「夕凪の街 桜の国」 (日本、2007年) | 無節操ニンゲンのきまま生活

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夕凪の街桜の国

(C)2007「夕凪の街桜の国」製作委員会


帰省先の札幌で見てきました。

どんなのか知らずに行ったんだけど、原爆の物語なのですね。

監督は「半落ち」の佐々部清監督、出演は田中麗奈、麻生久美子、堺正章


☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


「夕凪の街」

昭和33年の広島で、皆実(麻生さん)は同僚から求愛されるが、

被爆した心の傷と生き残ったことへの罪悪感で一歩を踏み出せずにいた。

しかしやっと幸せをつかむ決心をしたとたん、原爆症の症状が現れ始める。


「桜の国」

舞台は現代、皆実の弟の旭(堺さん)は家族に黙って広島へ向い、

父を心配した七波(田中麗奈ちゃん)は心配してこっそり後を追う。

そこで両親の過去や自分のルーツを知ることになる・・・というお話。


☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*


【ネタバレちょっとだけあり】



50年前と現代、2本立てのようになった映画で

最初は違う話かな?と思ってみてたけど、

後から見事につながりました。


原爆と戦争、という、ともすると重苦しくなりがちなテーマだけど、

静かに淡々と、優しくメッセージを伝えてくれるような映画。

それだけに、こんな悲惨なことが日常で実際に起こったんだ、

そして決して過去のこととして時代の陰に葬ってはいけないんだ、ということが

心に染み込んでいきます。


麻生久美子はいいですねえ。

かわいらしくてはかなげで、でも芯は強い女性としてピッタリ!

彼女の語るシーンは、涙なくしては見れませんでした(ノ_・。)

ちなみにお相手役の吉沢悠は久々見たけど、

織田裕二そっくりに成長してたよ(笑)

田中麗奈もうまいわあ。


「男たちのYAMATO」でもあったんだけど、

戦争で生き延びた人たちは

「自分だけが生き延びてしまって」という罪悪感があるんだろうか。

いったん死を覚悟し、身近な人がどんどん死んでいく中で自分だけが生き残るということは

命だけがたまたまそこにあるような、喪失感を味わうのかもしれない。


せっかく幸せをつかみかけながらも死んでいく気持ちは

さぞ無念だろうと想像していたけれど、

皆実は愛する人の腕の中で

死人の呪縛から解放され、安心した顔で死んでいったのが衝撃でした。



戦後補償だとか簡単に言ってしまうけれど

戦争を生き延びた人たちの気持ちの奥底は

平和ボケした私たちがとうてい予想しきれないような感情がつまっているんだな、と

今までにない感想をもてる、今までにない戦争映画でした。



戦争から60年が経ち、

戦争を知っている人たちも少なくなってきた時代に、

こうやって戦争の映画が作られること自体すばらしいことだと思う。

しかも戦争時ではなく、

この映画のように戦後も苦しむ一般庶民にスポットをあてた作品は貴重かも。


ほんとに月並みですが、

こういう映画を見た後は平和を願って止みません。