・煙の歌を知っていますか
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暖炉や薪ストーブを使うと煙がでる。その煙が不快なので「法規制を」という新聞投稿があったという。煙が嫌だという都会人は案外いる。かれらは、子ども時代にキャンプに行ったことがないのかもしれない。一日でも二日でも野外体験をしていれば、食事の用意をしてくれるおじさんおばさんが火をおこしているから、樹木や枯れ草のにおいを知っているにちがいない。煙が風にそっておよぐようすもながめているのではなかろうか。
わたしにとって煙は郷愁を呼びおこすものである。10代のころ浜田市の国立病院にいて、夕方になると土手に座り、川向こうの畑の中に建つ家から煙が立ち上るのを眺めていた。家へ帰りたい、いつになったら退院できるのだろうと、煙の先端をじっと見ていた。煙が出ている家では、家族がなにやかやと一日のできごとを親に聞いてもらっているだろう。夕食を食べているかもしれない。ごくあたりまえの光景が、わたしにとっては強い憧れだった。煙が立ち上るところでは、人が住んでいる。病院にいれば、住んでいるとも暮らしているとも言わない。
煙はにおう。目にしむこともある。煙のにおいは許可なく入ってくるが、人間だってそれぞれニオイをもっている。ニオイはもともと地上にあり、存在を知らせてくれるものではなかろうか。
プラターズが歌う『煙が目にしむ』が大好きだという友人もいるけれど。






