2010-03-14 01:45:01

クジラ食~3月13日(土)~

テーマ:Food for Thought...

南氷洋で起きた「シーシェパード」事件や、和歌山県太地のイルカ虐殺を描いたドキュメンタリー、The Coveが今年のアカデミー賞を取る中で、センシティブな話題であることを承知した上で、今日はクジラ問題について僕なりに書いてみたい。


というのも、実は今、LAは日系寿司屋で発覚したクジラ食事件で盛り上がっているからである。まさに今週の事件で、サンタモニカ空港にある寿司屋「Hump」のオーナーが、クジラの刺身を客に提供したとして逮捕されたのである。


通報した客は白人女性二人組。報道によると、彼女達の一人が日本語を話せたことから店側が油断し、普段白人の客には出さないクジラをスペシャルメニューとして提供した、とのこと。実際には彼女達はvegan(菜食主義者)であった上に、先日アカデミー賞を取ったドキュメンタリーThe Coveの製作メンバーも入った、クジラ保護のプロジェクトチームの一員だったのだが、当局に通報し、お店はご用となった。アメリカではクジラを食べることは法律で禁止されている上に、今回提供されたクジラは、Sei Whaleという、絶滅危惧種であった為に、罪としては二重に重いとのことである。今日のラジオによると、捜査はLA中の寿司屋に広がろうとしているらしい。


***


シーシェパードは、アメリカではAnimal Planetというケーブルチャンネルの"Whale Wars"というドキュメンタリーシリーズで放送されている。番組として面白いので僕もこれは結構前から見ているのだが、シーシェパードの連中はちょっと、というかかなりおかしい。


番組は思いの他中立的な立場からシーシェパードを取材している。そこで浮かび上がるのは、船長を初め、船員たちがちょっと常人ではないこと。穿った言い方かもしれないが、彼らは、自然保護という大義名分こそ立派なものの、実態はただのアドレナリンジャンキーといった方が近いと思う。時間とエネルギーと自己顕示欲を持て余し、何か面白いものがないか世界を流浪して流れ着いた先がシーシェパード、という感じだろうか。特に船長は彼からシーシェパーを取り上げたら、後には何も残らないような、人間的な魅力は皆無そうな、友達の少なそうな孤独な人であったのが印象に残っている。


Whale WarsはLAに来てから暫く見ていないのだが、シーシェパードの乗組員が日本の捕鯨船に侵入した、との報道を聞いて、何も驚かなかった。シーシェパードがシーシェパードである為には、彼らの行動はエスカレートするのが宿命であるからである。エゴとアドレナリンのwin-winは、前から存在していた彼らの方程式である。


Whale Warsの話をアメリカ人としたことはない。けれども、この印象はきっと僕に限らず、恐らく多くの常識的なアメリカ人も共通で抱いている印象だと思う。まあ、過激派というのはどこに行ってもそういう存在なのだろう。


***



クジラは、一度だけ苫小牧で食べたことがある。接待の席だったので、断れずに食べた。刺身だったのだが、とても赤かったこと、牛肉のような味がして、確かに哺乳類だな、と思った記憶がある。個人的には、別にうまいとも思わなかったし、殊更今後も食べたいとは思わなかった。なんとなく罪悪感は残った。



捕鯨反対派の主な言い分は、主に二つだろうか。


*クジラは絶滅する可能性がある動物である

*クジラは(脳が大きい、感情がある、世界最大の動物である等さまざまな定性的理由から)殺してはいけない動物である


推進派の言い分は、主に以下の三つだろうか。


*捕鯨は固有の文化であり、他国にどうの言われる筋合いはない

*クジラは絶滅しない種類もある

*クジラは駄目というが、じゃあ牛はいいのか。フォアグラなんてもっと残酷では?



僕は生物学者ではないので、クジラが絶滅するかどうかは知らない。反対派も、推進派も、どちらが出している数字も、地球温暖化データと同じように、どちらもバイアスたっぷりで信用できないのではないかと思っている。ただ、本当のところは、幾つかの種類は本当に絶滅しそうで、幾つかは絶滅の心配がないところまで個体数が回復したのではないか、と勘ぐってはいる。


絶滅論争は学者に任せるとすれば、議論は文化論へと集約されるだろうか。


文化論を伝家の宝刀のように振りかざすのは如何なものか、と思う。


文化は間違いなく大事である。しかし、文化論とは、言ってしまえば、ある特定のグループの中の常識を大事にしよう、という話にすぎない。

フォアグラもまた、クジラと似たような議論だと思う。フランスでは文化であっても、外に行けばこれは残酷、という人はいくらでもいる。実際、シカゴでは数年前からフォアグラの販売を全面禁止にしている。


どちらも違う常識を持っているから、どちらが正しい、という議論ではない。


犬食い、人食いとか、猿食い、ひいては首狩りだって、何れも立派な文化である。これはどうだろう。正しい、正しくない、はあるのだろうか。



この辺りから、文化論に関する話は難しくなってくる。異文化を理解することは、異なる常識があることを理解することと同義である。異なる常識を理解することだけでも難しいことであるが、相容れない価値観がベースにあると、これは更に難しいことになる。


犬や猫を食べることを文化として許していいのだろうか。多くの人は、鍋で茹でられる猫を想像しただけで、許せない、と言うだろう。しかし、犬食や猫食はアジア大陸では立派な文化。どうすればいいのだろうか。


自国の常識を、「文化論」の形で主張することの難しさはここにある。それは、自分の常識を人に押し付ける中で、暗に自分の文化の優位性(=自分の常識の優位性)も相手に押し付けていることにある。押し付けられた相手がこれを甘受して受け入れる、というのは相当高いハードルである。


或いは、みんながお互いの文化・常識についてつべこべ言わず、許しあえれば素晴らしい世界になる気がするが、世の中のグローバル化が進み、クジラを捕る活動も日本近海から公海へ広がり、太地の入り江で行われていることが世界中の映画館で上映されるようになると、気にせずに、というのはとても難易度が高い技となる。地球の裏側で起きていることも、自分の街で起きていることも、距離感があまり変わらなくなってきた時代である。


こちらの常識を理解してもらうように努力する、という手はある。


クジラの美味しさを世界の人に認めてもらう。御寿司のように、最初は寄り付かなかった外国人も、理解してくれるかもしれない。


或いは、クジラを養殖に切り替える、という手もある。クジラの家畜化。


残念ながら、殊さらクジラについては、どちらも困難だろう。シャコや白子やウニなら、頑張れるかもしれないが。


とすれば、クジラを食べ続ければ、文化論として食べ続けるだけ自分の優位性を他人に押し付けることとなり、世界から嫌悪感を抱き続けられることになる。それでいいのだろうか。ちょっと孤独な気もする。



更につけ加えれば、僕自身の考えでは、人類自体、とてもわがままな生き物である。地球上にこんなに廻りに犠牲を強いる生物は他にいない。食べられる動物達もそうであるし、伐採される植物だってそうだし、もっと言えば、地球そのものもそうである。水や空気を汚され、地形はどんどん変わり。。。


かといって、僕はグリーンピースに参加しようとは思わないし、伐採される木に自分を縛りつけようとは思わない。菜食主義になろうとも、オーガニックオンリーのヒッピーみたいな食事をしたいとも思わない。人間が人間である以上、いかにも行き過ぎた自然保護運動もナンセンスだと思うからである。でも、自然を保護すること、環境を保護することについてはできるだけ協力したいし、誰もがすべきことであると思っている。


他の生物をある程度犠牲にするしかないのが人間の性であるとするならば、しなくてもいい犠牲はさせない、というのが責任のある人間のすべきことではないか、と思う。クジラを食べないと餓死するなら話は別であるが。


牛や豚や鶏だって可愛そうだと思う。でも、食用に育てられた家畜を食べるのは人間が生きていく上で仕方がないともし割り切るならば、それだけで罪としては十分ではないのだろうか。




寿司屋逮捕のの記事(NY Timesより)


March 10, 2010

Sushi Spot Is Charged With Serving Whale Meat

LOS ANGELES — Federal prosecutors have filed a criminal complaint accusing a Japanese restaurant in Santa Monica and its chef of serving whale meat, a violation of the federal Marine Mammal Protection Act.


In an unusual operation that was sparked by the team behind the Oscar-winning documentary film about dolphin hunting, “The Cove” the restaurant, the Hump, was investigated by the National Oceanic and Atmospheric Administration, the United States Fish and Wildlife Service , the California Department of Fish and Game, and the federal Customs and Border Protection agency, which all concluded that the restaurant was serving endangered Sei whale as sushi.


The meat was discovered in visits to the restaurant by undercover agents and environmental advocates who pocketed the meat for testing.


Gary Lincenberg, the lawyer for the Hump, said in a statement that the restaurant accepted responsibility for the wrongdoing and would agree to pay a fine and resolve the matter in court.


The complaint charges Typhoon Restaurant Inc. — the parent company of the Hump, which sits next to the runway at the Santa Monica Airport — and Kiyoshiro Yamamoto, the chef, with the illegal sale of a marine mammal product for an unauthorized purpose, a misdemeanor offense that carries a maximum statutory penalty of one year in federal prison and a maximum fine of $100,000 for an individual and $200,000 for an organization.


Martina Sagapolu, acting special agent in charge of the region’s law enforcement office for the Oceanic administration, said in a statement, “Making illicit products like whale meat available on the market only encourages the illegal hunting of marine mammals such as the Sei whale — a species that is already threatened by extinction.”


The Hump is known for serving exotic forms of sushi, which are popular in Los Angeles.


“Someone should not be able to walk into a restaurant and order a plate of an endangered species,” the United States attorney, André Birotte Jr., said. He added, “People should be aware that we will use these criminal statutes where appropriate to protect endangered species, including to ensure that they do not end up part of a meal.”




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コメント

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7 ■無駄

クジラを間引かない事で海洋生物の生態系は壊れます。

6 ■>サイクシーさん

シーシェパードが捕鯨反対に名を借りたアクティブストであろうことには賛同します。

でも、シーシェパードはGreenpeaceと違い、本部組織といえるものが殆どなく、船そのものが組織である中で、乗組員には中国系アメリカ人もオランダ人もノルウェー人もいますので、アングロサクソンの人種差別主義者、という批判は当たらないでしょう。

ただ、シーシェパードは世界の中で言えば、一介の「過激派」に過ぎず、世界の常識からはかなり遠いところにいるので、それに日本が過剰に反応するのは寧ろ逆効果、という気がします。

5 ■>カンナバーロさん

そうですね。きっと問題は捕り方、にもあるのだろうと思っています。個体数に影響を与えないのであれば、多少捕ってもいいと思うのですが、近代的な装備でクジラを追いかけることを全面的に認めることには抵抗が大きいのではないでしょうか。昔、アボリジニの人に、今度オーストラリアに来なさい、海がめをご馳走するから、と言われて辟易したことがありますが、ワシントン条約で禁止されている海がめの捕食も、彼らが自活の為に捕食することは例外的に許されているそうです。だから、クジラも、小船に乗ってモリで捕まえるなら許されるんじゃないでしょうかね。地球で最も先進国の一つである日本のハイテク捕鯨船がクジラを捕まえることに対する抵抗が強いのではないかと思います。

4 ■>ぐらさん

賛同いただけたようでよかったです。

感情論ではどこにも行きませんよね。犠牲になるのは人間様以外なのですから。

しかし、カリフォルニアという地であることも、今回の騒ぎを大きくしているのでしょうね、とも思いました。

3 ■捕鯨問題

シーシェパードの連中は完全にアングロサクソンの人種差別主義者でしょう。
捕鯨反対に名を借りたレイシストだと思います。
環境問題で原発反対をやっていたのが、CO2問題で原発開発が盛んになり、今度は捕鯨問題で
暴れているのでしょう。

反日で名をはせる?中国と韓国がこの問題になると不気味なくらいに黙っていることからそう裏読み出来ると思います。

今の日本人が鯨肉を食するのは一般的では無いので捕鯨をすることも無いという理由も成り立ちます。

だが農水省としては自主的に止めるのではなく外圧に屈して捕鯨を止めるのはFTAとかも絡んでくるので認められないという立場なのでは。

私は鯨肉は子供の頃の給食で食べた記憶だけで美味いとは思いませんが、美味いという人達もいますから、日本としては意地で妨害活動を続ける限りは捕鯨を続けるべきでしょう。

シーシェパードの連中が全滅したら止めれば良いのではないですか。

2 ■子供の頃に...

私が子供の頃は、学校給食にクジラが出ました。おそらく当時は牛肉よりも遥かに安かったのだろうと推察します。給食に牛肉が出た覚えがないのですが、クジラは竜田揚げやら色々な形で提供されましたが、どれも美味だったと記憶しております。

おっしゃる通り、クジラはダメで牛はいいのかとか、フォアグラは残酷ではないのかと議論して見ても、それぞれの国の食文化として長い年月を経て定着したものですから、彼等は「牛は我々が食べる為に育てているからいいのだ(某白人談)」と突っぱねるでしょう。

但しこれが「絶滅危惧種」と言う事であれば話しは別です。地球人として、勝手に他の生物を食べている我々ですが、やはり他の種を絶滅させてはいけない。クロマグロに関してワシントン条約の切り口で攻めて来ているのはそう言う理由もあるのかなと思っています。

1 ■まったくその通り

あ~、久しぶりにまともな鯨論(?)を読みすっきりしました。

”他の生物をある程度犠牲にするしかないのが人間の性であるとするならば、しなくてもいい犠牲はさせない、というのが責任のある人間のすべきことではないか、と思う。”には全面的に賛成です。足るを知る。無用の殺生(や消費)はしない。昔の人は良いことを言います。

日本での「牛や豚だって同じ命」だの「文化の違い」というのは、文化の優位性を押し付けられた感情的な反発で、それで理解されるのは難しいのでは?と前から思ってました。そんなこと言っても、Humpの前でヒステリックにデモしてる人達と同じなだけ。あのデモに参加している人達って働いてないんでしょうかね~と繁忙期で残業続きの身には不思議でした。小人閑居して不善をなす。これも真理ですね。

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