20091230日晴れ

暮れも押し迫った奈良は人も少なく空気も綺麗で気持ちが良い。

興福寺 院内は実に広々としている。近代的な高い建物が立ち並び、切り取られたような空ばかり見ているから、空が両手一杯広がっているというだけで実に伸びやかな気持ちになる。五重塔、東金堂と並んでおり、そこに面した中金堂は再建計画中ということで、広場に土台のみがあった。

すぐ脇の国宝館へ。大人500円、子供300円。改装中の入り口で大きな仏頭が出迎えてくれる。中へ入ると優しい照明に照らされたガラスのショーケースの中から沢山の仏像がこちらを見ている。聖徳太子幼少時の像の勝気なお顔が可愛らしかった。

なんといっても丈六(約5m)の木造千手観音菩薩立像 が圧巻だった。金色はかなりはげているとはいえ、その大きさと彩色、でっぷりしたお体、42本の御手、11面とどれをとっても圧倒される。それぞれの手に持つ持物も詳細ですばらしかった。直接見られるのは良かったが、正面から見られる場所が狭く、観音様の風景が切り取られた感じになるのが残念だった。

美少年と大人気の乾漆八部衆立像の阿修羅像 は人だかりになっている。三面六臂のお像は余りにも華奢な体つきをしておられる。少年というよりこれは早熟の子供だ。眉をひそめた表情も幼ない。現代の感覚に照らし合わせてしまうから、そう思ってしまうのだろうか。ガラスの反射の加減で見えずらく、あちらから見たりこちらから見たりしてみる。保存のためしかたがないのだろうが、ほとんどの仏像がガラス越しで、もう少し近くで見てみたい、後ろ側も見てみたいと色々考えてしまう。

木造天燈鬼、龍燈鬼立像 はユーモラスで可愛らしかった。物語に登場する悪役でありながら愛すべきキャラクターという発想はこの像が作られた鎌倉時代からあったのだろうか。

大きな仏像はいい。ガラスに入っていないから。木造釈迦如来坐像 は手相もくっきりで、思わず分厚そうなてのひらに見入ってしまう。

お坊様の像の乾漆十大弟子立像は怖かった。不敬かもしれないが、私には具体的な人を祀るということ自体が即身仏を連想して恐ろしい。

こどもが尋ねる。「それでさぁ、この中で一番えらいのは誰なの?」

学がないので、「如来じゃないかな。」と適当にごまかすが、国宝館には沢山の如来がおられるのだ。



日々はいとをかし

夫は既に興味を失い散歩してくるというので、私一人で東金堂へ行こうとしたら、子供たちも仏像を見たいという。大人300円子供150円。

入り口を入るとお堂の手前幅1mほどのスペースに人が溢れている。帽子を脱ぐのを忘れていてお供物の準備をしているお坊様に注意される。反省。

ここの銅造薬師如来坐像 はきちんと薬壺を持っておられる。銅造日光・月光菩薩立像 、木造四天王立像 、木造十二神将立像 と勢ぞろいで子供にはわかりやすかったようで、楽しく拝見していた。下の子がお坊様に「四天王の中で一番強いのは誰ですか」と質問する。そんな質問にも、「わかりやすく言うと、戦隊もののように強さに違いはありませんが、塔を手にもっているのがリーダーですよ。そしてそれぞれ方角を守っているのです。」と丁寧に答えてくださった。感謝合掌。