BABYMETALと国際情勢(3) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
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★今日のベビメタ

本日2月20日は、これまでBABYMETAL関連では大きなイベントのなかった日DEATH。

 

アメリカには、保守派に対して、リベラルという立場もある。社会的な平等のためには、多少自由を犠牲にしても、政府による市場介入や福祉政策が必要だとする立場であり、民主党支持者が多く、マスコミ受けがよい。

オバマケアは無保険者を減らす国策だし、黒人やマイノリティに学校の入学や公的雇用の優先枠を設けるアファーマティブアクションもその考え方から来ている。

この2つの大きな立場の違いに、経済政策では自国優先主義かグローバリズムかという対立軸が加わり、思想的にはキリスト教右派(プロライフ、同性婚反対、進化論教育反対、開拓精神)と多文化主義(プロチョイス、LGBT支援、宗教的寛容、環境保護)のせめぎあいが加わる。

非常に大雑把なとらえ方かもしれないが、これらの組み合わせによって、政治的な立ち位置が決まる。保守-グローバリズム-キリスト教右派ならネオコンになるし、保守-グローバリズム-多文化主義ならいわゆる新自由主義になる。民主党の政治家は、基本的にリベラル-グローバリズム-多文化主義の組み合わせが多い。

ただ、2016年の大統領選では、リベラルでありながら自国優先主義-キリスト教右派(ユダヤ系)というバーニー・サンダース候補(民主党予備選敗退)や、保守-極端な自国優先主義-多文化主義というドナルド・トランプ候補など、従来になかった組み合わせの主張が見られた。

トランプが多文化主義だって?

確かに当選した後、トランプ大統領は、中絶支援団体への補助金を打ち切る大統領令に署名している。しかし、これは選挙協力してくれたネオコン、キリスト教右派への公約を守ったのと、民主党時代に膨れ上がった補助金や財政支出を減らすという一石二鳥の政策判断だと思う。

彼自身は大金持ちのプレイボーイであり、2度の離婚歴もある。3人の奥さんのうち2人までが、エキゾチックな東欧出身の爆乳美人である。ぼくのタイプじゃないけどね(^^♪

選挙期間中には、同性婚を認める発言もしているから、とてもキリスト教右派とは呼べない。

中東・アフリカ7カ国入国禁止の大統領令の「目的」を読めば、彼が演説で言っていた「ムスリムは入国させない」という咆哮は大衆受けを狙って単純化して言っただけであり、本意は、あくまでも治安対策として、テロリストを水際で阻止することなのだとわかる。

以下の条項では、この法令がアメリカ的価値観に基づくもので、注意深く、「国、人種、宗教、性別その他による差別」ではないこと、この措置がテロリストを識別するための入国審査方法の「見直し」期間のみであると書かれている。

――引用―――

Sec. 3. Suspension of Issuance of Visas and Other Immigration Benefits to Nationals of Countries of Particular Concern.

(a)  The Secretary of Homeland Security, in consultation with the Secretary of State and the Director of National Intelligence, shall immediately conduct a review to determine the information needed from any country to adjudicate any visa, admission, or other benefit under the INA (adjudications) in order to determine that the individual seeking the benefit is who the individual claims to be and is not a security or public-safety threat.

第3条 疑わしい国々の国民に対するビザ発給その他の入国審査における恩恵の延期。

(a)国土安全保障長官は、国務長官および国家情報長官の助言のもと、申請者が移民国籍法(裁定条項)におけるビザ、入国、その他の恩恵を受けるため、本人が主張する通り、セキュリティ上または公衆安全上の脅威ではないと判断できるような、いずれの国についても必要な情報を確認するための見直し(review)作業を、直ちに実施するものとする。

(中略)

(c)  To temporarily reduce investigative burdens on relevant agencies during the review period described in subsection (a) of this section, to ensure the proper review and maximum utilization of available resources for the screening of foreign nationals, and to ensure that adequate standards are established to prevent infiltration by foreign terrorists or criminals, pursuant to section 212(f) of the INA, 8 U.S.C. 1182(f), I hereby proclaim that the immigrant and nonimmigrant entry into the United States of aliens from countries referred to in section 217(a)(12) of the INA, 8 U.S.C. 1187(a)(12), would be detrimental to the interests of the United States, and I hereby suspend entry into the United States, as immigrants and nonimmigrants, of such persons for 90 days from the date of this order (excluding those foreign nationals traveling on diplomatic visas, North Atlantic Treaty Organization visas, C-2 visas for travel to the United Nations, and G-1, G-2, G-3, and G-4 visas).

一時的に、本章(a)に記載されている見直し期間中に、関連機関の調査負担を減らし、外国人審査のための利用可能な資源の適切な見直しと最大限の活用を確保するため、また、移民国籍法第212条(f)項および合衆国法典第8編第1182条(f)項に従って、外国のテロリストや犯罪者の侵入を防ぐために適切な基準が確立されていることを保証するため、私は、移民国籍法第217条(a)(12)および、合衆国法典第8編第1187条(a)(12)項に言及された国からの外国人については、移民、非移民を問わず、その入国が米国の利益に有害であると宣言し、この法令の日から90日間、その人の移民または非移民としての米国への入国を一時停止する(外交ビザ保持者、NATOビザ保持者、国連へ旅行するC-2ビザ保持者、G-1、G-2、G-3、G-4ビザ保持者の外国人を除く)。

(翻訳:jaytc)

―引用終わり―

この部分が、「入国禁止令」にあたるものだ。

(a)項では、現在の入国審査では、本人の申請だけではテロリストが識別できないので、関係機関が審査方法の「見直し」に入ることが命じられている。

(c)項では、移民国籍法第217条(a)(12)および、合衆国法典第8編第1187条(a)(12)項で言及された国、今回の中東・アフリカ7カ国からの入国申請者について、その「見直し」期間を90日として、移民希望者であろうが、その他、観光客も含む非移民であろうが、入国を一時停止する、と言っている。

つまり、テロリストが識別できるなんらかの新しい審査方法ができるまでの90日間という一時的な措置であり、かつその対象は、既存の法律に規定された国が対象で、トランプ個人が大統領の権力で恣意的に決めたのではないというのである。

移民国籍法第217条(a)(12)には、オバマ大統領時代に成立したテロリスト渡航防止法に基づいてイラク、イラン、スーダン、シリア、リビア、ソマリアまたはイエメン(イケメンじゃなくてCopyright©2012飯田来麗)が指定されている。これらの国に渡航歴のある者は、ESTA(電子渡航認証システム)によるビザ免除国の38カ国の国民、例えば日本人であっても認められないという書き方だが、米国にとっての「要注意国」として記載されている。つまり、今回の7カ国を指定したのはトランプ大統領ではなく、彼が選挙期間中口汚く罵っていたオバマ大統領なのだ。

前回も書いたが、アメリカの入国審査用紙には、「武器を所持している」などの項目に交じって「共産党員である」とか「ナチス協力者である」という項目があり、Noにチェックしないと入れない。個人の自由や人権を抑圧するイデオロギーの持主を入国させないというのは、アメリカの国是だ。加えて前任のオバマ大統領が対象7カ国を指定していた。

こう考えてくると、今回の大統領令は、大統領に就任したトランプが、治安対策として入国審査システムを強化したいと思って知恵を絞り、大統領権限の範疇で90日間の「一時的」入国停止を設定し、その間に、困った対象国の政府機関から「この人はテロリストじゃない」保証となる何らかの個人情報を供与させるしくみを開発するつもりだったのだろう。

議論されるべきは、このやり方がテロリストの水際阻止に有効かどうかだけであって、法令に書いてあるように、「国、人種、宗教による差別」とは真逆のものだ。それだけを強調するマスコミがあるとすれば、それは「トランプ憎し」のためにするのか、あるいは法令を読んでいないということだろう。

付け加えておくと、ISISの本拠地であるシリアだけは、期限を設定していない。オバマ政権の末期にぐずぐずになってしまったが、米軍はまだシリアで戦闘しているのだから当然だろう。

だから、今次の訪米で安倍首相がこの問題に触れなかったのは、賢明だったとぼくは思う。

もともと自国に関係ないなら、他国の個別政策にいちいち口出しするのは外交上の「内政干渉」に当たる。アメリカが、国是に従って「人種、宗教、性別、性的指向に基づく抑圧を行う勢力」を水際阻止するために、前政権から引き継いだ対象7カ国からの渡航者を一時的に入国停止として、その間に新しい入国審査システムを開発するという大統領令に、何か言うべきことがあるのか?

今回、この大統領令は連邦裁判所によって差し止めとなったのでもう無効だが、ではそれによる「実害」はあるのか。

実はこの大統領令は、テロリスト対策としてはほとんど効果がなかっただろう。

長山さんも書いているが、この7カ国出身の「テロリスト」がアメリカ国内でテロ事件を起こしたことは一度もない。2001年9月11日の同時多発テロは、アルカイダに指示されたサウジアラビア国籍のグループが犯人だったが、1966年のテキサス大学、1999年のコロンバイン高校、2012年のオーロラ、2013年のアラパホー高校など、銃乱射事件を起こしているのは、アメリカ国籍を持つ白人の若者だ。

2007年のバージニア工科大学の犯人は永住権をもった在米韓国人学生。記憶に新しい2016年6月のオーランド(フロリダ州)銃乱射事件の犯人は、アフガニスタン出身の両親からアメリカで生まれたアメリカ国籍の若者で、事件後ISISが犯行声明を出しているが、犯人がかつてイスラム過激派を称賛する発言をしたというだけで、指揮下にあったかどうかは不明。同じく2016年、ペンシルバニア州で起こった3件の銃乱射事件の犯人はいずれもアメリカ白人だった。

つまり、「テロリスト」は海外から来るのではない。アメリカの国内にいて、思想的に、あるいは精神的に病み、社会への不満を無差別攻撃に転じてしまう人たちなのだ。

銃を規制すれば、犯人が暴力衝動を起こしても犠牲者は最小限で済むかもしれない。だが、銃規制は「市民が武器をとって戦う権利」を守るアメリカの国是に反する。

したがって、危険を及ぼしそうな者を事前に察知する「思想警察」のようなものを作らない限り、本当の意味での「テロリスト対策」などできない。

こうなるともうSF、アンチユートピアの世界だが、思想、信教、表現の自由は、同じくアメリカの国是だからそれもあり得ない。

もしアメリカが「思想警察」を作るならメタルは全滅だ。ぼくが大好きだったプラズマティックスのアルバムは「Coup d’Etat(クーデター)」で、おっぱい姉ちゃんが戦車に跨っているし、メタリカはLA暴動や司法への批判、薬物依存、反戦などをテーマにしている。

さて、トランプ、グラミー賞、BABYMETALの三題話、そろそろオチの時間ですね。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」は、タイムマシン「デロリアン」に乗ったマーティ(マイケル・J・フォックス)が活躍する映画であるが、そのPart2は別の時間軸の未来にタイムトラベルした設定。ここでマーティのライバル、悪役のビフがトランプそっくりの大富豪として出てくる。彼の所有するカジノビルは「トランプ・プラザホテル」をモデルにしたと脚本家が認めているから間違いない。

そして、現実の2015年10月21日に放送された「Jimmy Kimmel Live!」で、1985年からマーティとデロリアンの発明家ドク(クリストファー・ロイド)がやってきたという設定のコントで、マーティが、「ねえ、ビフは今何してる?」と聞くと、司会者は「大統領選挙に出馬してるよ」と答える。そしてドクは「どうやら進歩が止まった別の2015年に来てしまったらしいな。ビフが牛耳っている世界に」と嘆く。

「バック・トゥ・ザ・フューチャーPart2」はビフが支配する暗黒世界であるが、現実の2017年、本当にトランプが大統領になった。

ぼくらはSU-METALによって、知らず知らずのうちに「デロリアン」に乗せられ、マイケル・J・フォックス=キツネとともに暗黒世界へ来てしまったのだろうか。

お後がよろしいようで。