197.身も心も~切実な思いを唇から注ぎ込むように 何度も… | かおり流 もうひとつの「宮」

かおり流 もうひとつの「宮」

「チュ・ジフン&イ・ジュンギな毎日」のまほうの手・かおりが
こっそり書き溜めた「宮」の二次小説を今更公開(四十の誕生日2013/08/18にOPENしました)
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前のお話→196.夜明け~恐ろしく高性能な頭脳を持っているおかげか…
本日は194合房~流石の俺も この好機を逃す理由も無かったし…「いいだろう?」 と尋ねた に続くシン目線です

俺が雪を踏み締める音以外には 何も聞こえない 早朝のはりつめた空気
此れから太陽の昇るであろう東の天(ソラ)を見詰めて 昨夜を思い返す…
チェギョンは…
俺に 躰を許してはくれなかった
だというのに…
なぜこうも穏やかでいられるのか… 不思議なくらい 俺は満たされていた…
事を為すことが叶わなかった事実については 無論 残念な想いが 確かに有る…
だが… 彼女は頷いてくれたじゃないか…
心を預けて…身を任せようと…意を決してしてくれた…
止まらなかった涙の理由は… 恐らく彼女自身も解っては居ない…
そこにはきっと…俺なんかには到底解ることの無い 女の事情が有るのだ
女とは…そういう生き物なのだろう…
それでいいじゃないか…
無理に強いらず ひたすらに背を撫でる手に想いを込めた…
彼女の信頼を 得られたという確かな手応えが…この胸に沸々と湧いている
それで充分だ

「そろそろ 慈慶殿(チャギョンジョン/上殿)へ 朝の挨拶に伺うとしよう」
天(ソラ)を見詰めたままそこまで言ってから 俺は袞龍袍(コンヨンポ)の袖を翻し ゆっくりと振り返って続ける
「パン女官 カン女官 シン女官 妃宮はまだ眠っている そなた達に任せて良いか?」
「「「仰せの通りに 殿下…」」」
冷たい床板にひれ伏す三人の女官に チェギョンを託し 履きなれぬ鹿皮靴(ノクピファ)で雪を踏みしめて上殿へ向きを変える
「ではチェ尚宮 ハン尚宮 チョン女官 ホン女官 儀軌を持って私に付いて来るが良い」
「「「「はい 殿下」」」」
チェギョンが眠っているうちに さっさと片を付けた方が良い
俺は四人の宮女を従え いつもの何倍も気を引き締めて 上殿へ向けて歩き出した

「おはようございます」
「おはよう太子…おや…妃宮は」
「申し訳ありません 揃ってご挨拶に伺うべきところですが まだ… 深く眠っておりました故 女官を三人残して 私だけ参りました ご無礼をお許しください」
「そうか…では…」
太皇太后陛下の表情は 俺の言葉を良い方へ解釈した様子が窺える
「はい…おかげさまで 妃宮と無事同衾し 心を分かち合うことが出来ました 感謝致します」
そう言って 後方に控えていたチェ尚宮から巻物を受けとり 太皇太后陛下の御前に掲げるように差し出す
「ふむ… 読んでも…構わぬのか?」
「…必要とあらば…」
大丈夫だ…チェ尚宮の書いた物に 間違いは無かった そして バレはしない…
それでも幾らかの緊張が 顔に表れたかもしれない
「解った…この場では控えよう」
「おめでとう太子」という父上に続き 母上と 伯母上 ユルからも 祝福の言葉を受け
少しの罪悪感を感じながらも 俺はなんら間違った事はしていないと 奮い立たせ 居住まいを正す
深々と頭を下げた後 さっさと退散する事を伝えた
「早速で申し訳ございませんが 敢えて起こさず置いて来た妃宮が 目覚めた時 不安に思うやもしれません故… 是にて失礼しても…よろしいでしょうか」
「おお…勿論である さ 戻りなさい」
「ありがとうございます」


良く晴れた雪の朝を通り抜け 義愛合へ戻ると 愛らしい妻はまだ眠っていた ふっ 夕べは泣き疲れて眠ったからな…
壁に凭れ 文机に片肘をつき 片足を投げ出して 立てたもう片膝に凭せた本を…
ただ眺めていた
「…おはよう…早く…起きてたの?今…何時?」
今朝のチェギョンの起き抜けの声は それだけで俺の胸を甘く擽る
文机の上に置いた懐中時計を チラリと確かめ ほんのひと目チェギョンを目視し…
「ん?ああ…間もなく7時だ」
視線を本に戻す
「うそ!挨拶は?!」
「行って来た」
「ええぇっ!?
起こしてくれれば良かったのに…」
「気にするな」
「気にするよ…他の日ならまだしも…大事な朝なのに…」
「ああ…心配するな 躰が辛いだろうと 何方も咎めはしなかった」
「え?だって…」
「そういうことになってるから…心配するな」
「?…う ウソッ!嘘ついたの?」
「いや…嘘は言ってない ハッキリ言わなかっただけだ」
「…?」
「ただ 「おかげさまで妃宮と無事同衾し 心を分かち合いました」とだけ言ってチェ尚宮の書いた儀軌を渡して「妃宮はまだ眠っていたので 義愛合に一人残してきました 戻っても良いですか?」と言ったら 早く戻ってやれと まあそんな感じだ 造作も無い ふふん…」
まだ理解していないようだから 説明を加えてやった
「同衾とは一つの布団で共に寝る事だ しただろう?俺達
まあ…正しくは同衾ならもう何度もしているんだが…別に構わないだろう そんなこと」
それでも一応 俺の思い込みで無いことだけは…確認したい…
俺は…ついでの様にさりげなく 続けた
「昨夜お前は 合房の命を受け入れ 俺の胸で安心して眠った
つまり俺に心を許したって事だろう? それで良い」
チェギョン…なぜすぐに答えない?そうだと言ってくれ…

「あの…し…シンくん?」
俺はその声を 記憶のボイスレコーダーに記録出来ただろうか…
それとも…此れから何度でも…そう呼んでくれるんだろうな?シン・チェギョン…
嬉しくて 幸福で 身震いしそうなこの心が お前に解るか?
この上無い慶びのように思えたが…それではいけない…此処は…通過点だよな?そうだろう?


「お帰りなさい 降ってきたんだね雪…
また積もるのはいつかな~ 早いね もう今年もあとひと月を切ったね」
「ああ…寒いな」
テラスからパビリオンに入ると それだけで温かな空気に絆される
なのに俺の肩に着いた雪を払うチェギョンが
「寒いのは苦手?」なんていいながら 俺を温めようと身を寄せてくれる…
「ああ…」
まったく…躰を許してくれなかったくせに ベタベタとくっついてくるんだから 愛いヤツ…
幸せ過ぎて怖いくらいだ おまえに解るか?解らないだろうな… ふん…
デスクの上の姉上からの葉書が目に留まる
ああそうだ
「思政殿(サジョンジョン/皇帝の執務室)の父上に連絡が入ったんだが 姉上が空港に到着したらしい 間もなく帰宮するだろう」

姉さんの話から 幼い頃の話を聞かせる流れに成って…
俺達は 長年親しかった幼馴染のように 自然に笑い合った

「くすくす 可笑しいっ! 他には?」
「とにかくお前は 俺がやりたくない遊びばかり思いつくヤツだった 走り回ったり 泥んこになったり 迷惑ばかり蒙った」
「ぶはは あたしって そのころからシンくんの事困らせる天才だったのね」
「ああ…その通りだな」

俺は不意に あの事を言って 仕返しにチェギョンを困らせてやりたくなった

「ああ…お前 ユル兄さんに結婚してくれとせがんだことも有るぞ」
「ええ!?嘘だよぉ~そんな…」
ふん…覚えていないのか誤魔化しているんだか… 眉根を寄せている
「本当だ その時俺は お前なんかが皇太子妃に成れるわけないって言ったのにな…」
「あ…成ってるね あはは」
笑うなよ 俺が言ってるのは其処じゃない!
「…相手は違うけどな」
まだ笑うのか?
「…ユル兄さんじゃなくて 残念だったな…」
優しいユルだったら…幸せだっただろうな…合房にも…応じていたかも…
「何言ってんのよ!…あたしは…シンくんで…良かったって思ってるのに…」
語尾が聞き取りにくかったが…俺で良かったって…言ったのか?
「本当か?」
そう言ったのか?
「本当かと聞いてるだろう?」
どうして答えない!?なぜ震えている?
!!??
こんな状況で うん…と言う音が零れた唇を 他の男なら奪わないで居られるのか?
なのに 唇が少し触れた途端 身を引く …妻
逃げるなよ!
じゃあどうして応じてくれなかったんだよ?
こんなにお前を欲しているのに…まだ堪えろというのか?
「じゃあなんで…」
続きの言葉を言うのももどかしくて
固く結んだ唇を解(ホド)いてほしくて 何度も口付けた
どうしてお前は心と躰が別々なんだ? 俺に 身も心も開いてくれよ…
切実な思いを唇から注ぎ込むように 何度も何度も求愛した
なのに…

「シン!!ただいま~~~~~~!!!!!」
硝子の扉がけたたましく開いて飛び込んで来たのは
あ…姉上…
「っと…うそっ!私もしかして今…凄いタイミング悪かった?!」
嗚呼…なんて人なんだ 貴女って人は…
「ご~め~んっ!…二人共…ホントごめんね!許してよぉ~~~」
カウチの背なんかに 隠れようもないのに俺は… ははは
「やだぁ…ホントごめんってばぁ~//// シン 怒った?」
いや…怒るどころか…助かったよ…
俺ときたらあんなに チェギョンがちゃんと俺を向くまで我慢すると決めたのに
また強引に逼(セマ)ってしまって… またもチェギョンを傷付ける処だった
「姉さん…お帰り…」
俺は努めて冷静に席を立ち そうすれば飛び込んでくるであろう姉上に 両手を広げて見せた



あはは
オヌルド感謝クリゴ…みあね~~~ミアネ


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