2009-04-19 21:00:00

オランダのインタビュー(2009年)

テーマ:ジャルスキーかく語りき

Interview with Jaroussky in Netherland, 2009

~also sprach Jaroussky~


ジャルスキーファンのみなさんに嬉しいお知らせです。オランダ在住のレイネさん (bonnjourさんのお友達)が現地の新聞NRC Handelsblad紙に掲載されたジャルスキーのインタビューを邦訳してくださいました!とても面白い内容ですよ。レイネさん、ありがとうございます!!


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フィリップ・ジャルスキーが望むのは、自分の声が自然に聞こえること。

「僕はそれ以外にはなれない」


フランス人カンウンターテナーのフィリップ・ジャルスキーは、男性が高音で歌う声がもっと普通に受け入れられて欲しいと望む。

4月3日 ミシャ・スペル記


彼の声は天使の声だ、とファンは言う。しかし、フィリップ・ジャルスキー本人は、自分の声に関してもっと現世的な言葉で表現されてもいいはずだと言う。コンサート会場では彼の成層圏を突き抜けるようなソプラノの歌声を聴いた子供達が、びっくり仰天して笑い出すことがしばしば起こる。彼自身もリサイタルでは、男性の喉から女性のような声が出てくることが引き起こす混乱を楽しむようなところがある。時々冗談のように、とてもよく響く低い胸声で歌っては、突っぱねたように聴衆を見たりする。「でも、カウンターテナーだって普通の歌手なんです。」とロンドンのホテルのロビーで語った。「歌うこと、音楽性や歌詞の色づけ、他の歌手となんら変わりないんです。」

ジャルスキーのファン層を見る限り、彼自身の意見には完全に同調はできない。リサイタル終了後、サウス・バンク・センターのフォワイエにはファンが長い列を作った。興奮して喋りまくる女性達が大勢詰めかけている中、その横には、寡黙で訓練の行き届いた若い男たち、時にはボディービルダーのような男性たちもたたずんでいる。ジャルスキーは、応援団たちの幅の広さには驚かない。「僕がゲイの人たちの間で特に人気があることは事実です。カウンターテナーというのは男性と女性が同居したようなものであるし、古典的な男女の役割が曖昧になってきていることを体現しているともいえます。働く女性は男性中心の社会に食い込んでいるし、男性も女性のような弱弱しさを示すことで魅惑的になります。高音の出せる男性というのは、その両面価値に適合するんです。」
ジャルスキーの声は、数年前と比べると低くなっているが、現在のカウンターテナー界ではもっとも高く滑らかに転がる声である。彼はまた、カウンターテナーという声質からの束縛解放第一人者である。最近発売されたCD「オピウム」からの曲目を、来週コンセルトヘボウで歌う。ロンドンへもこのCDに収められている19世紀末および20世紀初頭のフランス歌曲のリサイタルのために来たのだ。これらの曲は、カウンターテナーの標準的レパートリーとは異なる。通常のカンウンターテナーは、17世紀および18世紀のカストラートのレパートリーを歌うことが多い。「でも、歴史的・古楽的見地からみてもそのようにレパートリーを限定してしまうことは無意味なんです。」というのがジャルスキーの意見だ。「ベンジャミン・ブリテンはカウンターテナーのアルフレッド・デラーの声のために新しい曲を作りましたし、現在でもカウンターテナーの声の色やその演劇的可能性に興味を示す現代作曲家は多いんです。」だから、ジャルスキー自身も、スザンヌ・ジローが新たに彼のために作曲したカラヴァッジョの生涯を描いたオペラを近いうちに歌う予定である。


ジャルスキーが自分の声を発見したのは偶然である。母親がカラスの歌う音楽を流していたのにあわせて歌ってみた。ヴァイオリンとピアノのレッスンを始めたのは「それで本当にものになるレベルにまで到達するには遅すぎる年齢」であった。当時男声でソプラノの声域を持つファブリス・ディ・ファルコが歌うのを聴いて、自分にもできると思い、歌いたいと心に決めた。フランスでのカウンターテナー教育専門家であるニコール・ファリアン女史の指導を18歳から受けた。そのように若い頃から専門を決めてしまうと、自我の中の男性部分との衝突が起きるのではないかという邪推には、首を振って否定した。「アルフレッド・デラーはそれで悩みました。だから、どこにでも夫人と子供を伴って出かけ、オレは男だ、ということを誇示して見せました。でも、現在ではそんなことは全く不要です。高音で歌う男声を聞いてショックを受ける人はもういません。僕が勉強の課程でいつも投げかけていた疑問は、自分の声が自然にきこえるかどうかです。女性の声を真似ることはしたくなかったし、今もしていません。それよりも、男性であることから自らを解き放ち、自分の中の子供である部分を持続することです。このことは、他のカウンターテナーを見るといつも思うんです。みんな永遠の少年みたいな感じですね。」
31歳になったジャルスキーの録音してきたCDは数多い。今までは全て古楽ジャンルのものだった。そのレパートリーの中では、ジャルスキーは目が離せない歌手の一人だった。声の技巧、男性的な力強さ、女性的高音と情感とがあいまって、コンプリーションCD「カレスティーニ」(同名のカストラートから取ったタイトル)は誘惑的だ。同様のことは、自身の古楽アンサンブルであるアルタセルセと録音したヴィヴァルディのアリア集にも当てはまる。ジャルスキーの最新CD「オピウム」が物議をかもしたのは、理由のないことではない。フォーレやデュパルクの歌曲は、ジェラール・スーゼイに代表される暖かいバリトンの声で親しまれている。ジャルスキーが高音のアルトで歌うと、それらの歌曲は全く違うものに聞こえる。時には潔癖で冷たく、時には親密である。母音を滑らせて発音し、最期の音の後半までヴィヴラートをかけるのを待つという彼の歌い方のため、少しフォークソング風にもしばしば聞こえる。そう言うと眼を見張り「そうでしょう?僕もCDを聴いてそう思ったんです。でも意識してそうしたわけじゃないんです。意識したかったのは、不自然でないように歌うことです。カストラートのレパートリーは声の技巧を披露することを意識して書かれています。でも、今回のCDの曲は、その作曲方法論が逆なんです。例えばレイナルド・アーンの「クロリスに」を聴いてみてください。シル・エ・ヴレ、クロリス、ク・トゥ・メームという歌詞と音楽はとっても小さくはかないものです。だからそれに合うよう、技巧をなるべく凝らさないような方法で歌わないとだめなんです。」
ファンの中にはがっかりした人もいるようだ。サウス・バンク・センターのパーセル・ルームは満員だったが、室内楽のようなフランス歌曲の彼の解釈に割と満足しているようだった。しかし、聴衆が本当に熱狂したのは、アンコールでベル・カントのコロラチューラを披露し、彼の歌声が一気に花開いたときだった。「知っています。僕もそのように受けとめました。でも、そんなことは気にしないようにしています。」と吐息を漏らした。「もちろん、バロック・オペラやカストラート・レパートリーだけでウケを狙いたい衝動にも駆られます。でも、ぼくはカウンターテナーが幅広いレパートリーに対応できることをあえて証明したかったんです。デイヴィッド・ダニエルズはシューベルトを歌うし、マックス・エマニュエル・チェンチッチはロッシーニを歌う。僕はフランス印象派を選んだんです。それで行くだけなんです。」


ジャルスキーは将来もっとオペラの舞台に立ちたいと思っている。例えばグリュックの作品などだ。今までにオペラで歌ったのは突発的なプロダクションに限られて、それらはYoutubeで見ることができる。「僕の声は、ベジュン・メータやマックス・エマニュエル・チェンチッチとは違って、あまり声量がありません。」と認める。「でも、高音に力がある声なのでオペラも歌えると思います。そして、僕の声は発達してきて、今が絶好調です。」
声は低くなったが、その分力強さが加わってきた。本当のソプラノ声域は無理である。「僕が思うには、すべての歌手は30歳から40歳までが黄金期です。テクニックは身に付け、声が成熟しているから。」ソプラノの役を歌いたいとは思わない。頭声を使って歌うことは、声の寿命を短くするのでは、という疑問には「それは、神話です。ジェイムズ・ボウマンは現役で歌っていますよ。どうしてもカウンターテナーというとひとくくりにしたくなる傾向があるようです。現在のカンターテナーを見ると、みな様々な声質と様々な声の色と可能性を持っているんです。」
サイン会場にはヴァージン・クラシックスの社長の姿も見える。彼は満足げである。「フィリップはうちで売り上げ1番のアーチストです。」ヴィヴァルディ・アルバム「ヒーローズ」は10万枚売り上げを記録した。これはクラシックCDとしてはかなりの枚数だ。その結果、自分でプロジェクトを選ぶ自由が与えられた。だから、次のCDは全く知られていない『ジョアン・クレティアン・バック』のアリア集になる。ヨハン・クリスチャン・バッハのことである。「バロックと古典派の過渡期は僕を惹きつけるんです。ギャラント様式に慣れるまでは大変でしたが、あまり知られていない音楽の再発見が好きなんです。J・C・バッハのオペラCDは2つしか出ていません。できれば、彼のオペラ完全版を自分で指揮をして録音したいと思っています。」
彼は笑うが、現在の彼には時間が足りない。「それから、技術も。」自ら古楽アンサンブル・アルタセルセを率いて年に2つのプロジェクトを行っている。それには、コンサート会場やオーケストラにとってあまり魅力がないため演奏の機会が少ないものを拾う意味もある。「例えば、カヴァッリがそうです。でも、僕はまだ若いから、自分のアンサンブルだけに没頭するわけにはいきません。10人もの音楽家の指揮をしながら、息を吸い込んでそれから声を張り上げて歌うというのはとっても疲れることだって分かってもらえますか?」


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レイネさん、長文の邦訳お疲れさまでした!

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