いずみホールのブログ

スタッフのリレー執筆で、ホールでの出来事や、主催公演の詳細&裏話などをお届けします。


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土曜日に迫ったいずみシンフォニエッタ大阪第39回定期演奏会。ホール情報誌Jupiter164号に掲載した下野竜也氏のインタビューをブログに再掲載。公演前にぜひお読みください。

いずみシンフォニエッタ大阪フェイスブックページではリハーサルの様子を写真をつけて公開中です。併せてご覧ください。

当公演の詳細はこちら


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いずみシンフォニエッタ大阪の第39回定期演奏会が7月15日に行われる。今回のテーマは協奏曲。その名も「超絶のコンチェルト-めくるめく競演」だ。だがクラリネット協奏曲、トロンボーン協奏曲、オーボエ協奏曲とプログラムをたどっていくと最後に目に飛び込んでくるのは「フランケンシュタイン!!」というちょっと異色なタイトル。聞けば、今回指揮に迎える下野竜也マエストロのイチオシの作品という。これはぜひ、お話をうかがわねば!ということで、春も近づくある日、来阪中のマエストロを訪ねた。

 「日頃クラシックは聴かないっておっしゃるお客さまに、ぜひ聴いていただきたいんです」と下野マエストロ。『フランケンシュタイン!!』について尋ねると、そんな答えが返ってきた。オーストリアの作曲家ハインツ=カール・グルーバーの1976-77年作品。ばりばりの現代音楽である。とは言え何かコミカルな気配も漂っている。マエストロの狙いを聞いてみた。
 とにかく楽しい作品、と申し上げられると思います(笑)。いずみシンフォニエッタ大阪から今回のお話が来た時に私からも何か1曲というリクエストがあって、提案したところご快諾いただいた作品です。2012年にこの作品のオーケストラ版(今回は作曲者自身によるアンサンブル版を上演)を読売日本交響楽団で指揮したんですが、お客さまみんなが大笑いで楽しんでくださって。“フランケンシュタイン!!”ていうタイトルからあの悲劇的なお話を想像して身構えちゃう方もいるかも知れないけど、そんな作品ではぜんぜんなくて、室内オーケストラ付きの歌とお芝居。言葉遊びみたいな歌詞も、字幕で楽しんでいただけると思います。
 注目してほしいのは何といってもソリストの宮本益光さんのパフォーマンス。ただのバリトンではなくて音域も広く使うし、コメディアンのようでもあるかと思えば楽器も演奏する。本物のマルチ・エンターテイナーでなければ務まらない役ですから、彼を見るだけでも価値があると思います。宮本さんは前回公演の時、作曲者のグルーバーさんにウィーンまで会いに行って直接レッスンを受けてきたんです。その時グルーバーさんは次は日本語でやったらどう?っておっしゃったらしくて、それができたらきっと面白いと思うんですがさすがに日本語を乗せるのは難しくて、今回は英語バージョンで上演します。


 マーラーやブルックナーで聴かせる強靭な構成力を一方の持ち味としながら、下野マエストロはもう一方で日本初演を含む数多くの現代作品の演奏を手掛けてきた。そして彼が取り上げる作品は時に現代音楽の難解なイメージを軽やかに裏切って、柔らかなファンタジーを感じさせてくれたりもする。大好きと語る作曲家ジョン・コリリアーノの『ハーメルンの笛吹き』や今回の『フランケンシュタイン!!』は、そんな系列の作品だ。さらに今回、いずみシンフォニエッタ大阪はマエストロにとってもチャレンジングな作品を用意した。
 若いうちは何にでも取り組むべきだと思っていて…といって誰かに何かを強いられているというわけではなくて、私自身のプログラミングについては自由に好きなものを選んでやっています。古典に取り組むというのは指揮者としては大切なことだし、私も心底好きなんですが、未知の作品を演奏できるというのはそれはまた非常に楽しいことで、いつも出版社から新しい楽譜を取り寄せたり、買って読んだりしています。最近では下野ってそういう指揮者なんだって、よい意味のレッテルが貼られているので(笑)出版社の方からもいろいろと声をかけていただくことが多くて、『フランケンシュタイン!!』もそんな出会いの中で見つけた作品です。現代音楽にはとても厳しいシリアスな作品が多いですが、この作品みたいにお客さまに楽しんでいただけるものは数少なくて貴重だと思いますね。
 尹伊桑(ユン・イサン)の作品を演奏するのは初めてで、機会をいただいてとても光栄に思っています。この人ほど激烈な人生を歩んだ作曲家もいないくらいの人なので、生半可な理解で取り組むと曲に跳ね飛ばされてしまう、作品をしっかり受け止めるぞっていう覚悟がないと演奏はできない。そう思っていた作曲家です。ただ言葉にすると照れくさいんですけど、この曲に限らず指揮をするってことにはそういった面がありますよね。ベートーヴェンでもブルックナーでも指揮をするという部分においてはやっぱり、それなりの覚悟が要ると思うんです。作曲家の書いた楽譜から拾えるだけのものは根こそぎ拾わなきゃいけないですし、そこに自分の思いが生まれるまで突き詰めなきゃならない。そうしないとオーケストラは動いてはくれないし、ましてやお客さまには何も伝わりません。

 2009年2月以来、2度目のいずみシンフォニエッタ大阪登場となるマエストロ。その「競演」はユーモアと真摯な情熱が渦巻く、遊びごころ満載のステージとなりそうだ。マエストロにいずみシンフォニエッタ大阪の印象を聞いてみた。
 メンバーの方たち、ひとりひとりはいろんなところでご一緒している方ばかりなので、今回もよい緊張感の中で音楽を創っていけると思います。スーパープレイヤー揃いだし、大阪から現代音楽を発信して行こうっていう気概を皆さんが持っているのがいいですね。実は『フランケンシュタイン!!』って、演奏するのはかなり難しい作品です。楽譜はすごく緻密に書かれていて、オーケストラはいろんなおもちゃの楽器も演奏しなきゃならないし、笑っちゃいけない、とか演技も求められたりする。でも多分、いずみシンフォニエッタ大阪の皆さんはそんなことで驚いたりする人たちではないので、一緒になって楽しんでくれると思います。
 いずみホールをディズニーランドみたいな遊園地の雰囲気にできたらいいな、と思うんです。クラシックとか現代音楽とかそんな枠は取っ払ってしまって。ああ、よかったね、楽しかったねって、聴いたあと皆さんにそんな風に思ってもらえたら(笑)。
 

取材・文 逢坂聖也(音楽記者)

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