122.できません!

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(一部、過去の投稿と被る箇所があります)
義父が口火を切りました。

「お義父さんたち、銀行を回り歩いたんだが、どこもきちんとしたことは教えてくれないんだよ。
第一法定相続人の奥様でないと話せません、と言って」

そりゃそうでしょうね。
わかってたけど、義父が借金返すと言ったので放置したまでです。
それまでに、できる限りの準備はしました。


「そこでなんだが」
と、義父が書類の束をちゃぶ台の上に置きました。

「この借金は
鯛子、お前が
返しなさい」

えーとえと。

お前は一体
何を言っているんだ?

さすがラスボスだよ、攻撃力ハンパない。

「お義父さん、返すって言ってたじゃないですか?」

と言葉を返すと


「いやあ、この書類を整理して、あの弁護士さんに見てもらったんだけど、この金額を見て相続放棄を勧められたんだよ。
マンションは放棄したくないんだが」

ツッコミどころが、過去最高に多い。

まず
「その書類を整理したのは私ですけど。
お通夜の前にお義父さんに言われて、目の前で整理したじゃないですか」

「そうか?覚えていないよ。気が動転していたから」

出ました!
必殺、覚えてない

「弁護士さんも、調停の費用はなかったことにしてくれると言っているんだよ。
だから、鯛子に一度相談に来るよう勧めておいてほしいと言われたんだ。
親切な弁護士さんだよな」

そこもツッコミどころなんだけど。
あの弁護士、商売の臭いがぷんぷんしますけど。

相続の世話をして、相談料に調停の料金乗せる気満々だと思いますよ。

そして、ここが一番のツッコミどころ。
そんなに親切なのに、マンションはあんたたちのものじゃないって教えてくれなかったの?
まさか、弁護士と結託してなけなしの財産乗っ取る気ですか?



「お話はそれだけですか?」
と聞いてみると、義両親がうなづきました。

なるほど。
反撃に出る時が来たようですね。

すうっと息を吸って、私は声を出しました。

「お義父さん、相続の放棄をされるつもりなんですか?」

義両親がうなづきました。

「残念ですが、それは無理だと思いますよ」

義家族の顔色が変わりました。
怒っているようで、赤みが差しています。

「鯛子たちが相続の放棄をしたら、その連絡をもらってお義父さんたちもすぐ放棄の手続きをするよ。
弁護士さんがそれがいいと言っていたよ。
義弟もそのために印鑑登録をしてきたんだから」

あまちゃん。どこまでも考えが甘い。
てか、義弟が初めて印鑑登録したってことは、この家は親子ローンじゃないんだ。
さすが、30すぎて親の車を乗り回す男は違うわ。

というより、私のことなめ過ぎ。


「お義父さん。テレビやCDを売りましたよね?」

「売ったよ。大したお金にはならなかったが。この前明細を送っただろう」

私の思い出の品を、金にならないとか言ってんじゃねーよ。

「そのこと、弁護士さんに話しましたか?」

いいや、と義父が首を横に振りました。

「先に言っておくと、私と子は明日にでも相続放棄の手続きを取ることができます。
なぜなら、遺品に手をつけていないから。
でもあなたたちはできません」

義両親と義弟の顔がますます赤くなりました。

「あなたたち、夫の遺品を売って、益を得ているんですよね。
その時点で、相続を承認していますから。
よって、
相続の放棄は
できません」
義家族はぽかんとしています。

「ついでに言えば、私の品物を売ったことは、横領、簡単に言えば泥棒です。
先日、明細のコピーをいただいているので、いつでも訴える準備はできていますから」

本当はここまで追い込むつもりはなかったのですが、「大したお金にならなかった」の一言が、私に火を付けました。

「売ったことを内緒にして、相続の放棄をしたら犯罪ですよ。
このことを踏まえて、もう一度弁護士さんに相談された方が良いと思います」


ここまで頑張ってきた。
あー
すっきりした!

25年以上の恨みを一気に晴らした気がしました。

ちゃぶ台に置かれた書類は手にせず、リビングとの間の襖を開けました。

襖の向こうには子と義叔母。
義父の世間体命スイッチが入りました。

「た、鯛子が田舎のお菓子を持って来てくれたから、みんなで食べよう」

襖越しに義叔母にも話は聞こえていたようです。
明らかに慌てた様子でした。

出された出涸らしのお茶を飲んでいると、義父が話しかけてきました。

「百箇日が、○月○日とさっき玄関先で副住職と決めておいたよ。
まあ、お前たちは忙しいと思うから、無理に来なくていいから

とりあえず、うなづいて帰りました。

ちなみにのど仏を法要のために連れてきていましたが、義父が
「骨を分けておくのは忍びないから、こちらで預かるよ」
と言ったので、そのまま置いて帰りました。


だったら最初から引き取れよ。

夕飯に誘われることもなく、帰途につきました。

帰りの車の中で子が言いました。

「さっきの百箇日の話、
来るなって言われた
気がするんだけど?」

やはり、私だけの思い込みではなかったか。
冷静に子が聞いて、来るなと受け止めたんだから、やはり拒絶されたのでしょう。

まあ、心の中で供養すればいいよ、と言って家に着きました。

長い長い一日が終わりました。

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