男女の問題に混入する裁判官の価値観2(その1)

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男女の問題は、いつの時代も、

価値観は人それぞれです。

裁判官とて例外ではありません。

 

さて、その昔、私のブログで

「男女の問題に混入する裁判官の価値観」

というタイトルで、

裁判官の独特な価値観が表現されている昭和30年代の裁判例を紹介しました。

http://ameblo.jp/izuta-law/entry-11451928264.html

 

今回も、昭和30年代のきわめて独特な裁判例をご紹介します。

事案の概要は、

満50歳の女性が、男性49歳に対し、

不貞行為と放蕩な生活に伴う浪費等を理由として、

離婚を請求したという事案です(東京地方裁判所昭和30年5月6日)。

 

事案自体がかなり詳細に判決の中に書かれていています。

まずは、事案の概要を判決を引用しながらご紹介します。

 

夫は、軍事産業に従事しており、戦前は収入が多く、

夫婦ともに豪奢な生活をしていました。

その時の様子について、判決では、

「原告(注:妻)は、上流婦人としての生活をなし、

その生活は派手で、衣装などは高価なものを持ち、

花、お茶、小唄その他の遊芸に身を入れたり、

被告(注:夫)とともに、花柳界に出入りして、

花柳界の婦人たちと派手な交際をし…」

他方、夫は、会社の商談などのために、

「花柳界に頻繁に出入りするにつれ、

花柳界に自由になる夫人のある方が便利であるため、

…妾を囲うようにな」

ったとまとめています。

 

しかし、いいときというのは続きません。

戦後に軍事産業に従事していた夫は失職しました。

にもかかわらず、

夫婦ともにかつての豪奢な生活が忘れられず、

浪費を続けました。

 

このときの様子について、判決は、

「原被告(注:妻が原告、夫が被告)ともに、

富裕な家庭に生育した人たちであったため、

…、被告は、…女道楽はやめず、キャバレーやバー等に出入りして金銭を浪費し、

あるいは競馬、賭け事に手を出してこれに耽り…、

一方原告も、…、夫をいさめて堅実な生活に立ち帰らせ、

相ともに生活再建のために努力するということもせず、

もっぱら夫を責めるのみ…、

被告は、…時には、いさかいの果て、原告を面罵し、

あるいは殴打する等の暴行を加えるようになり…、

一方、原告は、苦労の知らな上流婦人の短所として、

苦労に対する忍耐力を欠くため…」

夫婦関係は悪化したと認定しています。

 

いや、この判決の書き方はなかなかですよね。

暴力に耐えろといっているようなものです。

 

さて、そんな夫婦でしたが、夫婦の溝が深まる事件が起こりました。

長女が、米軍下士官と恋愛関係に陥り、

結婚することを熱望しました。

これに、妻は同意したのですが、

夫は激しく反対し、

夫婦間の溝は深まったのです。

 

そうこうこうするうちに、つまらないことで、

夫婦の破たんが訪れました。

妻が、夫の所有していた競走馬の賞金5万円を

夫に無断で受け取り、借金返済その他に使ったのです。

その出来事があって、妻は、

「被告(夫)から叱責されるや、

夫婦関係もこれによって極まったと思いつめ、離婚することを覚悟して、

被告に無断で被告のものと立ち去った」

のです。

 

どのご夫婦でも、

時として、別居の原因やケンカの原因は、

他人からすれば、どうでもいいこと、

ということも多いです。

 

このように別居になった夫婦ですが、

夫は、以下のような様子であると判決に書かれています。

 

夫は、「原告(注:妻)に対し、愛情を持ち続け、

現在においては、その過去における一切の所業や

原告に対する一切の仕打ちを後悔し、

今後は、従前のような生活態度はこれを改め、

原告とともに生活再建のために努力することを決意し、ひたすら、

原告が被告の元にかえるのも願っている」

のだそうです。

また、夫は、

「女性の関係もすでに一切清算し、原告(妻)が被告(夫)の元を出てからあと、

一時身の回りの世話をさせるために同居させていた女性とも手を切っていて、

将来さような関係を作らないことに決意している」

のだそうです。

 

現代的な感覚では、

開いた口が塞がらない感じですよね。

 

さて、この事案で、

裁判官は、離婚を認めたのでしょうか。

 

長くなったので次回をお楽しみに…。

 

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