◆新卒一括採用を支える「メンバーシップ型雇用」日本において、終身雇用、年功序列賃金が崩れつつあるのは、経営環境の悪化や複雑化に原因があると考えられるが、その分析と追及についての論考は別の機会に譲りたい。



ただ、終身雇用、年功序列賃金、企業別労働組合といった日本的雇用慣行は日本の文化や固有の価値観によるものではなく、外部的要因により生まれたものだと筆者は認識していることだけを強調しておきたい。

 さて、このように終身雇用、年功序列賃金という支えを失った中で、新卒一括採用という仕組みは現在どうなっているのだろうか?



新卒で一括採用した社員を、終身雇用と年功序列賃金で愛社精神、企業への忠誠心を植え付けながら、企業内教育で中長期的に育成することが日本企業における人材戦略の基本構造であったと考えられるが、その構造が成立しなくなれば、新卒一括採用という仕組みも崩壊してくると考えるのが普通ではないだろうか?



しかし、データでみると現在でも多くの企業は新卒一括採用を実施しており、大学から企業へと人材の受け渡しが依然として実施されている。


なぜだろうか?


その大きな要因としては、濱口桂一朗氏が「若者と労働」(2013年 中公新書ラクレ)で指摘しているように、欧米は「ジョブ型労働社会」であり、日本は「メンバーシップ型労働社会」だということがあると思う。

濱口桂一朗氏の「若者と労働」から引用しよう。



『「仕事」をきちんと決めておいてそれに「人」を当てはめるというやり方の欧米諸国に対し、「人」を中心にして管理が行なわれ、「人」と「仕事」の結びつきはできるだけ自由に変えられるようにしておくのが日本の特徴だ』

とし、そのような特徴を「メンバーシップ型雇用」と呼んでいる。


そして、

『日本の「社員」と呼ばれるメンバーシップ型の雇用契約では、職務が限定されておらず、原則としてどんな仕事でも命じられれば従事する義務がある・・・その代わり、その仕事がなくなってもほかの仕事に回せる可能性がある限り、簡単に解雇することは許されません』

と述べられ、この「メンバーシップ型雇用」がブラック企業や年長フリーターを生んだ要因であるという風に論が展開される。



思い返せば、私も大学を卒業して某百貨店に就職したときは、新入社員研修が終わって配属先の発表があるまで、販売部門にいくのか、人事部門なのか、希望していた販売促進部門なのか、まったく分からなかった。結果としては、販売部門に配属され、最も不向きな業務に従事することになったのだが、それに対しては、「仕方ない。そのうちローテーションがあるだろうからチャンスを窺がおう」としか思わなかった。これが、当時の一般的な新入社員の意識ではなかっただろうか。まさしく、「就職」ではなく「就社」である。


でも、これはこれで悪くはなかったと思う。企業の中で、様々なジョブ(職務)に挑戦する機会が与えられたのだから、ある意味、幸福な働き方ではなかっただろうか。



しかし、残念ながら、不景気になると、あるいは、国の経済成長が鈍る時期を迎えると、多くの企業ではそのような余裕がなくなってきた。そこで、新卒一括採用したものの、あまり役に立たない社員についてはできれば解雇したいのだが、そこには大きな法的規制があるために、仕方なく、陰湿なリストラや配置転換が行われる結果となる。また、経営環境の変化への対応力を高めるために、多くの職務をパート社員や派遣社員といった有期雇用の非正規社員へと切り替えようとする一方、無期雇用契約の正社員にはより高度な職務の実践を求めるようになった。


このような経営環境変化の中で、新卒一括採用を支えてきた「メンバーシップ型雇用」は、終身雇用と年功序列賃金という二つの翼を失いつつある現代において、どのように変容していくのだろうか?


AD