旅をしてきました。
テーマ:ずんび目が覚めるとボクは成田空港のロビーにいた。ふんどし一丁で。髷(まげ)もしっかり結わえられている。しかし天然パーマのせいで坂本龍馬のようにくねくねだ。昔から憧れていた坂本龍馬に一歩近づけたと喜んだのも束の間、我にかえった。なぜふんどし?しかも成田で?
地団駄をふもうにもこの風貌、仕方が無いのでしこをふんでみた。するとふんどしから一枚の航空券がひらりと落ちてきた。
NARITA→BANGKOK
とりあえず搭乗手続きをしてみることにした。すると女性が「プライオリティ・パスはお持ちですか?」尋ねてきた。
「プ、ププライ・・・」初めて耳にする単語に冷静さを失い、もう一度しこをふんでみた。するとくねくねの髷の中から一枚のカードが落ちてきた。
「お客様プライオリティ・パスお持ちですね。それではどうぞ。」言われるまま女性について行くとラウンジにたどり着いた。何故かVIP待遇だ。そういえばさっきから喉がカラカラだったので飲み物を一通り飲み干した。シャワールームがみえた。そういえばさっきから変なにおいがしていたのでこれはボクかな、確かめるために体を洗った。シャンプーをしようとポンプに手をかけたとき、なんとなく髷がもったいなく思えたのでやめておいた。シャワーを終えると同時に変なにおいも消えた。やはりボクの体から発していたものらしい。なんてスパイシーなんだ。
出発時刻が近づいてきたのでラウンジを出ようと歩きはじめたら、パソコンが設置してあったので「成田 力士 ちょんまげ」と検索してみたがこれといって有力な情報は得られなかった。しかし便利な世の中になったものだ。
機内食はそこそこうまかった。というか基本的に好き嫌いがないのでまずいと思うことがほとんどない。デザートに出てきたドラゴンフルーツをみてボクは、バンコクへ向かっていることを思い出した。何しに?
目が覚めるとボクは視線を浴びていた。それもただの視線ではない。熱視線だ。何故そんなにみてくるんだ?これが人種差別というものなのか。いや、ボクはもともと東南アジア顔だからかなり馴染んでいるはず。じゃあ何故・・・。
ふんどし
はっとして腰に手を当てた。アテンションプリーーーーズ・・・・。さっきまで飛行機に乗ることで頭が一杯で羞恥心やそんなものは一切なかった。今のボクは、羞恥心の塊だ。穴があったら入りたい。ずぼんがあったらまずはきたい。
結局ずぼんも履けぬまま無事バンコクに到着し、空港をあとにした。穴があったら入りたいとは言ったものの、切り替えの早いボクは次第にこの状況に慣れ、どうせなら二度とない力士人生を謳歌しようではないかと手当たり次第バンコク市民に笑顔をふりまいた。さすが微笑みの国タイランドだ。キャンディーズなんて足元に及ばないほどの微笑返しをしてくるタイ人がいたので、負けずに更に微笑み返しをしているうちに仲良くなり、その人の地元チェンマイで野性的な体験をした。気づけば数週間たっていた。そろそろコウモリ程度ならイケるかなと思い石コロを投げてみた。するとコウモリではなく、一枚の航空券が捕れた。
BANGKOK→MUMBAI
ボクはお世話になったタイ人に別れを告げて、お礼にコウモリをプレゼントした。一体何故こうも航空券が落ちてくるのか、いまだにわからないけれど、偶然ではないような気がしたので、ごく自然にバンコクからインドのムンバイにとんだ。タイで出会った人々と食べたゲテモノ、大笑いするオヤジの鼻からのぞく毛、無邪気な子供達・・・いろんなことが思い出されて、ちょっとだけシュンとした。
と思ったらただ冷房が寒くて鼻水がでただけだった。ムンバイに到着するとまたもやプライオリティパスのラウンジがあったので、温かい飲み物をたらふくいただいて、ガンジス河へむかった。
インド人の生活、人生をすべて受け入れる巨大な河。一度みてみたかった。今まさにその河を前にしている。タイで日本アピールをすることになれていた僕はなんとなく、朝日を浴びながらしこをふんだ。するとたちまちインド人が寄ってきた。何をいっているのか分からない。やたらふんどしを指さしているので、「ディスイズジャパニーズフェイマスファイティングパンツ」と言った。勝負下着と受け取ったのか、彼らは頬を赤らめた。がその後彼らに招かれふんどしごっこをしたり、ナンを焼いたり、かと思いきや盛り上がりをみせているインドのクラブシーンを目の当たりにすべく夜の街へ繰り出したり、そんな日々を送った。ここでも数週間が経過していた。なんとなく水の濁りっぷりに引けを感じて沐浴できずにいたボクは、意を決してガンガーにダイブした。溺れそうになる。必死で呼吸をしようともがく。口に異物が入る。死にそうになる。死にたくないと思う。足を伸ばす。水深1mだった。ともかく肺に酸素を送ろうと口に入った異物を除いた。
MUMBAI→NAIROBI
口に入っていたのは航空券だった。驚きが大きすぎて二度溺れそうになった。航空券だけならまだしも、行き先がケニアはナイロビなのだ。ビビった。しかしこれもまた運命と、インド人達に別れを告げ、お礼にちあきなおみを一曲歌った。今日はそんな気分なのだ。
飛行時間が長く、エコノミー症候群にでもなるかと思った。それ以上にビビっていることが実はある。ケニアの首都ナイロビ。そう、そこは世界でも有数の凶悪犯罪都市。この六つの漢字の羅列だけでも随分恐ろしい気がする。空港を出たらすぐさまタクシーに乗り込もう。その前に、プライオリティラウンジで最期かもしれない休憩をとる。緊張で脇汗がびっしょりだ。ガンジス河に入水するときの数十倍の緊張――。
その間の記憶はなかった。今ボクはサファリのど真ん中にいる。テレビでみたような部族に囲まれて、槍を片手に踊っている。さっきインパラを捕まえて、丸焼きにしながら祝杯をあげている。部族の儀式を終え一息つき、空港からここまでの記憶を辿ってみるが、場面場面でしか思い出せない。おそらくよっぽど恐怖だったのだろう。ふんどし一丁の男がナイロビを彷徨っているなんて、鴨がネギ背負って鍋屋に現れるようなものだ。
「鴨ネギねえ。」そんなことを考えていると目の前の平原にエバラ焼肉のたれを背中に乗せたシマウマが通りかかったので捕まえてみんなで食べた。もちろん「焼肉焼いても家焼くな♪」というテーマソングはばっちりケニア人に教えた。そうしてますますワイルドになっていく自分に時折満足感を得ながら、日々を過ごしていった。
部族の長、略して部長が突然ボクを呼び出した。部長室(茅葺屋根)に入るのは初めてだってのでいささか緊張した。すると部長は神妙な面持ちで「ご苦労じゃった。ほれ、ボーナスじゃ。」ケニアの部族にも賞与制度があることに驚いた。封筒をあけるとやっぱりなと思った。
NAIROBI→LONDON
こんだけふんどし一つで胸毛ボーボー、筋肉隆々になったのにここへきてロンドンって・・・洗練された人々が騒々しく行き交うような場所が、果たしてボクみたいな時間の感覚が太陽でしか分からなくなっているような人間を受け入れてくれるだろうか。というかそろそろ衣服を身に着けさせてはくれまいか。
ケニアのみんなに別れを告げ、エバラ焼肉のたれと、さっき捕まえたヌゥを一頭プレゼントした。ちょうど大移動の最中だったのだ。ナイロビの空港でいつものようにプライオリティラウンジに行き、これだけはやっておかないと、捕まるだろうと思いシャワーを浴びた。さすがにあの汚さでロンドンは、ないだろう。
歯ブラシが木の枝でなく歯ブラシだ。久々に文明を手にした気分で、たかが歯ブラシなのに気分が高揚した。ロンドンはさすが超先進国なだけあって、今までの国とは随分フンイキが違う。ヒースロー空港を出たボクは、時期的にアレだよなと思い、あそこへ向かった。
Glastonbury。グラストンバリーフェスティバル。一度は行ってみたかった海外のフェス。しかもグラスト。会場が近づくにつれてフェスっぽい人々が次から次に現れてくる。この空気がたまらなく好きだ。ラブ&ピースが満ち溢れている。入場ゲートがみえてきた。そういえば、
チケットがない。あるのはふんどしだけだ。ならやるっきゃない。即興で日本をアピールしてみた。しこをふむ。漢字を書く。侍のふりをする。美空ひばりと坂本九のメドレーを歌う。面白がってイギリス人が近寄ってきた。すかさずチケットがない旨を告げると偶然にもその人はフェスの関係者で、入れてくれることになった。それどころか、サイドステージのオープニングアクトにでないかと言われた。サファリで培ったリズム感覚と狩りのテクニックを活かせばなんとかなるだろうと思い快諾した。
結果は散々だった。さすがに楽器ももたずふんどし一つでは間がもたなかった。ボクを出させた関係者はグッジョブよくやったよと言いながら爆笑している。はめられてはめちまった・・・つられてボクも爆笑した。それからいろんなアーティストをみて、泣いたり踊ったり飲んだり寝たりしているうちに時は過ぎていった。
グラストを後にしたボクは、UKの音楽が何故こうも渋いのか、何故こうもオリジナリティに溢れているのかそのルーツを辿ってみようと手当たり次第縦横無尽に歩きまわった。ストリートパフォーマンスからクラブ、ライブハウスにレコードショップ。結局そのルーツなんてものは分からず、ただただ好きな音楽が増えていくだけだった。でも、それが楽しいのだ。いつか音楽がネタ切れになるその日まで、新しい音楽をききつづけていこうと思う。というか音楽ってネタ切れになるのだろうか。珍しくディープなことを考えていると一枚のチケットが通りすがりの人から渡された。お、航空券きたか次はどこだろうと思いそれを見やると、ライブのチケットだった。売れ残りのチケットをばらまいただけか。捨てるのもなんなので見に行った。
南米のアーティストのようだ。ライブハウスに入るボクとボーカルの目が合った。その瞬間ボーカルが「ドッコイ ドッコイ エドモンド」と謎のキーワードを発しながら手をふってきたのでとりあえずその場で百貫落としをしてみた。すると感極まりボーカルは泣き出した。嬉しいのか?そう思っていると突然走ってきてボクにチケットを手渡した。
LONDON→SAO PAULO
自分が帰国する用のチケットじゃないのかと尋ねると、「ドッコイダヨ」そう答えてステージに戻りまた歌いはじめた。ボクはドッコイの一言で彼女の言わんとしていることを悟り、足早に空港に向かった。
熱い。体が熱い。気温が暑いせいもあるだろうが、それとはまた別の熱さ、情の熱っぽい熱さが体中にたぎり、サンパウロに到着したボクはラウンジを利用する時間をも惜しむように外へ出た。湧き上がるこの熱をどこかで発散させようと。
カーニバルもいいけれど、それとはまた違ったところのような気が直感的にした。そういえば最近南米出身のバンドが話題沸騰していたな。サンバとボサノバだけがブラジルじゃないんだなって思ったな。演歌だけが日本じゃないもんなって思ったな。ブラジルのアンダーグラウンドなところを掘り下げてみようと思いボクは若者の溢れる街へくりだした。さらに熱くなる体。どうしようもなくどこかに発散したくて仕方がなかったので、通りにあった楽器屋に足を踏み入れ、手当たり次第楽器をたたいた。一心不乱だった。
1時間が経過したころだろうか。まわりにはゲームセンターでのダンスダンスレボリューションの見物客なみのブラジル人がいた。ふと、ロンドンで泣いたボーカルの彼女を思い出し、百貫落としをしてみせた。拍手が沸きあがった。中に一人静かにたたずむ男性がいた。
カエターノ・ヴェローゾ、その人であった。
って誰だ。ブラジル音楽界の巨匠である。彼はじっとボクをみている。緊張して軽く一礼をすると、にこりと笑った。カエターノの家に招かれ、セッションをした。体の熱を放出するように無心で奏でた。すると彼は「オーケーとれた?」スタッフらしき人にきく。「ばっちりです!」なんのことやらさっぱりわからずにいると、まあ飲めジャポンよ。といわれたので飲んで踊った。それから一ヶ月程したころだろうか。いつものようにブラジルの若者の音を求めてレコード屋に入ると、カエターノヴェローゾの新作が発売されていた。これは!と思い試聴してみた。どこかできいた音、どこかできいた声・・・いや、どこかで奏でた音だ。
あの日彼はセッションをそのまま録音していたのだ。その出来の素晴らしさに感動しこっそり音源を発売までしていたのだ。驚きと桃の木を隠せずに、とにかくいそいでカエターノの家へ向かった。事情をきいた。「あまりにも君の音がすばらしかったもんだから、こっそりとっちゃったよ。メンゴメンゴ。」あっけらかんとしている。しかし、まさかボクみたいなふんどし男がカエターノと共演し、CDまで出すなんて、夢にも思わなかった。本当に、夢にも・・・「はいこれ。」カエターノは何食わぬ顔でボクに渡してきた。
SAO PAULO→NARITA
舞い上がった途端これだ。いつもそうだった。これからいいところというときに航空券が現れる。航空券なんか、航空券なんかイーティングシットだ。クソ喰らえだ。やぶり捨ててやる。せっかくブラジルデビューしたんだ。今帰ってどうする。航空券をやぶりすてる。ビリビリと音をたてた。カエターノはほくそえんでいる。ボクは微笑み返しをした。
目が覚めるとボクは、布団の中にいた。歯磨きをして小便をして着替え、いつものように駅に向かった。
というわけで、突然何を意味不明なこと書き出したんだこいつそろそろイってもうたか?ってお思いのみなさんあながちハズレではないですが若干ハズレです。私は正常です。へへへーん。
こういうわけだったのです。詳しくはそちら。100万円ほしいのです。妄想旅行をして選ばれた人に世界一周航空券と100万円がもらえるのです。もらわない手は、No more。旅のコンセプトはですね、「音と無計画に溺れちゃいな」。はい今付けました。いきあたりばっ旅です。この文もプランも。それが、いいんだな。野性味溢れる旅がしたい。















何故。

