この愛の甘さ・・・アスパルテーム由来。
胸の、奥深いところでぐぬぐぬとくすぶる、愛。
この愛の甘さは、一体どのような成分から出来ているのだろう。
そんな健康的な疑念に駆られた、私は分析を依頼するために、持っていた愛の一部を抽出しフィルムケースにつめた。それは群馬県公立中学校指定の運動着のような、えんじ色である。よく見ると白く細かい沈殿物も混ざっている。・・・にわかに、切なさが込み上げた。やはり世界には、形として見えないほうがベターな観念や概念が多いようだ。
ともかく私はそれを、 ㈱ 環境研究センター に送付し結果を待った。
小学校低学年に味わっていた、赤ペン先生が採点した答案を待つようなドキドキ感。それに耽ること3週間と2日。待ちに待った分析結果が届けられた!
赤ペンティーチャーと言えば、“考査の結果が、児童期のアイデンティティ形成過程に与える影響”という旬なトピックをめぐって、小2の振りをして赤ペン先生を喝破したい。あなたのその採点が、人の命を奪いかねない時代ですよ!?とラジカルに問うのだ。ベネッセが雇った歩合制アルバイターたちと、どのような舌戦を展開できるのだろうか。襲うダメ押し的ドキドキ感。
しかしその欲求を土俵際ギリギリのところで抑え、深呼吸。封を開ける。
| 成分表示 |
| アスパルテーム |
| 16歳の夏休み、伝えられなかったあの気持ち |
| クランベリー果汁 |
| ナイフ |
| 調味料(アミノ酸等) |
㈱ 環境研究センター 調べ
(アミノ酸等)の 等 部分が気になるが、詳細な分析は追加料金が発生するとのことで、今回は断念。
苦い味、酸っぱい味、死にたくなる気持ちなど、このあたりは肯ける。
それにしても、愛の甘みはアスパルテーム によるものだったとは意外だった。これはご存知、近年カロリーオフ系コーラによく入っている、人工甘味料である。
甘みは砂糖の200倍と、天然モノの糖類では全く歯が立たない次元だが、その甘みは人工である。
そうか、そうだったのか・・・ 新たな発見の喜びを、知らなければ良かったという悔悛の念があっけなく上回る。
ドラッグなしで感じることの出来る、あの天にも昇らんとするような甘い甘い甘み。
私の感じていたあの甘みは、私の私による私のための甘みであり、絶対的に私に由来するものだ、と自信を持って信じていたのだが・・・
しかし、社会環境と教育が人格を形成するとしたら、これらは二つともまぎれもない人工物ではないか。
更に言うと、私という人間も親によって生産された、人工物なのである。人工物が人工物であるアスパルテームを拒否したところで、いつもはエスカレーターのところを階段にして、よりカロリーを消費しようという肥満者の企みほど、不毛で無価値であろう。
もう止めよう、人工か天然かにこだわるのなんてくだらない。甘ければいいではないか。私もあのコも皆人工。こういう考え方そのものだって、全て人工なのだ。もはや人間は、生活の利便性を犠牲にしなければ、人工物から逃れることは出来ない。
そう考えると、心が軽くなった。いまならどこへでも行けそうだ。畏れと羨望の対象だった、カットが8000円くらいする、入りたかったけど入れなかった床屋さんにだって、軽々行けそうだ!
・・・しかし、そんな金を使ったところで、合コンに行き、見せる機会があるわけでもない。“髪、切ったね”と気軽に言ってくれる友達も、一週間くらい前からアポを取って確保しておかねばならない。一週間もたつと、もはやそのセリフは意味を成さない。皆、私の髪型なんかに拘泥している暇なんてないのである。タイミングを見計らって、髪をわざと掻き揚げて言ってくれたとしても、それは完全なる人工のセリフである。人工の友人関係は、さすがに悲しすぎるではないか。
突如湧き上がる、どす黒い孤独感。
・・・そうだ。
今度は、この孤独を環境研究センターに送ってみることにしよう。






