Guns!(2) | 私、BABYMETALの味方です。

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アイドルとメタルの弁証法
-May the FOXGOD be with You-

★今日のベビメタ

1月18日は、2014年、Live Expo Tokyo 2014(ニッポン放送主催@国立代々木競技場体育館)に出演した日。フェスでのアイドルグループという扱いでしたが、「メギツネ」「ヘドバン」「ドキモ」「イジメ」の4曲を披露。動画を見ると、一般客の「なんじゃこりゃ?」感は際立っており、3月の武道館と海外進出につながる勢いを感じます。メイトからすれば、「ふふふ、一般客よ「BMD」は勘弁してやるぜ!」という感じDEATHね。

 

ガンズの直近のライブ「Not in This Lifetime World Tour」(2016年11月30日、メキシコシティ)のセットリストは、次のようなものである。

1.It's So Easy、2.Mr. Brownstone、3.Chinese Democracy、4.Welcome to the Jungle、5.Double Talkin' Jive、6.Better、7.Estranged、8.Live and Let Die(ポール・マッカートニー&ウイングス、邦題007死ぬのは奴らだ)、9.Rocket Queen、10.You Could Be Mine、11.Attitude(Misfitsカバー、その他You Can't Put Your Armsなどメドレー)、12.This I Love、13.Civil War(ジミ・ヘンドリクスのブードゥーチャイル付き)、14.Coma(メンバー紹介)、15.Speak Softly Love(ゴッドファーザー愛のテーマ)、16.Sweet Child O' Mine、17.Used to Love Her、18.Out Ta Get Me、19.Wish You Were Here(ピンク・フロイド)、20.November Rain(エリック・クラプトン、レイラのピアノイントロ付き)、21.Yesterdays、22.Knockin' on Heaven's Door(ボブ・ディラン、邦題天国への扉)、23.Nightrain

アンコール

24.Sorry、25.Patience(ローリング・ストーンズAngieイントロ付き)、26.The Seeker(ザ・フー)、27.Paradise City、28.Far Away Eyes(ローリング・ストーンズ)

すべての曲と曲の間に、ビデオが入る。笑ってしまうほどのカバー曲や“一部引用”の多さ。

「ゴッドファーザー愛のテーマ」からジミヘン、ポール・マッカートニー、ボブ・ディラン、クラプトン、ピンク・フロイド、ストーンズ。3時間を超えるはずである。

高いチケット代を払った分、ライブが盛りだくさんなのはいいのだけど、アクセルの“好きなもの大会”なのだろうなあ。書いているだけでお腹いっぱいである。

予習するなら、デビューアルバムの「Appetite to Destruction」だけでいいかも。

ここから、「It's So Easy」「Mr. Brownstone」「Welcome to the Jungle」「Sweet Child O' Mine」「Paradise City」「Rocket Queen」「Out Ta Get Me」「Nightrain」の8曲が演奏されている。

「Used to Love Her」「Patience」は、デビューアルバムに続く1988年のEP「Guns N’ Roses Lies」の収録曲。

「November Rain」「Coma」「Double Talkin' Jive」の3曲は「Use your IllusionⅠ」、「You Could Be Mine」(ターミネーター2主題歌)、「Estranged」「Civil War」「Yesterdays」は「Use Your IllusionⅡ」に収録。いずれも1991年リリースである。

スラッシュもダフもいなかった2008年の「Chinese Democracy」からは、「Better」「This I Love」「Chinese Democracy」の3曲のみ。

つまり、「Not in This Lifetime」ワールドツアーはやはりリユニオンの色彩が強いのである。

 

このバンドの音楽性はどうか。

ガンズ・アンド・ローゼスがデビューした1987年は、LAメタルの末期である。

1978年、ブリティッシュハードロックが下火になり、ロンドン・パンクが台頭した頃、アメリカ西海岸でオランダ移民の兄弟を中心にしたヴァン・ヘイレンがデビュー。「炎の導火線」は瞬く間にプラチナディスクに輝く。イギリスではパンクに対抗してNWOBHMのムーブメントが起こるが、アメリカ西海岸では、1982年にモトリー・クルーがデビューし、1983年にはランディ・ローズ亡き後のクワイエット・ライオットのアルバム「Metal Health」が全米1位を獲得。1984年にはラットのデビューアルバム「OUT OF THE CELLAR」が全米チャート7位となる。

だが、80年代後半、すでに西海岸では、メタリカ、スレイヤー、メガデスといったスラッシュメタル勢が支持を集め、化粧や長髪をヘアスプレーで固めたド派手な出で立ちで、ケバイ女性を侍らすLAメタルを「ポーザー」「ヘアメタル」と馬鹿にしていた。その中でのデビュー。ガンズはいわば遅れてきたLAメタルだった。

しかし、LAメタルは、音楽的にはスラッシュメタルに決して引けを取ってはいない。ぼくはギタリストなので、その視点でしか見られないが、ちょっとお付き合いください。

LAメタルの先駆者であるヴァン・ヘイレンには、エレクトリックギター奏法の革命であるタッピング(ライトハンド)奏法を多用するエディ・ヴァン・ヘイレンがいた。タッピングというのは、普通左手の指で指板を押さえ、右手のピックで弦を弾くところを、右手でも指板上の弦を押さえ、その瞬間に音を出し(プリングオンまたはタップ)、指を離す瞬間にも弦を触って音を出す(プリングオフ)という奏法である。これによって、まるでキーボードを弾いているかのように、速く、手数多く、離れた音階の音を出せる。

当時、速弾きと言えばブリティッシュハードロックの雄、ディープパープルのリッチー・ブラックモアこそ憧れであったが、両手を使うエディの奏法はギター小僧たちに衝撃を与え、ほぼ全員が毎日エディの真似をしてタッピングの練習に励んだものである。

曲調もまた、ブリティッシュハードロックとは大きく違っていた。

ブリティッシュハードロックの基本はマイナーコード(短調)である。ディープパープルならGm、レッドツェッペリンならEmかAm。それにマイナーペンタトニック(ブルース)のアドリブが乗っかる。リッチー・ブラックモアは、スパニッシュやクラシカルなフレーズをHRに導入した先駆者だが、それでも後年のクラシカルメタルのイングウェイ・マルムスティーンに比べると相当ペンタを多用している。

NWOBHM以降、メタルバンドのツインギターのハモリは、バッハ的でクラシカルなフレージングに移行していくが、コード進行はマイナー(短調)がやはり基本であった。

それに対して、LAメタルは、基本メジャーコード進行である。ヴァン・ヘイレンの「Jump!」や「Panama」を思い出してみてほしい。ああいう明るい曲調に、エディのタッピングが炸裂する。この斬新さやカッコよさが、オープンカーでハイウェイを疾走するような、LAメタルというジャンルそのものを切り開いたのだと思う。

同じ西海岸でも、スラッシュメタルバンドはこれを嫌った。社会批判や暗い情念を歌うのに、メジャーコードは似合わない。コード進行をマイナー(メタリカはほとんどEm)に戻し、アドリブはペンタの手癖に、時折タッピングを入れる程度。だが、むちゃくちゃ速く、重い。これがメタリカの音だ。カーク・ハメットもジェームズ・ヘットフィールドも、ギタリスト目線でいえば、ペンタの手癖のリフ、フレージングであり、「凄いテクニシャン」の範疇には入らない。(つづく)