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【魔法使いと小さな龍6:最終話】
*
龍はとうとう天空に消え失せました。
宙は大きく笑い、
自分たちの宝の子を抱きしめました。
歓喜の金がパラパラ降ります。
海も沸き立ち、
歓喜の金がパラパラ降ります。
海も沸き立ち、
さざ波をフツフツ泡立て、祝福しました。
*
*
*◇◇◇◇◇*◇◇◇◇◇*
一方魔法使いはどうなったでしょう。
彼は、あやういところで岩に変身、
「あー行っちまった! 行っちまったよーー!!」
じだんだを踏み、飛びあがり、
おいおい、おいおい泣きました。
「あー行っちまった! 行っちまったよーー!!」
*
さんざん、おいおい泣いた後、
ふと我に返って思いつきます。
「龍が仕返しに来ないだろうか?!」
そう考えれば考えるほど、恐怖がつのってきたのです。
「あーどうしよう、どうしよう・・・」
自分の家はぺしゃんこです。
幼い龍の力でさえも、計り知れない威力です。
「あーどうしよう、どうしよう・・・」
ふと見ると石造りの羊小屋が残っていました。
吹き飛んでいた羊たちが、メーメーベーベー戻って来ます。
*
魔法使いは羊を押しのけ、一番奥に隠れてみました。
それでも不安がよぎります。
「いや、待てよ。
こんな程度じゃ、龍一族に見つかるだろう」
「そうか! あの手があったんだ!」
魔法使いは羊の皮をかぶりました。
なんともおかしな格好でした。
*
それでも不安がよぎります。
「そうか! あの手があったんだ!」
とうとう魔法をかけました。
自分自身を本物の、羊の姿に変えたのでした。
「これでひとまず安心だ!」
◆
こうして羊生活が始まりました。
*
羊たちの日常は、毎日毎日おんなじでした。
壊れた柵囲いからも出て行かず、
おいしい草を奪い合い、
暖かい寝床を奪い合い、
こづきあい、グチりあい、ののしり合って暮らします。
メーメーギャーギャー騒ぎをおこし、
四つの季節が巡っても、
羊はなんら変わりません。
毎年、毎年、同じ月日がめぐります。
◆
こうして長い月日が過ぎるうち、
魔法使いは大事なことを忘れました。
「自分自身は偉大な魔法使いである」
・・・それをすっかり忘れたのです。
本当に、本物の羊になったのですよ。
今でもそうしているのです。
メーメーギャーギャー。
メーメーヒーヒー。
*
*
******
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::::::::::::
完
Copyright © utamaro Izumi 2013,All Rights Reserved.
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はじめましての方へ、
*
*
*◇◇◇◇◇*◇◇◇◇◇*
一方魔法使いはどうなったでしょう。
彼は、あやういところで岩に変身、
なんとか難を逃れました。
元の姿に戻った時には、龍はすっかり見えません。
あきらめきれずに天に向かって叫びます。
「オーーイ、オーーーーイ!
俺の龍ーーーーーー!!」
空はシンとし、見向きもしません。
魔法使いはおいおい泣きます。
元の姿に戻った時には、龍はすっかり見えません。
あきらめきれずに天に向かって叫びます。
「オーーイ、オーーーーイ!
俺の龍ーーーーーー!!」
空はシンとし、見向きもしません。
魔法使いはおいおい泣きます。
「あー行っちまった! 行っちまったよーー!!」
じだんだを踏み、飛びあがり、
おいおい、おいおい泣きました。
「あー行っちまった! 行っちまったよーー!!」
*
さんざん、おいおい泣いた後、
ふと我に返って思いつきます。
「龍が仕返しに来ないだろうか?!」
そう考えれば考えるほど、恐怖がつのってきたのです。
「あーどうしよう、どうしよう・・・」
自分の家はぺしゃんこです。
幼い龍の力でさえも、計り知れない威力です。
「あーどうしよう、どうしよう・・・」
ふと見ると石造りの羊小屋が残っていました。
吹き飛んでいた羊たちが、メーメーベーベー戻って来ます。
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魔法使いは羊を押しのけ、一番奥に隠れてみました。
それでも不安がよぎります。
「いや、待てよ。
こんな程度じゃ、龍一族に見つかるだろう」
「そうか! あの手があったんだ!」
魔法使いは羊の皮をかぶりました。
なんともおかしな格好でした。
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それでも不安がよぎります。
「そうか! あの手があったんだ!」
とうとう魔法をかけました。
自分自身を本物の、羊の姿に変えたのでした。
「これでひとまず安心だ!」
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こうして羊生活が始まりました。
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羊たちの日常は、毎日毎日おんなじでした。
壊れた柵囲いからも出て行かず、
おいしい草を奪い合い、
暖かい寝床を奪い合い、
こづきあい、グチりあい、ののしり合って暮らします。
メーメーギャーギャー騒ぎをおこし、
四つの季節が巡っても、
羊はなんら変わりません。
毎年、毎年、同じ月日がめぐります。
◆
こうして長い月日が過ぎるうち、
魔法使いは大事なことを忘れました。
「自分自身は偉大な魔法使いである」
・・・それをすっかり忘れたのです。
本当に、本物の羊になったのですよ。
今でもそうしているのです。
メーメーギャーギャー。
メーメーヒーヒー。
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はじめましての方へ、
泉ウタマロは作家、アーチストです。
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