10月22日(土)曇り 『一年四組の窓から』

 

 何かのシリーズを書いてブログに載せているうちに読んだ本たちが、私も紹介してねと要求している。(いや、紹介したのかもしれないが)あさのあつこさんが幅広く筆を進めている。その一冊から。

 中学生の井嶋杏里は1年の途中で転校するが、なかなかなじめないで、空き教室「一年四組」で休み時間を過ごすようになる。そこに、絵を描くことが大好きいな、そのために父とのいさかいを抱えている市居一真がやってくる。一真は杏里をモデルに描くようになる。この二人を視点にして、交互に語り手となって展開していく。特別な出来事を超えていくのではない。日常的な人の関わり合いの中の葛藤をくぐりながら、「自分探し」をしていく中学生のさわやかな姿と描いている。

 主人公は空き教室だといってもいい。

「物語は空き教室のようなものだ」と筆者は書いている。

「空き教室は教室というくくりから零れ落ちたことで個性を獲得した。わたしの中で物語と空き教室はとても密につながっているのだ」と。

 さて、作者はちょっといい言葉で人生論を語る。

――夢とか目標とか、自分の未来を指し示すものは、自分で探し当てるしかない。他人から与えられるものではないのだ。親であっても、教師であっても、たいせつな仲間であっても、他人の夢は他人のもの、他人の夢に乗っかって生きることはできない。

―― 一人で耐えること、みんなで分かち合うこと。自分だけで挑むこと、みんなと力を合わせること。そういうものがこの世にはあるのだと、わかったの。

 だから、ありがとう。そして、よろしく。

 このカバー、いいですね!

『一年四組の窓から』あさのあつこ、光文社文庫16.3、520円

   *

今日は「学びをつくる会」。6年生の社会科授業づくりのレポート。楽しみだ。2時、板橋区立上板橋第二小学校。