「ロードス島戦記」といえば,角川書店の月刊ゲーム雑誌「コンプティーク」にて連載されていたTRPGのリプレイから始まったグループSNEのオリジナルファンタジーシリーズだ。キャラクターデザインとイラストを出渕 裕氏が担当しており,その幻想的な雰囲気の絵柄に惹かれたファンも多いはず。また,水野 良氏をゲームマスターとして展開する,グループSNEのプレイスタイルは,TRPGを遊ぶファンにとっても憧憬の対象となった。
連載はシリーズを重ね,1988年4月には小説化,rmt,1989年にはPC向けにゲームが発売され,さらにはアニメ化までを果たすほどのコンテンツへと成長した。この小説やアニメによってロードス島戦記を知ったという人も多いだろう,ドラゴンクエスト10 RMT。
そんなロードス島戦記の小説を元にブラウザゲーム化されたのが,「ロードス島戦記 -伝説の継承者-」だ。本作はカードバトルを採用した,3DダンジョンRPGで,パーンやディードリットといった原作のキャラクター達が登場し,シナリオクエストでは原作小説と同様の展開も待っている。本稿では,カードを使ったバトル,3Dダンジョン,他プレイヤーとの協力/対戦システムなど,クローズドβテストで体験できた内容を紹介しよう。
渋系から萌え系までそろった4種族でキャラメイキング
ゲームの舞台となるのは,もちろんタイトルにもなっているロードス島だ。ロードス島は,フォーセリアの中心であるアレクラスト大陸南方に位置し,呪われた島と呼ばれ人々から嫌われている。というのも,ロードス島には6つの国があり,各国に強大な力を持つ5体のドラゴンが棲んでいたり,邪神カーディスが眠っていたりと,本土とは比べものにならない密度で危険が潜んでいる土地なのだ。
ゲームは,キャラクターメイキングからスタート。種族を人間,エルフ,ハーフエルフ,ドワーフから選択でき,種族ごとに男女それぞれで2種類ずつグラフィックスが用意されている。ドワーフ女性が可愛いためか,選んでいる人が多かったような気がした。なお,出身地も選ぶことができるので,原作ファンとしてはひいきの国を選びたい。今回プレイした範囲では出身地の違いが何かに影響することはなかったので,あくまで雰囲気の演出といったことなのだろう。
職業は,ファイター,ルーンマスター,スカウト,プリーストがあり,ドワーフはルーンマスターになれないなど,種族によって多少の制限がある。しかし,スタート時点では職業は決めず全員「ノービス」で始まり,チュートリアル終了後に選択することになるのだ。
キャラクターが完成したらいよいよ冒険だ。スタート地点となるのは,冒険者達が集まる酒場で,看板娘の案内でチュートリアルを進めていく。最初はクエストを受けて3Dダンジョンを探索したのちにバトルを経験するという,本作の基本となる流れを体験することに。チュートリアルはかなり丁寧な作りで,指示に従って進めていけばゲームの流れを理解できる。
クエストで挑む罠あり宝箱ありの3Dダンジョン
本作では,APという行動ポイントを消費してクエストを受けることになる。原作を追体験できるメインストーリーはシナリオクエストという形で用意されており,お金稼ぎや経験値稼ぎのためのフリークエストもある。シナリオクエストは1回クリアした後もプレイでき,ボスとの再戦も可能だった。
クエスト実行時は,最大6人で構成されるパーティを組むことになる。メンバーが足りない場合は,ガチャを回して原作キャラクターを仲間にしたり,ほかのプレイヤーのキャラを雇用したりできる。ただし,戦闘に参加できるのは3人までとなっているので,前の戦いで傷ついた仲間を下げて,別のキャラクターを参戦させるといった感じで進めていく。
クエストは3Dマップを探索していく形で進行する。歩いた場所は右上のマップに表示されるが,「物見の水晶」というアイテムを使用することで,敵の出現ポイントや宝箱の位置も含めて,全マップを一気に表示することも可能。なかなか便利なアイデアなので3Dダンジョンが苦手という人も試してもらいたい。
原作キャラクターはパーティメンバーとして参加
ファンとして気になるのは,原作のキャラクターがどんな風に登場するかというところだろう。シナリオクエストでは,原作の展開をなぞることができるわけだが,その際に原作キャラクターがゲストキャラとしてパーティに加わることになる。「ん? パーンのパーティだけでも最終的に6人いるから,人数オーバーしないか?」と思うだろうが,ストーリーに合わせて関連が深いキャラクターのみが同行するという仕組みだ。
また,原作キャラクターは,キャラクターカードとして手に入れると,パーティメンバーとして自由に使用でき,育成できる。だが,同じキャラクターがゲストとして登場する場合はゲストの能力値が反映されるので注意が必要だ。
そのほかにも,特殊効果のEXカードとしても原作キャラクターは登場する。これは,戦士でも限定で魔法の効果を発揮できたりと,切り札的に機能するもの。このカードにはお馴染みのキャラクターや魔法などが揃っている。こうしたキーワード的な要素が多いだけでもファンとしては盛り上がるというもの。
手札を活かして戦うカードバトル
次はバトル部分を詳しく紹介しよう。バトルは,敵味方双方のキャラが交互に1回ずつカードを使っていくことで進行する。カードは物理攻撃,魔法攻撃,防御,スペシャルの4種類があり,キャラクターが使用するスキルに応じてそれらを消費していくのだ。
例えば,ファイターが通常の武器を使った攻撃をする場合は,物理攻撃カードを1枚使う。そして,「体当たり」(通常攻撃に加えて相手を転倒させる効果がある)というスキルを使いたければ,物理攻撃のカードに加えて,スペシャルのカードも使用するといった具合だ。つまり,スキルを発動するのに必要なカードが手札になければ,そのスキルは発動できないわけだ。
手札は不足分を補う形で毎ターン最大2枚補充されるが,強力な技ほど必要な手札の数は増えていく。また,どの手札をもらうのかは自分では選べないが,次に手に入る2枚の手札は表示されているので,先を見越して戦える。
手持ちの手札で効果的なアクションができないときは,手札を破棄することもできる。何もしなくても2枚破棄すれば,新しい手札を2枚獲得できるし,防御しながら良い手札が揃うまで我慢するという手もある。
戦闘中には,手札とは別にEXカードを使用することもできる。EXカードはさまざまな効果があり強力な反面,1回使うと再利用できるまでに時間がかかる。また,自分のキャラが3枚まで,仲間のキャラクターを含めても5枚までしか持てないので,強敵との戦いでは使いどころを考えよう。
このように,なかなか手の込んだバトルなので,毎回腰を据えて戦うと結構手間も時間もかかる。本作には2種類のオートバトルが用意されているのだ。一つは,自動的にアクションを選んで戦ってくれ,戦況を見て途中からマニュアル操作に切り替えられる「通常」。もう一つは,すべてを任せるかわりに一瞬で結果が分かる「即時」となっている。雑魚など,頭を使わずに勝てる相手なら,「即時」が便利で快適だ。
協力や対戦などプレイヤー間のコミュニケーション要素もあり
続いてオンライン要素について紹介しよう。本作ではクエストに行くときに,ほかのプレイヤーのキャラクターを雇うことができる。雇われたキャラクターには経験値が与えられるので,(自分が雇われれば)いつの間にか成長しているなんてこともあるのだ。
また,クエスト中に遭遇したパーティを支援することもでき,苦戦しているときに突如助けてもらえると,素直に嬉しい。全体チャットでも支援のお礼がよく流れていた。
クエスト中に遭遇したほかのプレイヤーと1対1で戦うこともできる。勝てば経験値やお金が手に入るが,カルマが溜まっていく。攻撃された側に実害はないようなので,悪人をロールプレイたいなら襲撃もありかもしれない。また,酒場での対戦もある。こちらはクエスト時の襲撃と異なり,パーティバトルもでき,戦い方は通常のバトルと同じだ。お互いに制限時間内にコマンドを入力して戦っていくのだ。勝利すると高い確率でボーナスゲームをプレイできるようになっている(負けてもボーナスゲームを遊べることがある)。
ちなみにカルマは,クエスト中の選択肢やほかのプレイヤーを支援したり襲撃することで上下する。クエストの受注条件にカルマの項目が設定されていたので,カルマの値によって受けられるクエストに変化が生じてくるものと思われるが,今回のテストでは実装されていなかった。
相手がプレイ中でも雇用できる。雇用すれば向こうにも経験値が入るので,友人などと協力しあうといいだろう。通常は+5レベルまでのキャラクターしか雇えないが,フレンドになれば制限なしだった
自由度の拡大や原作準拠コンテンツの充実に期待したい
今回はクローズドβテストだったこともあり,ガチャや行動力回復もアイテムなどはすべてゲーム内通貨で購入できるようになっていた。そのためか,かなりスピーディにプレイできた印象だ。原作1巻分のシナリオクエスト8本も短時間でクリアできた。正式サービスでのプレイではもう少し時間がかかるようになるとは思うが,「即時」のオートモードを使用すれば,サクサクと手軽に遊べるだろう。また,シナリオクエストクリア後は育成くらいしか楽しみがなかったが,もちろん継続して遊べるコンテンツを充実させる構想もあるとのことなので,期待したいところだ。おそらく,レイドやギルド戦がそうしたコンテンツになっていくのだろう。
また,原作を追いかけるシナリオクエストとは別に,フリークエストもあるが,単なる経験値稼ぎの場としてだけでなく,ロードス島の世界を感じさせる外伝的コンテンツとして楽しめる余地があると感じた。原作では語られなかったエピソードなどが用意されるとかなり面白くなるだろう。
ファンとしては懐かしいキャラクターとの再会を楽しめた。また,クローズドβテストを通じて,プレイヤー同士を直接間接問わず一緒に遊ばせようという意図も感じられた。フレンドなら際限なく高レベルのキャラを雇える仕様はゲームバランス上問題がありそうだが,簡単にクリアしたくなければ,雇わなければいいだけだ。カジュアルに楽しめる選択肢が用意されているのは歓迎したいところだ。基本的な要素はかなり楽しめたので,まずは12月6日に始まるオープンサービスに期待したい。
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