全校生徒の前での対戦

 

歳だって生徒とそんなには変わらない若い先生達(つっても、MAX10歳以上離れてるけど)
 

やる気スイッチは既にON

 

 

俺は教職員チーム期待の超新星って事で、放課後の練習に誘われていた

 

 

 

着替えを済ませて体育館へ向かう

 

 

バレーなんて久々だな

さてと、張り切って楽しみますか

 

ん?

あれは…

 

 

体育館に続く通路の途中

 

何気無く目を向けたグランドに、剛くんを見つけた

 

 

ハハ、相変わらずカッケーな

剛くんて、デカい声出したり派手な事してる訳じゃないのに、なーんか目ぇ引くんだよな

 

あ!

って事は……ハイ来た!

 

 

 

剛くんを追っかけるようにして、健ちゃんが走って来た

 

 

練習、頑張ったんだろうな

ボール追う姿がだいぶサマになってる

 

それなのに、自分とこにボールが来るとやっぱり慌てちゃう所が可愛い

 

ハハ、健ちゃんらしいや

 

 

ゴールを決めた剛くんの周りに皆が集まって

肩叩いたり、ハイタッチしたり、抱きつい…てんのは健ちゃんか

 

 

ま、今の俺は余裕で見てられますけどね

 

なんつったって、リア充

余裕のよっちゃんとは、正に俺の事よ

 

このぐらいのハグなんか、ぜーんぜん…

 

 

…えっと

 

健ちゃん?

 

そろそろ良くね?

皆、もう走ってっちゃったぞ

 

ほら、剛くんも手ぇ払ってるし

 

なにも、わざわざ肩組み直さなくても

 

 

 

 

えーい!

 

「剛くん、ナイッシュー!」

 

手をメガホンにして、グランドに向かってデカい声で叫んだ

 

 

俺に気付いた剛くんが、照れたニワトリみたいに首を軽くクイッと出して会釈して

 

健ちゃんは、パッて花が咲いたみたいな顔して俺に向かって駆けて来た

 

 

ハハ!

健ちゃんの事は呼んでないんですけどー

んも~、わざわざ走って来ちゃったの?

 

 

「お疲れ!井ノ原くん、どこ行くの?」

 

「ん?今からバレーの練習」

 

 

うわ

やたら眩しいんですけどー

 

キラキラしてんのは汗のせいか?

逆光のせい?

 

あ、笑顔のせいか

健ちゃん、俺の目潰す気?

 

 

「健ちゃん、練習相当頑張ったろ。だいぶサッカーっぽくなってきたじゃん」

 

「あ、バカにしてるー!」

 

「してない、してない。上手くなったって褒めてんだよ?」

 

「ホントかなぁ?ホントにそう思ってる?」 

 

 

疑いの目でにじり寄ってきて、俺の顔を覗き込んできた健ちゃん

 

思わず俺は健ちゃんの頭にポンと手を置いて、ストップを掛けた

 

 

ちょーっとちょっと!それ以上は接近禁止!

引き寄せられてチューしちゃったらどーすんの!

 

 

「ホントに思ってるって。あとは…そうだな。ボール来てもビックリしない事だな」

 

可愛過ぎる顔がちょっと隠れるように、健ちゃんの髪をクシャクシャに撫でた

 

 

「もうっ。やっぱバカにしてんじゃん!」

 

「アハハ!してないって」

 

 

グランドから「三宅!」って呼ぶ声が聞こえた

 

健ちゃんがペロッと舌出して肩を竦める

 

 

「いっけね。練習中だった」

 

「あ、悪ぃ。練習の邪魔しちゃったな」

 

邪魔したかったのは練習じゃないんですけどね

 


「じゃーね!明日、応援しに行くね!」

 

バイバイって手を振って、健ちゃんがグランドに戻ってく

 

 

あーあ。リア充で余裕とか…

全然じゃねーかよ

 

ハハ

まだまだ修行が足んねーな、ヨシヒコ

 

 

 

 

 

 

バレーの練習を終えて、打ち上げの相談と明日の準備をして、家に着いた時には9時を回ってた

 

 

流石の俺ももうクタクタで、母親が並べてくれた遅い夕飯を前に、ふうっと溜息を漏らした

 

 

「お疲れだな」

 

向かい側に座って晩酌してた親父が、俺にもビールを注いでくれた

 

「お、サンキュ」

 

コップに口を付けようとしたら、ポケットでスマホが短く鳴った

 

取り出して画面を覗く

 

 

 

画面の真ん中に表示された、健ちゃんのオレンジ色のアイコンと

 

「明日も頑張ろうね!」

 

短いひと言と、笑ってる顔文字

 

浮かんだ健ちゃんの笑顔が、ペッコペコのお腹とクタクタの身体にジンワリ沁みた

 

 

ん~

なんて返そっかな

 

『愛してるぜ!』とか書いたら、健ちゃんのモチベーション上がるかな

 

逆に引いちゃうか?

 

いや、引かねーな

 

うん。引かねぇ、引かねぇ

 

あ、やっぱ『大好きだよ』のがいいか

うん。そっちだな

 

へへ…

 

 

俺はどうやら相当ニヤニヤしていたらしい


 

「なんだ。なんかいい事でもあったのか?」

 

 

顔を上げると、親父が遠目にスマホを覗こうとしていた

 

ちょっ、見んじゃねーよ!

 

 

「別に。なんも無ぇよ」

 

返信途中のスマホを置いて箸を持った

 

 

そっけない答えが不満だったのか、珍しく親父が食い付いてくる

 

「それ、彼女からか?」

 

顎でスマホを指して、親父がグイっとコップの中味を飲み干した

 

 

「え?いや、違うけど…」

 

一瞬、答えを躊躇った俺

 

 

親父がフッて鼻で笑った

 

 

「別に誤魔化さなくてもいいだろ。ニヤニヤ気持ち悪い顔しやがって」

 

 

テメぇの息子捕まえて気持ち悪い言うな

製作者アンタだろーが

 

 

いつもならそんなふうに適当に言い返して、笑ってられるのに

 

健ちゃんからって正直に言うのも

友達からって嘘つくのも

 

なんだかどっちにしても、誰かに後ろめたい気がして

 

 

「…彼女居ねーし。いただきまーす」

 

それ以上喋らなくてもいいように、手を合わせるのも早々に飯を口いっぱいに放り込んだ

 

 

暫く間が開いて、空になったコップとビール瓶を持って親父が立ち上がった

 

俺は少しホッとして、ろくに噛んだ気のしない飯をビールで流し込んだ

 

 

 

「それ、八木の叔母さんからだそうだ」

 

「へ?叔母さん…って、俺に?」

 

 

親父が指した視線の先

 

電話の横に立てかけてあるちょっと立派な焦茶色の封筒は、真ん中に金色の文字で『御写真』と書かれてあった

 

 

それって…もしかして、あれか

見合い写真

 

 

「いやね、最初はお兄ちゃんにって話だったのよ」

 

 

台所から母さんが口を出した

 

 

「快彦はまだ学生なんだし、お見合いなんか早いって言ったんだけどね。せっかく持って来たんだからって置いてかれちゃって」

 

 

「彼女が居ないんなら、別にいいんじゃないのか」

 

 

親父がシレっとそう言って居間を出て行って、母さんが「断ってもいい」とか叔母さんが世話好き過ぎるなんて話を色々してたけど、全然頭に入って来なかった

 

 

見合い写真がどうって事じゃなくて

せっかちな叔母さんの事もどうでも良くて

 

 

今まで思考の外にあった『跡取り』って現実の問題が、頭のど真ん中にデーンと鎮座して

 

 

俺は余裕のよの字も無くなってた

 

 

 

 

 

 

「バカ野郎!ふざけんなっ」

 

 

そう怒鳴ったっきり、坂本サンが黙った

 

 

 

 

ゴンドラが揺れている

 

 

俺を抱きかかえた坂本サンの腕が震えてる

 

 

くっ付いてる所から、バクバクいってる心臓の鼓動が伝わる

 

 

 

 

楽勝なはずの距離

 

思いのほか踏ん張りの効かなかった俺の足

 

 

挙句、窓枠に爪先が引っ掛かって

坂本サンが手ぇ伸ばしてくんなかったら…

 


ゴンドラの鉄柵越しに見えた地面がスゲー遠くて、今更だけど足が竦んだ

 

 

別にそれにビビった訳じゃない

 

けど、坂本サンの腕に捕まえられたまんま、俺も黙ってた

 

 

 

 

消防隊員の人かな

 

下で誰かが何か叫んでる

 

 

坂本サンは左手で俺をギュッと抱えたまま、右手で何か合図を送った

 

 

ゴンドラがゆっくり動き始める

 

 

少し揺れて

 

俺はまた両腕でギッチリ捕まえられた

 

 

ブルーのシャツに頬が触れる

 

 

あ…心臓、まだバクバクしてる


 

坂本サンのが伝染ったのか

俺の心臓までバクバクしてる

 

 

 

「はぁ…」

 

今度は溜息が聴こえた

 

ちょっとだけ顔を上げてみる

 

 

坂本サンはムスッとした顔で遠くを見てる

 

 

…怒ってんのかな


 

「あの、さ」

 

「なんだ?」

 

 

食い気味に返って来た、ぶっきらぼうで短い返事

 

俺を見ようともしない

 

 

やっぱ怒ってるよな

 

 

「…悪かった…ゴメン…なさい」

 

「あ?あぁ、分かればいい」

 

 

チラッと俺を見下ろして、坂本サンはすぐに目を逸らした

 

 

気の無い返事

 

ちゃんと謝ってんじゃねーかよ

そんな怒んなくても

 

 

でも、まぁ、俺が悪いから

礼ぐらいは…言っとかないとダメだよな

 

 

「あの…ありがと。助けてくれて」

 

「へ?…あぁ…フッ」

 

 

あ、笑った

 

 

なんだかちょっとホッとして

なんだかちょっと文句言いたくなった

 

 

「…何が可笑しいんだよ」

 

「あ、いや悪い。『ありがとう』なんて言うようなイメージ無かったから」

 

「は?俺だって『ありがとう』ぐらい言うわ。いや…待てよ。言った事ねーかも」

 

「マジで?今の、初『ありがとう』か?」

 

「かも」

 

「フッ、そりゃ貴重だな」

 

「だろ?」

 

「ちゃんと聞いときゃ良かった」

 

「残念。もう二度と言わねーわ」

 

「ハハッ、もう一回ぐらい言えよ」

 

 

 

だんだん地面が近づいてくるのが見える

 

 

なんか

 

もうちょい長くても良かったかも…

 

って

 

 

何言ってんだ俺

 

ゴンドラ乗って喜ぶなっつーの

ガキかよ

 

 

グランドのギャラリーが視界に入った

健がカメラを構えてる

 

そういやアイツ、記録係だったな

 

 

ふと我に返る

 

 

ちょ、待てよ

これって、なんか…

抱き合ってるみたいに見えねぇ?

見える…よな

 

 

 

「ちょ、もういいだろ。いつまで捕まえとく気だよ」

 

 

無性に恥ずかしくなって、坂本さんの胸を押した

 

 

「わっ⁉︎バカ、動くな!」

 

 

一瞬離れた体が引き戻されて、さっきまでよりも強く抱き締められた

 

 

っ!?

 

 

俺の心臓がドキッとしたのか、ゴンドラがガタンて音を立てたのか、どっちか分かんないけど

 

とにかく、下に着いてゴンドラが止まった

 

 

 

 

「はぁ~、やっと着いた」

 

 

頭の上で聞こえた気の抜けたような情けない声

 

ようやく坂本サンの腕が俺を解放した

 

 

 

 

「ふぅ。やっぱ地上が一番だな」

 

 

爽やかな笑顔で俺を見下ろした坂本サンが、今まで俺を離さなかった手でポンポンと俺の頭を叩いた

 

 

「もう大丈夫だぞ」

 

 

…いや、ポンポンて

人のことガキ扱いしやがって

 

アンタの方が、めちゃくちゃホッとしたような顔してんじゃねーか

 

 

そういやこの人、全然下見なかったし

めっちゃ震えてたし、揺れる度に手に力入ってたな

 

 

 

…アンタ

 

もしかして、高いトコ苦手?

 

 

 

 

振り返って目を凝らした窓の外

 

煙の向こうに見えたシルエット


 

 

床を這いずりながら、急いで教室の奥に戻る

 

 

 

ネイビーブルーのシャツと帽子

 

眼鏡かけてねぇし着てるモンも全然違って、なんだか別の人みたいにも見えたけど

 

そこに居たのはやっぱり昨日のオッサンだった

 

 

 

 

手で煙よけながら教室の中を探ってた顰めっ面が、俺を見つけてホッとしたような表情を浮かべた

 

 

 

と思ったら

 

 

「プッ」

 

 

吹き出した口元に手を当てて、サッと横を向いた

 

 

 

…オイ

なに笑ってんだよ

 

 

 

「ん…ンッウン!」

 

 

咳払いで誤魔化そうとしてんのか?

ニヤついてるのバレバレだかんな

 

 

「ちょっと煙が…ンッウン!」

 

 

口元隠してるけど、ソレ絶対笑い堪えてんだろ

 

何がおかしーんだよ

 

 

ムカついて睨みつけてんのに、まだニヤついてる

 

 

 

 

もしかして俺、なんか変?

 

チャック…は大丈夫

顔にお米の粒かなんか付いてるとか?

 

 

慌ててシャツの袖で顔をあちこち擦った

 

…何も付いてねぇじゃん

 

 

ボンッ!

 

 

 

下の方でまた音がした

 

 

オッサンがハッとして真顔になる

 

 

だ、だよな

笑ってる場合じゃねぇ

早く助けろ

 

 

「待ってろ。今、ロープゴホッ……ゴホッ!ロープをぅオッ、ゴホッゴホッ!」

 

 

 

 

今度はガチで咳き込んでる

 

 

大丈夫かな、この人

スゲー不安になって来たんだけど

 


 

「坂もっさん!〇※☆ק¶△!」

 

 

下で誰かが叫んでる

 

何言ってんのか全然聞き取れなかったけど、初めのトコだけは聞き取れた

 

 

ふーん

アンタ「坂本」っつーのか

 

 

窓枠に掴まって立ち上がる

 

坂本サンはゴンドラみたいなのに乗っかってた

 

 

ハシゴ車っつーんだっけ

本では見たことあるけど、案外小せーな

まあ、あと俺2人ぐらいなら余裕で乗れそうか

 

 

 

「大丈夫だぞ。ゲホッ今、ちょっと…ゴホッ!待ってろ」

 

 

涙目でそう言うと、坂本サンはカチャカチャとロープと金具みたいなのを弄り始めた

 

 

フッ、アンタが大丈夫かよ

 

命綱ってやつ?ソレ

なぁんか面倒くさそーだな

 

 

窓から顔を出してみた

 

 

斜め下の教室から煙がモクモク出てる

 

でも熱くはない

 

火が見える訳でもない

 

坂本サンはまだなんかカチャカチャやってる

 

 

 

 

で、ゴンドラは壁のすぐ近くにある、と


 

近くにあった箱を踏み台にして窓枠に上った

 

チラッと下を見る

 

 

…やっぱ高けーな

 

ちょっと怖えーけど…ま、大丈夫だろ

これ位ならジャンプしたらイケる

 

 

「よし。君もコレを着け…」

 

 

ようやく顔を上げた坂本サンが

 

窓枠に乗っかってる俺を見て、持ってたベルトみたいなのを足元に落っことした

 

 

 

「っ!おい!」

 

「ちょ、そこ退いて」

 

「いや、ちょっ、ちょっと待てっ!」

 

 

坂本サンが必死な顔して俺に向かって両手を広げてる

 

 

それ、止めようとしてんの?受け止めようとしてんの?

まあ、どっちでもいいけど

 

「邪魔だっつの」

 

 

坂本サンの隣めがけてジャンプした

 

 

 

 

 

ヤベ


足…怪我してた

 

 


 


 

 

 

「時系列」?真顔

 

 

 

って…

 

 

 

なんだっけ真顔←もしもし?

 

 

 

 

載ってないんだよな。アタシの辞書真顔今更か

 

 

 

てな訳で
唐突に#1の裏側ニヤリ

 

 

 

モエカレの#1.5

 

 

 

 

たまたま本屋で見かけた少年には、なんとなく見覚えがあった

 

 

たまたま俺が行こうとしていたコーナーで、その少年が手を伸ばそうとしているのは、俺がこないだ買った本

 

 

料理男子なんてイマドキ珍しくも無いけれど、男ばかりの職場で同じ趣味の奴が居なかったせいだろうか

 

なぜだか妙に嬉しくなった

 

 

 

それにしても…誰だったっけ

 

おっと

 

 

 

不意に少年が振り返ったから、咄嗟に前を向いて本を探すフリをした

 

 

知り合いなら、なにも誤魔化すような事しなくてもいいんだろうけど

 

俺は今、確実に彼の視界に入ってるはずなのに、向こうは何も声を掛けてこない

 

 

ってことは、やっぱ俺の勘違いか

 

いや、でも…

 

 

 

魚の骨が喉の奥に引っ掛かったようで、なんだかスッキリしない

 

 

もう少し近くで見たらお互い何か思い出すかもしれない

それに、他人の空似と分かればそれはそれで…うん

 

 

俺はちょっとずつ横にスライドして、徐々に彼に近づいて行った

 

 

 

 

彼は本を手に取って、キラキラした目で表紙を見つめている

 

 

フッ…

パッと見はヤンチャそうだけれど、なんだか無邪気で可愛らしい

 

 

やっぱり既視感はあるのに、名前すら浮かんでこない

 

 

さて、誰だったか…

 

 

思い出せそうで思い出せなくて、彼をじっと見つめていた

 

 

 

「あー、誰か作ってくんねーかな」

 

彼の呟きが聞こえた

 

声に出たのが照れくさかったんだろう

ハッとして、彼の動きが止まる

 

 

またこちらを向くと察知した俺は、スッと本棚に向き直った

 

少し腰を屈めて正面を見つめながら、本の背を指でなぞる

 

 

なるほど。作る側じゃなく、食べる方だったか

 

しかし、スゲー楽しそう

本見てるだけでこれなら、実食したらどんなに喜ぶんだろう

 

 

あー…

どうしよう

 

思い切って声を掛けてみようか

「それ、俺が作ろうか?」って

 

いやいや、いきなりそれは怪し過ぎる

やっぱり知り合いだって確認してからだよな

 

 

このモヤモヤを早く解消したくて

本を探すポーズはそのままに、彼を見つめた

 

 

…誰だっけなぁ

親戚…な訳ないし、誰かの弟…いや、違うか

 

 

完全に油断していた

 

 

不意打ちでこちらを振り向いた彼と、バッチリ目が合った

 

 

やっぱ見た事あるぞ、この顔

でも…誰だ?

 

 

思わず眉間にシワが寄る

彼は目を逸らさず、俺を睨んでいる

 

 

あ、マズい

えっと…

 

どうしよ。上手い言い訳思いつかねぇ

 

 

いいや、もう

知らないフリしちゃえ

 

 

素知らぬ顔をして前を向き、また本を探すフリをした

 

 

 

待てよ

 

こんだけ目が合ったのに、何も言わないって事は…向こうは俺を知らないのか?

 

あー…ダメだ

もうちょいで思い出せそうなんだけどな

 

 

何も言ってこないのを良い事に、チラチラ様子を覗いながら、俺はまた彼に少しずつ近づいて行った

 

 

 

多分、中学生か高校生ぐらいだと……ん?

あっ!

 

分かった!アレだ!

そっか。長野の

 

そりゃあ、俺を知らないのも無理ないよな

 

 

やっとスッキリした嬉しさに思わず顔が綻ぶ

 

そのタイミングで彼がこちらを振り向いた

 

思いっきり俺を睨んでる

 

 

しまった。これじゃ、まるで不審者だよな

なんて説明しよう

 

 

 

「ごーぉ。お待たせーっ!」

 

 

背後から駆けて来た少年が彼の目の前で立ち止まった

 

彼と同じぐらいの背格好

くっ付いてんのかと思う程の距離感

 

 

あぁ、そうだ

「剛」だ

 

そうそう

それで、この子が友達の…なるほど

 

 

至近距離で話す2人は、まるで子犬がじゃれ合ってるみたいだ

でも長野に見せて貰った写真より、実物の方が子犬感半端ない

 

フッ、確かに可愛い

参ったな

 

 

 

「健!変態だ。逃げろっ!」

 

 

いきなり彼が駆けだした

 

 

「あ、ちょっ、君!」

 

 

へっ、変態って

 

待ってくれ!

そう思うのも無理ないけど、誤解されたまんまじゃ都合が悪い

 

バレたら長野になんて言われるか

 

 

 

「うわっ?!」

 

 

聞こえた叫び声

 

慌てて外へ出ると、彼が足に紐を絡ませて通路で転んでいる

 

 

そういや、ウチの犬も昔似たような事…って、懐かしがってる場合じゃない

 

 

彼らのそばに寄って行った

 

 

派手にコケたみたいだから、怪我してないといいけど

 

 

「うわーっ!」

 

急いで立ち上がろうとした彼がまた転びそうになる

 

咄嗟に腕を伸ばして、すんでのところで彼の体を受け止めた

 

 

「ふぅ…セーフ。大丈夫か?」

 

 

声を掛けると、ギュッと目を瞑って縮こまっていた彼の体から力が抜けた

 

 

まったく

そんなに慌てることないだろう?

 

 

ハッと目を見開いた彼が、クリっとした瞳で俺を見上げた

 

 

フッ…その目、やっぱ似てる

 

 

あぁ

実家のペチョ、元気かな

 

 

 

 

結局のところ、あのオッサン何者だったんだ?

 

 

 

学校の階段を上りながら、昨日の事を思い出してた

 

 

 

医者かと思ったけど違うっつーし

 

聞いてもねぇのに「頭を打ってた時は…」とか「足首を固定するには…」とか

 

なんか、応急処置?のやり方みたいな説明始めるし



なんだコイツと思ってたら、いつの間にか俺の足に自分のハンカチ巻いて固定してるし

 

「捻挫だけだと思うけど、無理するんじゃないぞ」

 

デカい手で頭ポンポンしてどっか行きやがった

なんなんだ?マジで

 

 

健は健で、「どーゆー知り合い?」なんてニヤニヤしながら聞いてきたクセに

 

本屋での事話したら「偶然を装って近づくって、それストーカーの常套手段じゃん。またどこかで偶然会ったりするかもしんないな…うん。間違いない」なんて、真面目な顔して人のこと脅かしやがって

 

 

多分、そんなんじゃねぇとは思うけど

 

でもなー…

本屋で俺の事見てたのは事実だし

 

 

分かんね

 

つか、もうどーでもいい

 

 

ハァ…

 

忘れよ

 

 

 

「剛、どうしたー?溜息なんかついて」

 

後ろからポンと肩を叩かれた

 

「歩き方も変だお?」

 

担任がクッソ優しい顔して微笑みながら、つま先で俺の足首を突っついた

 

「痛っ!?ちょっ、蹴んなよっ!」

 

だ、『だお』?

今『だお』っつった?

…聞き間違いかな

 

 

「アハハハ!べつに怪我したフリなんかしなくていいって」

 

 

「フリじゃねぇし。昨日、転んで足捻ったんだよ」 

 

 

「へぇ。どうりで歩き方変だと思った。こっちの足だよね?」

 

 

痛ぇっつってんだろ!蹴んなよ

 

 

「なにもホントに怪我して来なくていいのに」

 

 

「だーかーら、好きで怪我した訳じゃねぇし。蹴んなよっ!」

 

「ゴメンゴメン」なんて謝ってるけど、全然悪いと思ってねーだろ。頬骨が笑ってんだよ

 

 

 

言っとくけど、俺マジで担架なんか乗りたくねぇんだからな

 

 

去年も一昨年も、避難訓練で逃げ遅れるケガ人の役をやらされた

 

「軽量コンパクトで運びやすい」ってのが条件なら、女子か健でいいのに、なんで俺なんだ

 

「ただ寝っ転がって運ばれるだけ」って言うけど、あれ結構恥ずかしいんだぞ

 

 

 

「長野先生、すいません。今日の放送の事で、ちょっといいですか?」

 

 

長野くんを呼んだのは、確か今年赴任してきたばっかの音楽の先生だ

 

 

そういや長野くんて防災担当なんだっけ

今日は朝から忙しそうにバタバタ動き回ってる

 

 

「学校の平和と安全は、長年俺が守ってんだよ」って、あれ冗談じゃなかったんだな

 

 

「じゃあ、剛は上の教室で待機しといてね。よろしくー」

 

「うぃっす」

 

 

 

俺はまた、ゆっくり階段を登った

 

3階の空き教室に入って体育座りで待機

 

ズボンの裾からのぞく、ちょっと腫れた足首をボーッと眺めてた

 

 

そういやオッサンのハンカチ、どうやって返しゃいんだ?借りたまんまじゃん

 

 

 

 

ま、いっか

 

返して欲しかったら、フツー連絡先ぐらい教えてくもんな

借りパクでいいや。問題ねぇ

 

 

ふぁ~

しかし暇だな

 

なんか眠くなってきちゃった

 

歩くのしんどいし、健もどっか行っちゃったから早く出たんだけど、早く来過ぎたか

 

ふぁ~

だいたいさぁ、午後イチは昼寝の時間て決めてんのに、避難訓練とか超ダリぃ

 

 

俺は窓際の壁にもたれて、ウトウトしてた

 

 

 

ジリリリリ!

 

 

…んあ?

あー…非常ベル鳴ってんな

 

 

下の階でガタガタ椅子を引く音がした

 

どうやら避難訓練がスタートしたらしい

 

 

放送が流れてるけど、ここのスピーカーが壊れてるのか何言ってんのかよく分からない

 

 

たくさんの足音はだんだん遠くなって、代わりに外から聞こえてきた

 

 

 

始まったっつっても、ふぁ…

俺の出番はまだだろ

ふぁ~…もうちょい寝よ

 

 

俺はゴロンと床に横になった

 

 

全校生徒は皆、グランドに避難したんだろう

学校の中が静かになった

 

外から聞こえてくる雑音を子守歌に、俺はいつの間にかガチで眠ってた

 

 

 

…ん

 

ん?

 

なんだ?この匂い

 

 

焦げ臭い匂いに起こされた

 

目を開けると、周りの景色がぼんやりして見える

 

 

俺、寝ぼけてんのかな

 

いや違うだろ、これ

なんか煙い…

 

 

教室全体が、モヤがかかったように白く煙ってる

 

 

あ、アレか

 

発煙筒?だっけ

健が「モクモク」とか言ってやたら喜ぶヤツ

 

 

そういや、まだ担架来ねーのかな

 

 

寝っ転がったまんま廊下に視線を向ける

人が来る気配はない

 

 

「健の『森田くんが居ません!』キッカケで、救助隊がGOするからね~」って長野くん言ってたよな

 

もしかしてアイツ、モクモクでテンション上がって段取り忘れてんじゃねーだろーな

 

ハハ…あり得る

 

 

 

だんだん煙が白からグレーっぽくなって来た

救助隊はまだ来ない

 

 

なんか…喉痛ぇ

モクモクやり過ぎだろ、コレ

煙の色まで変える必要あんのかよ

後で長野くんに文句言ってやる

 

 

 

ボンッ!

 

 

突然、デカい音がして床が震えた

ヒャー!とかオォーっ!みたいな歓声が外で上がってる

 

 

え、何?今の

何か爆発したっぽいけど

そんなんあるなんて聞いてねぇぞ

 

 

ボンッ!!ボンッ!!

 

 

さっきよりデカい音と振動

 

最初の時は歓声みたいだった声が、今度は悲鳴になって聞こえた

 

外がやたらと騒がしい

 

窓の外を黒っぽい煙が流れてくのが見えた

 

 

 

え、ちょ、待っ、え?

この煙って…もしかしてガチ?!

 

 

ど、どうしよ

 

とにかく逃げなきゃ

 

 

 

俺は四つん這いになって廊下に出た

 

一番近くの階段は、下から灰色の煙がモクモク上がってきてる

 

廊下の奥は、煙のせいでその先がどうなっているのか見えない

 

 

マジかよ

どっから逃げりゃいんだよ

 

しゃーねぇ

廊下突っ切って奥の階段まで走るか

 

口元を手で覆って、走り出そうと立ち上がりかけた

 

 

「おい!森田くん、居るか!」

 

 

窓の外から、聞き覚えのある声がした